月別アーカイブ: 2012年6月

あせも

 「あせも」については昨年2011年の7月1日にこのブログに書きました。この度ミレニアムに「あせも」の記事を書きました。 夏場になるとあせもは増えてきます。特に節電などで高温、多湿で汗が溜まりやすい環境にあると注意が必要です。繰り返しになりますが、ブログ内容を再掲します。 あせも(汗疹)とは多汗があり汗がたまってできたもので汗貯留症候群の一つですが、乳幼児は成人に比べ単位面積当たりの発汗量が多く、体温調節機能が未熟なためにでき易いとされます。汗管が閉塞された部位によって、いくつかに分けられます。1)水晶様汗疹・・・角層で閉塞したもので粟粒大のきらきら光る水疱が多発しますが、ほっておいても数日で消えます。 2)紅色汗疹・・・表皮内で閉塞したもので炎症を伴うので、かゆみ、赤み(紅斑・丘疹)・水疱などが混じります。 湿疹化したり(汗疹性湿疹)化膿したり(膿疱性汗疹)します。 3)深在性汗疹・・・表皮から真皮内の閉塞で起こりますが熱帯地方で起き、特殊な型です。 成書をみると、一番大切なことは、発汗の予防だと書いてあります。涼しい環境および吸湿性のよい衣類の着用やこまめな交換で発汗の予防に努めます。また発汗後にはぬるめの温度での入浴、シャワー浴などで頭髪、皮膚を清潔に保つことも重要です。またごわごわした衣服などの擦れ、過度の石鹸による洗浄、紫外線などの物理的刺激もよくないとされます。局所収斂剤のカラミンローションは清涼感のために役には立ちますが、皮膚の乾燥化のためにかえって湿疹を悪化させることもあります。ベビーパウダーなども使いすぎると、汗腺を詰まらせてかえって悪化させることもあります。  皮膚科のバイブル的なRookの教本には、重要な事は涼しく風通しの良い環境であり、一日数時間でも有効だし、逆に高温、多湿の環境のままではどんな薬剤も効果は限定的と書いてあります。 一般的にあせもの代表といえる2)の紅色汗疹の治療ですが湿疹性であれば、ステロイド剤を使います。ワセリンなどの軟膏基剤は汗の腺をつまらせますので、クリームなどの水溶性の基剤を使用します。あせもは乳幼児に多いですが、肥満していたり、高温・多湿の環境では間擦部(くびれた部分)などは汗が貯まりやすく、大人でもあせもができ易いです。このような部位では細菌で化膿したり、カンジダ菌が増えやすくなっています。これらでは逆にステロイド剤で悪化しますので注意が必要です。あせもと思っても赤いブツブツでも違う病気もあります。その見分けが結構難しく、あせもの薬をもらったのに、効かない、却って悪くなった、ということにもなりかねません。 “あせも”の治りが悪いときは早めに専門医療機関を受診するようにして下さい。

