初登攀行 松本竜雄 著

唐突なようですが、小生の若かりし頃の山への憧れの中で、多く影響を受け、もう山に登らなくなっても心のどこかに引っかかっている本の一つです。
コロナで散歩する位の運動しかしなくなってなまり切った体でもどこかにうずうずとする青春の山への渇望を思い起こさせてくれます。その本を久しぶりに紐解いてみました。
序は小生の畏敬する上田哲農による推薦文、解説は雲表倶楽部の先輩で日本で初めて埋め込みボルトを制作した望月 亮氏によって書かれています。そこには当時の登山界、彼らの立ち位置などが簡潔に書かれていますのでその概略を記します。
「彼は同じ都立本所工業高校の同窓生でもあり、雲表倶楽部に遅れて入会してきた。昭和30年当時は学校山岳部が主流であり、いわゆる街の山岳会は傍流、低迷期だったが、学校エリートの極地法の登山に対し、厳冬期における3000メートル峰の登攀、より困難な岩壁登攀を目指す機運が芽生えていた。入会後メキメキ頭角を現した彼は32年小生(望月氏)の作成した埋め込みボルトを使って谷川岳一ノ倉沢コップ状岩壁正面の初登攀を成し遂げ人工登攀の幕開けを先導した。この時期精力的な初登攀を行い、谷川、穂高に数多くのルートを開拓した。また厳冬期の穂高の継続登攀も敢行した。さらなる高みを求めて第二次RCCの一員としてカフカズ、パミールの山々も目指した。」とあります。
小生が山に目覚めたのは昭和40年代で大部後になりますが、谷川、穂高、剣など彼の登攀記録も憧れの一つだったように思われ、当時の山好き、特に岩登り愛好者が辿った道のその一部にでも触れたことで、更に臨場感をもって本の内容が迫ってきます。
第一部の高みへの序曲では、氏が岩と雪に憑かれるようになった経過が述べられ、
第二部 初登攀行では本の表題ともなった数々の登攀が述べられています。そのほとんどが1958年(昭和33年)に集中しており、その中に日本での人工登攀の歴史を塗り替えたともいえるコップ状岩壁での埋め込みボルトの使用、緑山岳会との初登攀争いの顛末も書かれています。当時一般マスコミでも取り上げられるほどのニュースだったそうですが、実は彼自身は安易なボルト使用には反対で、その岩壁の弱点をついたクラシックなルート選定にこだわっていたようです。単なるアブミの架けかえによる岩登りはアルピニズムの堕落と主張しています。昭和33年の初登攀では年間最多数で、しかもその中にはコップ状岩壁をはじめ、冬の谷川岳一ノ倉沢烏帽子沢奥壁、中央稜、谷川岳一ノ倉沢滝沢第2、第3スラブ、穂高滝谷C沢右俣奥壁と日本の最難関の壁の初登攀を成し遂げています。
第三部 新しい困難を求めて
更に困難な登攀の可能性を求めて、冬の穂高屏風岩から北尾根、四峰正面、前穂への継続登攀を敢行し、一ノ倉沢コップ状正面岩壁の冬季初登攀も夏同様に緑山岳会と共同で成し遂げました。氷壁で立ったままのビバークの記述は壮絶です。一ノ倉沢の最後の課題とされる衝立岩正面岩壁も完登しました。
そんな彼もしばらくのブランクの後、RCCⅡ同人たちの誘いをうけ、日本の岩場のグレード・ルート図集の編集に参画し、またカフカズ(コーカサス)山群へその活動の場を広げていきました。

同時代に貪欲に初登攀に命をかけた多くの岳人がいたでしょう。中でも衝立岩の南博人、吉尾 弘氏などの記録は瞠目すべきものでした。吉尾 弘 著 「垂直に挑む男」は丁度松本氏と重なり合うような初登攀の記録や継続登攀の記録に溢れています。
その吉尾氏も滝沢リッジで帰らぬ人となりました。

彼らの青春の記録を読み返しているとまるでその場にいるような、ドキドキ感、高揚感
を感じさえします。若い頃の著書ゆえに、高揚し、時には直情的な記述もみられますがそれもかえって山に向き合う真摯なひたむきな真情を伝えてくれます。
山登り、特に岩登りに興味のない人にとっては訳のわからない本でしょうが、興味ある人にとっては心躍る読み物だと思い、お勧めの本です。

追記
特にコップ状岩壁は小生が初めて先輩に谷川岳に連れて行ってもらい、烏帽子凹状岩壁からの継続登攀し、c沢右俣奥壁では岩の落石をかいくぐりながらの登攀、中央稜での雪の敗退など心に残るものがあり、何度読んでも心惹かれます。

肝斑の治療

先日の、WEB学会でシミ治療のセッションがありました。講師は葛西健一郎先生でした。
本邦のレーザー治療では豊富な実績をもち、シミの治療の本も上梓している専門の先生です。実際の講演会でも何回か聴講したことがあり、明快に単刀直入に話される先生という印象を持っていました。
その先生の話なので、オンデマンドのセミナーを聴講してみました。その時の内容と日皮会誌のセミナリウムの記事を中心に主に肝斑の治療のことについて書いてみます。
肝斑についてはこのブログでも過去に詳しく書きました(2013.11.28)。相当前のものですが、基本的には変わっていないと思いますので臨床症状、組織診断、原因、悪化因子、鑑別診断などの詳細は今回は省きます。
その後2017年7月17日には葛西先生が皮膚科医会でシミの治療について詳しく講演して下さった内容をブログに書きました。重複することも多いかもしれませんが、参考にして下さい。

レーザートーニングの真実
新・皮膚科セミナリウム◎皮膚レーザー治療の常識、非常識 日皮会誌:129(8),1627-1632,2019(令和1) 葛西健一郎(葛西形成外科)
【要旨】肝斑に対するレーザートーニング(LT:低フルエンスQスイッチヤグレーザー治療)は、繰り返し治療続行中には色調軽減効果があるものの、長期予後を改善するエビデンスはない。また、LTの効果発現機序について総合的に説明した論文はない。さらに、LTを受けたことによって、肝斑増悪や難治性白斑形成といった合併症を発症した患者が一定数以上存在する。以上より、肝斑に対するLTは、その作用機序が科学的に説明され、予後を改善することが証明され、副作用を軽減できるプロトコルが完成するまで、一般医療機関では施行しないことが望ましい。日頃から肝斑治療やレーザーに関与していない皮膚科医であっても、LT問題の真実を理解したうえで、患者や学会にたいして適切な行動を取ることが望まれる。

葛西先生の講演の要旨は上記の通りですが、本論内容の補足と自分なりの解釈を若干付け加えて書いてみたいと思います。
疾患には器質的な疾患と、機能的な疾患があるが、代表的な顔のシミ、老人性色素斑、ADM:Acquired dermal melanocytosis(後天性真皮メラノサイトーシス)、肝斑にもそれが当てはまるといいます。すなわち前2者が器質的疾患でそれぞれの責任細胞をレーザーで完全除去すれば完治するが、肝斑は皮膚の異常な炎症亢進とメラニン産生があるものの、責任細胞がないのでレーザーで完治できない。LTでメラノゾームを破壊しても肝斑を治療に導く理由がないと述べています。
(ADMなどに対するQスイッチルビーレーザーの治療についても従来よりも高めのフルエンス(9J/cm2以上)でしっかり照射し、施術後ダウンタイム(絆創膏を貼らなければいけない期間)はしっかりカバーすべきことなどの治療のチップスを述べられましたが、そのことについての詳述は今回は割愛します。

ちなみにシミの診断、治療で本邦の第一人者であった元帝京大学教授の渡辺晋一先生は次のように述べています。
「シミ」を主訴に来院する患者をみてみると、肝斑の患者は少なく、大部分は老人性色素斑あるいは扁平な脂漏性角化症で、なかには遅発性の太田母斑や色素性母斑の場合も少なくない。また化粧品かぶれなどの炎症後色素沈着または固定薬疹などを「シミ」と称する人もいる。また彼は太田母斑や太田母斑類似の種々の真皮メラノサイトーシス病変ーー眼瞼周囲、両側遅発性など――があるし、国際的にはADMは認められていないので、顔面に生ずる真皮メラノサイトーシス(facial dermal melanocytosis:FDM)と総称したほうがよいと提唱しています。ただこの名称もまだ定着しているとはいえません。従って以降従来のADMとして話を進めます。

肝斑に対するLTは、反復治療中は色素減弱効果があることは間違いなさそうです。その機序はメラノゾームの減少、メラノサイトの樹枝状突起の短縮、各種サイトカインの変化などが想定されていますが、中断後の変化や副作用の問題では文献により意見が分かれていて混乱状態とのことです。その原因は多くあるが、科学的に治療効果が証明されていない点、そもそも診断が間違っていて混在する老人性色素斑やADMと思われる例を肝斑が治ったとしている文献すら散見されるそうです。
LT治療を受けたことによって肝斑の色素増悪例は長期の保存的な治療法で改善していくものの、難治性のまだらな白斑をきたした例での治療は困難な例が多いとのことです。
著者はLT否定派ではあるが、肝斑治療のベテラン医師が場合により特殊療法としてLTを用いるのを全面的に否定するものではない、と述べています。経験によりうまく副作用に対応できると思われます。問題なのは業者に勧められるままに画一的に無自覚にLTを行っているケースだと言います。著者はそこからの多くの肝斑治療の副作用例を見てきたといいます。

