膠原病に伴う皮膚血管炎

膠原病とは1942年にKlempererが提唱した疾患概念です。
全身の結合組織が病変の主座であり、多数の臓器が同時に障害され、どの臓器が病変の中心であるか特定できません。
全身の多臓器に慢性に炎症が持続し、様々な自己免疫異常が出現します。
自己免疫疾患という疾患概念があります。免疫細胞が自己体の成分を攻撃してしまうことで生じる病気の総称です。大きく分けると臓器特異的自己免疫疾患(例えばⅠ型糖尿病、橋本病、バセドー病、多発性硬化症、天疱瘡など)と様々な臓器におこる全身性のもの、全身性自己免疫疾患があります。
膠原病とはこの全身性自己免疫疾患とほぼ同義語と考えられます。

血管炎を合併する膠原病は関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)、全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematodus: SLE)、シェーグレン症候群(Sjogren syndrome: SjS)、再発性多発性軟骨炎(Relapsing Polychondritis: RP)の4疾患が多く、皮膚筋炎、強皮症では極めて稀です。
RPは稀少疾患ですので、主にRAとSLEがその対象になります。実際Chapel Hill 分類(CHCC2012)で取り上げられた膠原病関連血管炎はループス血管炎とリウマトイド血管炎です。
因みに全身性疾患関連の同じ項目にサルコイド血管炎がありますが、サルコイドーシスは膠原病とは見做されていません。それは原因不明ながら、同症は自己抗原に対する反応ではなく、おそらく何らかの外来抗原に対する過剰反応と考えられているからです。

RA,SLE,SjS,RPの4疾患とも皮膚血管炎では類似した皮疹と病理組織像を呈します。すなわち皮疹は真皮小血管炎を反映した蝕知性紫斑(palpable purpura)が最も多く、浸潤性や隆起性紅斑、蕁麻疹、血水疱、浅い潰瘍を認めます。
また皮下組織の動静脈炎を反映した皮疹としては、浸潤性、結節性病変、網状皮斑、深い潰瘍、壊疽などの多彩な病像を認めます。
膠原病に伴う血管炎には以下の特徴があります。
(1)あらゆるサイズの血管に血管炎を生じる可能性があります。同一患者にも同時にあるいは異なる時期に種々の血管炎を生じることがあり、したがって多彩な病像を呈します。
(2)皮膚は血管炎の発症頻度が最も高い臓器です。
(3)膠原病では多様な臓器に血管炎を生じえます。皮膚、末梢に限局した場合は上記の皮疹や末梢神経炎を認め、頻度は低いものの内臓に生じる場合は致死性の高い症状を呈することが多いです。また同時に倦怠感、発熱、体重減少、筋痛、関節痛などの不定愁訴を訴えることが多いです。
(4)病歴が長く、しかも病勢が強い時期に生じることが多く、血管炎が先行することは稀です。
(5)経過中の膠原繊維の変性や、血栓形成、動脈硬化、動脈閉塞など血管炎と類似した臨床症状を生じるので、病理組織像を確認しないと明らかな血管炎の診断は困難なことが多くみられます。

膠原病に伴う血管炎の多くには、リウマトイド因子、抗核抗体、抗CCP抗体、抗SS-A抗体などの自己抗体の高値、低補体値、血中免疫複合体、抗ガンマグロブリン血症、クリオグロブリン血症を多く認め、蛍光抗体法では血管壁にIgM/GおよびC3の沈着を認めることが多く、発症機序には免疫複合体血管炎が関与すると考えられています。

膠原病では原疾患の治療にコルチコステロイドや免疫抑制剤の使用例が多いために感染徴候を伴っていたり、各種薬剤の影響、循環障害、線維化、瘢痕化、石灰化などの混在もあり、血管炎の診断、対処には困難をきたすことが多いとのことです。

膠原病の血管炎の代表ともいえるリウマトイド血管炎、ループス血管炎については次回に。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著 医学書院 東京 2013 より 抜粋 まとめ

バージャー病、閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans: ASO)は主に下肢主幹血管の動脈硬化による狭窄閉塞で末梢への血流が減少し、虚血症状を示します。50歳以上の男性に多く、高血圧、脂質異常、糖尿病など動脈硬化などが発症の危険因子となり、全身特に脳心血管の動脈硬化性疾患を伴いやすいです。
それに対してBuerger病(バージャー病、閉塞性血栓血管炎; thromboangiitis obliterans: TAO)は四肢末梢の中型動脈が分節的に閉塞する血管全層炎であり、小動脈のみならず皮下静脈にも病変がみられ、30~40歳代の男性若年層に好発します。
特徴的なのはそのほとんどが喫煙者であることです。中近東、トルコ、アジア、本邦に多く、近年は特定のHLA、歯周病などとの強い関連性が指摘されています。
しかしながら、喫煙者(ヘビースモーカー)の減少もあり近年TAOの新規発症の減少し、逆に女性患者の増加、非喫煙者例もあり、学会、ガイドラインによってはASOとTSOを一括りにしてPAD(peripheral aarterial disease)として扱っているものもあります。

バージャー病は真の血管炎ではなく、チャペルヒル2012(CHCC2012)でも取り上げられていませんが、血管炎症候群のガイドラインには入っていますので、まとめてみました。

以下は主に「血管炎症候群に診療ガイドライン Ⅳ.バージャー病」に沿って記載します。

【疫学】
本邦では人口10万人に4~5人の発症頻度でしたが、1970年代後半より急速に減少してき、2014年の特定疾患受給者数は約7000人です。喫煙歴のある20~40代の青壮年に好発し、男女比は9:1です。ただ近年は女性患者数の増加傾向がみられ、また患者の高齢化がみられます。先にも触れましたが、近年は本疾患の減少と動脈硬化性疾患の増加により、アジア、トルコなどでの国々でも閉塞性動脈疾患の入院患者数はASOが多く、TAOはごくわずかとなっているようです。
【発症機序】
喫煙との関連性が特徴で、患者の93%が喫煙歴を有しているそうです。また病勢もそれと相関し、禁煙によって症状は軽快しますし、再開すると再び悪化することが知られています。喫煙によって血管攣縮や血液凝固能亢進をきたし、血管の閉塞、虚血をきたすとされています。
それをベースとして、感染、栄養障害、、寒冷、自己免疫などの要因が加味されて発症すると考えられています。
また近年は歯周病菌の一種であるTreponema denticolaが高頻度に検出され、喫煙があいまって発症へ導く病態が呈示されています。
【病理所見】
ASOとの区別がつかないとの説もありましたが、近年はTAOに特徴的な組織像として何点か挙げられています。ただこれらが必須、特異的というわけでもなさそうです。
・急性期に血管壁にみられる微小膿瘍と多核巨細胞
・内弾性板が圧排されずに屈曲が保たれ、過屈曲も認められる。
・中膜の線維化を欠く外膜の線維化
・外弾性板直下の浮腫
・再疎通血管の内皮細胞の玉ねぎ様の重層化
・血管栄養血管の内皮細胞の肥厚
・内弾性板に密着したマクロファージ・リンパ球の浸潤・・・TAOに特異的だが、全てにみられるわけではない。
TAOでは内弾性板が圧排されずに保たれており、逆にASOや血栓症では、粥腫や血栓によって肥厚した内膜が内弾性板を圧排する所見が目立って認められます。
【症状】
はじめに主に下肢末梢の中足骨動脈、弓状動脈、ついで下腿3動脈に病変が波及します。そのため初期には足趾冷感、しびれ、皮膚の色調変化、疼痛、足底筋跛行などを生じます。その後には間歇性跛行症を脚部に生じることが多いです。色調は赤紫色を帯びますが、虚血期間が長くなればチアノーゼを生じます。さらには安静時疼痛も生じるようになります。虚血の結果として潰瘍・壊疽を生じますが、足趾、特に爪周囲に生じることが多いです。このような症状は手指・上肢にも生じますが一般的に症状は下肢と比べて軽度です。また稀ではありますが、内臓、脳、心臓、腎臓などの動脈病変の報告があります。この際はTAO以外の動脈疾患を除外診断しておくことが重要です。
TAOはASOと異なり、四肢の表在静脈に、再発性かつ移動性の血栓性静脈炎を生じます。局所に索状の発赤・硬結を生じます。
【検査法】
視診では表在静脈に沿う紅斑・色素沈着など、皮膚の色調変化をみる。
聴診では狭窄性雑音の有無を調べる。
触診では皮膚温度の低下、末梢動脈の拍動減弱や消失を調べる。
機能的診断法には血圧測定、皮膚灌流圧、皮膚酸素動態、皮膚温、皮膚血流量、筋酸素量、血流量などを調べる。特に足関節上腕血圧比(ankle brachial index: ABI)は簡便で重要な検査です。ABI 0.9以下はASOを疑う所見となります。
形態的診断法としては、MRA,造影3D-CT、血管造影などがあります。
血液学的検査ではTAOに特異的なものはなく、赤沈値、CRPなどの炎症所見も通常は正常です。各種免疫マーカーも陰性です。
【血管画像所見】
・下肢では膝関節より末梢に、上肢では肘関節より末梢に病変がみられます。
・ASOでみられる虫食い像、石灰沈着などの動脈硬化性の壁不整はなく、壁は平滑です。
・閉塞様式は、途絶型、先細り型が多いです。
・コルクの栓抜き状、樹根状、橋状などの側副血行路の発達を示す所見がみられます。
・蛇腹状の所見は壁が柔らかく血管攣縮を起こしやすいことを示します。
・全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、血管ベーチェット病などの膠原病の血管所見は時に鑑別が困難です。その他の所見など総合的に判断します。
【診断】
各種診断基準が提唱されています。塩野谷の臨床診断基準は明確で実用的ですが、合致しない症例もあります。この際でも画像診断、病理組織像がTAOに合致し、除外診断で他疾患が除外できればTAOと診断します。
《塩野谷のバージャー病臨床診断基準》
(1)50歳未満の発症
(2)喫煙歴を有する(受動喫煙も含む)
(3)膝窩動脈以下の閉塞がある
(4)上肢の動脈閉塞がある、または遊走性静脈炎の既往がある
(5)喫煙以外に動脈硬化の危険因子を有さない
【治療】
まず生活指導として、ASO, TAOともに、禁煙指導、患肢保護保温、継続した運動療法、フットケアを行います。特にTAOにおいては、禁煙は受動喫煙も含めて重要で、禁煙を続けた患者は大多数が肢切断を免れていますが、喫煙を続けた約半数は切断に至っています。
《薬物療法》
経口抗血小板薬
シロスタゾール(プレタール)、ベラプロスト(PGI2誘導体;ドルナー、プロサイリン)、サルポグレラート(アンプラーグ)、リマプロストアルファデクス(PDE1誘導体;オパルモン、プロレナール)、チクロピジン(パナルジン)、クロピドグレル(プラビックス)
注射薬
アルプロスタジル(リポPGE1; パルクス、リプル)、アルプロスタジルアルファデクス(PGE1; プロスタンディン)
静脈注射ないしは動脈注射
《運動療法》
間歇性跛行に対して推奨されます。通常トレッドミルで、傾斜12%、速度2.4㎞で行い、痛みが中等度になったら5分休みを繰り返します。1日30分から1時間週3回行います。
《疼痛管理》
フェンタニルのテープ剤、入院ならば持続硬膜外麻酔を行います。切除範囲が少なければ、足趾切断も考慮されます。
《外科治療》
血行再建術・・・薬物療法などの保存的な治療法が奏功しない場合に施行されます。しかしながらTAOではグラフトとなる血管、静脈が炎症のためにすでに傷んでいることがままあり、また術後の開存率もASOと比較して低いとされます。しかしながらASOと比較してTAOは末梢血管の閉塞が多く、閉塞した場合も大切断に至ることは少ないとされます。
《交感神経節切除》
血行再建が不可能な疼痛を伴う足趾、手指に限局した虚血性潰瘍に施行されます。
上肢では、星状神経節の下3分の1と第2,3胸部交感神経節を切除し、下肢では第2,3腰部神経節を切除します。
《予後》
TAOの生命予後は若年発症ということもあり、従来は良好とされてきました。しかし患者の高齢化が進んだ現在、高血圧、脂質異常、糖尿病などの合併例も増え、重症虚血化する例も増え、生命予後についても今後さらなる統計が必要とのことです。
TAOの肢切断率は約10%とされますが、末梢の足趾切断は20%にみられるとのことです。