STI(性感染症)研究会

千葉県STI研究会に出席しました。
STIとはsexually transmitted infectionの略で性感染症のことです。
以前はSTD Sexually transmitted diseaseと呼んでいたのですが、感染(infection)しても病気(disease)を発症しないこともあり、上記のように表記するようになりました。
出席者は産科、婦人科、泌尿器科の医師に薬剤師、保健師が主で皮膚科医はほとんどいなかったようでした。性感染症は皮膚科でも取り扱いますが、主に梅毒、ヘルペス、尖圭コンジローマなどに限られ、クラミジア、淋病などは一般には取り扱いません。さらに性感染症教育などもあり、普段出ている皮膚科の会とはかなり趣の異なった会でした。
まず性感染症の発生動向が提示されましたが、女性ではクラミジアが60%、ヘルペスが20%、次いで尖圭コンジローマが10%程度だそうです。男性の場合はこの差が少ないそうです。
クラミジアは世界でも最も多い性感染症ですが、男性では前立腺炎、副睾丸炎などを起こします。排尿時に痛くなったり、尿道が痒くなったり、分泌物が増えたりします。女性ではおりものが増えるなどの症状が出にくので感染に気づかずに進行することもあります。子宮頚管炎、内膜炎、卵管炎などを起こし、進行すると骨盤腹膜炎や肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)を起こし女性の不妊、子宮外妊娠の原因となります。また多くの慢性骨盤痛の原因にもなっているそうです。産道感染により新生児に感染することもあります。クラミジアに感染しているとバリア障害のためにHIV(エイズ)に感染する確立が3~5倍増えるそうです。
淋病は男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎を起こします。特に女性では無症状で経過することが多く、咽頭、直腸の感染でもあまり症状はみられないとのことです。時には角膜潰瘍も生じます。抗生剤で治療しますが、耐性菌が80%もみられます。
ヘルペスは最近は1型2型の区別なく感染がみられるとのことです。初感染で早く十分に治療しないと神経節へ潜伏し易いです。
HPVはHuman papilloma virus の略ですが、20代の女性では30~50%に陽性だそうです。ウイルスの亜型が多くありますが、ローリスク型の6,11型では尖圭コンジローマに、ハイリスク型の16,18型では子宮頚癌になる恐れがあります。但し感染しても継続するのは10%程度でその中の一部から前癌病変に進行するということです。日本では毎年15000人の子宮頚癌患者が発生し3500人が死亡しているとのことです。Young mother killerと呼ばれる所以です。諸外国には遅れをとりましたが、日本でもHPV予防ワクチンが使用可能になりました。HPVは多数の無症状感染者があり、性体験のない低年齢に接種するのが有効とされています。(現在ワクチンは公費助成の対象になっているそうですが、詳細は市区町村によっても異なるので、担当部署に問い合わせて下さい。)
HIV/AIDSは全世界では感染者の数は3000万人以上いるといわれ、中でもサハラ砂漠より南方のアフリカはその6割近くを占めるなど惨憺たる状況にあります。欧米諸国の発生率が減じている中で、東欧からロシア、アジア諸国は増えているようです。日本では登録者数はHIVが1000人位、AIDSが400人位(2006年)とのことですが、ネットでみると8000人位のHIV陽性者がいるとありました。まだ数は少ないとはいえ、先進国の中で唯一日本だけが、HIV感染者の数が増加しているとのことです。