月別アーカイブ: 2013年5月

酒さ(3)治療

まず、治療を始める前に、個々人の悪化因子を見極めることが重要です。
そして、その誘因を避ける、取り除くようにすることが最も必要です。
日常生活で大切なことはUVB~UVAまで十分にカバーするような日焼け止めを使用して遮光すること、帽子、衣服なども活用して遮光することです。皮膚のバリア障害や血管の過剰反応性のために各種化粧品に対して刺激性(ピリピリ感、チクチク感、痒み等)や乾燥感が多くみられます。特に紅斑性酒皶、酒皶性痤瘡のタイプで多いとされます。
化粧かぶれと誤診され、ステロイド剤などの使用により、酒皶様皮膚炎を発症することがあります。酒皶様皮膚炎は酒皶の素因を持つ人に生じ易いとされます。
 刺激性の石鹸やアルコール成分を除いた洗浄剤で優しく洗浄し、低刺激の保湿剤を使い、軽い液体のメイクアップファンデーションを使うのが最も刺激が少ないとされています。
(ニュートロジーナやDoveの石鹸を推奨してある文献もありましたが、それぞれに低刺激の洗浄剤、保湿剤を選ばれると良いかと思います。あるいは主治医に相談して)
赤い部分には補色の緑色のファンデーションを下に使うのが良いようです。

外用療法
FDA(U.S. Food and Drug Administration)では15%のアゼライン酸ゲル、0.75~1.0%のメトロニダゾールゲル、クリーム、ローションを勧めています。但し、妊娠時は避ける必要があります。
日本では処方できませんが、アゼライン酸はクリニック用化粧品として使うことができます。メトロニダゾールは院内製剤として作っている病院もあるようですが、製品は個人の責任の上で個人輸入するしか方法がないようです。
院内製剤例
 1%メトロニダゾール軟膏(10g)の組成
  メトロニダゾール      0.1g
  プロピレングリコール    0.05ml
  親水軟膏で全量       10gとする
藤本 亘 酒皶・酒皶様皮膚炎の現状:皮膚病診療 35:307-13,2013より抜粋

10% sodium sulfacetamide (+ 5% sulfer)のクレンザー、クリーム、ローションは紅斑、丘疹、膿疱の軽減に効果的です。毎日バリアを修復する保湿剤の使用は重要です。
過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン(ダラシン)、エリスロマイシン、タクロリムス(プロトピック)の外用も使用され効果がありますが、刺激感に注意が必要です。
プロトピック軟膏は紅斑には有効ですが、ステロイドと同様に酒さ様皮膚炎を誘発することがあるので、使用は最小限度にとどめる必要があります。
 外用レチノイド(トレチノインクリーム)は膠原繊維のリモデリングを助長し、血管内皮の成長を抑制するので酒さに効果的だそうですが、日本人の肌には刺激が強く注意が必要です。ただし、保湿剤を併用し、徐々に使えば長期のメインテナンスに有用とされます。

内服薬
短期的に症状を軽減させるには内服抗生剤が有用です。ただ、酒さでは日光に敏感な人が多く、光線過敏を誘発するような内服薬剤は避けるべきです。また長期に亘る使用では抗生剤耐性菌の問題があるので、なるべく短期間に留めるのが良いです。
2-4か月間のテトラサイクリン、またはイソトレチノインが用いられます。内服中止後1か月で4分の1が、6か月で2分の1が再発するそうです。米国では抗菌濃度以下の低用量のドキシサイクリン徐放カプセル製剤がFDAで認可されているそうです。
しかし、できれば抗生剤の長期内服は避け、長期のコントロールは外用で行うことが推奨されます。
イソトレチノインは国内では使用できませんし、催奇形性があるために、妊婦には絶対使用できません。
その他、マクロライド系薬剤、メトロニダゾール、βブロッカー、スピノロラクトン
SSRI、女性ホルモン剤などが使われているようです。しかしながら多くの薬剤は国内では酒さへの適応がありません。