肝斑は30歳代からの女性に多くみられ、紫外線の影響を大きく受けます。また炎症後色素沈着を来しやすく、熱心に顔面のケアをし過ぎる(擦りすぎる)傾向のある日本人に特に多くみられる印象を受けます。大体の患者さんがトランサミン(トラネキサム酸)を希望して来院されますが、同剤は日本では肝斑の治療薬として発売されていますが、海外では肝斑の治療薬としては認められてはおらず、PMDA審査報告書をみるとその有効性に疑問が持たれても致し方ない内容とのことです。またトランサミンは血栓性疾患、動脈硬化、心臓疾患があると使えませんので注意が必要です。
美白剤はメラノサイト(色素細胞)が作り、隣接する表皮細胞にメラニンを受け渡し蓄積していく過程のカスケードのいずれかに作用する物質からなります。チロジナーゼ活性阻害物質にはハイドロキノン、アルブチン、コウジ酸、ルシノール、アスコルビン酸誘導体、ロドデノールなどがあります。この中でロドデノールによる白斑、皮膚障害はマスコミにも取り上げられ社会問題、訴訟問題にも発展したことは皆さんご存知だと思います。ハイドロキノンにしても毛染めかぶれとの交叉過敏性や長期使用ochronosis (丘疹や斑状の褐色色素沈着)もあり、3~4か月で一旦休止した方が望ましいとされます。

肝斑は顔のシミの中では頻度は少ないとはいえ、女性にとって悩ましい症状であることは論を待ちません。渡辺先生も葛西先生もLT否定派ではありますが、実際に困っている人は多くいることかと思われます。
葛西先生も慣れた医師によるLTを完全には否定していません。要は診断を正確につけ、顔面の「シミ」の症状をよくわかり、各治療の功罪を熟知した医師が、個々の患者に真摯に対応することが最も大切な事かと思われました。
またその前提として肝斑は機能性の疾患で、紫外線の影響を最も受け、季節性の変動のあること、擦るなどの刺激をさけ標準的なスキンケアを行うことがベースとして最も大切なことを周知させることが重要かと思われます。

また一方で、現在評価の定まらない肝斑治療(美白外用剤や内服治療薬、レーザー療法など)が、将来的には高エビデンスの評価を確立して一般医にも納得できる情報が得られることを望みたいと思いました。

参考文献

新・皮膚科セミナリウム◎皮膚レーザー治療の常識、非常識
1.顔面の色素病変(シミ)の鑑別とレーザー治療 渡辺晋一(帝京大学、浦和スキンケアクリニック) 日皮会誌:129(8),1619-1625,20198(令和1)

2.レーザートーニングの真実 葛西健一郎(葛西形成外科)
日皮会誌:129(8),1627-1632,2019(令和1)

皮膚科臨床アセット11 シミと白斑 最新診療ガイド
総編集◎古江増隆 専門編集◎市橋正光 2012 東京 中山書店

WEB学会

新型コロナウイルスの蔓延のために、今年の日本皮膚科学会はWEB開催となりました。年初めはまだ京都での現地開催とWEB開催のハイブリッド方式を目論んでいたのが、どんどん感染が拡大し、残念ながらWEB開催となった、との経過説明が会頭の慶應大学教授天谷雅行先生の会頭講演でありました。
さて、実際のWEBオンライン学会は勿論初めての試みであり、主催者側も参加者側も戸惑いはあったでしょうが、新たな発見もあったのではないでしょうか。
全体の評価、総括などは主催者をはじめ、それぞれの専門の先生方がいずれ述べられるかと思います。
ここは、個人的な感想を述べてみたいと思います。
ステイホームでの講演は期待と若干の不安で待機していましたが、無事始まりました。概ね聞き取りやすく、演者も視聴者に聞き取りやすく、分かりやすくスライドを作り、話しているのだろうとの印象を受けました。
学会場のように前の人に画面が遮られることもなく、またくしゃみなどしても顰蹙をかうこともなく、リラックスして聴講できるのが思わぬ気づきでした。
また、オンデマンドのセッションでは、時間を気にせずにいつでも見られます。休日の朝は、寝床の中でiPadからでも見られ、また夕方はグラスを傾けながら、画面を見るといった一寸不謹慎な参加もしました。
一寸外出時にはiPhonに切り替えたりと自由度の高さも新たな発見でした。
便利な一面、やり方に慣れないせいもあり、iPadのどこかをクリックした拍子に画面が飛んでしまい、しばらく再度ログインできないこともありました。
またセッションによっては予定時間より短く終ったり時間を過ぎても終わらないセッション(海外からの熱のこもったセッション)もありました。
オンデマンドのセッションを日曜日の夜に見ようと取っておいたら、大会は終了しました、との表示が出て失敗したこともありました。
一番のトラブルは土曜日の午後にやってきました。午後の始まりのセッションは皆さんがログインを集中したせいか一時ログインできないトラブルが続きました。ややあって学会事務局から暫くログインを待って、複数の機器でログインはやめて、と連絡が入りましたが、ご多分に漏れず小生もあたふたし、iPad,パソコンとアクセスしようと色々いじってしまっていました。今回のこのトラブルは今後同様な事態に対応する教訓になるかと思いました。
WEB学会については、高齢者や子育て中の先生方から、現地に足を運ばずに参加できたとの喜びのメールもあったといいます。ステイホームで、交通費、宿泊費も要らず参加できるのもメリットです。
新型コロナウイルスは人々に多大な苦痛と不自由を及ぼしていますが、今回のWEB学会は「災いを転じて福となす」の例えの如く、将来のオンライン学会のメリットも教えてくれたように思えました。コロナが終息しても、現地、WEBハイブリッド学会方式をとってもらえれば小生のような爺医にとっても有難いと思いました。
大会関係者の皆様、短期間の間にこのような大変な試みを成し遂げ、提供して頂きありがとうございました。

大会公式twitterでは、事務局、twitter民のホットな交流が交わされていました。これをきっかけに日皮会がますます飛躍しますように!

HPVワクチンの現況

新型コロナでこのところワクチンのことが多く報道されるようになってきました。
それとは異なりますが、HPV(Human papilloma virus; ヒト乳頭腫ウイルス)ワクチンのことについて書いてみたいと思います。
 子宮頸がんの95%以上はHPV感染が原因であり、HPVワクチンが子宮頸がんの予防効果があり、このワクチン投与が世界中の何万人もの子宮がんの死亡者の減少に貢献してきていることは広く知られ定説になっています。ただ、先進国の中で日本だけがワクチンの副作用の問題で投与がほぼ止まった特異な国であることはあまり周知されていないかもしれません。
先日、といっても昨年秋11月ですが医師会の講演会で日本のHPVワクチンの現況に関する講演がありましたので、日頃気になっていたものの正確な知識がなく、実情を知りたくて参加してみました。その時の講演を基に日本の現況について調べてみました。