これに危機感をもったためか、厚労省は今年から性感染症の疑いがあれば、エイズの血液検査を保険で認めるようにしたとの話がありました。HIVは感染しても2~3週間位して軽い風邪のような症状がでるだけで、自然に治っていきます。そして数年から10年後に免疫不全による諸症状を起こしエイズを発症します。従って血液検査をしないとなかなかわからないままということになります。このままの勢いでいくと風俗産業など介してアウトブレイクする心配もあります。時に週刊誌などに興味本位で記事が出ることもありますが、熱しやすくさめ易い国民性もあるのか、地道な撲滅キャンペーンはなかなか浸透しません。クラミジア、ヘルペス、梅毒などの他の感染症があると格段にHIVに感染し易いこと、コンドームでそれをかなり防ぎうることを市民に周知することが重要でしょう。
梅毒は感染してから3週間程で性器に赤く硬いしこりやただれができ、その近くにあるリンパ節(ソケイリンパ節)が無痛性に腫れてきます(第1期梅毒)。一旦症状は治まりますが、その後3ヶ月以内に体にいろいろな形の赤みのある発疹が出現してきます(第2期梅毒)。バラ疹、丘疹、膿疱、乾癬様などいろいろありますが、梅毒を疑う情報がないと皮膚症状のみではなかなか診断がつきません。スライドの中には岡本教授の提供されたものもあり、あの患者さんの口腔粘膜斑だな、と思われるような懐かしいものもありました。現在の梅毒は新鮮例は散発的に報告されるのみですが決して絶滅されたわけではありません。
これら疾患の呈示、解説の他に若者への性感染予防啓発のシンポジウムもありました。
その中で、「高校卒業時の同窓生へのピアエデュケーション経験」という講演を大学1年の女子学生が行いました。香港生まれというから、帰国子女でしょうか。エイズ撲滅活動のボランティア活動などを通じて、若者の性感染症について他人事としてではなく、自分自身の事として予防啓発に努めていこうという意識に目覚めた人でした。利発で分かりやすく、明快な話し方で仲間に訴えた性感染予防啓発の内容を我々にも話してくれました。
こういった内容の話を学校の教師や医師やいわゆる学識経験者といわれる人が若者に話すと得てして上から目線というか、説教口調になり勝ちです。これが同じ仲間の提言だと抵抗なく同世代に受け入れられるのでしょう。出席者のアンケートにも好意的な意見や、辛い思いをした女子からのもっと早くに知識を持っていれば、という後悔の思いや、男子学生からの男子がもっと女子を大切にしなければ、基本的な知識を教わって来なかったので非常にためになった、等の意見が述べられたとのことです。
こういう草の根の運動がもっと拡がっていけば若者の性感染症の予防にももっと役立つと思いました。
性感染症は感染症の中で重要な位置を占めていますが、普段の外来診療ではほとんど相談を受けたことがありません。若者の、ましてや若い女性から性病の相談を受けたこと等皆無です。かつては皮膚科は皮膚病花柳病科(性病科)と呼ばれた時代もあった程、治療の中心にあった科ですが、近年はすっかりマイナーな存在になってしまった感があります。今回の研究会でも皮膚科医はほとんどいませんでした。しかし、皮膚症状や粘膜症状を見る目や、梅毒、ヘルペス、コンジローマの治療などはやはり皮膚科専門医の存在価値を示すものです。性器ヘルペス、コンジローマは時々みうけますし、本人が意識していないながら梅毒も稀にみることはあります。逆にフォアダイス状態などの独立脂腺などをいぼなどの性病と思い悩んでいるケースもあります。気がかりであれば、やはり専門医に相談してもらいたいと思いました。
今回の研究会に出てみて性教育の話、パラメディカルの人の話など、参考になりインスパーヤーされました。機会があったらまた出席してみたいと思いました。