【PAD, ASO,TAO,CLIの関係について】
主にTAOについて、一部ASOについて記述しましたが、末梢動脈疾患(peripheral arterial disease: PAD)という概念があり、末梢動脈とは心血管、脳血管を除くすべての動脈を指し示しますが、一般的には手足、四肢の動脈の疾患を意味しています。これにはASO,TAOが含まれますが、TAOの症例の減少もあり、PADはこの両者を包括した概念でASOとほぼ同義語とされることも多いそうです。重症虚血肢(critical limb ischemia: CLI)とはPADの徴候の1つであり、典型的な慢性虚血性安静時疼痛や潰瘍・壊疽などの虚血性病変を指します。CLIにより下肢切断に至った場合の5年生存率は40%をきり、肺癌患者の予後よりも悪いとされ、CLIが重要な意味合いを持つようになってきています。

血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版) Ⅳ.バージャー病 より 抜粋 まとめ

参考文献

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著 医学書院 東京 2013

皮膚疾患 最新の治療 2019-2020 編集 古川福美・佐伯秀久 南江堂 東京 2019
池田高治 Buerger病、閉塞性動脈硬化症 pp73

下腿潰瘍・足趾壊疽 皮膚科医の関わり方 責任編集 沢田泰之 Visual Dermatology Vol.9 No.9 2010

過去に書いた当ブログの記事も参考にして下さい。

2014.3.6 動脈硬化・重症虚血肢(1)
2014.3.9 動脈硬化・重症虚血肢(2)
2014.3.15 動脈硬化・重症虚血肢(3)
2015.2.9 足趾の潰瘍・壊死 

抗糸球体基底膜抗体病

抗糸球体基底膜抗体病(抗GBM病、anti-GBM disease)とは、抗糸球体基底膜(glomelular basement membrane: GBM)抗体によって引き起こされる予後不良の腎・肺病変です。
2012年のChapel-Hillコンセンサス会議(CHCC2012)では免疫複合体型小血管炎に分類されています。皮膚症状はきたさないために皮膚科教本では取り上げられることはないのですが、重要な一項目ですので、血管炎症候群の診療ガイドラインより、調べて抜粋してみました。
(抗GBM病はⅡ型アレルギーの代表ともいえる疾患で、Ⅲ型アレルギーの免疫複合体型小血管炎とは若干機序が異なると思うのですが)

同症は、腎型、肺型、腎肺型の3型に分けられますが、歴史的には1919年にGoodpastureがインフルエンザを契機に肺出血を生じた症例の報告から始まり、Goodpasture症候群と呼ばれてきました。
この中で、抗GBM抗体型急速進行性糸球体腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis: RPGN)は予後が最も悪く、1960年代では生命予後はほんの数%でした。その後ステロイド、免役抑制剤、血漿交換などの治療法が進み、大幅に改善されてきましたが、現在でもなお予後不良の疾患であることに変わりはありません。
【発症機序】
抗GBM抗体の対応抗原は、糸球体基底膜や肺毛細管基底膜に分布するⅣ型コラーゲンα3鎖のC末端にあるnoncollagenous domain 1(NC1ドメイン)に存在しN末端側17-31位のアミノ酸残基(エピトープA: EA)とC末端側127-141位のアミノ酸残基(エピトープB: EB)が同定されています。EBを認識する抗体が重症度と関連するとされます。通常はこれらのエピトープはⅣ型コラーゲンの内部に隠れていますが(hidden antigen)、感染症(インフルエンザなど)、喫煙、吸入毒性物質(有機溶媒、四塩化炭素など)の影響で肺・腎の障害が生じると、α鎖6量体が解離してα3、5鎖のエピトープが露出して、抗原抗体反応が生じると考えられています。引き続きその基底膜部ではTリンパ球介在型の免疫反応が生じて、炎症反応が進展するとされています。そして基底膜部の破綻と血管炎のために、病態が進行、悪化すると考えられています。
抗GBM抗体は軽度腎機能低下でも健常人でも見られることがあります。しかしこの場合はサブクラスのIgG2,IgG4であるのに対し、患者では高力価のIgG1,IgG3も検出されます。また病因との関連は不明なものの、約20〜30%の間者にANCAが陽性となることが知られています。
【病理所見】
腎糸球体では高度の半月体形成性壊死性糸球体腎炎の組織像がみられます.ボウマン嚢の上皮細胞の増殖、炎症細胞浸潤、フィブリンの析出などがみられます。蛍光抗体法では係蹄壁に沿ったIgGの線状沈着がみられます。
【症状】
倦怠感や発熱、体重減少、関節痛などの非特異的な全身症状がみられます。これらに併せて腎炎、肺出血などの特有な症状がみられれば、同症を疑いに置くことが重要です。腎炎、急性腎障害が進行すれば浮腫、乏尿・無尿、高血圧などが、肺病変が進行すれば、血痰、喀血、呼吸困難などの症状が出現します。
【検査所見】
ほぼ全例で腎炎所見、血清クレアチニン値(Cr)の上昇、CRPなど炎症所見の上昇をみます。抗GBM抗体はほぼ陽性に出ますが、稀に検出できない場合もあります。抗体値は病勢と相関します。血清Crの値は予後に関係します。血清Cr値が5.7mg/dL以上の場合は予後が不良となります。
【治療】
抗GBM病の治療は肺・腎の臓器病変の有無と重症度によって規定されます。
・急性期寛解導入
通常1mg/kg/日のPSL(メチルプレドニンによるステロイドパルス療法)、静注シクロホスファミド(IVCY 500~750mg/m2/月)または経口CY(1~2mg/kg/日)および血漿交換療法の3者併用療法を施行します。
・慢性期維持治療法
初期治療後は徐々にGCとCYを減量し、通常GCは6〜9ヶ月間、CYは2〜3ヶ月間継続します。
抗GBM病は病勢が非常に高いために急速例は、透析療法、人工呼吸管理が必要となるケースもあります。重篤な疾患ではありますが、抗GBM抗体が陰性となり、臨床的に寛解に至れば、その後の再燃は希とされています。

Goodpasture症候群ときいて思い出すのは木之本興三氏のことです。
サッカーに詳しい方ならば、特に創生期のJリーグを知る方にとってはレジェンドともいえる人物です。
Wikipediaを見るとだいたい次のような記述があります。
「1949.1.8-2017.1.15、千葉県千葉市出身のサッカー選手。県立千葉高から東京教育大学に進学、同卒業後古河電気工業に入社。当時の監督は川淵三郎、一年先輩に永井良和(年齢は下)。
1975年 新婚直後、サッカー練習中に突然肺出血しグッドパスチャー症候群と診断される。腎臓摘出手術を受ける。以降週3回の人工透析が欠かせない体となる。
古河電工サッカー部退部、休職。
1983年 古河電工退社。
日本サッカーリーグ(JSL)事務局長、総務理事
1993年 森 健兒と共に、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)創生のほとんどを担った。
2002年 2002FIFAワールドカップ日本選手団団長
大会期間中にホテルで倒れ、一時意識不明となる。バージャー病と判明、下肢切断の手術を受け、車イス生活となる。此の期に及んでも終生タバコは止められなかったようだ。
2003年 Jリーグ専務理事、日本サッカー協会常務理事を解任される。
2017年 うっ血性心不全のため千葉大学医学部付属病院にて死去。」
難病に侵されながらの、日本のサッカー発展への情熱、その卓越した業績は様々な人の彼への賛辞からうかがい知れます。
小生は実は彼の人生のそのほとんどは、実際には知らなかったのですが、かつて大学時代にサッカー部の夏合宿で木之本さんのコーチ指導を受けた思い出があります。酷暑の検見川グラウンドで合宿に参加していました。ヘタレ部員の小生はチンタラボールを追っかけていました。コーチの「お前やる気あるのか」という叱声を受け、鬼コーチと思ったことがありますが、今にして思えば素人部員にも手加減しない熱血指導だったのでしょう。その後のあのような試練をも跳ね返す壮絶な人生を全うしたすごい人なのだと知りました。