「当院でのHPVワクチン勧奨と効果ーー片岡 正 先生 川崎市」
まず現況として、HPVワクチン接種が止まって(接種の積極勧奨の一時差し控えの通知)から5,6年がたちました。最近ワクチンの出荷量がやや増え、皆冷静に現況を判断するようになってきた、自民党においてもHPVワクチン接種再開を目指す議員連盟が発足した、ということを述べられました。ワクチンの発売、接種から副作用報道、勧奨中止までのいきさつを解説されました。
HPV(Human papilloma virus:ヒト乳頭腫ウイルス)はパピローマウイルス科のウイルスで現在100種類以上の遺伝子型が知られていて、多くはヒトにイボを生じますが、子宮頸癌の発癌に関与するものはHPV16,18型をはじめ約40種類が知られていて、そのうち特定の12種類がハイリスク型とされています。感染しても70~80%が無症状で1~2年以内に自然消退します。しかし、数年から数十年に亘る持続感染、何代にも亘る細胞分裂を経て100人に1人が子宮頸がんを発症するとされます。80を越える諸外国では性交渉を開始する以前の若い女性へのワクチン接種が公費助成により施行されています。
本邦では2009年12月にグラクソ・スミスクライン社により2価(HPV16,18型)HPVワクチンであるCervarixが発売され、子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業(公費助成)が開始されました。2011年8月にはメルク万有社(現MSD社)より4価(HPV6,11,16,18型)HPVワクチンであるGardasilが発売されました。
その後、「筋注は痛い」「失神する」「ワクチンで不妊になる」などの風評がSNSで出回るようになりました。実際に失神、転倒するケースもあり、
2013年3月 朝日新聞によるワクチン接種による副作用報道、痙攣の動画などがアップされ、厚労省は定期接種の中止、積極的勧奨の差し控えを通達し、
2013年6月 中止勧告をし、「ワクチン接種は積極的には勧めない、リスクとベネフィットを考えて受けて下さい。」との通達を出しました。
それ以降、実質的にはほぼ接種件数は0に近づきました。
機能性疾患として「心身の反応」「「機能性身体反応」と呼ばれました。
WHOではISRR:immunization stress-related responses 接種ストレス関連反応と呼んでいますが、HPVワクチンの推奨を変更しなければならないような安全性の問題はみつかっていない、というスタンスです。
接種前、直後・・・急性ストレス反応
接種後・・・解離性神経反応
WHOでは接種後反応の発生はあるものの、安全性の問題は認めらない、日本の状況については「若い女性が本来予防し得るHPV関連がんのリスクにさらされている日本の状況を危惧し、安全で効果的なワクチンが使用されないことに繋がる現状の日本の政策は真に有害な結果となり得る」と警告しています。
2014年 本邦では一部の学者がワクチン接種による「薬害」を主張し、2016年には国と製薬会社に対して集団訴訟を起こしました。
横市 名誉教授 横田俊平氏らはHANS:HPV vaccine associated neuropathic syndrome, HPVワクチン関連神経免疫異常症候群という概念を提唱しました。
4大症状 1.記憶・情動障害 2.感覚障害 3.運動障害 4.自律神経障害
(HANSは「脳症」であり、その4大症状は中枢神経由来である)
2015年には村中璃子氏がHANSについてのマウス実験の『捏造』を告発しました。(ただ、これは逆提訴されて裁判では敗訴となっています。)
マスコミの報道も世論への忖度、弱者の方へ付く、といった風潮があり、このワクチン投与は日本ではほぼ消滅しました。
その後、名古屋市でのアンケート調査(名古屋スタディー)ではHPVワクチンと24項目の症状の発症との間には有意な関係は見出されなかった、という報告がなされました。(名古屋スタディーは両者間の母集団の取り方、解析に問題があるとの意見もあり、村中瑠子氏の報告への評価は賛否があり、講師の先生は時系列で事実を述べられましたので、詳細の評価は各自原論文に当たって下さい。)
2016年には全国疫学調査(祖父江班)がなされ、結論として、
・HPV接種を受けていない人でも一定の割合で多様性の症状を呈するケースがあること。
・HPV接種とその後に生じた症状との因果関係は証明できない。
との報告がありました。
2016年4月には15団体、産婦人科学会がHPV接種推進に向けた声明を出しました。
国際的には、英米、北欧をはじめ欧米ではHPV接種による子宮頸がんの数が有意に減少し、更に一歩進んでいるオーストラリアでは2028年には子宮頸がんによる死亡者をほぼ0にできるシミュレーションを立てています。(翻って本邦は年間の子宮頸がん発生数が約1万人、死亡者数が約2800人とのことで亡くなる人は年々増加傾向にあります。日本産婦人科学会でもこのままでは日本は世界の流れから大きく取り残される、との危惧感を訴えています。)
WHO(新型コロナでその権威は地に墜ちた感はありますが、腐っても鯛)は日本の現状に対して、先にも述べましたが「ワクチン接種によって救われるはずの命を放置しているのは由々しき事だ」と苦言を呈しています。
またノーベル医学賞を受賞した本庶佑教授は「日本のHPVワクチン接種拒否は嘆かわしい」「マスコミはデメリットだけでなくメリットも報道すべきだ」と現状を批判しています。
ここ1,2年徐々にワクチン接種も個別に上向き傾向があり、日本産婦人科学会、自民党有志連合の推進運動にも関わらず、集団提訴もこともあり、厚労省は身動きがとれない状態のようです。古くはサリドマイド、スモンからエイズなどの薬害事件があり、腰が引けているようです。(今回のアビガンもそうかもしれません。)
このような状況の中でも、小児科、産科のクリニックの先生方の追加発言によると、HPVワクチンについての効果を疑っている人はほぼいないものの、副作用についてはあまり詳しく知らない人が多く、信頼する主治医の意見、説明、周りの人の意見を重要視しているとのことです。かかりつけ医は最も影響力のある存在で、直接話を聞いて副反応などの微妙な話も丁寧に説明すること、母子手帳をみて打つ対象の子供への声掛けなど現場での地道な努力が大切なことなどを述べられました。

海外では4価のみならず、9価のワクチン接種も始まっているようですが、日本では未承認とのことです。
徐々にワクチン接種数が増えていき、仮に以前のように定期接種勧奨ともなれば、やはり一定数の有害事象例はでてくると予想されます。
その際には、それを無視、隠蔽するのではなく、かといってマスコミはセンセーショナルに取り上げるのではなくそれらの人々への対応はしっかりとし、年々死なないでもよいはずの膨大な女性たちのことも考えて報道していただきたいものだと思いました。
ワクチン接種後に「多様な症状」が現れた際には全国に85医療機関の診療相談窓口もあるそうです。
積極的なワクチン接種が推進され、また万が一接種後に「多様な症状」が現れた人に対してもしっかりした医学的な対応がなされていくことが重要なことかと思われました。

なおHPVワクチン、子宮頸がんの専門的に詳しいことは日本産婦人科学会のHPに掲載してありますので関係、関心のある方は熟読されることをお勧めします。

子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために

星と嵐ー六つの北壁登行ー レビュファ

ガストン・レビュファ 著  近藤 等 訳 白水社 1955年
ガストン・レビュファ(と近藤 等のコンビ)といえば、ある世代以上の山岳愛好者にとっては、憧れの登山家であり、あるいは実際に親交があったり指導を受けたりした岳人もあるかと思います。
やや長くなりますが、近藤等のまえがきに彼の紹介がまとまって書いてありますのでそのまま引用します。
「彼は1921年5月7日、フランスの港マルセーユに生まれたのだが、幼少の頃プロヴァンス地方の山々を歩き、地中海の紺碧の海に聳え立つカランクの断崖を登っているうちに山の魅力にとりつかれるようになったのだった。十七歳の時、いよいよ本格的な山登りをはじめ、ラ・メイジュを登り、パール・デ・ゼクランを縦走した。二十歳の時には青年山岳研修所に入り、一番の成績で卒業、翌年ガイド免状を下附され、引きつづき、ラ・グラーヴの登山学校のコーチ、陸軍高山学校の教官となり、いよいよ山と離れられず、シャモニのガイド組合に加入し、山にその生涯を捧げることになったのである。
1947年に、国立登山スキー学校の創立者エドゥアール・フレンドと組んでグランド・ジョラス北壁のウォーカー・バットレス第二登に成功して以来、彼の頭上にはいくつもの初登攀の栄誉が輝き、1950年にはアンナプルナ遠征隊の主力メンバーの一人となって最高キャンプまで活躍したことは周知の通りである。その後も、彼はアイガーの北壁をこなし、グランド・ジョラスのウォーカー・バットレスをふたたび登るなど、実践面での活躍をつづけて今日に至っている。」
レビュファはこの本の執筆依頼を受けた時、単なる登攀記では満足しませんでした。
「『星と嵐』は、アルプスの最も大きな北壁を舞台に、山と大自然と、その諸要素と人間との結びつきを、ガイドの職業を通じて語った本なのです。そして、この場合、北壁そのものは私の作品の框にすぎません。それですから、私の本はテクニック的なものではなく、できるだけ人間味を出そうとしました。北壁ではビヴァークせねばなりません。そこで≪星≫という言葉が出てくるわけであり、また登攀が長いことからしばしば悪天候に襲われます。ここから≪嵐≫という言葉が出てきて『星と嵐』としたわけです。」
前置きが長くなりましたが、本書の六つの北壁登攀の概要を書いてみようと思います。