白馬岳遭難に思うこと

ゴールデンウイーク後半に、白馬岳で6人パーティーが荒天に襲われて遭難、命を落とした事故がありました。海外にいてインターネットで知りましたが、当初のマスコミ報道はTシャツなどの軽装備による不注意な遭難といった感じの報道でした。
そんなものかな、と思っていましたが、当事者などの証言など現場の状況が明らかになるにつれ、だいぶ真相は当初の報道とは異なっていることが明らかになってきました。
しかも、遭難者は北九州の医師を中心とした中高年の登山グループでした。他人事ではないなという思いと一体全体どうしてあのような悲惨な結末に陥ったのだろうという思いがずっと続いていました。最近の登山専門誌に同時刻に同ルートを踏破して白馬山荘に辿りつき翌日下山中に遭難者を発見した単独登山者(T氏,57歳)の手記があり、それをもとに捜索関係者も含めて事故と当時の状況を検証した記事が載っていました。それで大分当時の状況が分かってきました。
6人のパーティーは5月4日の午前5時半に栂池ヒュッテを出発しました。T氏は朝一番のゴンドラに乗り、同所を8時40分に出発しました。青空が広がり、強い日差しがあったのが、10時過ぎから雨が落ちてきました。T氏は午後の悪天候を予想して、白馬大池への夏道コースを取らずに、乗鞍岳からショートカットして稜線へ直登しました。正午過ぎには横なぐりの雨がみぞれに変化、12時45分頃、船越の頭を過ぎてT氏は前を行く6人パーティーを追い越しました。彼らはベテラン風で雨対策はしっかりしていたものの、2番手が空荷、3番手が前後にザックを抱え、皆がばてたメンバーにペースを合わせている様子だったと述べています。それから1時間後にT氏が小蓮華山に立った時は猛烈な風雪が吹き荒れていたといいます。ここで彼は進退の決断に迫られました。附近は凍りつき、雪洞も掘れる場所はない、風速20m以上の吹きさらしの稜線ではツェルトを被っても1晩は持たないだろうと思ったが、体力を全部使ってあと2時間休みなしに歩き山荘にたどり着こうと意を決したといいます。そして、実際に15時40分ほぼ夏時間と同程度の時間で全身が凍りつきながら山荘に着いています。まともに歩けず、両手のストックにすがり、4本足状態で前進したといいます。右腕で口もとを覆って呼吸を確保したといいます。
遭難パーティーのその後の行動は不明ですが、三国境で6人かたまって亡くなっているのが発見されました。小蓮華山から夏時間で30分の所です。無積雪期ならば白馬頂上まではわずかに1時間の所です。
遭難者の服装は当初報道されたような軽装ではなく、上着は3~4枚、中には7枚着込んでいた人もいた、しかも2人は中にダウンを着ていた、とのことです。山岳遭難救助隊の専門家によると低体温症で亡くなる遭難者のグループは一人一人が動けるところまで動き、ばらばらで見つかるケースが多いということですが、今回の事故について「まとまって遺体が見つかるのは珍しく、風が強くて行動がとれなかったか、一緒に動こうという意思があったのかのどちらかだろう」と推測しています。
別の専門家は「若い登山者なら8時間のコース、(6人パーティーはこの1.5倍の12時間の所要時間を見込んで山荘に予約を入れていたそうですが)通常60~70代が1日に歩くのは8時間が限界。体力の限界を超えた所で何かあったら即、遭難だ。今回はその何かが荒天だった。」と指摘しています。
今回のパーティーは海外登山の経験もあるベテランもいたとのことですが、12時間の予定時間はともかく、小蓮華山の手前で空荷で歩く程の不調者がいて、T氏が4時間で到達した所を7時間超かかっています。彼らが小蓮華山に到達した頃にはT氏の後ですので更に悪絶な状況だったでしょう。これだけタイムオーバーして不調者がいて引き返すというオプションはなかったのでしょうか。あるいは想定外の荒天に進むも地獄、退くも地獄といった窮地に陥り必死で山荘に辿り着こうと前進したのかもしれません。ただ、最期まで友を見捨てずに一緒に行動しひと固まりになって死んでいったのには並々ならぬ覚悟を感じずにはおれません。勝てば官軍、負ければ賊軍ではないですが、かなり批難記事もみられましたが最期まで頑張った彼らのご冥福を祈らずにはおれません。
あの山域では、小生も若い頃11月の白馬から蓮華温泉、5月の白馬から五竜遠見まで縦走、正月の遠見尾根、3月の鹿島槍天狗尾根などの経験はありますが、幸いに暴風雪には見舞われずに済みました。つくづく山の天候の急変の怖さに驚かされます。昔とった杵柄は年寄りの冷や水になり兼ねません。体力、気力の衰えは抗いがたいものがあります。
しかし、また一方で三浦雄一郎氏や渡辺玉枝女史など老いてもなおエベレストに登頂するなど元気な人もいます。人間の弱さ、脆さと同時に不思議さ、強さも思い知らされます。
自分の実力・現状を知って行動すること、大切でありながら結構難しいことです。