色々な人のコメントがありましたが、辛口評論家として知られるセルジオ越後氏の「その功績はもっと讃えられるべきだ」というコラムは一読に値すると思います。

余計なことかもしれませんが、Goodpasture症候群、バージャー病を患いながらもサッカーに人生を捧げた偉大な人物のことを付記してみました。

血管炎症候群ガイドライン(2017年改訂版) ーー日本循環器学会 より 抜粋 まとめ

感染性血管炎

感染性血管炎とは、感染が発症原因として強く考えられる血管炎の総称です。
ただ、多くの血管炎に細菌、ウイルスなどがきっかけになっていることは常に報告されてきたところです。
その発症には感染病原体の直接の作用とIC,ANCAなどの免疫の作用なども考えられており、また明確にそれを証明できない場合もあり、それゆえに感染性血管炎の定義、範疇もあいまいではあります。
【病因】
従来、細菌、ウイルス、真菌、リケッチャなど多くの感染病原体が血管炎の発症に関与すると報告されてきました。中でも細菌、ウイルスは多くみられます。これらは血管内皮細胞に直接作用して血管炎を起こす場合と、ICやANCAの産生を介して間接的に血管炎を起こす場合があります。
1)血管内皮細胞への直接作用
病原体が直接血管内皮細胞を刺激してサイトカイン、接着因子を発現し、白血球を活性化し血管炎へと進展していく、という考えです。
一方で、病原体が内皮細胞を直接傷害、破壊して抗凝固・抗血栓機能を低下させ、出血・血栓、播種性血管内凝固症候群(Disseminated intravascular coagulation syndrome: DIC)などを生じる場合があります。この際は組織的には血管炎は認めないので「血管炎類似疾患」に分類され真の血管炎とは区別されます。また病態、治療法も大きく異なってきます。電撃性紫斑、敗血症性血管症、感染性心内膜炎、DICなど重篤な経過を辿る場合が多くあります。
2)血管内皮細胞への間接的作用
以下のような機序が関与するとされます。
・IC形成によるⅢ型アレルギー炎症
・ANCAの誘導とそれに続くサイトカインカスケード
・血管壁細胞成分と交叉する抗体(AECAなど)産生による血管傷害
・細胞由来のスーパー抗原によるT細胞刺激
・CD4+T細胞とマクロファージの活性化、肉芽腫形成
【代表的な病態、病因】
🔷HSPと溶連菌感染
HSP(ヘノッホ・シェーンライン紫斑、IgA血管炎)では急性上気道炎の先行や病巣感染(慢性扁桃炎、副鼻腔炎、根尖性歯周囲炎など)がみられることが多く、就中A群β溶連菌は咽頭培養で小児のHPSの約半数に証明され、ASOの上昇も2-3割にみられます。しかしながら近年はその割合は低下傾向にあり、溶連菌以外の細菌、ウイルスの関与する例が増えてきています。また成人では溶連菌の関与は小児より少ない傾向にあります。ウイルス感染症のなかにあって近年ヒトパルボウイルスB19感染症(リンゴ病の」病原ウイルス)の血管炎への関与が注目されています。
🔷皮膚白血球破砕性血管炎
その病因には特発性(本態性)、薬剤性もありますが、感染症の関与もあります。HSPと同様に種々の細菌、ウイルスの関与するとの報告がみられますが、HSPと異なるのは前者がDIFでIgAがみられるのに対して後者ではIgG,IgMが認められることです。いずれもICの関与するⅢ型アレルギーによるとされます。
🔷蕁麻疹様血管炎
B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、溶連菌、ピロリ菌などの関与するとの報告もあります。しかしこれらが蕁麻疹様血管炎を起こすことは少数でむしろ蕁麻疹そのもの、あるいは蕁麻疹様紅斑の原因となることが多いようです。
🔷感染性心内膜炎
歯科処置、中心静脈カテーテル留置、その他のカテーテル等の治療処置によって菌血症が発症し、病原菌が心内膜、弁膜に付着、繁殖し全身の感染症、心不全、血管塞栓を生じる疾患です。急性ではブドウ球菌、亜急性では口腔内弱毒菌、カンジダ菌などが多いです。
臨床症状ではOsler結節、Janeway斑が特徴的とされます。急性型では10%、亜急性型では20~50%にみられるとされます。この両者は手足に生じる1-5㎜の紅斑、紫斑ですがその違いは疼痛の有無とされます。病態は同様とされ、血管閉塞や免疫反応の程度の違いによるとされます。組織的には血管炎がみられる場合と、小膿瘍・塞栓がみられる場合があります。
🔷クリオグロブリン血症性紫斑
混合型(Ⅱ型、Ⅲ型)クリオグロブリン血症では本態性と続発性があります。続発性には感染症、膠原病、悪性腫瘍、その他炎症性疾患によるものがあります。近年クリオグロブリンの形成にはHCVが中心的な役割を担っていることが明らかになってきました。クリオグロブリン陽性例の80%以上に抗HCV抗体が陽性であり、特にⅡ型CGにその傾向が顕著です。
🔷ANCA関連血管炎
しばしば感染症を契機に発症します。多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s)では約半数で黄色ブドウ球菌感染の先行が認められ、MPO-ANCA関連血管炎では感冒症状が先行する例が60%にみられます。また好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss)では寄生虫や細菌などの感染症が大きな要因となっています。これらの病原菌が発症にどのように関与しているかは明確な結論は得られていません。炎症性サイトカインTNF-a,IL-1などの産生が促進され、その刺激でANCAが細胞表面に引き寄せられ、抗原分子と結合し免疫反応が進行していくモデルが推測されています。
🔷結節性多発動脈炎(PAN)
欧米では1980年代にPAN患者の約半数にB型肝炎感染が証明されたことから、病因に強い因果関係が考えられました。しかし輸血による例の減少やワクチン接種などにより、HBV陽性率は著減しました。本邦ではもともとHBVの関与する例は少数でした。近年はむしろHCVの関与する例が増加してきています。
感染性血管炎では非感染性の場合と異なり、ステロイド療法の適用について慎重が判断が必要となります。感染症をコントロールしながらステロイド剤、免疫抑制剤などの治療となり、肝炎専門医による治療を要します。
🔷HIV感染症
HIV感染はあらゆるサイズの血管炎の発症に関与します。多くはCD4細胞が300/μL以上の時期に出現するとされます。肝炎ウイルス以外にサイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスなどによる血管炎もみられます。
🔷結節性血管炎(Bazin硬結性紅斑)
両側下腿に硬結を伴う暗赤色紅斑が多発し、しばしば潰瘍化する慢性炎症性疾患です。20~50歳の女性に多くみられます。しばしば臓器結核を伴うこと、病理組織像は結核にみられる乾酪壊死をともなった多核巨細胞性類上皮肉芽腫がみられ病因に結核が強く考えられています。しかし結核と関連のない症例もあり欧米では結節性血管炎の呼称が用いられています。
しかし本邦ではBazin硬結性紅斑の呼称が一般的です。結核に伴った例(結核疹)がほとんどで、非結核性と診断しても後に活動性結核をみた報告もあり、慎重な取り扱いが必要です。
【治療】
通常の全身性血管炎に対してはステロイド療法や免疫抑制剤による治療がなされますが、感染性血管炎では当然のことながら感染症に対する治療も必要になります。血管炎の活動性が高い場合や重篤な臓器障害を認める場合は感染症のみの治療ではなく、ステロイド、免疫抑制剤の併用も必要となってきますので両者に対する専門的な高度な治療を要します。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著  医学書院 東京 2013  より 抜粋 まとめ

浅在性血栓性静脈炎

浅在性血栓性静脈炎は下肢を中心とした皮下組織の浅在性静脈に好発し、表在静脈に沿って索状、または指頭大までの有痛性の浸潤性紅斑または結節を形成する疾患です。
その原因は多くありますが、大きく分けると(1)凝固線溶系の異常に伴って生じるもの、(2)膠原病やベーチェット病などの炎症性疾患、感染症、悪性腫瘍、静脈瘤、静脈損傷などの原因があって、それに伴って生じるもの、(3)原因の不明なものに分けられます。
一般的には安静と消炎剤などの治療で数週間以内に治癒し、予後は良いとされますが、一部では深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis :DVT)を合併し、その際は心臓、肺などの塞栓、血栓に対する予防、治療が必要となってきます。
【病因】
いわゆるVirchowの3原因が基になって発症しますが、原因不明なものもみられます。
(1)静脈内膜の炎症、外傷および感染による損傷
(2)血液の凝固能の亢進
(3)血流の停滞または緩徐
【臨床症状】
主に下肢の表在静脈に沿って索状の硬結、浸潤性紅斑を認めますが、指頭大までの紅斑、結節を散在性にみることもあります。またときに上肢、躯幹にもみられる場合があります。急性期では紅斑と疼痛が強く、慢性期になると網状皮斑が混在してきます。皮疹の発現とともに発熱、足や膝などの関節痛を伴うこともあります。
青壮年に多い多発性浅在性血栓性静脈炎は、臨床症状も病理所見も結節性多発動脈炎に類似しているために皮膚型結節性多発動脈炎(cPAN)によく誤診されるとのことです。
胸部や陰茎に生じた索状の硬結はモンドール病(Mondor病)ともよばれますが、経過観察のみで消退することがほとんどです。
【病理所見】
動脈炎と同様に急性期、修復期および瘢痕期に分けられます。これらは混在してみられることが多いです。
(1)急性期・・・血管腔内にフィブリン血栓があり、血管壁、腔、周囲に核塵を伴う好中球主体の細胞浸潤を認めます。
(2)亜急性~修復期・・・細胞浸潤は組織球、リンパ球が主体となり、好中球も混じています。また血管壁、周囲に新生血管や膠原線維の増生がみられます。
(3)瘢痕期・・・細胞浸潤が乏しく、新生血管や膠原線維の増生がより顕著にみられます。血管の再疎通を示す器質化像がみられます。
【治療】
急性期には安静時下肢挙上(15~30度)、長時間の立位や座位を避けます。非ステロイド抗炎症鎮痛剤を投与します。筋痛など疼痛が強い場合は2週間以内のステロイド剤の投与(プレドニン20mg/日程度)を行います。
原因が明らかなものはそれに対する治療を行います。
大腿部のもの、腫瘍随伴性のもの、ベーチェット病に伴うものなどではDVTを伴いやすいので、弾性ストッキングの着用、抗凝固剤やヘパリンの投与などをおこないます。

