月別アーカイブ: 2013年4月

にきびQ&A(10)その他の治療、悪化させる薬

Q:にきびの治療法で、その他の方法はありますか。
A:いくつかの薬剤があります。
1) 経口避妊薬(ピル)
ピルは卵巣性のアンドロゲンや副腎性のアンドロゲンを低下させる作用があります。低用量ピルに含まれるエストロゲンは血中の性ホルモン結合蛋白を増加させ、遊離テストステロン(FT)を減少させる作用があります。
日本では中用量ピルや低用量ピルでのニキビ治療の報告があり、いずれも血中のFTを低下させ、ニキビへの効果があったそうです。
そして、第3世代1相性ピルのマーベロンが最も効果があったそうです。
しかし、ピルには肥満、高血圧、血栓症などの副作用があり、子宮頚癌や乳がんのリスクを高める可能性もあるとのことでニキビ治療に対する安易な治療は避けるべきとされています。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、「他の治療が不十分で避妊を容認する成人女性に対してはピルを使用しても良いが推奨はしない、使用する場合は保険適用外であること、種々の副作用があることを十分に周知する」必要があるとなっています。

2)プレグナンジオール(ジオール)
プレグナンジオールは黄体ホルモン(プロゲステロン)の代謝産物として尿中に排泄されるもので、もうホルモン作用は有しないとされますが、黄体ホルモンと競合的に毛嚢脂腺に作用して黄体ホルモンの作用を弱める、また抗アンドロゲン作用によってニキビに効果を発揮するとされます。
ただ、プロゲステロンだけで、ニキビの悪化は説明できず、詳しい機序はまだよく解っていません。
ガイドラインでは「他の治療で改善が不十分な成人女性に対して、選択肢の一つとして推奨する」(C1)となっています。

3)スピロノラクトン(抗アンドロゲン療法)
高アンドロゲン血症によって、男性化がみられるために難治性のニキビができることが知られています。多のう胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)では、卵巣の多のう胞性の腫大、肥満、男性化、多毛、無月経を呈し、難治性のニキビができます。この様なケースでのニキビ治療に関しては、婦人科にて精査の上で、アンドロゲンの働きを抑制するスピロノラクトン治療が行われます。
スピロノラクトン(アルダクトン)は以前より、利尿効果があり、高血圧症に広く使われてきました。男性では女性化乳房、女性では月経不順などの副作用がありますが、ニキビに効果があります。ただし、保険適用はありません。
先日も、性同一性障害の女性の患者さんが来院し、男性ホルモンを使用し始めてからニキビが増えてきたと訴えられました。まさに男性ホルモン剤の作用を間近にみた例でした。

4)イソトレチノイン
ビタミンAの代謝産物で、脂腺の分化、増殖を抑制し、大きさを減少させ、皮脂の産生を抑制し、毛包漏斗部の角化異常を是正します。従って、欧米では重症の結節や膿疱例に対しては第1選択薬となっています。
米国ではアキュテイン、欧州ではロアキュテインの名称で難治性痤瘡に使用されています。しかし、これには重大な副作用があり問題になっています。その一つは催奇性があることです。妊娠中、可能性のある女性は使用してはいけません。また近年、イソトレチノインによるうつ病の増加と自殺率の上昇ということが問題になっています。先年のEADV(ヨーロッパ皮膚科学会)のニキビの講演でもこの事が話題にされていました。自殺の問題は統計上明確ではありませんが危険性はあります。
これらの事を兼ね合わせると、効果があるからといってネットなどで個人的に購入、使用することは厳に慎んで下さい。

Q:ニキビを悪化させるような薬剤がありますか。
A:いくつかの薬剤はニキビを悪化させます。
1)ステロイド
ステロイド剤の内服、外用でニキビは悪化し、また新たに出現します。特徴は病期のそろった紅色丘疹が多発してみられることです。
鑑別はマラセチア毛包炎です。これも形の揃った紅色丘疹がみられます。また面皰はみられません。
先日も、マラセチアの検査はできますか、という電話がありました。受診していただいて、診察すると胸に紅色丘疹が多発しています。ネットで調べてマラセチアと思い、マラセチアを専門の(?)東京の西の方の皮膚科まで行ったとのことです。そしてニゾラール(マラセチアの薬)を処方されて悪化したと来院しました。マラセチアの検査は出来ないので出来る皮膚科に行くように(??)とのことだそうです。均一な紅色丘疹はマラセチア毛包炎でも合っていますが、よく見ると毛細血管拡張があります。これはマラセチアではみられずステロイド皮膚の特徴です。以前ステロイド剤を使ったでしょう、と聞くと案の定美容形成・内科でフルコートを処方されしばらく使っていたということです。
こういう状態をステロイドによる「酒さ様皮膚炎」とよびます。使っていたステロイドを中止すると炎症の抑えが効かなくなって一時的に皮疹は悪化するのです。しつこく伝えていないと患者さんは止めて悪くなった、と混乱してしまいます。
ちなみにマラセチアはズームブルーという染料で染めます。ただ、かなり長くおかないと染まりません。患者さんも染まりませんでしたが、何時間か置くと染まってきたかもしれません。というのはステロイド痤瘡でもステロイドによってマラセチア真菌が増えているという報告もあるからです。
こういったsteroid acneはよく目にします。アトピー性皮膚炎など注意はしていてもステロイドニキビが多少なりとも出てしまうのはよくあります。