金属かぶれ

金属による接触皮膚炎(かぶれ)についてまとめてHPにアップしました。
金属かぶれは時計やネックレス、イヤリングなど、一見して誰でもわかるようなかぶれもありますが、なかなか原因がわからないものもあります。例えば、ズボンのポケット部分のかぶれ、一見して金属とは何の関係もないようですが、よく聞くと鍵の束をいつもポケットにいれていたりします。汗をかいたりすると、金属はイオン化して溶けだします。そして衣服を通して肌に付き、アレルギー反応を起こすという訳です。ジーパンの裏側に付いている留め金によるかぶれもよく目にします。特に女性は肌着などで覆わずに直接肌に着けているようです。見るからに金属かぶれと思いますが、意外と本人は自覚していないこともあります。ここらまではまだ初級編といってよいですが。
 続いて、セメントによるかぶれ、なめし革(クロムなめし)によるかぶれの原因がクロムという金属によるかぶれとはなかなか考えが及びません。金属なんか触っていません、と言われることもままあります。水銀によるかぶれも注意を要するものです。かつては水銀体温計の破損による水銀蒸気による水銀皮膚炎、赤チンなどのマーキュロクロムによる水銀皮膚炎をみたものですが、今では禁止薬物になっているために見かけなくなりました。水銀を含むチメロサールは現在もワクチン、殺菌消毒薬として使われていますが、これらのアレルギーは水銀ではなく、チメロサリチレートによるものとされます。いってみれば、これらは金属かぶれ中級編です。
 更に金属には口腔内や消化管から吸収されて全身性金属アレルギーを起こす事もあるといいます。歯科金属アレルギーでは有名な掌蹠膿疱症を始め、汗疱(異汗性湿疹)などは確かにパッチテストが陽性になったり、金属アレルギーを示しますが、歯周炎などの病巣感染も大きく関与し金属を除去して治るというような単純なものではありません。
そして、チョコレート、貝類、五穀米のヒエによる金属アレルギーもあるとのことで食物にも結構金属が入っていることを最近知りました。ただ、パッチテストでも陽性に出ず、除去試験・負荷試験してはじめて結果がわかることもあるようです。こうなるともう訳がわからなくなります。上級編というか、難問、奇問編ともいえます。
全てに対して、避けることなど無理ですが、金属アレルギーの概要、原因を知ることはさまざまな金属に囲まれた現代人には有用な事かと思い、まとめてみました。

柴又近辺

梅雨の合間をぬって、柴又近辺を散策してきました。 葛飾柴又は言わずと知れた寅さんの映画の舞台ですが、映画が終わってから随分経つのに帝釈天の参道の賑わいは以前と同じようでした。名物の草団子屋の前には人々が群がり、狭い参道は人波を縫って歩くような混雑ぶりでした。その参道を抜け、帝釈天も今回はパスして横道に入ると随分と静かな雰囲気になりました。しばらく歩くと山本亭に着きました。今回の目的地の一つです。妻が行こうといった場所です。 山本亭は山本栄之助の自宅ですが、氏はカメラ部品メーカーを起業し、資産家となった人だそうです。大正12年、関東大震災の後、当地の製瓦業者の屋敷跡に日本庭園を配した木造2階建ての建物を建てて自宅とし、その後4代に亘って居住したそうです。現在は葛飾区が保存していて、平成3年からは一般にも公開されています。 座敷からは庭園が望まれます。縁先の近くには池泉を、背後には植え込みと築山を設けて背後に滝を落とすという書院造りの庭園だそうです。座敷を囲む廊下の外面にはガラス戸とガラス欄間があり、外界の自然光を取り入れて明るい雰囲気を醸し出しています。抹茶と和菓子を頂きながら、ぼんやりと庭園の花菖蒲を愛でながら、滝を落ちる水の音を聴いていると一瞬ふっと何か時代をスリップしての別の代に遊んでいるような気にもなりました。  山本亭を後にして、水元公園に行ってみました。ここは都内随一の広さをもつ水郷公園だといいます。ここが都内かと思うほどに広くのびやかな田園風景が広がっています。眼前に広がる水郷風景を見ながらベンチでぼーと寛ぐのも観光地や繁華街を巡るのに増して豊かな時間に思われました。 花菖蒲はやや盛りを過ぎた感がありましたが、それでも鮮やかな白や紫の花は目を楽しませてくれました。ただ、のど自慢大会の大きな音や屋台のごみごみとした雑踏は花祭りとしては良いとしても、なくても良いかなと思いました。 花菖蒲の写真を何枚か撮ってみました。
山本亭1.jpg山本亭2.jpg山本亭3.jpg山本亭4.jpg山本亭5.jpg水元公園1.jpg水元公園2.jpg水元公園3.jpg水元公園4.jpg水元公園5.jpg水元公園6.jpg