レーザー、光線療法
色素レーザーやIPL(Intensive Pulsed Light)が効果的とされます。
米国では、種々の種類のレーザーが用いられているようですが、基本的にニキビの赤みに対して使う色素レーザーが効果的のようです。(にきびQ&Aの光線療法、レーザー療法を参照して下さい。)本邦での酒さに対するレーザー治療で科学的に、統計的に検証した論文はあまりないようでした。

鼻瘤の治療
中等度までの病変に対しては、イソトレチノインの内服が効果的です。高度になると形成外科的な手術や、レーザーアブレイジョンが必要になってきます。ただ、国内においては高度な例は少ないようです。

眼症状
やはり、テトラサイクリンの内服は効果があります。またsodium sulfacetamide/sulfurのクレンザーで洗顔するのが効果的とのことですが、日本国内では使用されているのでしょうか?

その他の治療
漢方薬も特に中年以降の女性で有効とのことです。腹力赤みの部位によって加味逍遥散や桂枝茯苓丸、温経湯などが使用されます。
また、レーザー治療後の紫斑や血管拡張などに対して使用されるビタミンK外用剤(アウリダーム)も酒皶性紅斑に有効であるとされます(田辺先生私見)。
女性患者では赤い色調を修正し、日焼け止め効果のあるカバーファンデーション、コンシーラーが各メーカーから出されていて、効果的です。
 米国ではSobye`s techniqueという顔面マッサージが酒さの浮腫、紅斑を軽減するのに推奨されています。顔の正中から耳前部に向かって軽く指でマッサージして、リンパ浮腫を取り除く方法です。インターネットで検索して画像を見ることもできます。

酒皶は慢性の疾患なので、治療も長期にわたります。最も重要なことは、この病態を早期に見極め、引き金になる悪化因子を極力避けること、遮光に気を付けるということのようです。
医療側の注意点としては、我々黄色人種では初期の酒皶は見つけにくいということを念頭において診療すべきです。若い女性で敏感肌、石鹸や化粧品トラブルで受診する患者さんの中で酒皶の素因が隠れていないかを問診、視診で確認することが重要です。
酒さ素因の患者さんに化粧かぶれとしてステロイド剤やタクロリムス軟膏を使用するとそれをきっかけとして酒皶様皮膚炎となる場合もあります。
しかし、それを厳密に判定して鑑別することは実地医療ではかなり難しいことではありますが。
悪化時は抗生剤などの内服で炎症を軽減させ、軽快したら日焼け止め、保湿剤などを中心にアゼライン酸、BPO,ニトロメダゾールなどでコントロールしていくのがよさそうですが、現在の日本の医療状況では手段は限られていると言わざるをえません。
一応、参考までに上にあげた外用剤の写真を載せて起きます。
酒さの外用グッズの項目参照

中原寺メール5/22

【住職閑話】~1年経って~
 昨年の5月20日に子息へ中原寺住職を引継ぎ、「住職継職法要」を修行してから1年が経ちました。あの日は五月晴れにも恵まれて、多くの方々のお参りのもと、住職が交代する法要にあっていただきました。
 立場は「住職」から「前住」(ぜんじゅう)という名称に変わりましたが、日々の生活は以前と少しも変わりません。サラリーマンと違ってリタイヤではありませんので、お寺での生活は同じです。僧侶として生涯現役でいられるのも有り難い世界です。
 でも変わったという一面もあります。
今まで住職宛に来た郵便物は当り前のように封を切っていましたが、それをしてはならなくなったこと。もう一つはくだらない勧誘等の電話には「私は住職でないのでわかりません!」と断れることです。
 さて季節は本格的夏に向かって早や汗の出る陽気になりましたが、これからは結構各地へ出かけることが多く、また7月28日の門信徒ファミリーパーティーにおける「おとめ座劇」の準備にも入ります。
 今回の劇はあの美輪明宏さんの「よいとまけの唄」に決まりました。美輪さんが幼少時に一緒に育った友人の亡き母を回顧する内容の唄ですが、河合さんが書き上げてくれた台本を読みながらジーンときています。
「あれから何年 たった事だろ 高校も出たし 大学も出た 今じゃ機械の世に中で おまけに僕はエンジニア 苦労苦労で死んでった 母ちゃん見てくれこの姿 母ちゃん見てくれこの姿」
劇でどの配役が私に回ってくるのか、今までと違った泣き笑いの物語が演じられることでしょう。
みなさん、きっとこの劇を楽しみに見に来て下さいね!