🔷グランド・ジョラスの北壁
1938年8月 リカルド・カシンらの3人のイタリア人パーティーがウォーカー稜を初登攀
1943年 ウォーカー稜をエドゥアール・フレンズと試登、嵐のため下降。
1945年 試登のテラスを越えて、75mの凹状岩壁も越えて、灰色のツルムの下でビヴァーク。翌日、オーバーハングしたチムニーでフレンズが25m墜落。垂直のフェースに転進したが、極度に難しかった。それでも翌朝薄い霧の中垂壁の登攀を再開し、正午最後の雪庇を越えて頂きに抜け出た。
🔷ピッツ・パディレの北壁 
1937年7月 リカルド・カシンらにより初登攀
1949年 ベルナール・ピエールと登攀。垂壁、オーバーハングではないがキメが細かく、うろこ状、凹状の壁に難儀した。ビヴァーク後、巨大なオーバーハングを越えてクーロアールを進んでいったが嵐につかまり、再度のビヴァーク。雨嵐、雷が続いた。翌日は嵐が過ぎ去り正午に頂上に出た。この登攀ではガイドとしての職責を果たし友への信頼が立証された、と述懐している。
🔷ドリュの北壁
1935年7月 ピエール・アラン レイモン・レイナンジェにより初登攀
1946年8月 ベルギー山岳会副会長のルネ・マリエに頼まれてガイド祭の前日の朝、モンタンベールの電車駅を出発し、午後から登攀を始めた。明日の朝のガイド祭に間に合うようにスピードを上げて800mの岩壁を登った。夜嵐が爆発してビヴァークになり、雪も降ってきたが、彼の9年もの思いを実現させ、援助できたことに満足していた。
🔷マッターホルンの北壁
1931年7月 フランツとトニー・シュミット兄弟により初登攀
1949年6月 レイモン・シモンと人と会わない、落石の少ないシーズン初めを選んだ。
この岩壁は難しさというより、危険だ。岩は脆く、氷は硝子のようだ。毎日のように岩雪崩が起こる。またテラスなどの確保点に乏しい。急峻だが垂直ではない。それでもクーロアールは岩雪崩の巣のようだった。それでそこを避けて登った。引き出しのような岩をだましだまし、1日かけて頂上まで登った。最後の陽光のなか夜の9時だった。
🔷チマ・グランデ・ディ・ラヴァレドの北壁
1935年8月 エミリオ・コミチ、ディマィ兄弟により初登攀
1949年9月 この北壁は高々550mであるが、最初の220mはもっぱらオーバーハングしている。ドロミチの名ガイドジノ・ソルダ、若いガイド、マゼッタと学生ローラン・ステルと登った。この壁はハーケンがベタ打ちになっていて、初登攀と比べると困難度が随分と低くなっている。季節の移り変わりの陽光があり秋も近かった。アルプスの登攀とはまた違った一日を楽しんだ。
🔷アイガーの北壁
1938年7月 ヘックマイヤー、フォルク、ハーラー、カスパレックにより初登攀
1952年 この北壁はクライネ・シャイデックを取り囲む愛すべき牧場から、まるで座興を醒まさせるかのように陰鬱に屹立している。太陽も射さずいつも日陰になっていて、わずかに頂稜を陽光がかすめている。1600mの壁はまるで病人の胸のようにげっそりとこけていて、常々霧のヴェールを纏っている。
(アイガー北壁の数々の悲劇、初登攀の記録が書かれていますが、当ブログで過去に書いたので省略します。)
フランス人の経験豊かな隊、ジャン・ブリュノ、ポール・アブラン、ピエール・ルルー、ギド・マニョヌの5人グループはアイガーの壁に取りついた。ところがヒンターシュトイサー・トラヴァースを過ぎて、上方から人の声が聞こえてきた。経験の浅いドイツ人2人組、その上にはオーストリア人のヘルマン・ブールとヨッホラーが先行していた。ブールの名前はかねてから知っていたので挨拶をしたが、返事はなく返してきたのはヨッホラーの方だった。彼らの進みが遅いのでドイツ人に先に行かせてほしいと願ったが拒否された。死のビヴァーク(ゼードルマイアーとメーリンガーが死んだテラス)を過ぎ、第3雪田を越えて≪欄干≫に達した。上の方でブールはルートを逸れたのか悪戦苦闘していた。北壁の中で3隊9人がビヴァーク態勢に入った。頂上直下300m地点にいたが嵐が近づいてきた。翌日ドイツ人の足元から崩れた岩がレビュファの頭を直撃した。ハーケンに指を突っ込んで咄嗟に横跳びしたおかげで大岩の直撃は避けられたが、断片にやられ頭から出血した。右肘も痛い。風雪のなか長いトラバース(神々のトラヴァース)を続け最後の雪田≪蜘蛛≫に達した。ドイツ、オーストリア隊と別れてクーロアールの左上方に進むが雪崩が次々に襲い掛かりレビュファを岩肌から引きはがそうとする。ドイツ隊からザイルを垂らしてもらい、コチコチに凍ったザイルを頼りにクーロアールを渡り切り彼らに礼をいう。2晩目のビヴァークではオーストリア隊は1ピッチ上で、ドイツ、フランス隊の7人は狭い岩棚に塊り足は空中か凍ったザイルのあぶみにかけた。装備の貧弱なドイツ隊を間に挟んでわずかな食糧を分け合った。翌朝は嵐は過ぎ去ったが凍るような寒気が襲い、服はバリバリに凍った。9人は一つの隊となりブールが垂壁をじりじりと突破していった。オーストリア、ドイツ隊からしばらく遅れて18時頃フランス隊は頂上に到達した。感激を分かち合い、しばし高嶺の別世界を眺め渡していたが、日没までに2時間しかないために急ぎ一般ルートをアイガーグレッチャー駅に向かって駆け下りた。

彼の本の記述に従って、六つの北壁登攀について概略を書きました。当然本文には美しい自然とまた時として峻烈な側面をみせる自然の中での山の記述、そのなかでの仲間との友情などが詩情豊かに述べられています。それを書き表す筆力は小生にはなく、原著を読んで堪能して下さい、としか言いようがありません。また彼は他にも幾多のガイドブックや山の本、山のビデオをだしており、アルプスに行ったことのない人でも臨場感豊かに山を感じられますし、行ったことのある人にとっては懐かしさと、さらにアルプスの奥深さ、素晴らしさを再認識させてくれます。
中には彼によって山の魅力のとりこになった人もいるかもしれません。かつては「星と嵐」という山岳同人さえあったかと思います(長谷川恒男など)。
一方で、山での友情を大切にする彼はアイガーでのヘルマン・ブールとの出会いの記述ではやや彼を否定的に捉えているようです。ヘルマン・ブールも伝説の山の巨人で「八千米の上と下」などの本は若かりし日に読んで心に刻まれた本です。その中にもレビュファとの邂逅、アイガーの記述があります。「遅れてやって来た五人の正体は、やがて二組のザイル・パーティーだということが判ったし、間もなく僕は彼等の中に、シャモニで識りあった懐かしい知人達の顔を見出した。まず第一にレビュファだ――声が届くところまで来たので互いに挨拶を交わす。それから後に続く連中の中にマニョーヌがいた。彼にはもう二年前にドリュの北壁で逢ったことがあるが、彼はたったこの間、モンブランの残された最大の未踏壁であるドリュの西壁の初登攀を行って素晴らしい手柄を立てたばかりだった。僕は彼に心からの祝辞を伝える。だが、このとき僕ははっとなにか感じた――いや、僕は思ったのだ。つまり、いまここでこうして国際的に高名なクライマー達と一緒になってみると、僕には自分が余りにも小さな存在で、なんだか全く余計な人間のような感じがしてきたのである。」このような記述をみると、ブールはレビュファをはじめフランス人を無視はせず、むしろ尊敬していたようにも思えます。しかし、ややブールが高名なフランス人達に気後れして一見彼らを無視したように映ったのかもしれません。ただレビュファも壁の上部でブールらから垂らされたザイルに感謝の言葉を述べています。そして一時は9人が一つのザイルパーティーとなった一体感を喜んでいます。
岩壁の中での極限状態での数パーティーの協調、葛藤、さらに多国間となると様々な行き違い軋轢が生じることと思われますが、その中でこその友情を外連味なく表現したものと思われ、単なる美辞麗句よりも実感がひしひしと伝わるケースのように思われました。ただ、人間極限となるときれいごとだけではなく、生か死かの中でぎりぎりの人間模様が現出することが判ります。両者の本は何回読んでも下手な小説を凌駕するドキドキ感があります。

新型コロナウイルスのためにステイ・ホームとなり、レビュファの山の本などまだまだ読みたい本が一杯なのですが、残念ながらまだ県立図書館は閉鎖中です。手持ちのものを引っ張り出しながら読んでいるところです。

新型コロナ最後のつぶやき

新型コロナウイルス感染症については素人のブログはもうお終いにすると書きました。最後に自分の勝手な意見を述べさせて下さい。(個人的な意見ですのでスルーして下さい。全くエビデンスに基づいていませんので。)
うはら皮膚科(仮想クリニック)のブログをみていましたら、「COVID-19 新型コロナウイルスによる皮膚の症状」という記事が出ていました。

それによると、皮膚の症状は多くはないが(約20%)あまり特徴のない播種状型(細かい赤い斑点がたくさん出るタイプ・・・点状の出血を伴うことがある)が多いとのことです。風疹や麻疹や薬疹で多く出るタイプで病因を推測するのは皮膚科医であってもかなり難しい。
その他に凍瘡(しもやけ)型、手足症候群型、皮斑型、指尖虚血型(抗リン脂質抗体症候群でよくみられる)の報告もみられたそうです。(さらに最近では、欧米で新型コロナの小児に川崎病類似の症状が見られているとの報道もあります。これも血管炎の一症候群であり、当ブログでも過去に取り上げています。)
「皮膚科医の立場でいえば、全身にぶつぶつが出た方と手足のしもやけ様の症状、血栓症や血管炎を疑う網目状の皮膚症状があれば、新型コロナウイルスの感染を考えなければならない、ということになります。」
「ただ、一点気になるのは、ぶつぶつ型に小さい出血を伴うことがあること、シモヤケ型(皮膚の細い血管の破壊)、皮斑(網目状:皮膚の血管がつまっているか、血管自体がつぶれている)型です。これはウイルス感染によって自分の凝固線溶系(血を止める、あるいはサラサラにするシステム)や血管を攻撃するミサイル(抗体)ができる方がいるということかもしれません。これは怖いです。肺炎の機序とは直接関係しないこもしれませんが、脳や腎臓に問題が起きる可能性がないか心配です。」
先生も、個人的な解釈を含みまちがっているかもしれません、とコメントされています。
まさに合意、小生も最近そのように考えていました。最近重症化した患者の肺その他の臓器に血栓がみられるとの報告が多くみられるようになってきました。
我田引水になるかもしれませんが、たまたま昨年春から血管炎、血管障害についてずっと専門家の文献を基に調べてきていました。今回のコロナウイルスの病態はまさに「感染性血管炎」「ウイルスによる血管炎類似疾患——閉塞性血管病変(感染による敗血症、血栓症(播種状血管内凝固症候群からの多臓器不全)」の病態に他ならないように思われてきました。(暇な方、興味のある方は昨年4月から延々と書き続けてきた血管炎・循環障害の記事を見てください。自分でも振り返ってみて興味深かったのは、Goodpastureが肺胞からの出血で重篤になったインフルエンザの患者を報告したのが、1919年まさにスペイン風邪のパンデミックの年でした。今回とウイルスは違うけど、同じような病態も生じていた例もあったの知れません(Goodpasture症候群、抗糸球体基底膜抗体病)。
そうすると自ずと治療戦略もみえてきます。
自分なりに考えてみました。
アビガン開発者である白木先生が述べられたように感染が分かったらいたずらに様子を見ていないで、症状の進行する人は初期からアビガンを使う、それでも効きが甘ければ、レムデシビルも併用する。肺炎の約半数は無症状(サイレント肺炎)で進行するので、広くパルスオキシメーターを導入する。肺が白くなるような肺炎の状態に陥ったらもう抗ウイルス剤の効果は期待できないので、抗炎症、抗サイトカイン療法を行う。大村先生が開発した疥癬治療薬のイベルメクチンの活用も考える。
アビガンは厚労省がすでに全世界向けに無償供与している内服薬剤なので、特例で開業医も含めて全医師が使えるようにする。当然事前にPCR検査で陽性の者に限る。胎児毒性の同意書をとる。そうして、抗体検査を導入して3蜜は避けつつ若者は普通に経済活動を再開できるようにする。高齢者、高リスク患者は隔離を続行する。
残念ながら重症化した患者に対しては、抗IL-6製剤などの抗サイトカイン療法と共に、血管炎に対する治療、血栓、DIC、多臓器不全等への対処を行う、ECMO(extracorporeal membrane oxygenation:体外式膜型人工肺)はあくまで心肺を休ませる療法で疾患そのものへの治療法ではない(ように思われ、補助療法かと思いますが。)
そうすることで、日本でのコロナによる病死、経済死を最小限に食い止められ、コロナ終息への出口戦略が描ける。
そのような勝手なことを考えてみました。これはあくまで素人の浅知恵ですが、本庶教授や吉村教授が述べられた戦略を下敷きにしたものです。
でも今の政府や専門家会議の方針をみるとなかなか経済的にも出口が見えず、医療現場のぎりぎりで頑張っている医療従事者の崩壊も食い止められないように思ってしまうのですが。