医学のトップリーダー

特別企画 Cutting edge:知と技

cutting edgeとは、科学技術・芸術などの最先端、最前線、前衛:流行の先端を行く人のこと

毛包のステムセルエイジングと老化  東京医科歯科大学   西村 栄美
超微小外科手技(スーパーマイクロサージャリー)を用いた美容再建  
                                      東京大学       光嶋 勲

皮膚科学会の大塚会頭のお考えか、皮膚科分野でのトップリーダーの講演がありました。
最初の講演は遅れて入室し、大きな会場の奥の方に座っていただけでしたし、マイクの位置のせいか、一寸聴きとりづらく、難しそうな内容だったし、恥ずかしながら予備知識もなかったのであまり期待もせずにいたのですが、次第にこれはすごいかもしれないと思えてきました。また後で、インターネットで調べて、やっと本当にすごいことが分かりました。自分でうまく解説できないので第8回(平成23年度)日本学士院学術奨励賞受賞の理由文を転載しました。
「組織幹細胞の維持機構の解明は現代生命科学における重要課題の一つです。西村栄美氏は、マウスの毛にメラニン色素を送り込む色素細胞について研究し、その幹細胞を世界に先駆け同定、そして、この細胞を取り巻く環境(ニッチ)が、幹細胞の運命を制御することを明らかにしました。次いで、色素幹細胞に隣接する毛包幹細胞がニッチとして働き、この細胞が合成するTGFβが色素幹細胞の維持のために必要であること、最近では、毛包幹細胞が発現するコラーゲンXVIIが、毛包幹細胞だけでなく色素幹細胞の維持にも必要であることを明らかにしています。さらに、幹細胞維持機構の異常によって色素細胞が不足し、これが白髪化を引き起こすこと、また、色素幹細胞におけるDNA損傷が細胞の自己複製機能を抑制し、老化における白髪化の原因となることを示唆しています。以上、色素幹細胞の維持機構から白髪化の仕組みに至るまで数々の重要な新知見をもたらし、オリジナリティの高い研究である と評価されます。 」
要するに、毛や色素(黒髪)の元になる、色素幹細胞、毛包幹細胞のありかが毛乳頭より上方のバルジ領域に存在することを世界に先駆けて発見し、これらがニッチと呼ばれる微小環境でのみ存在、黒髪の維持に役立っているが、ゲノムストレス(放射線など)や加齢などによって、分化していくと幹細胞が枯渇して、白毛、脱毛になっていくことを解明したものです。
残念ながら17型コラーゲンを食べても「薄毛」は治りませんが、これの発現制御の仕組みがわかれば「白髪」とともに「薄毛」も治せる日がくるかもしれません。さらにこの研究の素晴らしいところは、毛だけにとどまらず、ニッチを含む幹細胞の視点から癌細胞、特に悪性黒色腫などの制御機構なども同様の理論からアプローチして解明していこうとしているところです。
 次の演者の光嶋先生の話はゴッド・ハンドの神業ですので、視覚的に最初から最後まで凄いのが一目瞭然でした。今や直径0.3mmから0.8mm程の血管・神経をつなぐ超微小外科のトップリーダーで世界にその技術を発信し続けている人です。この分野は日本が世界のトップだそうですので、彼が世界のトップリーダーということになります。この技術を使えば大きな皮膚・骨・筋肉・脂肪の塊や神経を生きたままで移植できるそうです。数々のスライドは衝撃的なものでした。事故や病気で欠損した顔やペニスの再建によって人生のクオリティー・オブ・ライフを取り戻したケースが提示されました。また性同一性障害に対する身体の修正術も格段に進歩したとのことです。印象的だったのは、赤ちゃんの顔に大きくできた黒あざのスライドでした。母親はそれをみて自殺を考えたそうです。次に出たスライドはあざのない美しい娘さんの写真でした。何年かぶりに来院した母は、「先生は2人の生命を救って下さいました。」と涙を流したそうです。超微小外科は傷だけではなく、心の傷も癒すということです。
 心に残る2人の講演でした。