酒さ(2)病因・病態

酒皶の明確な原因はまだ解っていません。ニキビと違って毛包脂腺系は一義的ではありません。
日光の影響で顔面の血管、内皮細胞がダメージを受け、間質の浮腫が起こりさらに膠原組織などの支持組織がダメージを受けるといった機序を考える人もいます。
また片頭痛との合併が多くみられることより、血管反応性の異常に原因を求める人もいます。
また、ニキビ菌、毛包虫、常在細菌、ヘリコバクター・ピロリ菌などの微生物に原因を求める人もあります。
確かに抗生剤、ニキビダニに対するメトロニダゾールなどの治療は効果がありますが、これらが抗菌効果によるものなのか、抗炎症作用によるものなのかはまだよく解らず結論がでていません。
上記のベースの上に、慢性の繰り返す引き金(悪化因子)の暴露によって、ほてり、発赤などが起こってきます。
悪化因子には、温熱、寒冷、日光、風、熱い飲み物(カフェインよりもむしろ温度)、運動、香辛料、アルコール、感情、ストレス、化粧品、刺激性の外用薬、更年期、発赤・血管拡張を助長する薬物などさまざまなものがあげられます。
発赤が顔にみられるのは、顔の血流量がほかの部位より多く、また血管がより浅く、太いためといわれています。そして、これが皮膚温度を上げ、微生物やニキビダニなどの反応、動態を変化させている可能性もあります。
ただ、アクネ菌や毛包虫、ピロリ菌などの酒皶への関与は肯定的結果と否定的結果が入り混じり結論は出ていません。
現時点でいえることは外界の環境や微生物は何らかの関与はするが、それ単独で酒皶の病態を引き起こすものではないということです。
 悪化因子の多くは自然免疫機構と呼ばれる皮膚防衛機構を発動させます。
 
最近、山崎らは自然免疫分子の一つである抗菌ペプチドのカセリサイディンという物質に着目して酒皶での動態を研究しました。そしてこの物質が酒皶の原因に大きくかかわっていることを発見しました。(あまりに専門的で、論文を読んでもよく理解できない事柄で、飛ばして無視してもよいですが、非常に重要な事柄なので自分の理解した範囲で書き述べてみたいと思います。)
 酒皶の患者さんの皮膚を生検採取してカセリサイディンを調べたところ、この物質は正常皮膚ではほとんど検出されないのに、酒皶表皮では基底層から角層まで大量に発現していました。これは傷ができたり、感染が生じると発現されるそうです。
 カセリサイディンは抗菌ペプチドなので、大量にあれば微生物も減少するはずですが、逆に微生物が多くみられることは、カセリサイディンが抗菌物質として機能していないか、抗菌作用以外の機構で酒皶の病態に関与していることを示唆しています。
そして、酒皶皮膚で発現するカセリサイディンは正常皮膚で発現するものとアミノ酸配列が異なっていました。皮膚ではセリン・プロテアーゼの一つであるカリクレイン5という蛋白分解酵素が働いて、カセリサイディンを酵素切断し活性型に変換するそうですが、酒皶皮膚ではこのカリクレイン5という物質もカセリサイディンの発現量と並行して上昇していたそうです。
山崎らはこの物質の発現の意義を調べるためにマウスに投与して動物実験を行ったそうです。すると、この物質によって肉眼的には局所の紅斑(赤み)が、また組織学的には炎症細胞浸潤と血管拡張が認められました。すなわち、カセリサイディンによってマウスに酒皶様の変化を作ることができたということです。
またカリクレイン5をマウス皮膚に投与することによっても皮膚の炎症が惹起できました。これはカセリサイディン欠損マウスでは起こす事ができませんでした。