線溶系の異常によって生じるものは頻度は少ないものの青壮年の繰り返し発症する血栓性静脈炎ではプロテインCやプロテインS欠乏症、ファクターVⅢの上昇、プロトロンビン、ファクターⅤなどの遺伝子の異常による線溶系の異常も疑ってみることも大切です。
また基本的には血管炎ではありませんがその類似疾患として抗リン脂質抗体症候群では動静脈の血栓症や習慣性流産をきたしますのでそのような場合には抗リン脂質抗体の測定が重要になってきます。

また先に述べたように青壮年の多発血栓性静脈炎は臨床症状も組織所見もあたかも結節性動脈炎の像と類似していますので注意が必要です。(「皮膚血管炎は下腿に多いのが特徴である。その原因が動脈炎か静脈炎かによって治療方針は大きく異なるので、動脈炎と誤認された場合の過大な治療を避けるためにも正確な病理組織診断が大事である。したがって、皮下組織における下腿小動静脈炎の鑑別は血管壁の厚さ、内弾性板の有無だけでなく、血管壁の弾性線維および筋層構造の評価を加えて診断を下すべきである。」
動脈・・・平滑筋細胞の走行が同心円状。隙間の少ない緊密な筋層構造、弾性線維が乏しく、1本のはっきりした内弾性板を有する。
静脈・・・平滑筋細胞が索状構造を呈し互いに隙間を有する。時に静脈弁を認める。豊富な弾性線維に挟まれて平滑筋細胞は不規則な索状を呈する。1~数本の弾性線維がみられる外膜は動脈の内弾性板と誤認されやすい。

腫瘍随伴性血栓性静脈炎では膵癌が有名です。再発性、難治性の場合はそれを否定しておくことも重要です。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著 医学書院 東京 2013  より抜粋 まとめ

参考文献

下腿潰瘍・足趾壊疽 皮膚科医の関わり方 責任編集 沢田泰之 Visual Dermatology Vol.9 No.9 2010

皮膚科臨床アセット 5 皮膚の血管炎・血行障害 総編集◎古江増隆 専門編集◎勝岡憲生 中山書店 東京 2011

大型血管炎

Chapel-Hill分類1994、2012による血管炎の分類では、血管炎を血管の大きさから、大血管、中血管、小血管に大きく分けました。CHCC2012では、これに加えてさらに4つのカテゴリーが追加されました。
・多様な血管を侵す血管炎・・・ベーチェット病、 Cogan症候群
・単一臓器血管炎・・・皮膚白血球破砕性血管炎、皮膚動脈炎、原発性中枢神経系血管炎、限局性動脈炎、その他
・全身性疾患関連血管炎・・・ループス血管炎、リウマトイド血管炎、サルコイド血管炎、その他
・推定病因を有する血管炎・・・C型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症性血管炎、B型肝炎ウイルス関連血管炎、梅毒関連大動脈炎、薬剤関連免疫複合体血管炎、薬剤関連ANCA関連血管炎、がん関連血管炎、その他
これらのうち、中小血管炎、さらにベーチェット病、皮膚白血球破砕性血管炎、皮膚動脈炎についてはすでに書きました。
その他の血管炎についてはひとまずおいて、大型血管炎について書いてみたいと思います。

大型血管炎はCHCC2012では高安動脈炎と、巨細胞動脈炎の2つが挙げられています。その分類からみる大型血管炎はこの2つだけのように思われますが、実際にはその他の多くの疾患が大動脈炎を起こします。
細菌性大動脈炎、結核性大動脈炎、真菌性大動脈炎、梅毒性大動脈炎、ベーチェット病、再発性多発軟骨炎、膠原病及びその類縁疾患などです。従ってこれらを勘案して十分に鑑別することが求められます。
さらに、本邦の「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)」においては、大型血管炎のなかにバージャー病も取り上げています。バージャー病、閉塞性動脈硬化症については、別項で後日取り上げてみたいと思います。

側頭動脈炎(巨細胞動脈炎)は本邦では稀で、高安病は本邦で特有なものの、世界的には希少でまず皮膚科では扱われません。希少ながら重要なこの2疾患について血管炎ガイドラインから要約してみます。

🔷巨細胞動脈炎(Giant cell arteritis: GCA) [側頭動脈炎(Temporal arteritis: TA)]
1890年HunchingtonらがTAの症例を報告したのに始まります。
1932年にHortonらが頭痛、視力障害などの臨床像と側頭動脈の炎症という病理学的特徴を発表し、TAの概念が確立しました。
1941年にGilmoreが組織所見で巨細胞を含む肉芽腫性炎症をみることからGCAのの名称を提唱し、次第にその概念が確立しました。
この疾患は活動期に巨細胞性肉芽腫性炎症を認め、側頭動脈を含めた頸動脈や椎骨動脈の枝が高頻度に障害を受けます。しかし、その後、必ずしも側頭動脈が障害を受けるわけではなく、他の血管炎でも側頭動脈を障害することもあることから、TAという名称は不適切として、CHCC2012ではGCAという名称に統一されました。
GCAは希少疾患で本邦では厚労省の調査で患者数690人(人口10万対0.65人)です。アジア人に少なく、欧米白人に多く、特に北欧に多いとされます。
【病因】
不明ですが、一部に感染抗原としてマイコプラスマや、パルボウイルスB19,パラインフルエンザ、などが想定されています。
またHLA-B, HLA-DRB1*04遺伝子との関連も欧米では指摘されています。これらが関与して、浅側頭動脈の血管壁に巨細胞性の肉芽腫性炎症を惹起するとされていますが、詳細は不明です。またより若年の女性に好発し、大動脈とその枝を障害し、側頭動脈の炎症の少ないlarge vessel GCA(LV-GCA)も報告され、従来のcranial GCA(C-GCA)との異同が検討されています。
【臨床症状】
50歳以上の高齢者に好発します。初発に発熱、全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、体重減少などをともない発症します。頭痛、顎跛行、複視がみられることが多いです。10%の患者では大動脈が障害され、上腕の知覚異常、筋力低下をきたします。
皮膚では頭痛と同時に側頭動脈に沿った発赤腫脹、熱感、圧痛、索状肥厚、拍動の減少などをみます。稀に梗塞性の皮膚潰瘍をみます。また舌の潰瘍もみることがあります。視力障害は約半数にみられ、一過性黒内障、複視、眼痛、視野欠損、中心暗点などが出現します。放置すると失明に至るために早急に大量ステロイド治療を要します。
LV-GCAでは鎖骨下動脈病変が特徴とされ、上肢痛、冷感、脱力感、血圧左右差などが現れてきます。また総腸骨病変では間歇性跛行、下肢冷感、皮膚潰瘍なども現れてきます。GCAでは30~60%でリウマチ性多発性筋痛症(PMR)を生じます。腰、四肢の疼痛、こわばりが特に起床時に起きるのが特徴です。
【検査所見】
赤沈値の上昇をみます。白血球、CRPの上昇をみますが、特異的ではありません。時にIL-6, ANA, RF 第Ⅷ因子陽性、上昇がみられます。画像検査で血管の閉塞、狭窄。病理組織は炎症部位を2cm以上の長さで生検することが推奨されています。
【治療・経過】
GCAはステロイドに著効をしめします。PSL 1mg/kg/dayなどから症状を指標に漸減します。低用量アスピリン、ワルファリンも併用されます。生物学的製剤については症例が少ないこともあり、まだその評価は確定していないとのことです。