2)ダイオキシン
PCBのような有機塩素化合物はダイオキシン類と総称されて種類によっては、催奇性や発癌作用があります。
転写因子であるaryl hydrocarbon receptor(AhR)を介して生体に様々な影響をあたえます。皮膚にみられる症状は塩素ニキビ、色素沈着が特徴です。
塩素ニキビは尋常性痤瘡と異なり、眼の下、耳周辺、腋窩、鼠径部に好発します。
日本では1968年に発生したカネミ油症事件が有名です。
海外ではベラルーシ大統領のユーシェンコ氏が何者かにダイオキシンを盛られて顔面に塩素ニキビが多発した例が有名です。

3)EGFR阻害薬
EGFR(epidermal growth factor receptor)阻害薬は大腸癌、胃癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌など、EGFRを過剰に発現している癌に抗癌作用があるとされます。
皮膚では表皮、付属器などに多く発現されていますので、細胞の増殖・分化などが障害されてニキビ様の発疹ができます。セフキシマブ(アービタックス)に最も多く出現し、次いでエルロチニブ、ゲフィチニブに多くみられます。脂漏性皮膚炎を合併している

名古屋の思い出

名古屋の学会での特別講演2は2008年ノーベル物理学賞受賞、名古屋大学特別教授の益川敏英先生の「現代社会と科学」という講演でした。
 当初、話を聞いていて、話は結構あちこちに飛ぶし、滑舌も決して良いとはいえない講話で、おやおやどうなるのだろうと思いながら聞いていました。
終わったあとも、まあ、それなりに面白いけどテレビのインタビュー同様お茶目な先生だな、くらいの印象でした。
 でも、さすがにきらりと光る名言が散りばめられていました。日を追うごとにというのはオーバーですが、真髄をついた言葉はやはりただ者ではないと思い知らされました。
そのいくつかを・・・

*ファーブルの本を読んでいて、パスツールとのやりとりの部分に言及されていました。
ある時期、ヨーロッパでは、蚕の病気が蔓延し絹織物産業が大打撃を蒙りました。当時の医学研究者であるパスツールに問題の解明の命が下り、彼はファーブルを訪ね蚕についての基礎知識を得たそうです。ところがパスツールは蚕の繭のなんたるかさえ知らなかったそうで、ファーブルは大層驚いたそうです。しかし、パスツールは基礎知識を欠きながらもその病因にせまり、蚕の微粒子病の病原体を発見してしまったそうです。
ここで、上の例を引いて益川先生は眼でいかに詳細に見ていてもことの本質を見ていないと問題の解決には至らない、ような話をされました。ファーブルは蚕のことは微細に観察し、知っていました。しかし、問題の解決はできませんでした。逆にパスツールは蚕のことはほとんど知りませんでした。しかし、現象の本質が見えていたということでしょう。
これは、科学者だけではなく医学者にもいえることかもしれません。眼で見えてはいるけれどもことの本質が見えていない、ということはよくあります。いわゆる「見れども見えず」であったり、眼が「ふしあな」だったりすることはよくあります。

*ノーベル医学賞の中山教授のiPS細胞について、われわれはヒト細胞の多機能性、多様性に眼を見張りますが、益川先生は人間の細胞、仕組みは意外といい加減なものですね、神様もアバウトに作ったのですかね(とはっきり言われたかは定かな記憶はありませんが),素粒子の世界ではこういうことはありません。もっときっちりとしています。・・・というようなことを話されました。
成程、こういう捉え方もあるのかと眼からうろこでした。
小生などは、偉い先生が書いた本だとか、教科書は金科玉条のように押し頂いて免疫細胞の流れなど必死に覚えようとするけれども、本当のところ体の中では図表に描いた通りの流れが公式のように起こっているわけではないでしょう。3次元の体の中で、4次元の時間を経て、ダイナミックな動きが起こっているのでしょう。これはまた一人一人で異なることと思います。人間、生物の多様性、どう反応するかわからない’いい加減さ’に繋がるものと思います。
ヒトの細胞の動きや、癌細胞の動き、細菌やウイルスの動きなどをみていると、学者が新説を唱え、首根っこを捕まえたかと思うとウナギのようにぬるりと逃げられたようなことが結構あるように思われます。
生物のこの多様性というか、ある種の’いいかげんさ’はまた新たな発見や面白さにもつながるのかもしれません。