 さらに酒皶皮膚では細菌などの微生物の認識にかかわる物質であるToll様受容体2(Toll-Like Receptor 2: TLR2)が発現して、かつカリクレイン5の発現と一致していることも報告されています。この事は、酒皶皮膚ではTLR2が発現して外界の刺激に対する感受性が高まり、これがカセリサイディン、カリクレイン5を表皮に誘導して炎症、血管増生、血管拡張を起こし、酒皶の病像を形作るという経路が成り立ちます。
 すなわち、酒皶の原因の一部はTLR2やカセリサイディンなど自然免疫応答の不調、異常から説明できるということです。
この方面の研究が更に進展すれば酒皶の治療にも新たな展開が開けてくるかもしれません。
次回は酒皶の治療について調べてみたいと思います。

参考文献

田辺恵美子:特集/ここが聞きたい 皮膚科外来での治療の実際 酒皶の診断と治療 MB Derma, 197: 1-8, 2012.

山崎研志:特集 最近のトピックス2011 酒皶をめぐる新しい病態論 
臨床皮膚科 増刊号 65: 56-59,2011

Rook`s Textbook of Dermatology 8th Edition
Volume 2  Chapter 43.1  Rosacea, Perioral dermatitis and Similar Dermatoses Flushing and Flushing Syndromes
Edited by  Tony Burns  Stephen  Breathnach  Neil Cox  Christopher Griffiths
Wiley-Blackwell 2010

酒さ(1)

にきびの鑑別で、酒さをあげましたが、これについて考えてみたいと思います。
酒さはいわゆる「中高年の赤ら顔」をイメージしていただければよいかと思います。
実は酒さで悩んでおられる患者さんは意外と多く、しかも皮膚科に罹っていてもその病態を念頭に置いていないと専門医でも見逃されやすい疾患です。
 本邦では酒さの頻度は欧米と比較するとそれ程高くなく、病因、病態も明らかではなかったので皮膚科教本でも詳しい記述はなく、皮膚科研修・教育でもそれ程重要視されてこなかったように見受けられます。
 ただ、欧米では(特に色白の白色人種では)以前より重要で高頻度な疾患であり、数回の経験しかありませんが学会などでもニキビのセッションに遜色のないほど大きなセッションで参加者も多数なことに驚いたことがあります。
白人の罹患率は10%にも及ぶともいわれ、米国皮膚科医は毛細血管拡張や顔面の発作性の発赤(flushing)があるだけでも酒さと診断するともいわれます。病因も不明で、ニキビ、アトピーなどの除外診断でないとなかなか酒さという診断をつけない本邦の皮膚科医との違いもあり、本邦での認知度は必ずしも高いものではありませんが、埋もれていたり、見過ごされているケースは意外と多いようにも見受けられます。
 我々の周辺では、以前東邦大学佐倉病院皮膚科主任で膠原病を専門にされていた現千葉中央皮膚科の田辺恵美子先生が、本邦での酒さの多さと見逃されているケースの多いことを医師仲間に伝えておられました。その目でみると確かに結構多くの患者さんが疑わしいことを再認識させられました。
 2011年東京支部総会の際に「Common diseaseをどう考えるか」というテーマがあり、各県に演題を依頼されたのですが、千葉県からは推薦され田辺先生が 「顔のトラブル:酒皶を見逃すな」という演題で講演されました。
 その時の講演では多くの皮膚科医が参加し活発な議論もありました。
 身近にありながら意外と見逃されている酒さ、についてまとめてみました。

 《酒さの症状》
本邦では従来より、重症度に応じてⅠ度からⅢ度に分類されてきました。
第Ⅰ度酒さ・・・紅斑性酒さ
第Ⅱ度酒さ・・・酒さ性痤瘡
第Ⅲ度酒さ・・・鼻瘤
酒さ様角膜炎、結膜炎、眼瞼炎など眼症状を合併することがある。
しかし、必ずしもⅠ度からⅢ度へと進行するわけではなく、いろいろな皮疹が混在することもあります。それで近年ではステージ分類に変わって症状によって亜型に分類するsubtype分類が提唱されています。