🔷高安動脈炎(Takayasu ateritis: TAK)
従来は大動脈炎症候群と呼ばれていましたが、2014年の難病法の成立により、指定難病としての病名が高安動脈炎に変更されました。その理由は、欧米での呼称が(Takayasu arteritis: TAK)であること、また本疾患が大血管炎だけではなく、小血管、内臓を始め、眼、耳、皮膚など全身性の疾患であること、発見者への畏敬の念への配慮などであるとされています。
TAKは日本人に多く、欧米では少なく、逆に巨細胞動脈炎が多いとされます。この両者は発症年代と罹患血管の分布が異なるものの共通の発症基盤を持ち病理学的に共通した部分も併せ持ちその異同が問題となっていますが、現在では近縁ではあるものの異なった疾患と考えられています。
【歴史】
1824年 漢方医 山本鹿州 「橘黄医談」で左右脈拍消失、微弱症例を記載
1908年 金沢大学眼科教授 高安右人 “奇異なる網脈中心血管の変化の一例”として、花冠状吻合の眼底所見を示した22歳女性例を報告 追加発言で橈骨動脈の脈拍欠損を指摘
1940年 太田邦夫 大動脈をはじめ、基幹動脈の内・中・外膜全層にわたる血管炎であることを報告
1951年 清水健太郎、佐野圭司 眼底所見、脈拍減弱・欠損、頸動脈反射の亢進亢進を3徴とし、自験25例を脈なし病として報告
上田英雄 研究班を組織 大動脈炎症候群という病名を定着させる
1975年 難病として指定
1989年年〜 沼野藤夫 11回にわたり国際高安動脈炎会議を主催 HLAとの関連を報告
2007年 尾崎承一 診療ガイドライン作成
【疫学】
現在の登録者数は約6000人、毎年300人程度発症しています。男女比は1:9で発症のピークは20歳前後ですが、無症候例、未診断例も多いそうです。中近東・アジア、とりわけ日本人に多く、欧米では稀です。
【分類】
大動脈の侵される部位(弓部、弓分枝、胸部、腹部、腎動脈)によってⅠ〜Ⅴ型に分類されています。
【病因】
遺伝的要因を背景に、感染などの環境要因がきっかけとなり、大動脈を主体とした弾性動脈が自己免疫機序によって破壊されると考えられています。HLA-B*52が発症に関連しているとされています。さらに最近GWASにより、IL12B遺伝子領域の遺伝子多型が同定されIL-12, IL-23の関与も想定されています。
【病理所見】
大動脈の中膜から外膜よりが病変の主座で、中膜平滑筋細胞の壊死や弾性線維の破壊、線維化、外膜の炎症性肥厚が特徴で、とりわけ分布する栄養血管の炎症が重要と考えられています。初期には単核球細胞浸潤が、さらに多核巨細胞が混在する肉芽腫性動脈炎を呈します。瘢痕期になると動脈壁は板状の石灰化を伴い鉛管状を呈します。病変は健常部も混じ虫食い状を示し、壁は線維化・肥厚、閉塞、拡張し大動脈瘤、大動脈弁閉鎖不全などを起こしてきます。
【TAKとGCAの異同】
両者は病理組織学的な鑑別が必ずしも容易ではなく、異同について議論がなされています。(特にLV-GCAとTAKとの異同)。しかしながら、次のような点で両者は異なると考えられています。
1)大動脈肥厚はTAKでより高度である。
2)TAKは動脈中膜外膜の炎症が高度であるのに対し、GCAでは中膜の内膜側に炎症が顕著である。
3)外膜の高度の線維化はTAKでより頻繁に観察される。
【症状】
原因不明の発熱、全身倦怠感、頸部痛、めまいなど上気道炎に似た症状で始まります。その後、侵された血管病変に起因する症状を起こしてきます。上肢の脈拍の減弱(脈なし病)、頭痛・めまい、視力障害、高血圧などがみられます。また皮膚では下腿特に脛骨前面に結節性紅斑を多発することが多いです。病変部位の違いにより、脳、心臓、肺、腎臓、四肢それぞれの虚血に起因する症状を呈します。
【検査所見】
HLA-B*52, B*67を除けば特異的なバイオマーカーはありません。(PTX3は期待されるものの保険未適用)
近年のCT,PET-CT,MRI、超音波は解像度が上がり、長期フォローに推奨されます。眼症状は約30%の患者でみられ、一部は網膜症、虚血性視神経症が眼底所見としてみられます。
【治療】
ガイドラインでは治療のフローチャートがありますが、その中心になっているのが、ステロイドです。
疾患活動性を根拠に治療がなされます。
(1)全身炎症症状 (2)赤沈値亢進 (3)血管虚血症状 (4)血管画像所見
初期量はプレドニゾロン(PSL). 0.5~1mg/kg/day x2~4w
→毎週 5mg減量(30mg/day まで)
→毎週2.5mg減量(20mg/day まで)
→月あたり1.2mgを越えない減量
→維持量:5-10mg/day (→off)
緊急度の高い場合や難治例の再燃時にはステロイドパルス療法(mPSL 1gまたは15mg/kgx3day)を施行します。
減量スピードが速すぎると再燃率が高くなります。再燃時は再度寛解導入治療を行い直すか、PSLを10mg増量しMTXなどの免疫抑制剤を追加します(米国)。
*免疫抑制剤
a.メトトレキサート(MTX)
TAに最もよく使われている免疫抑制剤です。米国では0.3mg/kg/w→最大25mg/wまで漸増。
ただし、MTXは血管病変の進行を阻止できない可能性があり、再燃が多いとされます。
b.アザチオプリン(AZA)
血管病変を抑えられないケースもあるものの、各国のプロトコルにおけるAZAの位置づけは高いです。
AZA 1-3mg/kg/dayが使用されています。
c.シクロホスファミド(CY)
もっとも古くからTAに使用され、しかも重症例に適用されることが多いです。CY 2mg/kg/day
d.ミコフェノール酸モフェチル(MMF)
各国で使用されていて有効例もみられますが、日本では適用はありません。少量から漸増されます。
e.タクロリムス(TAC)
少数の症例報告のみです。保険適用はありません。
f.シクロスポリン(CyA)
症例報告のみですが、有効例もあるようです。保険適用はありません。
*生物学的製剤
a.トシリズマブ(TCZ)
2017年8月25日25日保険適用
TAでは血清IL-6が上昇し、疾患活動性と相関することがわかっています。TCZは国産初の抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体です。他の免疫抑制剤で効果のなかった症例に対し有効との報告があります。
TNF阻害薬との有効性の差異はまだ明らかではありません。
*抗血小板薬アスピリン内服によって心虚血、脳虚血イベントの発症が有意に抑制されるとの報告があります。
〔観血的治療〕
観血的治療の適用、実施、術後の管理は膠原病内科医、心臓血管外科医、インターベンショナリスト、神経内科医などを含む学際的チームでの対応が要求され、また薬物療法などで疾患活動をコントロールした上で実施することが必要とされます。炎症のある時期に実施された場合の再手術率はコントロールされた状態での手術より高いとの結果があります。

近年PETやMRIなどの画像を中心とした診療技術の進歩により、早期に診断し内科的および外科的治療を行うことが可能になり、生命予後も大きく改善されてきました。

血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版) 抜粋 まとめ
Ⅱ. 高安動脈炎
Ⅲ. 巨細胞性動脈炎

血管炎・血管障害診療ガイドライン2016改訂版 日皮会誌:127(3),299-415,2017(平成29) 抜粋 まとめ

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 医学書院 東京 2012 抜粋 まとめ

ベーチェット病

ベーチェット病(Behcet’s Disease :BD)はChapel-Hill会議(2012)では種々の血管を侵す血管炎(Variable vessel vasculitis: VVV)という項目にCogan 症候群とともに分類されています。
しかしながらBDの病態が全て血管炎というわけではありません。真皮の細静脈や皮下組織の筋性静脈の血管を中心とした炎症性病変と毛包炎を中心とした抗中球性炎症性の疾患といえます。血管炎だけではなく血管炎を伴わない血管周囲性炎症病変がさらに血管外、毛嚢外にも波及し、多彩な皮疹がみられます。
 BDは口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状(毛嚢炎、ざ瘡様皮疹、結節性紅斑、血栓性静脈炎、紫斑、浸潤性紅斑など)
眼症状、外陰部潰瘍を主症状とする全身性疾患です。トルコを始め、地中海地方から、中近東、中国北部、朝鮮半島、日本を中心とした地域、北緯30~45度のいわゆるシルクロードに一致する地域に好発するために”シルクロード病”とも呼称されます。
本邦の患者数は約2万人(医療受給者証保持者数)です。
【病因】
その発症原因はいまだに不明です。MHCクラスⅠ分子のHLA-B51抗原を有する人に好発することから、HLA遺伝子が発症に何らかの関連を有すると想定されています。またBD患者の口腔内ではStreptococcus sanguisの陽性率が高く、この抗原に対して過剰な免疫反応が惹起されて発症すると考えられていますが、詳細は不明です。その他にヘルペスウイルス、パルボウイルスその他の環境因子の関与も想定されています。
【皮膚症状】
1)結節性紅斑様紅斑・・・下腿が主ですが、前腕にも生じます。1週間程度で消退します。皮疹の中で最も頻度が高いとされます。
2)血栓性静脈炎・・・有痛性皮下索状結節・紅斑として触れます。1~3週間程持続します。下肢が多いですが、時に上肢、体幹にも生じます。(移動性、遊走性静脈炎)
3)毛包炎~ざ瘡様発疹・・・顔面・体幹に生じます。一般のニキビと異なり非毛包性でも生じ、顔、胸、背以外のニキビ好発部位以外にも生じます。このような場合は診断価値が高いとされます。また注射部位に一致して小膿疱を生じます(針反応)。
これら以外にも浸潤性紅斑や紫斑、水疱、Sweet病に似た浮腫性紅斑、壊疽性膿疱など多彩な発疹を生じます。
【皮膚外症状】
主症状
1)再発性口腔アフタ性潰瘍・・・境界明瞭で10mm以下の潰瘍で紅暈をもち、疼痛があります。口唇、歯肉、舌などに生じます。約10日で自然治癒し、瘢痕は残しませんが繰り返し再発します。約6割で初発症状として始まります。
ただ、口腔アフタはエリテマトーデスなど他疾患でも、また健常者でも生じうるためにBDに特有ではありません。国際診断基準では年3回以上できることが必須条件となっていますが、前記の理由のために日本の診断基準では主症状ながら必須とはなっていません。
2)陰部潰瘍・・・口腔アフタより特異性が高いとされます。男性では陰嚢に、女性では小陰唇に好発します。また膣、子宮頚部に大型の潰瘍を作り、激痛があり、瘢痕を形成することもあります。肛囲、陰股部に生じることもあります。通常1~2週で治癒します。
3)眼症状・・・ブドウ膜炎を発作的に繰り返すのが特徴です。炎症は前眼部にとどまる虹彩毛様体炎と後眼部まで及ぶ網膜ブドウ膜炎型があります。発作時には結膜充血、眼痛、視力低下、視野障害などをおこし、かつては失明に至るケースもありましたが、近年は治療の進歩や軽症化のために減少しています。HLA-B51陽性者では重症化し易いとされます。
副症状
1)関節症状・・・四肢、手足の関節炎(痛)を起こし発赤、腫脹を伴いしばしば歩行困難となります。
2)副睾丸炎・・・頻度は少ないもののBDに特有であり、再発性の睾丸腫脹と疼痛が特徴です。
3)神経症状(神経型BD)・・・約14%の患者に見られます。男性や喫煙者に多いとされます。急性型と慢性型があり、前者では髄膜炎、多発性脳神経炎を起こし、後者では精神症状や認知症、小脳失調、片麻痺などを生じます。
4)腸管病変(腸管型BD)・・・約25%にみられます。回腸末端から盲腸に好発します。日本人に多くトルコでは少ないです。眼病変やHLA-B51の頻度が少ないのが特徴とされます。腹痛、下痢、下血などの症状を呈し、腸管穿孔例では手術を要します。
5)血管病変(血管型BD)・・・約8%にみられます。大~小型の血管に病変を生じえますが、上下大静脈、腹部大動脈、肝静脈、大腿動静脈など比較的大きな血管が障害されます。静脈がより障害されやすく、下肢の深部静脈血栓症、浅在性血栓性静脈炎を生じやすいとされます。動脈では時に動脈瘤を形成し、その破裂は致命傷となります。
【検査所見】
特別なものはありません。参考所見として、
(1)針反応陽性 20~22Gの比較的太い針を用いる事。活動期に認められる事が多い。中近東では約半数に陽性であるが、本邦では陽性率は少ない。
(2)炎症反応 赤沈値の亢進、CRP陽性、WBC増加、補体値の上昇
(3)HLA-B51の陽性(約60%)、A26(約30%)
(4)病理所見
(5)神経型・・・髄液の細胞増多、IL-6増加、MRI画像所見
【病理所見】
BDの皮膚血管炎は静脈炎で、好中球を主体とした好中球性血管炎とリンパ球を主体としたリンパ球性血管炎が混在しています。また血管炎所見のない、好中球やリンパ球性の炎症反応も混在してみられるのがBDの組織所見の特徴といえます。急性期の結節性紅斑様皮疹では、中隔性脂肪組織炎で、浸潤細胞は多核白血球と単核球です。
【診断】
厚労省の診断基準が用いられています。
1.主要項目
(1)主症状
⓵口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
⓶皮膚症状
➂眼症状
⓸外陰部症状
(2)副症状
⓵変形や硬直を伴わない関節炎
⓶副睾丸炎
⓷回盲部潰瘍で代表される消化器病変
⓸血管病変
⓹中等度以上の中枢神経病変
(3)病型診断のカテゴリー
⓵完全型:経過中に(1)主症状のうち4項目が出現したもの
⓶不全型:
(a)経過中に(1)主症状のうち3項目、あるいは(1)主症状のうち2項目と(2)副症状のうち2項目が出現したもの
(b)経過中に定型的眼症状とその他の(1)主症状のうち1項目、あるいは(2)副症状のうち2項目が出現したもの
⓷疑い:主症状の一部が出現するが、不全型の条件を満たさないもの、及び定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの
⓸特殊型:完全型または不全型の基準を満たし、腸管型、血管型、神経型の症状を呈するもの