*また学生教育の話題に触れられました。京都大学での学生が研究室に入ってくると全員を一つの大きな部屋に押し込めて皆で切磋琢磨させるのだ、とおっしゃっていました。
1年もすると見違える程成長すると。それは他の学生と議論することもあるし、また他の学生が夜遅くまで勉強して帰らないと、一人だけ帰ってしまう訳にもいかず、一日中勉強するようになる、と。確かに鉄は熱いうちに打て、というのはそうなのでしょう。

これらの話は、むしろ若い医学者にとって非常に示唆に富んだ話だと思います。流石にもうこの年になると素晴らしい話だとは思っても 「馬の耳に念仏」、時すでに遅し、です。せめて若い医学者に先生の話を聞いてもらって、発奮し世界に羽ばたいて貰いたいと思った次第でした。
時には別な世界の人からこのような高邁な話を聞くのも新鮮で、考えを活性化させてくれていいものです。

にきびQ&A(9) BPOとアゼライン酸

Q:BPOとは何ですか。ニキビへの使用のメリットは何ですか。
A:BPO (Benzoyl peroxide ) (C6H5CO)2O2 過酸化ベンゾイル
過酸化ベンゾイルは一般的なニキビの治療薬として50年以上の使用の歴史があり、米国のFDAでも認可されており、石鹸への配合や、アダパレン、クリンダマイシンとの合剤も認可されています。そのニキビに対する効果はBPOの分解産物が持つ酸化作用によって Propionibacterium acnes などのニキビ菌の代謝を阻害して効果を発揮すると考えられています。BPOは化学的殺菌作用によって、ニキビ菌を殺すので抗生剤と違い耐性菌が生じにくいとされています。欧米においては中等度以上のニキビに対しては第一選択剤の一つとして使用されています。
日本国内ではまだ認可されていませんし、国内の治験が始まっていますので現在は積極的には使用できません。しかし、早晩日本でも認可され使用できるようになるはずです。
以前はグラファラボラトリー株式会社から「グラファBPエマルジョン」として2.5%の過酸化ベンゾイル配合製剤が供給されていましたが現在は新たな製造は中止しているようです。ただ、すでに医院で購入しているものの使用は制限されてはいないようです。海外では4~10%製剤があるとのことですが、日本人には刺激が強すぎるようです。5%製剤でも刺激感を訴える人がいます。3日間のピンポイントで赤ニキビに塗布すると患部の皮が剥けてきてヒリヒリと刺激を訴える場合もありますがしばらくすると軽快する例が多くみられています。(当院では2.5%と5%の使用経験がありますが、かなりの人に有用な印象があります。)

Q:アゼライン酸とは何ですか。ニキビへの使用のメリットは何ですか。
A:アゼライン酸は小麦などに含まれる飽和ジカルボン酸 (C6H16O4) で抗菌作用や抗男性ホルモン作用、毛漏斗部の角化異常による目詰まりを改善する作用があり、ニキビに効果があるということです。
面皰(白ニキビ、黒ニキビ)や丘疹、膿疱、結節への効果もあるとのことです。
20%製剤がクリニック限定化粧品として供給できます。これも塗布後に若干の刺激感、痒みなどがあるようですが比較的短期間で慣れてくるようです。アゼライン酸はBPO等と比較すると作用はマイルドなようですが、これも欧米では広く用いられる標準的な薬剤とされています。
当院での使用経験はそれ程多くないので効果、副作用などについての意見はまだ明確ではありませんが、使用経験の多い先生方の印象はよいようです。
なによりも有難いのは、ディフェリンの刺激が多く使えない方、妊婦さんにも12歳以以下の児童にもつかえることです。
アゼライン酸にも刺激はありますが、ディフェリン程ではないようですし、安全性が高く、欧米での長期の使用経験もあるので比較的安心して長期に使用することができるようです。