米国の分類は下記のようになっています。
Subtype
1. Erythematotelangiectatic type  (紅斑毛細血管拡張型)

2. Papulopustular type (丘疹・膿疱型)
3. Phymatous type (鼻瘤型)
4. Ocular type (眼型)
米国では診断指針では皮膚科専門医以外でも診断できるように簡略化、単純化されスコア化がされているそうです。
<主症状>
ほてり(一過性紅斑)
持続性紅斑
丘疹・膿疱(面皰があるときは痤瘡と考える)
毛細血管拡張
*主症状の1個以上が顔面の中央部にみられると酒さと診断
(ただ、これだけでは酒さ以外の疾患も入ってきてしまいますが、簡便な見分け方かもしれません。)
<副症状>
灼熱感、チクチク感、乾燥、浮腫、眼症状、鼻瘤
*主症状に伴うこともあるが、別箇に生じることもある。

◆赤み(紅斑)は顔面中央部の膨らんだ部分(頬、額、眉間、鼻、頤など)に生じることが多く、初めは一過性でも次第に持続性になってきます。そして、仔細に観察すると毛細血管拡張を伴っていることが多いようです。そして、ピリピリ感、チクチク痛痒さを訴えることも多いようです。
◆浮腫も酒さの皮疹の特徴の一つで、初期の血管の変化から引き続き、リンパ浮腫を引き起こし、一過性から持続性に変わっていきます。繰り返しの血管拡張や炎症によって血管支持組織が脆弱になるためと考えられています。
◆化粧品に対して易刺激性になっていることが多く、つけるとチクチク、ピリピリと痛かゆさを訴え、化粧品かぶれと診断されることも多いようです。しかし、このような場合で、パッチテストは陰性であり、化粧品を中止しても症状は改善しない時は酒さを疑う必要性があります。
◆丘疹は頬や頤に多いですが、唇紅周りにできることもあり、また幅の狭い帯状紅斑がみられることもあります。丘疹・膿疱はニキビでもみられますが、酒さでは面皰がみられません。また、必ずしも毛孔一致性でないことも、ニキビとの違いです。
◆眼型は少ないですが、結膜充血、眼囲の紅斑、ドライアイ、角膜炎、麦粒腫、霰粒腫などがみられるそうです。
◆典型的なものは、顔中央の皮疹で30代から50代の女性に多く、鼻瘤は男性に多く見られます。しかし中には小児期からのものもあり、額、頭部、耳前部など辺縁部の皮疹もあるそうで、見逃されやすいようです。
◆酒さは一寸した刺激によって悪化、誘発されます。日光、急激な温度変化、アルコール、香辛料、ストレス、薬剤(血管を拡張させる薬、ステロイド剤)などがその誘因ですが、特に日光での悪化は特徴的で、遮光に努める必要があります。