新型コロナウイルスの今後

日本中、というか世界中コロナの情報は溢れかえっており、日本でも日々感染者数が増加し、まさにパンデミックというかパニックな状態です。緊急事態宣言の最中、自分でも何が正しい情報かだんだん訳が分からなくなってきました。それで、素人がブログに書く意味もなく、変なことを書いてはた迷惑になってもまずいので、コロナ記事は今回でおしまいにします。
専門家といわれる人の記事も微妙に違ったり、また予測などは神のみぞ知る、といった感じで誰にも確実なことはわかりはしないでしょう。
ただ、ここ数日の医学専門家の確からしい情報を引っ張り出して書いてみたいと思います。
【黒木登志夫先生】著名な癌研究者、サイエンスライター
山中伸弥教授の情報サイトにリンク
黒木先生のブログより
❖PCR検査について・・・政府は経済の停滞を恐れるあまりにPCR検査を極端に制限した。当初は専門家会議もクラスターを見つけてつぶす「発症者対応モデル」をとっていたが、東京では3月24日から感染者が急カーブで伸びてきた。第2期に入り、病院がクラスター化してきた。このままでは病院、保健所、専門家会議が共倒れになりカオス状態となる。コロナとの戦いは少なくともあと1年は続く。早急に組織を再編する必要性がある。遅すぎる感は拭えないが「感染対応モデル」へ変更しPCRセンターを立ち上げて検査体制を充実する必要がある。そもそも最初から民間を動員すればできたことだが。これは韓国がとっていたシステム(世界から賞賛)に近似したもの。現在の状況は日本の信頼を失墜させるものである(海外からは日本のデータはPCR検査があまりにも少なく感染の実情を表していないので公式データから外す、との報告もあり。)
❖日本の新型コロナ感染による死亡者が少ない理由について・・・公式には確たる科学的な根拠はないと否定的な統一見解がなされていますが、BCGについて。
黒木先生の個人的な見解と捉えておいて下さい。
BCGは結核だけではなくウイルスを含む感染症に抵抗力を長く維持できる。統計的、疫学的な感染率、死亡率を各国で比較すると見えてくるものがある。東西ドイツではBCGの株が異なっていた。西ドイツ–西ヨーロッパ株、東ドイツ–ソ連株。いずれも1998年に中止したが死亡率は西が東の3倍以上でベルリンはその中間。BCGを早期に中止した西欧は軒並み死亡率が高いが、ポルトガルはスペインの隣国なのに死亡率が低い(ポルトガルは実施している)。またイランとイラクも隣国なのに死亡率は1桁違う。イランは現地株を用い、イラクは日本株を用いている。当然イラクの方が死亡率は低い。
これらのことより、オーストラリアをはじめ4か国はハイリスクグループである医療従事者と高齢者を対象に臨床研究を始めるとのことだ。黒木先生は医療従事者に対し、介入実験を開始しブースター投与すべき、と提言されている。
しかしながら国からの通達では、BCGは量も少なく、コロナへの効果は不明であり、高齢者への安全性も不明で、大量生産はできない、乳児への資源を枯渇させないために一般への投与はできない、としていますので医療機関へ出向いても注射できませんので、念のため。
ただ、折角素晴らしいかもしれない日本株(ソ連株と共に著しく生菌数が多い)を持ちながら何故先頭に立って臨床試験をやらないのでしょうか。
❖死亡者数は実際はもっと多い(かもしれない)・・・日本のデータの不正確性を示されたが、これは何も日本に限ったことではなく程度の差こそあれ、各国つかみ切れていないようだ。New York Timesの記事では今年の春(3-4月)の死亡者数が過去の平均と比べて、急激に増加していて、実際は発表された死亡者数の50%は多いかもしれないということだ。老人ホームでまとめて死んでいたとか、自宅での死亡はカウントされていないとかの記事をみるとさもありなん、と思える。国によっては意図的に隠蔽しているところもあるかもしれない。流石に日本ではそういうことはないと思うが、それでも亡くなってから陽性だったとか、他の肺炎と思われて、実はコロナで亡くなった例も散見され、千葉大法医学教室では死亡者のPCR検査も始めたようだから、日本の実数ももっと多いかもしれない。
【宮坂昌之先生】大阪大学免疫学者、免疫研究の第一人者
❖BCGの効果をみるには1000人以上の投与群を作り、長期に統計的に比較する必要性があり、これを新型コロナ予防に転用するのは現状では無理。やるならばBCGの代わりになる他のアジュバント(アラム、MF-59,AS-03など)の検討が必要か。
❖スーパースプレッダーは無症候性感染者の可能性が高く、2週間発症しないままに他人に感染させうる。1人から2~3人といわれるが、social distancingで異なってくる。従ってstay home,他と距離を置くことが重要。
ただ、ウイルスを封じ込めて死滅させることは不可能なのでこの疾患は集団免疫獲得まで終息しない。従って公衆衛生的な介入を行って封じ込めと感染の遅延・緩和の組み合わせで対処していくしかない。
❖免疫について、今は獲得免疫の話しか出てきていないが、それだけでは説明できないこともある。例えば、武漢は公称10万人の感染だが、人口1000万人のうちの100人に1人の感染率である。仮に10倍でも10人に1人の感染である。残りの9割以上は感染しなかったことになる。これには自然免疫の寄与があるのではなかろうか。人間には自然免疫機構もあり、こちらにも免疫記憶力があることが想定されている。抗体検査も始まっているが、どの程度社会の中に本当の獲得免疫があるのか、中和抗体だけではなく、メモリーT細胞(細胞性免疫)の測定も重要になってくるのではないか。
❖ワクチン開発はすでに欧米などでは臨床テストに入っている。しかし、市場に出るまでには長い年月がかかる。第1相が100人、第2相が数100人、第3相は数1000人のテストが必要で、再来年までかかると世界は苦しい状況に追い込まれる。またRNAウイルスは1本鎖なので変異し易い、ただ弱毒化するか強毒化するのか予想は難しい。他の4種のコロナウイルス(風邪ウイルス)、SARS由来ウイルス抗体が新型コロナに結合するというデータもある(交叉免疫)。但し、抗体は長く体内に留まらない(インフルエンザワクチンを考えるとわかるかも)。
❖ウイルスに罹らないようにするためには・・・3密を避ける事、体内時計を狂わさないこと、生活リズムを整えて保つこと、体を動かして免疫細胞が体中をくまなくパトロールするようにすること、ストレスを避けること。
【本庶 佑先生】言わずと知れたノーベル賞学者
❖PCR検査の数が断然足りない・・・一桁増やしていい。これは技術的な問題ではないと思う。制度上の問題だと思う。この検査は大学でもできる。技術者3人の組で1日100検体はこなせる。戦端がどこで開かれているのかわからずに鉄砲を撃てないとなれば医療崩壊は近い。PCR検査を否定されている方々がいる。偽陰性を増やすのは有害であると。陰性は意味のないことで、PCRの目的は陽性の場合だけを追いかけるもの。厚労省の目的は私の考えと初めから違うと思う。私は当初から、戦況を見極めるためという目的で使うべきだという主張だ。
❖出口戦略・・・感染はゼロにはならない。多くの人が不安を抱いているのは欧米のように沢山の死人が出る事、その恐れから解放されることを目指す戦略を立てるべき。すなわち治療戦略。ワクチンはその次の問題、うまくいっても1年以上かかる。さらにエイズ、インフルエンザの例をみるまでもなく、効くという保証はどこにもない。この手のウイルスのワクチン開発は経験からいって非常に難しい。新薬開発は間に合わない。既存のアビガンやHIVの薬などを全部使うべきである。極論をいうとそういった薬を総動員して「死なない状況」を作れば、自粛などすぐに止めてもいいくらいだ。保険適用外などこの非常事態になぜ使わないのか不思議。法律がないのなら作ればいい。また専門家会議の中に治療の専門家が少ないのが問題。臨床医を中心に再構成すべきだ。感染はあるが死人は一定の数に抑えられる、感染防御は続けるが外に出て経済活動をやる、というところを目指さなければ出口戦略は到底描けない。
主な治療薬候補
アビガンーーー抗インフルエンザ薬
レムデシビルーーーエボラ出血熱治療薬
カレトラーーー抗HIV薬
シクレソニドーーー喘息治療薬
フサンーーー急性膵炎治療薬
アクテムラ(トシリズマブ)---関節リウマチ治療薬
【白木公康先生】ウイルス学者、アビガンは富士フィルム富山化学と白木先生が開発した薬。白木先生は帯状疱疹などの抗ウイルス薬の開発にも関わり、千葉県の皮膚科の講演にも来ていただいた専門家。そのライブ講演の一端を(途中からしかみていませんので舌足らずかも。)