中原寺メール4/20

【住職閑話】~憶念~
 今月14日に亡くなった三国連太郎はとても好きな俳優でしたから、その死にあたっていろいろと考えています。
特に年をとってからの温かな深みのある風貌は、なんともいえない重厚さが滲み出てひきつけられました。
 一作一作ごとの役柄への異常なほどの執念はよく知られたところですが、あの人間的魅力は90年という人生の積み重ねから自然に醸しだされたものなのでしょうか。  
闘病生活中にも演技について書き残していたメモが見つかったようですが、とても興味深い幾つかがあります。
「過ぎた日は再び迎えられない。演技もまったく同じであるように再現できない運命的な『物』である。コピーできない演技とは経過そのものであったと50年目にやっと認知した。遅かった。」
ここには最後の最後まで孤高の役者を追及して止まなかった厳しさを見る思いがします。
そして死の二日前、ふいに「港に行かなくちゃ。船が出てしまう。」と口走っていたという。それは何を意味していたのかは知るよしもありませんが、親鸞聖人に傾倒していた三国連太郎からすると、私の勝手な想像に過ぎませんが、次の和讃の一首が思い浮かんでしまうのです。
「弥陀・観音・大勢至 大願のふねに乗じてぞ 生死のうみにうかみつつ 有情をよばうてのせたまふ」(阿弥陀仏とその脇士である観音、勢至菩薩の三尊は、かならずすべての人々を救いとるという本願の大船にのりこんで、生死の海に浮かびながら、迷いおぼれる私たちを呼んで救うてくださるのである) 
死に臨んで、何が頭をよぎったのでしょうか?
「日輪没する処、明星輝き出ずる如く、人生の終焉は永遠の生の出発である」という言葉をあらためてかみしめています。
三国連太郎の生涯を思う中に、ただいたずらにあかし、いたずらに暮らして老いの白髪となれる吾が身とは、あまりにも雲泥の差を感じるばかりです。

褥瘡(床ずれ)

名古屋の学会の最後は皮膚外科up-to-date、褥瘡の治療という教育講演がありました。皮膚外科は苦手な部門で、めったに出ないのですが、褥瘡ということで出席してみました。
褥瘡の治療には大きく分けて、スキンケア、軟膏処置などの保存的治療と外科的治療があります。浅い潰瘍ならば、軟膏処置だけでもなんとかなりますが、深い潰瘍、硬い壊死物質になるとそれらをきれいに取り除く外科治療が必要になります。この操作はデブリードマンとよばれ、ハサミやサージトロンを使って行われます。こうしてきれいになった肉芽は徐々に改善していきます(栄養状態、傷のケアが十分になされれば)。ただ問題は下掘れのポケット形成が往々にしてできてしまうことです。こうなるとポケットを切開して手術による再建術を行う必要があります。
最近は局所陰圧閉鎖療法が導入され2010年から保険適用になり、治療期間の短縮、傷閉鎖の効果が上がっているそうです。この治療方法は元々米軍の医療機関で取り入れられたもので、2000年代中頃から日本でも試みられたそうです。
褥瘡の傷を清潔に保って、そこにスポンジ状のポリウレタンマットを当て、その上を透明なフィルムで密閉します。そこに穴を開け、ドレナージ用の吸引チューブを連結し吸引器で吸引し陰圧にします。傷を陰圧にすると肉芽組織が促進し、過剰な滲出液や老廃物を除去でき、また傷周囲の血流促進効果もあって潰瘍の治癒を促進するというものです。
この吸引器はVAC( Vacuum Assisted Closure ) ポンプといってKCI(キネティック・コンセプト)社の登録商標で寡占状態でしたが、最近は他社から小型で携帯もできるような機種も発売されたそうです。
褥瘡の治療方法は日進月歩で、厚労省は2002年から褥瘡対策未実施減算を算定、2006年からは褥瘡対策チームの設置を義務づけるなどし、病院での褥瘡の有病率は4~8%ですが、着実に低下してきているそうです。