なお、副症状を呈する疾患は極めて多数(参考事項として列記してある)あるので診断には慎重でなければならない、とあります。
重症度分類はⅠ~Ⅴまであり、Ⅱ度以上が医療費助成の対象となります。
【治療】
厚労省指針では効果的な治療法は未確立とあります。ただ、予後に関する項目で、以下のように書いてあります。
「眼症状や特殊病型がない場合は、一般に予後は悪くない。眼病変は、かつては中途失明に至る主要な疾患の一つであったが、インフリキシマブが使用されるようにより、大きく改善している。腸管型、血管型、神経型に対してもTNF阻害薬が保険適用となり、今後、これらの難治性病態の治療成績の向上が期待される。」

特殊型、全身性の治療は専門書に譲るとして、一般的には生活上は、口腔内の衛生、齲歯、歯肉炎の治療を推奨し、安静、ストレスや過労を避けることが大切です。
口腔内アフタや陰部潰瘍にはステロイド軟膏の外用、眼症状にはステロイド点眼、局注を行います。
また発熱、関節痛などに対しては、NSAIDs、コルヒチン、免疫抑制剤(シクロスポリンなど)やステロイド剤内服などが使われます。血管型や血栓性静脈炎には抗血栓・抗凝固薬(ワルファリンなど)が使用されます。
さらに重症なケースでは上記のようにTNF阻害薬(インフリキシマブ、アダリムマブ)も保険適用となっています。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 東京 医学書院 2012 からの抜粋 まとめ

参考文献

血管炎・血管障害診療ガイドライン2016改訂版 日皮会誌:127(3),299-415,2017(平成29)

ベーチェット病の皮膚粘膜病変診療ガイドライン 日皮会誌:128(10),2087-2101,2018(平成30)

血管炎症候群の診療ガイドライン 2017改訂版 日本循環器学会

皮膚科学 第9版 著・編 大塚藤男 原著 上野賢一

厚生労働省 指定難病 56 ベーチェット病
厚生労働省ベーチェット病診断基準(2010年小改訂)

川崎病

川崎病は1967年川崎富作が「急性熱性皮膚粘膜リンパ腺症候群」として報告してから、同様症例の累積により独立疾患として認められ、一般的に川崎病又はmucutaneouslymphonode synderome とよばれるようになりました。
その病態は中小血管炎で、チャペルヒル会議でも中型血管炎の項目で、結節性多発動脈炎と共に同じ範疇に位置づけられています。川崎病で他の血管炎症候群との際立った差異は病変の局在性です。冠状動脈の強い炎症性血管炎といえます。
川崎先生は千葉大卒業後、日赤医療センターでこの症例に出会いました。それは1961年の1月のことだったとあります。それ以前は同様の症例はスティーブンス・ジョンソン症候群やしょう紅熱と診断されることがよくあったそうです。しかし水疱、粘膜疹を伴うことはなく、またA群溶連菌も検出されず、抗生剤も効きませんでした。同様の7例を経験した後に「非猩紅熱性落屑性症候群について」との題名で学会発表しています。(かつて川崎先生の講義を聴講して、そのたゆまぬ努力、臨床医としての眼力に深く感銘した記憶があります。)
同症はその臨床的な特徴から上記のように急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(acute febrile mucocutaneous lymph-node syndrome : MCLS)とも呼ばれています。その本態は全身性の血管炎とされるもののその病因はなお不明です。
【病因】
現在までに様々な説が発表されていますが、いずれも確証のあるものではありません。ある種の細菌・ウイルス・リケッチャ・真菌・化学物質・環境因子などの侵入をきっかけに生体が過剰反応をして血管炎を起こすと想定されています。時に流行の年度があり(1979,1982,1986年)、また近年毎年発症が1万人以上と増加傾向にはありますが、明確な感染性の徴候はなく、診断精度の上昇による見かけ上の増加との説もあります。
また本症はアジア人、特に日本人での報告が多く、その発症に遺伝的体質が関与しているとされています。
近年、GWASなどの遺伝子解析などにより疾患感受性遺伝子も同定されつつあるようです。
【組織所見】
全身性の血管炎ですが、主に中型・小型時に大型動脈を侵す急性の壊死性血管炎像を示します。冠状動脈がしばしば侵されます。中膜の水様性変化と内・外弾性板の一部の破壊により脆弱化し、血管内圧特に拡張期圧に抗しきれなくなる結果、膨張・拡張し、重症例では動脈瘤を形成します。
【症状】
85%が4歳以下で男女比は1.4:1と男児に多く発症します。
主な臨床症状は次の6つで、5つ以上がみられた場合と、4つの症状のみでも冠動脈瘤がみられた場合は定型的な川崎病と診断します。全ての症状が揃わない不全型とも呼ばれるタイプも2割前後存在するそうですが、これらが必ずしも軽症であるとはいえないことは注意すべきです。
1)原因不明で5日以上続く発熱(38度以上) 但し、早期の治療が開始されて解熱した場合も含まれます。
2)発疹・・・2~4病日より、全身どこでも不定形の発疹が出現します。多形滲出性紅斑様、麻疹様、猩紅熱様、風疹様、地図状の大きな蕁麻疹様の多彩な発疹が出現し、または出没します。ただ多形滲出性紅斑のような水疱の形成はありません。BCG接種部位(特に接種後4~6ヶ月)に発赤、痂皮、時に水疱を形成するのが特徴的とされます。時に乾癬様皮疹をみることがあります。
3)両側眼球結膜の充血・・・85~90%にみられますが毛細血管拡張のみで炎症症状はみられず、眼脂はみられません。ウサギの眼のように赤くなり診断的価値が高いです。
4)口唇の発赤、乾燥、亀裂、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤は90%にみられ、イチゴ舌もみられます。
5)四肢の変化・・・急性期には手足、指趾端の紅斑がみられ(90%)、手足のテカテカ・パンパンと腫れた硬性浮腫(75%)がみられます。これは手指で押しても圧痕は生じません。回復期(第10~15病日)には指趾端の爪囲より膜様落屑を生じ(95%)、手袋・靴下が脱げるように剥げ落ちます。約1か月で皮膚症状は治癒しますが、爪に横溝を残します。
6)急性頚部リンパ節腫脹・・・病初期に発熱とともに出現し、しばしば片側性です。有痛性です。拇指頭大からさらに大きく腫れますが自壊はしません。化膿はしません。
7)その他の症状・・・消化器症状(下痢・嘔吐・腹痛・胆のう肥大・麻痺性イレウス・軽度黄疸)、咳・鼻汁、関節痛、髄膜刺激症状(痙攣、意識障害、四肢麻痺、顔面神経麻痺)
【冠動脈障害】
当初、川崎病は比較的予後の良い疾患と考えられていましたが、統計が取られるようになると重篤な心疾患により死亡するケースもあることが分かってきました。
急性期に70~80%に心障害が起こり、25%で冠動脈瘤を生じ、その一部が虚血性心疾患や心筋梗塞(1.9%)を起こし突然死するケースもあります(0.9%)。
急性期に冠動脈に血管炎が生じ、その起始部(とくに左冠動脈の左前下行枝と左回旋枝の分岐にできやすい)に動脈瘤が生じやすいとされています。血管炎は1)血管炎のみで治まる 2)血管の軽度の拡張(瘤なし、通常3mm以下) 3)瘤の出現の3つのケースにわけられます。1)2)のケースでは冠動脈病変に関しては長期的にもほぼ問題がないとされています。
通常の冠動脈は2mm以下ですが、10mm以上の大きな動脈瘤ができることもあります。その中に血栓ができ、心筋梗塞を生じる危険性も増してきます。径7mm以上では1年以内に心筋梗塞を起こすリスクが高くなるとされます。また4mmを超すと急性期を過ぎた後に血管壁が肥厚し血管内腔が狭くなり、心筋虚血がでるリスクもあります。
【検査所見】
特異的な血液検査所見はありません。炎症を示す赤沈値高値、白血球増多、核左方移動、血小板増多、CRP陽性、肝機能異常、α2グロブリン増加、低アルブミン血症、貧血、蛋白尿などがみられるものの川崎病に特異的にみられるものではありません。
【治療】
急性期治療ガイドラインが作成されています。免疫グロブリン超大量(IVIG)単回投与+(ステロイド初期併用療法+アスピリンなどの抗凝固療法)が1st lineの治療となり、冠動脈瘤の発生を抑制することに寄与しています。ただこの治療に不応例も一部あり、その際は追加IVIG, IVMP, PSL、インフリキシマブ、ウリナスタチン、シクロスポリンA、血漿交換などが選択されています。この場合は冠動脈瘤の発生危険度が相当あがるとのことです。
詳しくはガイドライン、専門書などをご覧ください。
慢性期、遠隔期では狭窄性病変への進展抑制・冠動脈瘤内での血栓抑制に対する治療が必要とされています。
川崎病が報告されてから50年が経過し近年成人川崎病既往者の高齢化も進み、それらの人々における血管炎が動脈硬化の危険因子となることも危惧され、検討がなされています。