❖アビガン(ファビピラビル)は新型インフルエンザ治療薬として開発された。江川裕之、古田龍介先生、白木先生らが開発した薬とのこと。RNAポリメラーゼを阻害してゲノムRNAをできなくする薬で、アシクロビル(抗ヘルペス薬)の働きに似ている。ヒト精子障害や胎児毒性があり、妊婦には禁忌。核酸誘導体であるために高尿酸血症をきたすが、腎障害がなければそれ以外の際立った副作用はみられない。中国での臨床研究が武漢、深圳で実施され有効性が確認された。韓国では無効とのことだったが、(レムデシビルが1μMで効くのに対し、アビガンはその10倍の濃度でないと効かなかった)高濃度を使用すれば有効なので無効とはいえない。またアビガンは耐性ができにくいという利点がある。
❖新型コロナウイルス感染症では無症状でも肺炎があるケースが約50%あるとのことだ。帯状疱疹でもそうだが、抗ウイルス薬はできるだけ早期が効く。アビガンも6日以内だと有効で肺が白くなってからはむしろウイルス量は少なくなり、肺の炎症(サイトカインストーム、最近は静脈血栓症からのDICなどが本態かとの報道もあり)が主体となってくるので抗ウイルス薬の出番はなく、むしろ抗IL-6薬など、サイトカイン療法の出番となってくるとのことだ。これらのことは丁度サイトメガロウイルスに対するガンシクロビルの関係に相当すると思われる。
(実際アビガンが効いたという噂が先行し、一般で使って欲しいという患者さんが増えてきて困るせいか、国の公式見解ではアビガンの有効性はまだ確立されておらず、安全性も確立した薬剤ではなく、もう少し科学的根拠がでるまで「新型コロナにアビガンが効いた」という報道は差し控えて頂きたい、との見解が出されている。ただ、個人的には今は緊急事態で折角日本で独自に開発して、有効性が中国で(少ない症例で暫定的としても)認められた薬剤なのに、しかも諸外国には気前よく無償でどんどん供給しているのに、世界に率先して使用し日本の医学の貢献を拡げるチャンスなのに、どうして厚労省はこうまで慎重なんだろうと思ってしまいます。)
【島田眞路先生】山梨大学学長、前日本皮膚科学会理事長のオピニオン
山梨大学における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘い(第5報)
PCR検査体制強化に今こそ大学が蜂起を!
❖PCR検査独占の実態・・・途上国レベルの日本のPCR実施件数が日本の国際的な信用を揺るがすまでの事態に至っている。独自に作ったPCR検査実施状況の推移をみると3月24日頃まで国内のほぼ全てのPCR検査が、地方衛生研究所・保健所で占められていることが一目瞭然である。(この日に東京オリンピックの延期が決定されたのとの関連は偶然でしょうか。)一方それ以降からは徐々にそれ以外の実施件数が増えていっている。その要因は民間検査会社であることが解る。感染症対策専門家会議は「限られたPCR検査の資源を、重症化の恐れがある方のために集中させる必要がある」と表明した。ごくわずかな人員の衛生研究所・保健所では到底限られた件数しかこなせないのは当初から明らかだった、途上国レベルのPCR件数という大失態を招来したと手厳しい。講演会などでお世話になり、小生もよく知る世界的な皮膚免疫学者でNIHで研究した優秀な根っからの学者でありながら、皮膚科学会理事長を務め、山梨大学をリードする経営手腕もあるタフマンである。ただ、ここまで国に批判的な言動は大丈夫かなと一寸心配にもなりますが、国難を憂う熱情がそう言わしめるのでしょう。
❖日曜日に下がるPCR検査件数・・・PCR検査件数の推移をみると、毎週末に大幅に検査件数が低下している。未曽有の国難においてこの問題を行政機関のみに依存してきた体制がそもそも無理筋であった。現場の職員は必死に働きずくめであったことには疑いもなく、感謝こそすれ非難する気はさらさらない。
❖大学に期待される蜂起ー直ちに地方衛生研究所・保健所を救え!
4月に入ってからは安倍総理の発表もあり、ようやく検査件数も増えてPCR検査推進に向けて大きくかじ取りがなされつつある。各地方独自の体制構築もなされはじめている。今後の検査の担い手として期待されるのは民間検査会社と大学である。特に地方においては国立大学の他にこの役割の担い手はない。山梨大学は感染症指定医療機関ではないが、学長自らの指示で1月からPCR検査体制を強化し、20歳代の髄膜炎、乳児例の発見に貢献してきた。
未曽有の事態の今だからこそ、権威にひるまず、権力に盲従しない、眞實一路の姿勢が全ての医療者に求められている、と熱い。
【吉村昭彦先生】慶應大学免疫学者、そのブログはフォロワー多数。
❖慶應大学病院のPCR検査で「コロナ感染症以外の治療を目的とした無症状の患者さんのうち5.97%の陽性者(4/67)が確認されました。」と公表された。サンプル数が少ないとはいえ、無症状の人の6%がPCR検査で陽性(現在感染している)ということ。(勿論この慶應大学のデータが即東京都全体の縮図とは言えないのは当然とはいえますが)、それを敷衍すれば東京都の人口1000万人のうち60万人が感染していることになる。さらにすでに感染してウイルスが消えて抗体を持っている人の数はさらに何倍もの数に上るかもしれない。これは早々に抗体検査をすべきだろう。(厚労省も早速献血からのサンプル検査を開始したというが、その価値は十分にある。)
❖もしも抗体を持っている人が相当多く集団免疫が(かなり)できているとすると、あるいは無症状の感染者が相当数多いなら強力な封鎖はあまり意味がないかもしれない。「若い人は普通に生活して経済活動を再開しどんどん免疫をつける。65歳以上および基礎疾患のあるひとは厳しく外出を制限したり接触に十分注意する。万一感染して症状が出たらアビガンなど抗ウイルス剤を早期に投与する」でいいような気がする(スウェーデン方式+ハイリスク集団は隔離方式)。PCR検査は症状のあるひと、および65歳以上あるいは基礎疾患のあるひとのみでよくて(今までと違って熱がでたり疑わしいのはすぐにやる)、むしろ抗体検査を中心にして高齢者でも免疫が成立したひとは外に出て良いことにする。もちろん医療関係者は一番に抗体検査を行う。
❖極論すれば「封鎖して感染を減らす」か「一部解放して集団免疫をめざす」の間で、どちらが死者が少ないのか、どちらが早く終息するのかということだが、専門家が実測に基づいて数理シミュレーションをして最もいい方法を提示すべきだ。いずれにしてもできるだけ事実に基づいて科学的、合理的な考え方をすべきである。
❖ 重症な人や死亡者が他の国に比べると極端に少ない理由の一つとして、京大の先生のいうように弱いS型がすでに蔓延していたためかもしれない。ーーー新型コロナにはS型と感染力の強いL型があり、京都大学の上久保靖彦教授は「S型がL型よりも早く昨年末から中国から伝播し、日本の一部で蔓延し部分的な抵抗力を与えた。そのためにL型にも部分的な集団免疫を付与している。」との報告をした、とのことです。

それぞれの先生方の言説をつまみ食いして、書き出しその本意から外れた書き方をしたかもしれないのが心配です。それに状況は日々刻々変わってきていますので、書かれた日付によっても主旨が変わりえます。できれば各先生の元データ(大体示しましたが)を確認していただくことを勧めます。
4月25日の読売新聞に永田和宏先生(歌人、細胞生物学者)の「ウイルス どう共生するか」という記事がでていました。(永田先生のことは当ブログでも以前に取り上げたことがあります。)
100年前に流行したスペイン風邪の歴史から学ぶことは・・・情報の隠蔽が感染を拡大させた。新型コロナウイルスにしても情報開示がいかに大切かがわかる。人間はウイルスとずっと共生してきた。ウイルスを撲滅しようとしても駄目で、いかに共生をはかるか。ウイルスとの共生はいまだ道なかばかもしれない、と述べています。また歌人の斎藤茂吉は<寒き雨まれまれに降りはやり風邪衰へぬ長崎の年暮れむとす>と他人ごとのような歌を詠みましたが、自らが感染した後では<はやりかぜ一年(ひととせ)おそれ過ぎ来しが吾は臥りて現ともなし>と切迫した歌になりました。生死の境をさまよったといわれています。
同世代で先日亡くなった志村けんのことといい、身につまされます。そういえば志村動物園の最後にチンパンジーのパン君が、どうしても別れたくなくて何度も彼の許に駆け寄り、その度に彼がパン君を優しく抱きしめていた姿が瞼に焼き付いています。ずっとバカ殿ばかりのお笑い芸人と思っていた自分の不明を恥じました。5月1日からはNHK朝ドラ「エール」に音楽家役で最期の出演をするそうで、楽しみです。