しかし、問題は在宅での患者さんでしょう。最近の新聞報道によると65歳以上の人口が3000万人を突破したそうです。2025年には寝たきり老人が230万人に達すると予想されています。上に書いたものが、光の部分とすれば、下記のものは影の部分ともいえます。むしろ書きたかったのはこの部分です。
先日も以下のような事例がありました。
母親に床ずれができたから見てほしいとの依頼があり、その方の車で患家に赴くと中年の弟さんが一人で母親の面倒をみていました。仙骨部に褥瘡がありました。ここ数日で拡がったとのことですが、寝たきりになった状況が要領を得ません。病気は、内科主治医はと聞くと高血圧でみてもらっていたが、最近は動けないので薬を取りにいっている、とのことです。介護ケアは受けていないとのことでした。立ち入った事を聞くのもはばかられましたが、独身で現在は母と子と2人で暮らしているようでした。多分男手ひとつで慣れない下の世話など大変でしょうし、褥瘡の知識など無論ないでしょう。翌日お兄さんに医院に来ていただき、薬を出し、褥瘡ケアについての一般向けの本をお貸ししました。それよりも一刻も早く主治医に介護申請をしてもらって専門のナースなどにケアをしてもらうように告げました。
数日後、来院されてその内科医は往診、在宅はやらないので患者を連れてくれば書類を書くとのことでした。一寸憮然としましたが、それぞれの方針があるので仕方ないのかもしれません。しばらくして近くの在宅をやる内科医師が来てくれたとのことで一安心しました。しかし、深い潰瘍になれば細菌感染もおこしうるし、入院が必要になるでしょう。外科医で病院の院長をしている友人にでも頼まねば、と考えていましたが、急に入院することが決まった、と連絡がありました。それは千葉からかなり離れたところでした。
在宅での看護、介護の危うさ、難しさを感じた例でした。
今後、高齢者が増えていけばますますこのようなケースは増えていくのかと思いました。
老々介護、突然の病気など誰にでも降りかかってくる問題です。
袋秀平先生が、褥瘡の在宅ケアの重要性と問題点を書いておられました。
「褥瘡局所だけに目がいきがちであるが、患者の状態、介護の状況、経済力、福祉サービスの利用状況について評価し、褥瘡を発生・悪化させる要因を減少させる対策をたてる」ことが重要です。
在宅における褥瘡診療の問題点
1.医療側の問題
・在宅医療が内科主導であること(積極的に往診を行う皮膚科医が少ないことにも問題があるかもしれませんが)
・知識不足・・・褥瘡学会などへのコメディカルの方々の進出は目覚ましいものがあり、医師よりも看護師のほうが最新の知識を持っていることが稀でない。(日進月歩のこの分野では10年前の教科書は役に立たない)
 確かに耳が痛い言葉で、先日県の褥瘡の委員をされている東京歯科大学の高橋先生と話をしたとき、「千葉県では褥瘡学会に入っている皮膚科医はほんの数名です。県のあちこちに講演にいくと一般の方の数百名の参加者があります。」とのことでした。コメディカル、一般の方に比べてむしろ皮膚科医の動きはそれ程活発ではないように感じました。自分自身も勉強し直さなければ、と思いました。
・連携不良・・・医師同士、家族、介護に携わる人々との協同、知識の共有
・ケアマネージャーの問題・・・在宅医療の実務経験の乏しい人も多く、その資質も均一ではない。
2. 介護者の問題
 ・マンパワー不足
 ・知識不足
3. 制度上の問題
 医療費の自己負担の増加、施設への往診の診療報酬の制限

入院での褥瘡ケアはどんどん進んでいるように見受けられますが、在宅でのケアはいろいろと問題があるようです。当然有病率も高く7~15%とのことです。
誰にでも起こりうる寝たきり、介護の問題は避けて通れません。
在宅の褥瘡についての情報は群馬大学皮膚科の石川治教授の書かれたものが、わかりやすく非常によくまとまっていますので参考にされると良いかと思います。
*日本皮膚科学会ホームページの皮膚科Q&A 
第22回 とこずれ(褥瘡(じょくそう))

*褥瘡辞典 for Family  マルホ株式会社・・・褥瘡(床ずれ)の患者さんと、褥瘡(床ずれ)のケアに携わるご家族に向けて、褥瘡(床ずれ)の適切な予防と治療・ケアにお役立ていただける情報を提供することを目的としてマルホがお届けする、褥瘡の総合情報サイトです。

最後に最低限知っておくべき床ずれの知識を書いておきます。
大前提
困った時には、一人で悩ますに周りに助けを求めましょう。
市や町の福祉担当部署
に出向くか、電話相談しましょう。

1.床ずれの最大の治療は床ずれ予防に勝るものはありません。
2.床ずれは持続的な圧迫が連続して加わることでおきます。寝たきりでは2時間で起き、車いすでは20分で起きるとされます。それで2時間ごとの体位変換、20分ごとのプッシュアップが必要です。但し、夜間などはできる範囲で行います。
泥酔、睡眠薬の飲みすぎ、糖尿病性昏睡、脳溢血などでも突然に起きますので注意が必要です。
3.床ずれはまさにずれることでも起きます。それで、ベッドのヘッドアップは30度までとします。逆に車椅子では90度を保つようにします。
4.床ずれ予防には体圧分散マットが有用です。使用の目安は体位変換できなくなったときです。エアーマットレス、ウォーターマットなどは介護保険で貸与できますのでケアマネージャーなどに相談しましょう。
5.失禁(尿、便もれ)で湿ると摩擦が大きく、またアルカリ性に傾き皮膚炎ができ易く皮膚のバリアをこわし、床ずれをできやすくします。こまめに紙おむつを交換しましょう。
6.そのような場合は弱酸性の液体石鹸で優しく洗います。その後は微温湯で洗い流します。こすったりマッサージしてはいけません。
7.シーツのしわは床ずれを助長します。しわはできないように気をつけましょう。
8.床ずれができたかどうかは、骨圧迫部の圧迫をなくしてから30分たっても赤みが消えないかどうかで判断します。赤みが消えない場合は床ずれと考え、医師に相談することを勧めます。

