月別アーカイブ: 2013年8月

中原寺メール8/28

【前住職閑話】~やっとほっと~
 やっとほっとやっとほっとが、実感です。
7月早々から連日連夜の過酷な今夏の暑さも、ここへ来てやっと涼風がへばった身体を癒してくれます。
 夏はまたお寺の行事が多い月で、ファミリーパーティーそして先日の2日間の子ども合宿と、大変にぎわいました。過酷な暑さの中でしたからかなりの疲労感です。しかし多くのお手伝いの方々によって為し得たことを思うとお寺とは有り難いものだとつくづく感じています。
 それにしても近頃はよく居眠りをします。「よくそんなに眠れるわね!」と坊守(妻)にうらやましがられます。
 蓮如上人の御文章に「そもそも、当年夏このごろは、なにとやらんことのほか睡眠におかされて、ねむたく候ふはいかんと案じ候へば、不審もなく往生の死期も近づくかとおぼえ候ふ。まことにもってやるせなく名残惜しくこそ候へ。さりながら、今日までも、往生の期もいまや来たらんと油断なくそのかまへは候ふ。…」とある言葉が胸に迫ります。
 死期の前相ならば、ゆめゆめ後生の一大事油断なくしなければなりませんが愚老ゆえに、先のご文章を書かれたときの蓮如上人は59歳の時だと安堵するお恥ずかしき次第です。因みに蓮如さまは85歳の長寿であられました。

ヘルペスの最前線

題名は勝手につけたものですが、先日といってもかなり前に県皮膚科医会でヘルペスウイルスの講演会がありました。
講師は富山大学の白木公康先生と宮本町中央診療所の尾上康彦先生でした。
最前線としたのは、白木先生は世界に先駆けて帯状疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia: PHN)の原因の解明を行ったことと、尾上先生は川崎市宮本町の診療所で日々性器ヘルペスを初めSTI(sexual transmitted disease)を撲滅すべく診療活動、講演活動などを先頭に立って健闘されていることから題名として勝手につけたものです。
「ウイルス最近の話題」白木先生
水痘(水ぼうそう)は多くの子供が罹るありふれた病気ですが、皮膚のみの病気ではなく、全身臓器にウイルス増殖と病変を生じていることに注意する必要があります。
将来の帯状疱疹の発症のリスク低下のためにも早期に抗ウイルス薬で積極的に治療しておくことが重要です。(帯状疱疹は水痘ウイルスの再活性化によって起こってくるウイルス感染症です。)
(さらに言うならば、日本での水痘ワクチンの接種者数は出生数の3割程度なので、その残りの約80万人が年間水痘発症患児と推定されます。WHOで最も推奨され、世界80カ国以上で使用されているOka株(岡さんという患者さんからとったもの)という世界に冠たるワクチンがありながら接種率は上がらず、発症の減少は一向に見られず、夏から秋に減って、また冬から初夏に増加を繰り返しているそうです。)
十分な免疫があればウイルスの再活性化を防ぐことができ、免疫の立ち上がりが早ければ軽度の帯状疱疹で済みます。遅いと病変は拡がります。
ただし、HIV(エイズ)などの極端な免疫不全状態ではウイルスは拡がっても皮疹はできず、免疫が回復し始めると免疫応答を起こし水疱ができます。
 帯状疱疹で厄介な帯状疱疹後神経痛(PHN)のメカニズムはよく判っていませんでした。白木先生は理研グループと共同でそれを解明されたそうです。
ウイルスによって神経に障害が起きるとVZV特異的転写因子immediate-early(IE)62因子が活性化しウイルスの転写を活性化します。一方脳由来神経栄養因子BDNFといういう物質があり、疼痛に関連したものです。彼らはIE62とBDNFに交叉活性があることを見つけました。この両者が相まって脊髄の中で増え、神経痛覚ネットワークを形成し長期のPHNの原因となるそうです。これを阻止するためには出来るだけ早期の抗ウイルス薬の投与や神経ブロックが有用とのことでした。