次回は複雑でまだ不明な点の多い酒さの原因、病態などについて触れてみたいと思います。

参考文献

田辺恵美子:◆特集/ここが聞きたい 皮膚科外来での治療の実際 酒皶の診断と治療
MB Derma, 197: 1-8. 2012

山崎研志:酒皶の対処法 37-41
皮膚科臨床アセット 8 変貌する痤瘡マネージメント
総編集◎古江増隆 専門編集◎林 伸和 中山書店 2011

アクセスの多いブログ記事

ブログを書いていて、書きっぱなしなのですが、読者、閲覧者(?)の反応が気になることも事実です。よけいなこと書いてないかなー、間違った情報を書いてないかなーと心配したりします。それに個人情報にかかわってくることもありそれなりに気をつけてはいます。
でも長いこと書いていると、変なことも書くだろうし、その人の性向というか、レベルというか、ぼろも出てくるのは仕方ないか、と最近はやや居直り気味に思ってきています。
 ブログの編集機能に、アクセス解析というのがあるのを、最近(といってもしばらく前)知りました。それを見ると、時間帯別、ページ別、ホスト別、ブラウザ別、リンク元別にアクセス情報がわかります。
時間別にみると当然夕方から夜のアクセスが多いですが、少数ながら深夜から明け方にアクセスしている人もいるのもわかります。
 ページ別アクセスをみると、特に意識はしていなかったのですが、やはりはやりの疾患、話題の疾患などは急にアクセスが増えることがあります。
その代表が「フッ化水素酸による化学熱傷」でしょうか。外壁工事や工業用の洗浄作業中に手袋に小さな穴が開いていたりして、受傷するケースが稀にあり、皮膚科医でも知らないと後手にまわることもあり、当然一般では認知されていないと思い書いたのですが、その後とんでもない傷害事件がおきてしまい一躍「フッ化水素酸」が有名になってしまいました。その時期に一致してこのページのアクセスが突出して多くなりました。
 その他ではマダニによるウイルス感染症(SFTS)やトコジラミの記事などは話題性もあるせいかその時期にヒットが多くなりました。
 アクセスが多い記事は皆さんの関心が高い項目だろうと思います。だらだらと書いてきたので自分でも何をどこに書いたのかも分からなくなってきています。それで、アクセスの多い順に並べてみるのも何かの参考になるかと思いましたので、現時点での上位のものを順番に書いてみます。ご参考までに。

1.  白斑(白なまず)について          2012.4.6
2.  とびひ——補遺              2011.7.14
3.  ジアノッティ症候群             2012.2.2
4.  マダニによるウイルス感染症(SFTS)     2013.2.16
5.  メラノーマ(悪性黒色腫)             2012.11.9
6.  「いぼ」について考える         2012.3.31
7.    皮膚癌の初期症状            2013.2.20
8.   しいたけ皮膚炎             2012.12.6
9.    好酸球性膿疱性毛包炎(太藤病)     2013.5.9
10. トコジラミ(南京虫)             2012.7.17
11. 植物によるかぶれ               2012.5.30
12. フッ化水素による化学熱傷     2012.3.17
13. 多汗症の治療――ボトックス    2013.4.15
14. にきびQ&A(4)抗菌薬      2013.3.17
15. あせも              2012.6.28
16. にきびQ&A(6)ケミカルピーリング2013.3.24
17. 急性発疹症(ウイルス性急性発疹症)2011.11.15
18. 東京支部総会――血管炎      2013.2.18
19. 疥癬(ひぜん)について      2011.9.27
20. めんちょう・あせものより     2011.7.1
21. イヌ・ネコ咬傷          2011.8.15
22. にきびQ&A(7)光線治療     2013.3.28
23. 「茶のしずく石鹸」小麦アレルギー 2012.10.7
24. りんご病(伝染性紅斑)      2012.1.11
25. にきびQ&A(9)BPOとアゼライン酸2013.4.21
26. 北八つ彷徨 山口耀久 著     2011.3.19
27. エピペン             2012.12.14
     エピペン補遺ーー食物アレルギーの不幸な事件 2013.1.29

好酸球性膿疱性毛包炎(太藤病)

ニキビの鑑別で好酸球性膿疱性毛包炎(太藤病)のことに一寸触れました。そのことが気にかかっていたところ、新着のVisual Dermatologyに 「太藤皮膚科学の系譜 若手に伝えたい「2つの太藤病」の源流」という特集号が目に止まりました。また皮膚病診療のトップに京都大学宮地良樹教授が「丘疹―紅皮症の診断ポイント」というトピックスを書かれていました。太藤病というのは知っていたけれども、太藤重夫先生がこれ程すごい人で昨年亡くなったこと、その足跡は全く知らなかったので興味深く読みました。このブログで書くことではないかもしれませんが、一寸触れたくなりました。