多汗症の治療ーーボトックス

最近の学会に出ると、腋窩多汗症の治療のための講演会(講習会)があります。今回の名古屋での皮膚科学会でも重度の腋窩多汗症に対するボトックス注射薬の講習会がありました。
事前登録制とのことだったので、予約していなかった小生はだめかと思いましたが、駄目元で朝早く学会場に赴くと大丈夫とのことでした。
 本邦での原発性腋窩多汗症の有病率は人口の5.7%と非常に高い割合であるとされています。また手掌多汗症は5.3%とされ、重度な場合は日常生活や、仕事に支障をきたす場合もあります。特に手掌の場合などは答案用紙がびしょびしょになって、試験も受けられないといった人も見受けます。
この度、局所多汗症のうち、重度の腋の多汗症については健康保険を使ってボトックス局所注射療法ができるようになりました。
ボトックス注射やワキ多汗症についての情報はグラクソ・スミスクライン株式会社のワキ多汗症サイト・・・ワキ汗GSK (http://waki-ase.jp)で閲覧することができますので、簡単に書きます。

ワキ汗でもボトックスが使えるケースは「重度の原発性腋窩多汗症」です。
大雑把にいうと、下記の場合に相当します。
・続発性(他の病気に伴って起こる発汗)は除きます。
・25歳未満で発症して、家族にも同様な人がいる。
・発汗が頻繁で我慢ができずに、日常生活に支障がある。

ボトックスは汗腺からの発汗を調節する交感神経節後ニューロン終末からのアセチルコリンの放出を阻害し、神経終末から汗腺への情報伝達を遮断させ発汗量を減少させるということです。ニューロン終末を破壊するわけではありませんので、投与後2,3日~2週間で効果があらわれ、通常4~9か月で効果が減弱し、元に戻ります。

薬剤の厳重な管理、事前登録、同意書などボトックス使用承認条件には厳正なマニュアルがあります。

多汗症とは、体温調節に必要な量を超えて発汗があり、日常生活や職業上の障害を生じている状態をいいます。多汗症には全身多汗症と局所多汗症があります。
この中で、手掌・足底・腋窩の局所多汗症が多く見られます。これら部位では体温調節とは無関係に精神的緊張によって発汗がみられます。多汗部位における汗腺の形態や薬物感受性は健康な人と差はありません。すなわち、これらの多汗症の患者さんの原因は汗腺ではなく精神的な緊張など中枢神経機構に関係がある事を示唆しています。ただ、そのメカニズムは不明な点が多いとのことです。

局所多汗症には薬物療法、水道水イオントフォレーシス治療、胸腔鏡下交感神経切除術などの治療方法がありますが、新たなオプションが増えたことになります。
手掌多汗症に対するボツリヌス局所注射の有効例の報告もありますが、残念ながら腋以外は保険適用になりません。

それぞれの治療方法について調べてみました。
1) 薬物療法
・抗コリン薬
ムスカリン受容体への競合的アンタゴニスト作用によります。汗腺のみならず、受容体が存在する中枢、自律神経系にも作用します。それで、視力障害、口渇、眠気、便秘、排尿障害などの副作用も出現してきます。
プロ・バンサインなどが用いられますが、副作用の割に効果はいま一つだったような印象があります。
・その他の薬物
グランダキシン・・・これも効果に比べて眠気、口渇などがあり使いにくいようです。
・パキシル・・・SSRI( selective serotonin reuptake inhibitor ) 精神性発汗に対して有効との報告があるそうですが近年SSRIの副作用が指摘され、注意が必要です。
・漢方薬・・・防已黄耆湯、補中益気湯などが使われるとのことですが、効果は低いようです。

2) 外用療法
20%塩化アルミニウム液・・・夜間単純塗布または閉鎖密封療法を行い有効であるという報告が多くみられます。痒みや灼熱感がみられることもあります。
作用機序としては、汗管のムコ多糖類と金属イオンが結合してできた沈殿物が上皮管腔細胞に障害を与え、表皮内汗管が閉塞し発汗が減少するそうです。
実際に外来で処方していますが、中等度までの患者さんには効果的な印象があります。

3) 水道水イオントフォレーシス治療
手足などの治療部位を水道水に浸し、直流電流を流します。自宅で乾電池を使ってできる治療装置もあるそうです。
1回30分間、毎日効果が出るまで行い1~3週間で効果がでたら、週1回の維持療法に切り替えます。
作用機序は陽極側で電気分解によって生じたH+がエクッリン汗腺分泌部に作用して発汗を抑制するとされています。