「性器ヘルペス 臨床の最前線」尾上先生
性感染症の定点当たりの報告数はクラミジア、次いで性器ヘルペスが多く、尖圭コンジローマ、淋病、ケジラミ症、梅毒と続きます。
性器ヘルペスでは病変は外陰部だけではありません。特に女性で初感染の場合は症状が激しくなります。また罹患率も男性の2倍以上になります。
その理由は女性は構造上粘膜部分が多く感染し易いこと、免疫力を低下させる黄体ホルモンの影響で妊娠、排卵後は感染し易いことなどが挙げられます。
Elsberg症候群といって、尿意を感じない神経因性膀胱となり尿閉となることもあります。ウイルスが仙骨神経根を侵し、限局性の髄膜脊髄炎となった結果生じるものです。
この際は入院の上、抗ウイルス薬の点滴、導尿が必要になります。
尾上先生は当日はヘルペスだけではなく、梅毒のスライドも多数みせて下さいました。数は少ないとはいえ、梅毒、エイズも一定数存在している事実は認識する必要があります。

ヘルペスウイルスは2億年の昔から地球上に存在するそうです。人類の歴史など足元にも及びません。動物界にも広く分布しますが、ヒトでは現在8種類が知られています。
ちなみに単純ヘルペスウイルス1型が(HHV-1)、単純ヘルペスウイルス2型が(HHV-2)
で水痘・帯状疱疹ウイルスが(HHV-3)です。
EBウイルス(HHV-4)、ヒトサイトメガロウイルス(HHV-5)、ヒトヘルペスウイルス6,7、8(HHV-6, HHV-7,HHV-8)、と続きます。
 ヘルペスウイルスは賢いウイルスで、宿主の免疫による攻撃を回避する手段をいくつも持っています。ウイルス蛋白の発現を必要最小限にとどめて、いわゆる潜伏感染状態に移行して免疫の認識、攻撃を回避します。そして、宿主の免疫力が弱るとそれに乗じて再活性化して感染を拡大します。また宿主の免疫活性を撹乱する機構も持っているそうです。このようにして広く動物、人に蔓延して生き延びている賢いウイルスだそうです。
近年はこの中でHHV-6,7(突発性発疹の病原体)の再活性化によって重症薬疹のDIHSが発症することも判ってきています。
HHV-4は蚊アレルギー、種痘様水疱症からリンパ腫を起こし、HHV-8はエイズ患者からカポジ肉腫を起こす事も判ってきています。
またHHV-6は慢性疲労症候群(CFS)との関連も考えら得ているウイルスです。
このようにヘルペスウイルスは人類にとっていかにも厄介なウイルスであるといえます。

単純疱疹、水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹について詳しく知りたい方はそが皮膚科
ホームページの皮膚疾患解説に書いていますので参考にして下さい。

参考文献
皮膚科臨床アセット 3
ウイルス性皮膚疾患 ハンドブック
総編集◎古江増隆 専門編集◎浅田秀夫 中山書店 2011

無題

最近、なぜか漢詩に惹かれるようになってきました。
無論、漢文などは高校時代に国語で習っただけで、読み方も良くわかりませんが、解説文などを見ながら眺めていると心に響く詩が結構あるのです。だんだん年を取って懐古趣味になってきたのかもしれませんが。
中国と日本は2000年もの長きに亘って交流がありながら、現在は尖閣のことなどからぎくしゃくしてしまっています。現在の中国に対してはどうしても好きにはなれませんが、将来的には何とかよりを戻してほしいものです。
特に杜甫の晩年の詩などがだんだん好きになってきたのは、次第に老いてきた証左かもしれません。

登高           杜甫
風急天高猿嘯哀    風急に天高くして猿嘯(えんしょう)哀し
渚清沙白鳥飛廻    渚清く沙(すな)白くして鳥飛び廻る
無辺落木蕭蕭下    無辺の落木蕭蕭(しょうしょう)として下り
不尽長江滾滾来    不尽の長江は滾滾(こんこん)として来る
万里悲秋常作客    万里悲秋常に客(かく)と作(な)り
百年多病独登台    百年多病独り台に登る
艱難苦恨繁霜鬢    艱難苦(はなは)だ恨む繁霜の鬢(びん)
潦倒新停濁酒杯    潦倒(ろうとう)新たに停(とど)む濁酒の杯