しみ・しわ・レーザー

学会が終わりまたばたばたした日常に戻りました。盛り沢山の内容でしたが、今回はレーザーのセッションをいくつか覗いてみました。近年はレーザー機器がいろいろと出てきて話を聞いてみても混乱しそうです。専門の先生方でも意見が異なるものもあります。
仕入れた知識を一寸整理して、まとめてみました。
レーザーとはlight amplification by stimulated emission of radiationの頭文字をとった合成語で「放射電磁波の誘導放出による光の増幅」といった意味だそうですが、単色光の光を増幅してその光の熱エネルギーを治療に使ったものといえます。
代表的なレーザー
*炭酸ガスレーザー・・・光の高出力エネルギーで水分を含んだ組織に非特異的に吸収されて焼却するもので、老人性疣、ほくろなどを取るのに使われますが、瘢痕を残す恐れがあります。
*色素(ダイ)レーザー・・・・波長585nm,595nmで赤血球のヘモグロビンに吸収されるもので血管腫に使用されますが、血管の太さ、深さなどによって治療効果はまちまちとの事です。
*Qスイッチルビーレーザー・・・太田母斑や後天性真皮メラノーシス(ADM:acquired dermal melanocytosis)などに対するゴールデンスタンダード。 アレキサンドライト、ヤグレーザーも有効。
ここまでは、すでに確立されたというか、教科書的なものですが、発表された抄録をみると新たな機器が目白押しでした。その中で目についたものをいくつか。
*IPL(intense pulsed light)・・・レーザーではなく可視光線域の連続波長の光ですが、大雑把にいえばキセノンランプを強くフラッシュしたものと考えてよいそうです。カットオフフィルターの選択によって特定領域の光を照射できます。但し、効果はマイルドでダウンタイムが少なく日本人向けともいえますが、ある演者が述べていたように当初は「あれはインチキパルスレーザーだ、エステだ、産毛がとれるだけだ。」などと陰口をたたかれたそうです。しかし10年経っても生き延び、今やskin rejuvenation(若返り)のゴールデンスタンダードとなっているそうです。確かに映像をみると美白、肌つや、はりなど肌の質感の改善がみられました。施術後痂皮などのやけど様の症状を起こさす、すぐに化粧もでき日本人向けの機器だと思われます。熟練した医師ならかなりの部分のしみ、くすみ、赤ら顔に効果がありそうです。但し、フィルター、冷却装置など機器の進歩もさりながら効果は手技の巧拙にも大きく左右されそうです。
*レーザートーニング・・・QスイッチNd:YAG Laser メドライトC6。 以前のブログにも一寸書きましたが、肝斑に対してレーザーは原則禁忌ですが、この機器は1064nmの波長を均一に低出力照射することで、表皮基底層のメラニン色素を除去して炎症による色素増強を抑えながら症状を改善していくというものです。但し、これは根治術ではなくいずれ再発するものなので、使用に慎重な意見もありました。しかし、数年間軽快している例もあり、例え繰り返すことになるにしても、肝斑に悩み、ビタミンC,トランサミンが効果不十分な人には朗報かと感じました。
*フラクショナル炭酸ガスレーザー・・・炭酸ガスレーザーは最も早く導入され、リサーフェシング治療も試みられましたが、施術後の色素異常、瘢痕などの合併症が多く一般的にはなりませんでした。2007年にはフラクショナル炭酸ガスレーザーが導入され、若返り治療やにきびの瘢痕への治療が報告されてきています。これは、イメージとしては炭酸ガスレーザーを剣山のように細く多数真皮内に照射して結合織のリモデリングを促し瘢痕を少なくするといったもののようです。今回もアイスピックのように窪んだにきび痕への良好な効果が報告されました。しかし、専門家の中にはこの効果は一時的な真皮の浮腫によるもので早晩またもとに戻る、施術が先行して理論が確立していない、などとこれを危ぶむ声もありました。しかしにきび痕など根治術のない現在、有意義な方法かとも思いました。
*RF(radio frequency,ラジオ波)・・・光やレーザーと異なる選択性を持つため、メラニン(黒)やヘモグロビン(赤)の色と関係なく働き、表皮へのダメージを少なくして真皮内にまで熱エネルギーが到達してコラーゲンのリモデリングを行うというものです。いってみれば電極の間に高周波を通し、真皮を電子レンジでチンするイメージでしょうか(ラジオ波はマイクロウエイブより長い波長ですが)。皮膚や皮下組織の引き締め効果があり、しわ、たるみに有効というものです。さまざまな機器があり、表皮のダメージを回避して、真皮組織の再構築をうたっていましたが、温熱作用の長所・短所の検討はまだまだこれからという感じでした。バイポーラーの機器よりもモノポーラーの機器の方が真皮深くまで到達し、しわ、たるみへの効果が高いそうです。ただ、この施術の効果ははすぐに眼に見えて現れるわけではなく、リフトアップなどの手術程の効果はないので、過度の期待を持たせないことも必要とのことです。
 レーザーの分野は近年日進月歩というか、一寸ついていけない程の速さですが、一般の皮膚科医も知らないでは済まない時代になってきたようです。
 ただ、これら機器は大体欧米が先行して欧米人を対象として開発されたものですが、我々日本人とは肌質、反応性が異なります。欧米人よりも、日本人はしみ、色素沈着、瘢痕を起こしやすいとされています。本邦独自の研究が必要でしょう。またレーザーに造詣の深い先生方が治療による光老化、色素性母斑の悪性化などを含め、まだ理論的な裏付けが進んでいないことの危惧も述べていました。日進月歩のこの分野はこれからいろいろとより最適な機器・方法が開発されることが期待されます。それにしても眼を見張るような数々の報告でした。