 年表によると、太藤先生は大正6年(1917年)東京都本郷に生まれる。京都大学を卒業後、昭和37年京都大学皮膚科教授、昭和54年同退官、平成24年10月逝去となっています。
そして、一つ目の太藤病が好酸球性膿疱性毛包炎( eosinophilic  pusutular folliculitis:EPF)で1965年に初めて報告、1970年に類似の3症例をEPFとして英文誌に報告されています。
 2つ目の太藤病が「丘疹―紅皮症」で昭和54年(1979年)退官時に報告、1984年退官後にpapuloerythrodermaとして英文誌に報告されています。
この2つの病気のことについては詳しく触れませんが、日本人の発見した(名前のついた)皮膚病というのは数十あるとされますが、必ずしも広く認知されたもの、メジャーなものばかりではありません。その中で、世界中の国際的に著名な皮膚科医の業績を集めた単行本[Classics in Clinical Dermatology]の中で太田母斑で有名な太田正雄先生と太藤先生が日本を代表する2人の皮膚科医として紹介されているそうです。
太田先生は木下杢太郎の方が皆さまにも通りがよいかもしれない、戦前の有名な皮膚科医です。(当ブログでも一寸触れたことがあります。木下杢太郎2012.1.8 木下杢太郎―落ち穂拾い2012.1.15)
 ただ、太田母斑は戦前の報告で欧米人ではほとんどみられず、本邦で多いことからすれば、太田先生ではなくてもいずれは日本人皮膚科医の誰かが発表していたでしょう。
 それに比べると、ごく近年まで多くの皮膚科医が目にして、通り過ぎたであろう太藤病を独立疾患として認識した慧眼は、しかも2つもとは驚くばかりです。
 そして、もう一つ驚くことは、太藤皮膚科学の系譜の中で多くのお弟子さんたちが(いずれも現代日本の皮膚科のリーダー達と目されている人々が)太藤先生の一言に感銘を受けたり、ヒントを得たり、その後の皮膚科研究の方向性を見出したりしたことを述べていることです。多くの先生方が今日の自分があるのは太藤先生の指導の賜物だというような述懐をされていました。
 そして、さらに別の意味で驚くことは、太藤先生は京都大学出のバリバリのエリート学者かと思うとどうもそうでもないらしい経歴のようです。
昭和16年卒、4年間は軍医として従軍、復員後は富岡で内科医をして同期に6年も遅れて皮膚科に入局されたそうです。当然教授にならなければ開業でも、と思われていたようです。教授になってからも基礎研究トレーニングは受けていない、大した器械もない、入口に水たまりがあり、ブロックを踏んで入るような「ぼろ屋の研究室」で毎日What`s new?と研究をされたそうです。
後年ある酒席で「決まりきった研究はつまらん。アイデアひとつで思いがけない結果が出るから研究はおもしろいのだ。博打の要素もある。」と述懐されたそうです。自称麻雀の神様という先生の面目躍如といったところでしょうか。そして、退官も定年を待たずにさっさと大学を辞めたそうです。
 さらにもうひとつ、雑誌のページをめくっていくと、最後の方に仏師太藤重夫先生というコラムがあり、穏やかなご尊顔の仏様の彫像が写っていました(太藤重夫 作)。まるで玄人はだしです。いろいろな顔をもった人だなと益々感銘を受けました。
自らは、先頭に立って引っ張る、俺についてこい、というタイプではなかったようですが、多くの教授達を生み出した名伯楽だったのでしょう。
 こんな一言が(提言やサジェスチョンや疑問が)あの先生方のあの大きな仕事のきっかけになったのか、と驚きというか種明かしをしてもらったような事も多く書かれてありました。
 常に「なんでや?」というような探求心を持って、国際性の重要性を知り、大家にありがちな権威主義的なところがなく、若手の医師とも対等に接したというエピソードも書いてありました。
この特集号は皮膚病特集というよりも太藤先生の伝記物、あるいはそれに連なる皮膚科名医たちの伝記や裏話として面白く読ませてもらいました。

にきびQ&A(11)間違いやすい病気

Q:にきびに似て非なる疾患はありますか。
A:顔にできる病気はすべて鑑別の必要がありますが、主なもの、気をつけねばならないものについていくつか述べてみたいと思います。