4) 胸腔鏡下交感神経切除術
これによる手掌発汗停止効果は高く、95%以上だそうです(安部洋一郎、NTT東日本関東病院)。その代り術後の代償性発汗(体幹部、大腿部などに汗が増える)も必発で、それによって苦痛を感じ、手術を後悔するケースもあるとのことです。
将来の代償性発汗を気にする場合は外せるように、交感神経にクリップをかける方法もあるそうです。
また手術後、味覚発汗が増強して、食べるとすぐに顔面の発汗が生じる例もあるそうです。このように効果が高い反面、副作用もあるので十分な術前の説明と納得が必要な術式といえます。

名古屋の学会ーースキンケア

名古屋で皮膚科の学会があり行ってきました。折からの悪天候でどうなるかと心配していましたが、行き帰りは幸いに雨風も強くなく、何とかセーフでした。
いろんな講演がありましたけど、出られるのは限られているし半ば受動的に出ているのもあって敢えて書くこともないのですが、それでも一寸一言。
「スキンケアとアンチエイジング」というシンポジウムにでました。同時にあった「浅井・江藤のチョイ技セレクション(あえチョイシリーズ第1弾)-知って得する皮膚科診療のちょいとした裏技を探しています―」が面白そうで迷ったのですが、それは自分だけではなかったようで、座長の松永教授自ら、「私もこのセッションの座長じゃなかったら、あちらに行ってみたい。」と。
でも、出て良かったかも、と思えました。トップバッターは佐々木りか子先生の乳児のスキンケアのお話でした。先生は今は開業していますが、国立小児病院、国立成育医療センターで長いこと乳幼児、小児のアトピー性皮膚炎を診てきた先生です。国のアトピー性皮膚炎のガイドライン委員にも入っていて、話す内容にも気のせいか重みがあるように感じました。
その中でいくつか内容をピックアップしてみました。
・妊娠34週未満の胎児のバリア機構は未熟であること。生後1年をかけて徐々に発達していくこと。
・胎脂はペプチド・天然保湿成分を有していてバリア機能を持っているが、2ヶ月後頃よりその働きも弱くなり乾燥、アトピーも発症してくること。
・科学的な比較検討報告はまだありませんが、新生児期よりの保湿介入がアトピーの発症を低下させる報告もあります。
・更に保湿を十分に行っているとトータルのステロイド剤の量を減量できるとの根拠もあります。
・洗浄剤は何がよいか、いろいろ意見はありますが、アトピー児の角層はpHがアルカリ性に傾く傾向があり、これによりバリア機能が低下、炎症の悪化、黄色ブドウ球菌の増加などが起こるのでアルカリ性の石鹸より弱酸性の低刺激の界面活性剤の洗浄剤の方が天然保湿成分が減りにくく、石鹸では石鹸カスが残留し易いとのことでした。
・学童のシャワー浴は必要で群馬県などは皮膚科医が学校医として活躍していて、それを導入してからアトピーが改善したデータがあります。
など保湿、洗浄の重要性を述べられました。

 これとまた別のセッションでしたが、神奈川県の湘南皮膚科の栗原先生の「私の湿疹学―アトピー性皮膚炎を治そうー」という演題の中のスキンケアの話も面白いものでした。
ここ数年アトピー性皮膚炎でのフィラグリン遺伝子の変異が脚光を浴び、皮膚バリア機能の脆弱性が科学的にも裏付けられるようになりましたが、実地臨床の現場では、乾燥して刺激を受けやすいアトピー皮膚へのアプローチ法に格別な変化が起こったわけではないといいます。洗浄は大切ですが、モンゴルと中国東部と日本のアトピー性皮膚炎の発症率とお風呂に入る頻度を比較すると、丁度正の相関をするそうです。入浴だけではないでしょうが、洗浄だけで保湿をしないと、あるいは過度に皮脂を剥がすような垢すり的な洗浄の仕方をすると却って皮膚のバリア機構を破壊してしまうことにもなりかねないということです。
またステロイド剤によって炎症は抑えられますが、これによって、皮膚は薄くなり、乾燥し易くなる傾向があります。すなわちバリア機能に対しては決して好ましい方向には働かないことになります。そこでステロイド、タクロリムスを上手に使いこなす必要性があるということになります。