秋風が激しく吹き 空は晴れ上がり 猿が悲しげに鳴いている
眼下の川辺の水は澄み 砂は白く輝いて 鳥が輪を描いて飛んでいる
木の葉は絶え間なく カサコソと音をたてて散り
尽きることのない長江は こんこんと湧きだすように流れ下る
遠く離れた他国で悲しみをそそる秋に出合う私はいつまでも旅人の身
そのうえ生涯 病がちで たった一人いま高台に上っている
さまざまな苦難に出合ったため鬢が真っ白になったのが恨めしい
老いさらばえたこの身ゆえ にごり酒もやめたばかりだ
                       (渡部 英喜 訳)

美白剤による白斑

ここ1か月あまり、カネボウ化粧品の美白剤による健康被害が急速な広がりをみせ、連日のようにマスコミに取り上げられるほどに大きな事態になってきました。詳しい報道がなされ、日本皮膚科学会も特別委員会を立ち上げ、該当するカネボウ化粧品も自主回収され、会社のホームページで詳細が確認できる現状です。
そんな最中に特別の情報もないのに敢えてブログに取り上げることもなかろうかと思いますが、蛇足ながら一寸調べて書いてみました。(詳しくご存知の方、また関心の無い方は無視してスルーして下さい。)
書いたものの出所は日本皮膚科学会とカネボウのホームページの記事ですので、それを見ていただければ正確で最新の情報が得られると思います。
http://www.dermatol.or.jp
http://www.kanebo-cosmetics.co.jp/information/

カネボウの美白化粧品の健康被害が一般にも知れ渡るようになったのは7月4日にカネボウ化粧品(株)がロドデノールを含有する化粧品の自主回収を発表してからでした。
7月17日には日本皮膚科学会が「ロドデノール含有化粧品の安全性に関する特別委員会」を立ち上げ、早急な対応、原因究明に努めることになりました。
ロドデノールは(株)カネボウ、(株)リサージ、(株)エキップの製造・販売するメラニン生成抑制剤の中で医薬部外有効成分として含まれているもので化学名を「4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール」といい、カネボウ化粧品が独自に開発したメラニンの生成を抑える物質だそうです。植物由来の天然物質をスクリーニングしていて、白樺の樹脂に含まれるこの物質がメラニンの生成を抑えることが明らかになり、2008年に厚労省により「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ等の効能」で承認されたそうです。

色素脱失を考える時、皮膚でメラニンがどのように作られるのかを知る必要があります。
メラニン色素はメラノサイト(色素細胞)によって作られますが、これに最も重要な役割を果たしているのがチロシナーゼという酵素です。その他に2種類のチロシナーゼ関連蛋白が関わっているそうです。チロシンというアミノ酸を出発材料として、チロシナーゼの働きによってメラニン合成が進行し、ドーパからドーパキノンを経て最終的にフェオメラニン(透明メラニン)とユウメラニン(黒色メラニン)が作られるそうです。

なぜ、ロドデノールがメラニンの生成を抑制するかについては、チロシンとロドデノールが構造的に似通っているためにチロシナーゼの活性中心にロドデノールが結合するために、チロシンが結合出来なくなりメラニンの合成を抑えるという、拮抗阻害作用を持つからだそうです。
 その他に、チロシナーゼ分解促進作用、ユウメラニン(黒色メラニン)の優先的生成抑制作用などがその理由となっているそうです。