1) 酒さ
いわゆる赤ら顔のことです。ニキビに似た症状を呈しますが、面皰はありません。色白の白色人種に多く、白人では全人口の10%にも及ぶといわれています。極めてポピュラーな病気と言えます。それに比べて本邦での酒さの認知度はまだ低いように思われます。教科書の記述も欧米の本に比べると簡略です。しかしながら日本でも中高年の女性を始めとして赤ら顔に長年悩んでいて、ほぼあきらめている人もあるようです。先年、日本皮膚科学会東京支部総会で千葉中央皮膚科の田辺先生が酒さのレビューをされましたが、多くの皮膚科の先生方が見に来られて盛況でした。むしろ開業医などの実地医家のほうが患者さんから相談されて困っていることが多いように思われます。長年皮膚科専門医に罹りながら酒さの診断、ケアを受けていなかったケースも多いとの話でした。酒さの診断の難しさ、明確な診断基準のなさ、原因の不明さなどがその原因となっているようです。
ただ、近年酒さについて新しい知見、治療手段も出てきているようです。
このニキビの記事が終わったら、少し酒さについて書いてみようと思っています。

2) 好酸球性膿疱性毛包炎
かなり稀な病気ですが日本人には時々見られる病気です。(海外からの報告例も増えてきています。)京都大学教授故太藤(おおふじ)先生が世界に先駆けて報告した病気なので、かつては大藤病と呼ばれることもありました。主に顔面にニキビ様、あるいは白癬(ぜにたむし)様に浸潤のある堤防状に輪を描いたような配列に膿疱が並ぶので上記の病名がつけられました。
特徴的なのは血中や、皮疹部の組織中に好酸球が多くみられることです。
ただ、発疹は顔面だけではなく、体や手のひらにもみられることがあります。手のひらには毛包がありませんので、上記の病名は不適当だとして、好酸球性膿疱性皮膚症と呼ばれることもあります。残念ながらその原因はよくわかっていません。近年はHIV(エイズ)患者に伴ってみられることも多いために注目されています。
原因は不明ですが、インドメサジン、ミノマイシンが著効を示すことも特徴です。
膿疱は無菌性で、膿疱の原因は感染によるものではありません。

3) 顔面播種状粟粒性狼瘡
Lupus miliaris disseminatus faciei : LMDF
かつては病理組織の結果から(乾酪壊死性肉芽腫)結核に関係のある病気と考えられていました。現在ではそれはほぼ否定されており、酒さの中で肉芽腫を形成する特異なタイプの一亜型と考えられています。ただ、一部の学者は酒さとも異なる別な病気と考えているようです。臨床上の特徴はニキビと異なって眼瞼部にも良くできることです。ニキビはむしろこの部分は避けてできません。
粟粒大から麻実大で紅褐色ないし黄色の丘疹や膿疱がみられます。口囲など眼瞼部と異なる部位にもできることがあります。
またガラス板で皮疹部を圧すと黄色い色が残って透けて見えます。これはこの疾患に特徴的で診断の手助けになります。治療は酒さ、ニキビに準じますが、難治です。2,3年うちに瘢痕を残して治癒することが多いようです。

4) マラセチア毛包炎
毛包一致性の丘疹・膿疱が若者の胸背部にでき易いです。ニキビと異なって面皰は認められません。形のそろった紅色丘疹が孤立性に多発するのが特徴といえます。そういう意味ではステロイド痤瘡とよく形態は似ています。勿論マラセチア毛包炎ではステロイドの使用は関係ありません。マラセチアは、かつてはパーカーインクで染まりましたが、現在のものは染まりません。コットンブルー、ズームブルーなどで染色しますが染まりにくく、癜風菌と異なりマラセチア酵母の形で菌糸型をしていないので、見つけにくいです。
実はステロイド痤瘡には多くのマラセチアが認められるということも言われており、ステロイド痤瘡のかなりの部分はマラセチア毛包炎とダブルという考えもあります。

その他に下記のようなニキビに似た病態、特殊型もありますが説明は省略します。
*毛包虫性痤瘡
 ニキビダニによって起こるもの
 硫黄製剤、メトロニダゾールが効果的

*新生児痤瘡
 新生児が母親から性ホルモンをもらって一時的に起こるもの

*Favre-Racouchot Syndrome
老人の光老化によって起こるもの