いずれも一部内容のピックアップですが、いろいろ考えさせられました。
洗浄は重要だけど、やり方次第では却って悪化したり、保湿剤の使い方、汗の功罪、風呂の入り方、時間、温度、回数などもケースバイケースのようでもありました。
アトピーの講演は何回も聞いてはいるけれど、全てをカバーする一律な規則、魔法のツールはまだないような気がします。
いろいろ解ってきたけど、まだ解らないことのほうが多い、と言った方が当たっているかもしれません。
アトピーの基礎医学は随分進歩してきたけど未だ治療のブレークスルーはないような気がします。
だから患者さんにとっては千葉大の神戸先生が紹介していたようなネットでの声が多いのかもしれません。(一部抜粋)
接触皮膚炎のことが終わったらそろそろアトピー性皮膚炎のこと書こうかと思っていましたが気が重いです。

・良い皮膚科ないよ・・・。何か所もいったけどダメ。
・先生が丁寧で親切、評判良いみたいだけど治らなかった。
・どこに行ってもステ漬け。皮膚科って話も聞かない。診察時間も1分ほど、ステ を赤ちゃんでも使えると気軽に出す、なんでこんな藪医者ばっかなのかって思う よ。ステを拒めば「塗ればすぐに治るのに!」とか言ってくるし・・マジ最悪。
・ステがでただけで、ガイドライン通りとか標準とか連呼していた。ガッカリ。言 うことも教科書通りで患者の体験とかまったく参考にしてないし。

名古屋の学会ーーニキビについて

2番手として登場されたのは、名古屋で開業の鈴木眞理先生でした。名大分院では松永教授と共に、故早川律子教授の薫陶を受けた仲だとのことでした。早川先生は名にし負う接触皮膚炎の大家でした。今はその愛弟子の松永教授が今接触皮膚炎の分野をリードしています。
(これは余談)。
本題は思春期のニキビをうまく治していくコツとは(薬物治療、レーザー、光治療、スキンケア)という演題でした。日本皮膚科学会のざ瘡ガイドラインに基づき、解説したというだけあって、小生が書いてきたニキビのブログ内容と大差ない内容でしたが、女性らしく細やかなスキンケアの具体的な化粧品類の説明がありました。
またアゼライン酸の紹介もされていましたが、耐性菌の心配のないこの外用剤は諸外国ではすでに長年使われています。BPO,アゼライン酸については当ブログでも一寸触れてみたいと思います。
それにも増して印象的だったのは、アダパレン(ディフェリン)、抗生剤などの標準的な治療でなかなか治らない例に対して、Vビーム、スムースビームを使用してひどいニキビがかなり良くなっていた事でした。
Vビームで赤み、丘疹を治し、スムースビームでニキビ痕を治すという方法の(写真で見る限り)極めて有効な結果に眼を見張りました。
Vビームが欲しいなと思って企業の展示会場に行ってみましたが、Vビームのお値段はなんと1200万円以上とのことでした。一寸簡単には手が出せないお値段です。レーザー機器はもっと安くならないものでしょうか。

トンズランス感染症

「しらくも・たむし」を書きました。なかなか平易で明確な文って難しいものです。とりあえず書いてみて後でまた書き直せばいいか、と思いアップしました。写真はしばらく後にアップする予定です。
 トンズランス感染症をご存じでしょうか。もともとは中南米の頭部白癬の原因菌でしたが、2000年頃から、レスリング、柔道などの格闘技の選手を介して国内に持ち込まれ、またたく間に流行しだし、現在は柔道の強豪選手だけではなく学童クラブ、社会人にも急増し、社会問題にもなっています。全日本柔道連盟も撲滅への取り組みを行っているようです。
 最近の日経新聞にも順天堂大学皮膚科の比留間政太郎教授のトンズランス感染症の記事がでていました。「強い感染力に比較して症状はマイルドで、本人が気付かずに無症候性キャリアとなり新たな患者を増やしている」とのことです。柔道などの格闘技をする人やその家族で頭にフケのある人、顔、胴体に今までにない湿疹様の変化のある人は皮膚科に診てもらうと良いでしょう。

シイタケ皮膚炎

今日もシイタケ皮膚炎の患者さんがみえました。1週間前に焼きシイタケを3個食べて、3日前より体がかゆくなり赤みが出現したとのことです。先月も一人みえました。成書に4月は生シイタケの採れる時期なのでシイタケ皮膚炎が多いとありますが、確かにそのようです。一皮膚科医院で複数みられるということはかなりの人に同様な例がみられるということかと思います。この時期は生シイタケに注意が必要でしょう。ホームページに詳しく書きましたので参考にして下さい。アレルギーかどうかははっきりしませんが、食べた人全員が発症するわけではないので、体質またはアレルギーの要因はあるのでしょう。
 掻いた位置に一致して鞭打ち様の赤いスジがつくのが特徴です。生しいたけが最も多いのですが、調理したもの、アガリスクでも報告がありますので注意が必要です。
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