参考文献

皮膚科学 第9版 著・編 大塚藤男 原著 上野賢一

川崎病の発見・勉強会 一般社団法人日本血液製剤協会 第3回 1.川崎病の発見 2.川崎病の特徴 3.川崎病の冠状動脈障害とその検査法 4.川崎病の治療 5.川崎病の今後ー疫学と原因究明 川崎富作

川崎病急性期治療のガイドライン 日本小児循環器学会 平成24年改訂版

結節性多発動脈炎

結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa: PAN)はそもそも病理的な血管炎の始まりともいうべき名称で、1866年にKussmaulとMaierが剖検例において多臓器に分布する動脈の周囲に結節状の炎症がみられる疾患を見出し、結節性動脈周囲炎(periarteritis nodosa:PAN)という名称で報告したのがその嚆矢とされます。その後本症は動脈周囲のみならず、動脈全体の炎症であることが明らかになり、結節性多発動脈炎と呼ばれるようになりました。
さらに肉眼的に結節が確認できる(古典的)結節性多発動脈炎と、顕微鏡下でのみ血管炎が確認できる顕微鏡的多発血管炎(MPA)が含まれる概念となりました。その後ANCAが発見され、WG(GPA),CSS(EGPA),MPA 川崎病が独立した疾患として分離されてきました。さらにChapel-Hill会議(CHCC1994,2012)によって、PANは「中型動脈を主体に一部小動脈にも壊死性血管炎を認め、細動脈、細静脈、毛細血管(糸球体腎炎を含む)など小血管の炎症を伴わない全身性血管炎でANCAと関連のない血管炎」と定義されました。
これにより従来PANとして報告されてきた症例の多くはMPAと分類されることになり、統計も激変しました。現在では厳密なPANの診断基準に合致する症例は稀(年間発症率100万人あたり0.5人)となってきているそうです。
我が国におけるPANとMPAの比率は1:20程度との報告があります。
【病因】
欧米ではB型肝炎ウイルスの関与が指摘されてきましたが、本邦ではHBV感染の減少もあるためか、その関与はほとんどみられません。ヒトパルボウイルスB19, HIV, サイトメガロウイルスの関与も指摘されるものの明確ではなく、ANCAの関与もみられず不明です。
【臨床症状】
持続的高熱、体重減少、高血圧などの全身症状を伴って多彩な臓器症状がみられます。
1)皮膚症状(5~15%)・・・特に下腿に皮下結節や浸潤性紅斑、網状皮斑、蝕知可能な紫斑、水疱、潰瘍、指趾壊疽など多彩な皮膚症状を認めます。皮膚型PAN(cutaneous polyarteritis nodosa: cPAN)でも同様な症状を認めますが、全身型ではより潰瘍は大きく、多数出現し、急速に進展・増大する傾向があります。
2)腎症状(50%以上)・・・蛋白尿、血尿がみられ、しばしば初発します。腎動脈から葉間、弓状動脈が罹患し、高レニン血症を伴う高血圧を呈します。重症では腎不全に陥ります。MPAのような典型的な糸球体腎炎の像は呈しません。
3)腹部症状(15~50%)・・・小腸粘膜下・筋層の血管炎、腸間膜血管の血栓、肝臓・脾臓の梗塞をみます。これらにより腹痛、消化管出血、肝機能障害を認めます。急性胆嚢炎、虫垂炎で発症した例もあります。
4)中枢神経症状(20~30%)・・・脳梗塞、時に脳出血をみます。
5)末梢神経症状(50~70%)・・・神経栄養血管を障害し、単神経炎、多発性単神経炎がみられます。手足のしびれ、知覚障害、進行すると手足の運動神経も侵され、下垂手、下垂足を発症します。特に腓腹神経が侵されやすいとされます。
6)関節・筋症状(約80%)・・・左右対称性に関節・筋のこわばり、痛みを生じます。特に腓腹筋の症状は著明で同部からの筋生検で血管炎を認めることも多く見られます。
7)心・血管系症状(5~30%)・・・高血圧、虚血性心疾患、伝導障害、心外膜炎などがみられます。
8)呼吸器症状・・・頻度は低いものの間質性肺炎を認めます。
9)その他・・・ブドウ膜炎、虹彩炎、上強膜炎、眼底出血、中耳炎、副鼻腔炎、睾丸痛などがみられることがあります。
【検査所見】
炎症症状でみられるCRP、赤沈値高値、白血球増多、血小板増多などはあるものの特異的なものはありません。ANCA、 自己抗体も一般的には陰性です。
血管造影で腎動脈、腸間膜動脈、肝動脈で多発性動脈瘤、血管閉塞がみられることがあります。また四肢動脈の狭窄、閉塞を認めることもあります。
【病理所見】
腎、筋肉、神経、皮膚などの中小動脈の壊死性血管炎を認めることが診断につながります。腎動脈ではⅠ期変性期 Ⅱ期急性炎症期 Ⅲ期肉芽期 Ⅳ期瘢痕期に分類されます。皮膚小動脈では1)急性期(炎症初期) 2)亜急性期(炎症後期) 3)肉芽期(修復期) 4)瘢痕期に分けられます。
【診断】
厚労省アメリカリウマチ学会などの診断基準があります。厚労省基準では上記の主要症候2項目と組織所見によって確実例を決定しています。なお他の血管炎、とくにANCA関連血管炎、MPAが除外されたことによりPANと診断される症例が激減したことは先に述べました。なおPANに合致しながら、血管炎が細・小動脈に及ぶ症例も存在し、分類が困難なケースもあるとのことです。
【治療・経過】
寛解導入療法と寛解維持療法に分けられます。
寛解導入療法ではプレドニゾロンPSL(0.5~1mg/kg/day)を経口投与します。重症例ではステロイドパルス療法、それで不十分な場合はさらに血漿交換療法、シクロホスファマイド(CY)パルス療法、免疫抑制薬(アザチオプリン、メトトレキサート)を併用します。ガンマグロブリン、抗TNF-α抗体の有効例の報告もあります。通常PSL 1mg/kg/dayで4週間の初期治療を行い、治療開始時からIVCYまたは連日経口CY投与を併用します。IVCYは10~15mg/kg/回を3~4週間に1度 3~6回投与します。経口CYは1~2mg/kg/dayを用いますが、日本人では2mg長期は難しいそうです。免疫抑制剤使用に伴う易感染性に対処する必要性があります。
寛解維持療法では、再燃のないことを確認しつつステロイドを漸減し、維持療法(5~10mg/day)、アザチオプリンなどを併用します。また血栓溶解薬(ウロキナーゼ)、血管拡張薬(プロスタグランディン製剤)、抗血小板薬などを併用します。
発症3か月以内の急性期に適切な治療がなされれば予後は以前と異なり比較的良好とのことです。
予後決定因子としては(1)1日1g以上の蛋白尿 (2)尿毒 (3)心筋症 (4)腸管病変 (5)中枢神経系病変が挙げられています。

皮膚型結節性多発動脈炎
(cutaneous polyarteritis nodosa: cPAN)
1931年にLindbergが古典的PANと異なり、内臓などの症状を伴わず皮膚のみに限局したタイプがあることを報告しました。
その後多くの症例が報告され、独立した病型として確立してきました。しかしながら皮膚症状だけではなく、関節炎や末梢神経炎を伴うケースや、長期間観察後に全身型に進展したケースなども報告されています。
病因は一部c型肝炎、溶連菌感染の関与も示唆されるものの多くは不明です。炎症性疾患やミノマイシンなどの薬剤との関連も想定されています。
皮膚症状は全身型と比べて軽く、潰瘍も大きくはない傾向にあります。関節炎や末梢神経炎も皮疹部に限局するとされます。逆に遠隔、広範囲の場合は全身性のPANへの移行を注意する必要性があります。
検査所見で特異的なものはありませんが、aCL(抗カルジオリピン抗体)の高値、抗PS/PT抗体、抗LAMP-2抗体が高値であるとの報告があり、疾患マーカーとしての意義が検討されています。
治療としては、軽症例ではNSAIDs、循環改善薬の投与、治療抵抗例にはDDS、コルヒチンの投与を行います。循環障害の強い例やaPLの関与が考えられる例では循環改善薬を使用します。PANへの移行が考えられる例ではPANに対応した治療が必要となります。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 東京 医学書院 2012からの抜粋 まとめ

参考文献

血管炎・血管障害診療ガイドライン2016改訂版 日皮会誌 127(3),299-415,2017(平成29)

血管炎症候群の診療ガイドライン 2017改訂版 日本循環器学会 

皮膚科臨床アセット 5 皮膚の血管炎・血行障害 総編集◎古江増隆 専門編集◎勝岡憲生 東京 中山書店 2011

ANCA関連血管炎

小型・中型の血管炎は大きく免疫複合体(IC)が関与するものと、抗好中球細胞質抗体(ANCA)が関与するものに分けられます。ICが関与するものについては先に書きましたし、ANCAが関与するもので、本邦で多い顕微鏡的多発血管炎(MPA, MPO-ANCA関連)についても書きました。
ANCAが関与する血管炎にはMPO-ANCA関連血管炎とPR3-ANCA関連血管炎があります。我が国での頻度は8:1であり、欧米で後者が多いのとは大きく異なります。しかし少ないながらも本邦においてもPR3-ANCA関連の血管炎はありますのでそれについてもまとめてみたいと思います。
ANCA関連血管炎はpauci-immune vasculitisとされています。pauciとは少しの、わずかなという意味で、ANCA関連血管炎ではICはおおむね陰性ですが、陽性のこともあります。この理由として、ANCA,AECA,ブドウ球菌由来抗原がIC抗原となり得るものの血管壁に沈着したICは早期に浸潤細胞によって貪食され、結果的に蛍光抗体法は陰性になると考えられています。
CHCC2012での分類で小型血管炎はANCA関連血管炎には下記の3つが挙げられています。
1)顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangitis :MPA)
2)多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s) (granulomatosis with polyangiitis [Wegener’s] : GPA)
3)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss) (eosinophilic granulomatosis with polyangiitis [Churg-Strauss] : EGPA)
更にもう一つのカテゴリーとして免疫複合体性小型血管炎(immune complex small vessel vasculitis: immune complex SVV)が挙げられていますが、これについては既に書きました。