追記
今朝(4/30)のBBC NewsをみたらWhy is there so little coronavirus testing in Japan?
Coronavirus: Japan’s low testing rate raises question
という記事が出ていて、実際に東京に住む外国人のケースが紹介されていました。4月10日から何日も発熱と咳が続き(ガイドラインに従って4日待ったあと)、ホットラインに電話した。具合が悪ければ救急に連絡して、といわれた。15日にクリニックでX-Pを撮りコロナが疑わしいから自宅待機といわれた。翌日夜息苦しさが増し友人が病院に連絡した。電話口でも咳と息苦しさで彼女の声がよく聞き取れなかった。救急隊が病院を探すのに2時間かかり、その間状態はどんどん悪くなっていった。病院ではレントゲンを撮りコロナが疑わしいので地区のPCRセンターに行くように言われただだけで、紹介状は渡されずタクシーで(窓を開けるようにいわれ)自宅へ帰された。17日に投稿者(米人の通訳)はPCR検査センターに電話し、あちこちの部署を2時間も回され、質問表に回答させられ、最後に患者の友人へのアポイントが取れた。しかし検査所は裏口から入り、混乱を避けるために検査の場所は決して口外しないことと念を押された。このような事例がSkypeを通して報告されていました。4月10-17日の話ですからそんなに以前の話ではありません。慶應大学のPCR 6%陽性のことも書いてあり、日本では公称の20~50倍の感染者があるのでは、との専門家の見方もでていました。
最近の報道ではPCR検査数を増やすべく、保健所を介さずに地域ごとの医師会などによる独自の取り組みが始まっているが、広くそのことが地域住民に周知されていない、とありました。このようなことは、末端現場の対応も問題かもしれませんが、そもそも厚労省の制度設計にも問題があったとの専門医からの指摘もあります。しかしテレビの専門家の解答はなにかぬるい感じを受けました。本来ならばこの分野こそ、国が率先して全国的に安全かつ迅速な体制を構築すべきだった(今からでも)とは各専門の先生方が力説しているところです。
やはり、事実に即したしっかりした対応をしていかないと、どんどん日本国自体の信用を失っていくと思います。

コロナパンデミック

新型コロナウイルス感染の勢いは留まるところを知らず、全世界は悲惨な状況になってきています。諸外国に比べて、比較的うまく伝播を抑え込んできたかに見える日本もこのところ雲行きが怪しくなってきました。大都市を中心に患者数はうなぎ上りで、ついに昨日は西浦博・北海道大学教授が、「感染を防ぐための行動制限を何もしなかった場合、国内で重篤になる人が85万人、死亡者が42万人になる。」との衝撃的な予想を発表しました。これはあくまで、何もしなかった場合で、個人的な予想であると断っています。あくまで最悪のケースで、敢えて外出自粛などの危機感の少なさに警鐘を鳴らす意味合いもあったかもしれません。しかし、素人の単なる憶測ではなく、厚労省のコロナ対策班の重鎮の言葉であるのは、衝撃的です。
医療現場からはすでに医療崩壊は進行中であるという切迫した訴えが上がってきていますが、政権中枢からは、経済の麻痺をさけるためか、医療にたいする切迫した動きはなく、今一つ危機感が薄いようにみられます。
最近は、診療も交代制にして減らして、自宅にいることが多く、電車も乗らず、車移動で、自宅周辺の田んぼや公園、小川沿いの散歩が日課になってきました。人通りも少なく木々は芽吹き、桜は咲き乱れて一見のんびりした田舎風景です。時折散歩やジョギングの人と行き交う程度です。しかし気持ちは晴れません。結構時間はあるはずなのに何をするともなく、やはり気になってコロナ関連のテレビをみたりネットをみたりで鬱々とした日々を送っています。
小院でも皮膚科ではありますが、患者さんの中にはせき込む方もあり、緊張します。熱はありません、私はコロナではありません、と言われたりしますが検査なしでは無論分かりません。大部前にフェイスシールドマスクを発注しましたが、まだ届いていません。仕方なくビニールシートを買い、手製のフェイスガードを作りました。日々緊張の診察が続いています。
日本のこれまでの対策はクラスターの発見、クラスターつぶしに重点をおいたそうです。そして、今はステージが変わってきたとしてPCR検査を強化して機器導入や簡易検査などで検査件数を増やし、ドライブスルー方式の検査も検討中であるとの報道です。一寸というかかなり遅すぎる感があります。検査拡充できない理由をいろいろと聞かされてきましたし、医師や具合の悪い患者さんがさんざん保健所から断られてきたニュースも耳にしました。しかし、国は適正に検査は行われているとの報道でした。そうして、人々も医師も誰がコロナか分らず市中のみならず医療現場でも感染が拡散し、今は正に疑心暗鬼の状態に陥ってきているように思われます。
初動の対策で対照的だったのが韓国でしょう。PCR検査でドライブスルー方式をとり、徹底的に感染を洗い出そうとしました。現在までの状況をみると韓国は第一波の感染爆発をうまくコントロールできたように思われます。結果論で申し訳ないですが、日本ももっと初動のPCR検査を徹底すべきだったように思います。ただ、欧米のように徹底して行ってもパンデミックを阻止できなかったし、PCR検査で間違いや、却って感染を広げてしまうといったネガティブな意見もありました。だったら何で今頃、やっと検査を強化と言い出すのだろう、と愚痴ってしまいたくなりますが。各国の検査実施件数の比較(人口1000人当たり)が新聞にでていました。イタリア、ドイツが約16件、韓国10件にくらべ日本の0.61件はあまりに少なすぎます。無論検査はむやみに全員希望者にやるのは無駄で、症状のある患者、特に医療現場では検査し、感染の有無をはっきりさせるのが肝心でそうでないとどんどん院内感染は拡がっていくでしょう。
諸外国では日本の検査数があまりに少なく、新型コロナの感染実数はあてにならないとされています。巷でも感染実数は感染者周りの不顕性感染者を考慮すると発表の数倍から学者によっては10倍位いるだろうとされています。そうするとヨーロッパ各国に近い感染者数があるのかもしれません。ただ、日本の特異なのは新型コロナウイルス感染による死者の数の少なさが際立っていることです。こちらはさすがに隠蔽できないでしょうから本当でしょう。
この本当の理由はまだわからないようです。慶應大学の免疫学者の吉村昭彦教授のブログによるとHLAの人種差かもしれないし、巷ではBCG接種の有無(これは医学的には証明されておらず、公的にはコロナ予防のためのBCG接種はできません。)なども関係するかもしれない、しかしそれでも説明できない例も多く、初期のクラスター潰しが奏功し医療崩壊を免れて手厚い看護が得られたため、などとの推論がありました。しかし最後に「感染経路がわからない例が爆発的に増えつつある今後はどうなるかはわからない。」と結んでありました。
どうなるかは誰にも分かりませんが、何としてもヨーロッパや米国のような医療崩壊による未曽有の死者が増えないことを祈るばかりです。