症状は、典型的な例では使用部位の皮膚の色が薄くなり、進行するとまだらに色が抜けるそうで、顔、頸、手、腕に現れるそうです。
 また、一部では赤みの出る人もありますが、全く自覚症状の無い人もあるそうです。
経過は、使用中止で回復してきている人も多くみられるが、今後長期的に経過をみないと全体像はどうなるか結論はでていないということです。
パッチテストで陽性の人もあるそうで、アレルギー性や光アレルギー性の機序も調査検討中だそうです。
治療、普段のケアについては現在情報収集中で結論はでないものの、日本皮膚科学会ホームページの患者さん向けFAQ(よくある質問と回答)で事細かに説明がしてありますので、参考にされると良いと思います。

学会では今回の白斑の原因の調査を鋭意進めているようですが、さまざまな可能性も考慮の要があるようです。
例えば、他の薬剤性の白斑黒皮症との鑑別、職業性白斑、他の化粧品や美白剤の影響、尋常性白斑との鑑別などなどです。

調査の報告はカネボウや皮膚科学会のホームページでも更新されるそうですので、新たな情報は上記サイトにアクセスして確認されるとよいかと思います。

ちなみに8月7日のカネボウ化粧品の「お問い合わせ状況並びに自主回収状況について」
を下にお示ししておきます。

8月4日時点
白斑様症状確認数(訪問者ベース) 6106 人
3つの症状*のいずれかに該当した方  2424 人
上記症状以外の方         2125 人
回復、回復傾向の方        1153 人
該当しない方            404 人

*3つの症状とは「3か所以上の白斑」「5cm以上の白斑」「顔に明らかな白斑」

アトピー性皮膚炎のお話(2)

講演Ⅱ
「皮膚疾患の治療のアドヒアランスを高めるために」
                  京都府立医科大学  加藤則人 先生

以前は治療に対して、指示通りに行っているかどうかを現わすのに、コンプライアンスという言葉が使われていました。これは企業のコンプライアンスというように、法令順守、命令に従うことの意味合いで使われています。
 すなわち、医師が患者の上位にいて、それに従わせるというような強制的なニュアンスがあります。これに対して最近はアドヒアランスという言葉がよく用いられます。
信奉、支持、固守などの意味合いがある言葉だそうです。
これは医師と患者が対等な立位置に立ち、共に治療を推し進めていこうと協同する意味合いが含まれています。
治療の行動を起こすのに健康信念モデルというのがあるそうです。
行動を起こすきっかけには一種の危機感が必要で、それに病気の重大性などが関与します。そして、有益性と障害を天秤にかけて行動をおこしていくのだそうです。
愛煙家が禁煙を始める時のきっかけ、行動パターンをもとに説明されましたが、成程と納得しました。これはアトピー性皮膚炎などの治療のきっかけの際でも同様のことがいえ、それぞれの段階に応じて説明、対応を変えていくことが重要とのことでした。
乳幼児期から若者のアトピー性皮膚炎についての治療の動機付けを主体に話されました。
最近Thymic stromal lymphopoietin: TSLPというサイトカインがあり、引っ掻き傷やテープストリッピングによりこれが増加しアレルギーの悪循環が進行することが判ってきました。佐藤先生の講演でもありましたが、これによってTh2にシフトしアレルギーを進行させるそうです。
ですから、当初単なる乾燥肌のみだったのが、引っ掻いたり治療せずに悪循環をおこしていると自然治癒力も発揮できなくなり、こじれるといいます。
そうすると、経皮感作を起こして、食物アレルギー、喘息、鼻炎などのアレルギーを起こしやすくなってきます。
乳幼児のアトピー性皮膚炎や乳児湿疹の説明は当然保護者になるわけですが、これらのことを踏まえて治療のゴールとロードマップを示し先の見通しを説明してあげることが重要です。
乳幼児期のコントロールは大人より楽で、乳幼児期に適切な治療を行い、皮疹を寛解に持ち込めば、たとえ数年続いていても思春期で軽快するチャンスが大きい、何年もこじれて、アレルギー体質が進行してから良くするのは大変だということを解り易く説明し治療に協力を求めます。
アトピー性皮膚炎は体質によるものですが、一生治らない病気ではなく、年齢とともに治っていくことが期待できる疾患であることを説明し治療に希望を持ってもらうことも重要です。
実際に乳幼児の有病率は10~13%程度ですが、発症後3~5年でその7,8割は軽快・治癒します。ただし、一旦治癒しても30~50%は思春期以降に再発するそうです。
大学1年での有病率は8%程度です。成人のアトピー性皮膚炎の治癒率は子供より低いようですが、45歳以降の患者さんは非常に少ないようです。
思春期以降になると親の言うことに反抗するようになるのでむしろ本人への直接な働きかけが重要です。
アドヒアランスを上げるためには、
・感情移入(受容と共感)
・傾聴と質問・・・相手の言葉を先取りしないオープンクエスチョン
         Yes,noだけにならない質問
・分かりやすい説明
・質問への適切な返答
などが重要と話されました。
いちいち成程と納得しましたが、これらのことを実行するには一人20~30分位の時間がかかり、忙しい開業医では無理ではないですか、との質問もでました。
加藤先生は「以前は私もそれ位かかっていましたが、最近は最初の数分で相手の求めている所を察知し、ポイントをついて話していけば短時間で診察を進めることができるようになりました。」とのことでした。
 実地診療ではこれらのことを実践するのはなかなか難しいことではありますが、ためになる言葉が沢山ありました。