二条城

皮膚科学会総会で京都にきています。昨年は東日本大震災のために総会は中止になりました。それで2年ぶりの総会となりました。そのためもあるのか初日から活気があり、人が満ち溢れていました。学会が目的ではあるけれど、折角久しぶりに京都に来たのだから何も見ないで帰るのはもったいない、と勝手に理由をつけて二条城に行ってみました。 晴れてむしろ夏のように暑かった日の午前中の観覧でした。やたら学生が多く、落ち着いて観覧できなかったのは残念でした。二の丸御殿は大政奉還も行われた由緒ある場所ですが、人ごみの中を立ち止まらないで進む程でした。後でタクシーの運転手が普段は結構静かな所なんですが、今頃は修学旅行の学生さんで混雑するのですよ、といっていました。二の丸御殿の壁画や天井画などが各部屋に描かれ、見ごたえがありました。二の丸庭園も趣きのあるものでした。 広い城内を見てまわった後、展示収蔵館に行ってみました。ここは皆の回覧コースから外れているのか、小生のほか誰もいませんでした。そのせいか案内のおじさんが丁寧に説明してくれました。「ここは大広間の一の間、二の間の障壁画の原画がおいてあるのですよ、そして大政奉還が行われた間とそのものの画がみられるのですよ。」と説明してくれました。一段高い畳の部分も設えてあり、丁度将軍の目線が体現できます、とのことでしたが、座ってみても高くて落ち着かず、いい気分とはいきませんでいた。やはり身の程違いということなのでしょうか。襖絵の上のほうは狩野探幽の手になるものがそのまま残っており、下方は日光で色が変色したため後で手を加えたものでなるほど松の描き方に深みがないようでした。 一寸した歴史探訪になりました。
二条城入り口.JPG二の丸御殿.JPG二条城庭園1.JPG二条城庭園2.JPG二条城地図.JPG天守閣跡.JPG天守閣跡から.JPG本丸御殿.JPG桃山門から天守閣.JPG