そこで今回はANCA関連血管炎の中で1)MPAほど発症頻度は少ないものの 2) GPA 3) EGPAについて書いてみます。

🔷 GPA[Wegener’s] 多発血管炎性肉芽腫症
以前はWegener肉芽腫症と呼ばれていましたが、CHCC2012では、人名を冠した病名(エポニム)を避けて病因や病態に基づく記述的な病名に名称変更するよう推奨されました。
それにより、多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s)と変更されました。なお新名称が周知されるまでの間、新名称の後ろに旧名称をカッコ書きで追記するとされています。
1939年ドイツの病理学者Wegenerが1)上気道および肺の壊死性肉芽腫 2)全身の中・小型血管の壊死性肉芽腫性血管炎 3)壊死性半月体形成腎炎の3つの病理的特徴より独立疾患として報告したのに始まります。(1931年にドイツの医学生Klingerによる報告例あり)。
近年本症の疾患活動期にはPR3-ANCAが90%以上陽性で、しかも疾患活動性、病勢を反映することが明らかになり、これが自己抗体として病因に関与していると考えられてきています。
【病因】
鼻腔や口腔など上気道の感染症をきっかけに例えば黄色ブドウ球菌由来のスーパー抗原と自己抗体であるPR3が交差反応することで免疫反応を惹起、進展することが考えられています。しかしその過程で樹状細胞、T細胞、接着分子の関与するデータもあるものの詳細はまだ解明されていないそうです。
【臨床症状】
上気道(E), 肺(L), 腎(K)の3つの病変がそろっている全身型と、腎症状を伴わないEまたはL,EL のみの病型の限局型に分けられます。
発熱、体重減少、などの全身症状に加え、関節痛、上強膜炎、多発神経炎、心虚血、消化管出血、胸膜炎などの症状もみられます。
1)上気道症状
初発症状としてほとんどの例に見られます。鼻閉、鼻出血、鼻漏などがあり進行すると鼻中隔穿孔なども生じます。また眼痛、ブドウ膜炎、中耳炎、難聴、嗄声、気道閉塞症状を呈することもあります。
口腔では難治性、持続性の潰瘍を形成し、出血斑を伴うイチゴ状過形成歯肉炎を生じます。
2)肺症状
咳、血痰、胸痛、呼吸困難などの症状を呈し、X線やCT像で浸潤影、空洞像などを認めます。
3)腎症状
血尿、蛋白尿を認め半月体形成腎炎、急速進行性腎炎から腎不全へと進行します。
4)皮膚症状
経過中半数以下と多くはありませんが、特に全身型で多く症状がみられます。主に四肢に隆起した紫斑、丘疹、結節、血水疱、膿疱、網状皮斑、潰瘍と多彩です。潰瘍は壊疽性膿皮症のような外観を呈することが多いとされます。最も多い症状は浸潤を触れる紫斑とされます。また皮膚科からの報告例では血水疱を伴って、多彩な皮膚症状をきたした例が多く、これらを見た時同症を鑑別として考慮の要があります。
【病理組織】
鼻粘膜生検で巨細胞を伴う出血性壊死性肉芽腫性病変、腎生検で半月体形成腎炎、皮膚生検で白血球破砕性血管炎あるいは血管外肉芽腫性炎症や肉芽腫が典型とされています。他の血管炎と異なって血管壁の周囲に組織球浸潤、ときに類上皮細胞多核巨細胞などによる肉芽腫を認めます。この場合は臨床的には結節を呈するとされます。
【診断基準】
厚労省では上記症状、組織所見検査所見などから確実例、疑い例などの診断基準を作成してあります。
確実例は
a)E,L,Kの1臓器症状を含め主要症状の3項目以上の例
b)E,L,K 血管炎による主要症状の2項目以上と組織所見の1項目以上の例
c)E,L,K 血管炎による主要症状の1項目以上と組織所見の1項目以上+PR3-ANCA陽性例
【治療】
以前は呼吸器合併症や腎不全などによって極めて予後の悪い疾患でしたが、早期診断を下し、病型、病期に応じた適切な免疫抑制療法を徹底的に施行することによって完全寛解例もでてきたそうです。
シクロホスファミドとプレドニゾロンによる併用療法が治療の柱になりますが、具体的治療法は内科専門書、血管炎ガイドラインなどを参照して下さい。近年はBリンパ球表面抗原(CD20)に対するモノクローナル抗体リツキシマブでの治療の有効性が明らかになってきています。

🔷EGPA[Churg-Strauss] 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
1951年ChurgとStraussによって気管支喘息が先行し、病理解剖組織所見で著明な好酸球浸潤を伴う肉芽腫性血管炎がみられた13症例をアレルギー性肉芽腫性血管炎として報告したのに始まります。
それ以来Churg-Strauss症候群と呼称されてきましたが、CHCC2012以降EGPAという名称に統一されたのは、GPAと同様です。
【病因】
好酸球の組織浸潤に伴って、その細胞質から脱顆粒された細胞毒性蛋白が血管や臓器へ沈着し、組織破壊をきたすことによって生じる炎症性疾患とされます。末梢血リンパ球に占めるCD4(Th2タイプのサイトカイン)の割合が高く、治療と共にこれらやIgE,好酸球、その活性に関与するとされるEotaxin-3の値が減少し、それは病勢の指標になります。
その誘発因子は特定されていませんが、多くの例で喘息やアレルギー性鼻炎の先行がみられ、おそらくアトピー素因のある人が種々の抗原刺激によりTh2リンパ球の活性化を受けて発症すると想定されています。そして炎症の修復過程で肉芽腫および肉芽腫性血管炎の像を呈するものと思われます。
喘息の治療薬ロイコトリエン拮抗薬との関連も、発症に関与するかの議論もあります。しかし現在ではステロイド治療薬から同剤への切り替えがきっかけで全身性ステロイドによって抑え込まれていた血管炎の症状が顕在化して、同剤が一見病気の発症の誘因のようにみられるとの見解だそうです。
【臨床症状】
1)先行するアレルギー性疾患
先にも述べたように、気管支喘息の先行が最も多いようです。しかしその重症度とは相関しません。またアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎もみられます。
2)好酸球の組織浸潤
全身の組織に浸潤しえますが、肺や消化器に浸潤し、好酸球性肺炎、抗酸球性胃腸炎を生じます。
3)全身性血管炎症状
発熱、倦怠感、易疲労感、体重減少などがみられます。臓器病変は血管炎によるものと好酸球浸潤によるものが混在しています。
1.多発単神経炎・・・下垂足が最も多く、下垂手もみられます。
2.皮膚病変・・・ANCA関連性血管炎のなかでは最も高頻度に(50~60%)皮膚症状がみられます。蝕知性紫斑が最も多いですが、蕁麻疹、紅斑、丘疹、結節、血痂、水疱、潰瘍、網状皮斑など多彩な症状を同時期にあるいは時期を変えて出現します。
3.肺症状・・・30~40%にみられ、X線でさまざまな肺浸潤像がみられます。GPAのように空洞化することは稀とされます。
4.消化器症状・・・肺と同様に多くみられます。腹痛が多く、下痢や出血を伴うこともあります。
5.心症状・・・好酸球浸潤による心筋炎、心内膜炎、冠虚血などがみられます。特にANCA陰性例に多く心不全や心筋梗塞も起こり、心症状の有無は予後に大きく関わってきます。
6.腎障害・・・GPAやPAN(結節性多発動脈炎)と異なり、一般に重篤な腎障害をきたすことは少なく、巣状分節性糸球体腎炎の像をとることが多いようです。腎炎を伴う例ではMPO-ANCA陽性例が多いとされます。
7.その他の臓器病変・・・関節炎、関節痛、筋症状も半数以下ながらみられます。上強膜炎、中枢神経症状もみられ時として脳出血もみられます。
【検査所見】
末梢血好酸球増多は必発です。ただステロイド治療例、慢性例では低い場合もあります。
赤沈、CRP、リウマトイド因子、Th2サイトカイン(IL-5,IL-13,IL-2 receptor)、Eotaxin-3などは高値を示します。腎炎を伴う例ではMPO-ANCAが陽性でその値は病勢と相関します。
【病理所見】
1)組織への好酸球浸潤 2)肉芽腫性炎症 3)壊死性血管炎の3つですが、単独でみられることも共存することもあります。好中球浸潤が主でMPO-ANCA陽性で腎症をきたす好中球性血管炎の像から、逆にANCA陰性で好酸球浸潤が主で腎症をきたさない好酸球性血管炎の幅広い病理組織像のスペクトラムを示しますが多くは両者が混在した中間像を示します。
【診断】
アメリカリウマチ学会では1)喘息 2)好酸球増加 3)単または多発神経炎 4)肺浸潤 5)副鼻腔の異常 6)血管外好酸球増加の6項目のうち4項目をみたせば、同症と分類するという基準を発表しました。この基準は臨床症状に重きを置き、病理組織所見が揃わなくても診断できるという簡便な方法です。厚労省では1998年に診断基準を作成しています。主要臨床所見、臨床経過の特徴、主要組織所見から判定するものです。これは先行する気管支喘息を診断の絶対必要条件とはせず、非定型例も早期診断することを可能にしたものです。
【治療】
EGPAはPANやGPAと比べて、ステロイド剤に良く反応し、重篤な腎障害は少なく、予後は比較的よいとされます。しかし心不全や消化管出血で予後不良なケースもあり、また多発単神経炎は残存することも極めて多いとのことで注意が必要です。
ステロイド、シクロホスファマイドの併用が施行されますが、アザチオプリンなども併用されます。また難治例では免疫グロブリン大量療法なども施行されます。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 東京 医学書院 2012 からの抜粋 まとめ

参考文献

血管炎・血管障害診療ガイドライン2016改訂版 日皮会誌 127(3),299-415,2017(平成29)

皮膚科臨床アセット 5 皮膚の血管炎・血行障害 総編集◎古江増隆 専門編集◎勝岡憲生 東京 中山書店 2011