新型コロナウイルスは新たなステージに

新型コロナウイルス感染症はまさに全世界のパンデミックとなってしまいました。
現在も刻一刻と状況は変わっていて、昨日の情報は今日は通用せず、感染者数も、死亡数もうなぎ上りです。
欧米の悲惨な感染爆発と比べると、先行した日本の感染爆発が遅い、まだないのは欧米では七不思議とされているようです。相変わらずPCRをやらずに感染者総数を隠して低く見せているという説もあるようです。感染者総数は隠せますが、死亡者数はそんなに隠蔽できないでしょう。ここまで日本はかなりコロナに対して善戦しているかと思います。しかしながらここ数日首都圏で感染爆発が差し迫っている危機的状態となってきています。感染者は爆発しても、ドイツでは死亡者数は爆発していません。仮に感染者がオーバーシュートしてもドイツは参考になるかと思われます。あるいは韓国も。
感染者の検査数を絞ることが現在日本の感染爆発を抑えているようで、これでいいのだ、逆に検査を絞っているからよいのだという風潮が増えてきているようです。
前回、全数検査には反対だと書きました。しかし、これは不完全な防御態勢であればやらない方がまし、という考えを述べました。
欧米の専門家が述べているように日本は診断が甘いというのはその通りだと思います。
感染症の基本は診断をしっかりつけて、それに対処するのが根本であるというのは論をまちません。全数とは言わずとも、感染者の診断はきっちりと付けるべきだと思います。風邪かインフルエンザかコロナか分らずにふらふら出歩いて周りに感染を広げているのが今の日本の状態だと思います。清潔好きの真面目な国民の頑張りで何とか踏みとどまっているのが現状かと思います。
このままでは不顕性感染者(ヘルシーキャリア)が中心となってミニクラスターを形成、次いでメガクラスターとなってアウトブレイクする公算が大だと思います。
では爆発しかかったら、軽症者は一般の街のクリニックに振り分けて、重症者を指定病院でみればよいでしょうか。これは非常にまずいやり方だと思います。大体コロナウイルスに対する治療方法はありません。防御設備のない町医者に患者がおしよせて診断(どうやって診断するのでしょうか)、しても手当はなくコロナらしいから家で休んで下さい、というだけでしょう。それとも不十分な体制でPCR検査を行い、クラスターを拡げるのでしょうか。狭い待合室に感染の怪しい人が密集して長時間順番を待っていれば、武漢や北イタリアやダイアモンド・プリンセス号を再現するようなものです。意味ないばかりかクラスターをさらに爆発させます。
ではどうすればよいか? 韓国や欧米諸国がやったようにドライブスルーかウォークインスルーの検査を郊外の大規模施設や競技場のようなところや野外テントのようなところで行うのはどうでしょうか。時間、空間を分けてスマホなどで予約制にして感染のリスクを極力減らし、担当部署から検査の可否、データの管理を行う、など出来そうな気もします。勿論個人情報の保護は必要で中国のような中央統制は無理でしょうが。そうすれば、孤発例の追跡もより可能かと思います。仮にアウトブレイクして現在のイタリアのような状況に陥ってからはもう検査の余力もなく、なす術がないように思われます。日本では何故検査への行動が迅速ではないのでしょうか。
仮に指定感染症で陽性なら入院だから、医療崩壊しないために検査しないとすれば本末転倒です。軽症者は退院して自宅に留まるか、オリンピック村などを指定施設にして隔離管理すればよいかと思います。
いろんな事情がありPCRが進まないのかもしれませんが、過日PCRの数を1日1万件とするとしたのではないでしょうか。それにしてはPCR総数が少なすぎます。安全な検査体制がないのかもしれませんが、対処が成功しているかどうかば別にしても欧米ではすかさず数十万件の検査をあっという間に達成しています。お隣の韓国も。
日本の今までの感染者の少なさ、死亡者の少なさは国民、コロナ対処にかかわる人々の頑張りの賜物かと思います。でも皆さんが言うとおりにここが踏ん張りどころです。
昨日、iPS細胞でノーベル賞を取った山中教授も自身のフェイスブックを立ち上げて、コロナとの闘いはマラソンのようだ、気を引き締めて全国民が対処していかねば、「桜は来年も帰ってきます。人の命は帰ってきません。」と述べていました。将に正念場に差し掛かっているようです。我々一人ひとりの行動が趨勢を左右するかと思います。

魚・甲殻類アレルギー

我が国での魚アレルギーの頻度は第10番目ですが、成人に限ると第2番目と高くなります。
魚アレルギーにおいては、魚そのものによるアレルギーの他に、紛らわしい症状としてヒスタミン中毒とアニサキスアレルギーがあります。
🔷魚アレルギー
頻度からすると赤身魚より白身魚のアレルギーが多いです。
原因物質(抗原)はパルブアルブミン(parvalbumin:PA)とよばれる分子量12kDaの筋蛋白質で、速筋(白筋)の弛緩に関与していると考えられています。これは水溶性で熱安定性であるために加熱しても抗原性はなくなりません。約2/3の例の原因抗原とされます。
(赤筋(遅筋)はミオグロビンという赤色の色素蛋白質を多く含みます。これは筋肉に酸素を多く供給する働きがあるために持久力に富み、マグロやカツオなどのように長距離を泳ぎ続けることができます。その逆に白筋は普段はじっとしていて瞬発力に富むタイやヒラメ、カレイといった白身魚に多いです。)
またPAの含量は部位によって異なり、尾側より口側、背側より腹側で多いとされます。
コラーゲンもPAに次ぐ抗原とされます。患者の30%はこれに陽性とされます。コラーゲンを加熱して変性したものがゼラチンですが、PAと違って非水溶性ですので「水さらし」にしても抗原性はなくなりません。
また一部では上記以外のマイナー抗原が知られています。
これらの抗原は魚群間で交叉抗原性があることが知られています。ただ魚群と哺乳類のコラーゲンには交叉抗原性はみられません。
感作経路としては、食べてなる経腸管感作の他に、手荒れなどからくる経皮感作、魚市場などでの飛散による経気道感作などがあります。
診断、検査については特異的IgE抗体価や皮膚試験の抗原液がありますが、限られていてprick-to-prickが行われることもあります。ただこの場合はヒスタミン中毒の除外する必要性があります。
魚アレルギーが明らかになった場合にどのように対処するかについては専門家や管理栄養士の食事指導が必要になります。まず、低抗原性の魚出汁(かつお節、煮干しなど)の摂取を試み、大丈夫ならばマグロの缶詰(水煮)、さらにPA含有量の少ないマグロ、カツオなどの煮魚など摂取可能な魚種、量などを増やしていきます。
ただし、過去にアナフィラキシーを起こした例では原則摂取禁止です。
🔷ヒスタミン中毒
ヒスタミンが大量に蓄積した魚を食べたあとに生じるアレルギー様症状のことをいいます。ある種の腐敗菌などにより魚がもっているヒスチジンというアミノ酸が分解されてヒスタミンを生じます。魚肉100g当たり、ヒスタミンが100mg以上産生されると重篤な症状を呈するとされます。吐気、顔面紅潮、蕁麻疹などを生じます。これは魚アレルギーとは逆に赤身魚が多いとされます。塩干物、味醂干しなどの加工品に多いとされます。また25~40度で発生する菌と0~10度で発生する菌があり、冷蔵庫で長期保存した魚では注意が必要です。ヒスタミンは熱に安定性で加熱したものでも症状は誘発されます。
🔷アニサキスアレルギー
アニサキスとは回虫目アニサキス属に属する線虫の総称で魚介類に寄生する寄生虫です。最終宿主はイルカやクジラなどの海生哺乳類で、卵はオキアミなどから中間宿主の魚類やイカなどの内臓で成長します。生きたアニサキスを食すると激しい腹痛、吐気を伴い、腸アニサキス症では急性腹症として開腹手術を受けるケースもあります。
アニサキス症には胃アニサキス症、腸アニサキス症、消化管外アニサキス症があります。刺身や寿司などの生食を嗜好する我が国に特に多く、なかでもサバ(しめ鯖を含む)が最も重要な感染源となっています。対策としては魚介類の生食をしないこと、または60~70度で1分以上の加熱、もしくは-20度で24時間以上の冷凍が厚労省から推奨されています。
アニサキスアレルギーでは蕁麻疹、血管浮腫、アナフィラキシーといったIgE依存性のアレルギー反応を生じます。経口摂取後腹部症状が全くなく上記のようなアレルギー症状が出た場合はgastro-allergic anisakiasis(GAA)と呼ばれることもあります。発症なでの時間は1~2時間と短いものから数時間、半日たってから発症する場合もあります。診断は臨床症状とIgE抗体検査によって行われますが、特異度は必ずしも高くなく、ダニ、甲殻類などとの交叉過敏性があります。ほとんどが魚介類の生食後に生じますが、耐熱性の抗原もあり、調理し熱を加えたものでも発症するとされます。それゆえ食事指導に関しては魚類の完全除去から加熱なら可との様々な意見があります。
🔷甲殻類アレルギー
甲殻類アレルギーは食物アレルギー全体での頻度は7位ですが、成人に限ると小麦に次いで第2位であり、果物と共に3大アレルゲンとされます。その代表はエビ、カニです。
症状で最も多いのが蕁麻疹などの皮膚症状で、次いで口腔アレルギー症候群、呼吸器症状、腹部症状と続きます。また半数以上に2臓器以上の症状を呈する、いわゆるアナフィラキシー症状がみられるとのことです。
甲殻類アレルギーでは経口摂取だけでは発症せず、食後の運動や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)服用の組み合わせで誘発されることも多いです。甲殻類アレルギーの原因抗原(アレルゲンコンポーネント)として6種類の蛋白が知られています。海外ではトロポミオシンに対する陽性率は60%と高いとされていますが、本邦ではそれ程高くなく、それ以外の抗原が存在すると考えられて原因解明を検討中とのことです。またダニやゴキブリ、アニサキス、イカ、タコ、貝類などとの交叉反応を示すこともあるとのとのことで、甲殻類アレルギーの成立過程でのこれらの動物の関与が想定されています。
また空中の吸入感作や、手荒れ、飲食業の人の皮膚からの経皮感作の経路のケースも報告されています。
アレルギーへの対応としては、甲殻類では成人例が多く、免疫寛容は期待できないために除去食が基本です。また甲殻類は外食時には様々な料理に含まれていることが多いためにアナフィラキシー歴のある人はエピペンなどのアドレナリン自己注射の携帯が望ましいとされています。ただ将来的には舌下免疫療法やバイオ技術を用いた免疫療法が研究開発されようとしているそうです。

下記の文献から要約

知らぬと見逃す食物アレルギー ◆編集企画◆ 矢上晶子 MB Derma No.289/2019.11
中島 陽一 魚アレルギー pp50-54

濱田 祐斗 アニサキスアレルギー pp55-58

中村 陽一 甲殻類アレルギー pp59-66