アトピー性皮膚炎のお話(1)

週末は皮膚アレルギーUpdateという講演会に行ってきました。製薬メーカー主催のものなので、その販売促進もあるかもしれませんが、なかなかに中身のある講演でした。
そのⅠは東大の佐藤先生の「アトピー性皮膚炎は新しいステージへ―Proactive療法の理論と実際―」でそのⅡは京都府立医大の加藤先生の「皮膚疾患のアドヒアランスを高めるために」という講演でした。その概略を。

「アトピー性皮膚炎は新しいステージへ―Proactive療法の理論と実際―」
アトピー性皮膚炎の病態は現在、大きく分けて、バリア異常と免疫異常の2つの側面が関与していると考えられています。
近年、尋常性魚鱗癬の責任遺伝子がフィラグリンであることが発見されました。
以前から尋常性魚鱗癬の37-50%の人にアトピー性皮膚炎がみられ、またアトピー性皮膚炎の中で8%の人に尋常性魚鱗癬が合併することがわかっていました。
最近アトピー性皮膚炎のうち、18-56%でフィラグリン遺伝子の異常がみられることが報告されています。日本人ではアトピー性皮膚炎の27%でフィラグリン遺伝子の異常がみられるとの報告がされています。そして、そのうち、7つの遺伝子異常は欧米の報告とは異なるものだそうです。(名古屋大学、秋山真志ら)
フィラグリン遺伝子の検査は一般的ではありませんが、その臨床的な特徴は以下のようです。
・早期発症、重症、持続性
・palmar hyperlinealityといって手のひらに縦に深いしわが多数みられる
・経皮感作の率が高い
・喘息が多い
・ヘルペスの頻度が高い
・IgEが高い
現在はバリア異常の説明にフィラグリン遺伝子の異常を原因とするのが流行ですが、無論これがすべてではありません。
(佐藤先生はバリア異常、免疫異常の比重はその時々によって変わるので将来はまた免疫異常の比重が大きくクローズアップされるかもしれないと述べていました。)
 ではフィラグリン遺伝子異常のないアトピーのバリア異常はどうなるのでしょう。
実はフラグリン遺伝子の異常はなくてもフィラグリン蛋白の発現が低下することがわかってきています。それは、Th2サイトカインによる炎症があれば低下するそうです。
すなわち外来アレルゲンに繰り返し暴露(反復暴露)されていると、サイトカインはTh2側にシフトしIL-4が増え、マスト細胞の増加、CD4+細胞の浸潤がみられ、ダニなどの抗原特異的なIgEも増えてきます。
Th2へのシフトはアレルゲンばかりではなく、角層のテープストリッピング(テープで皮を剥がすこと)を6回やっても起こることがわかっています。単に引っ掻いても起こるということです。
また最近は経皮感作といって、皮膚表面を通して食物アレルギーや喘息、鼻炎がアレルゲンの感作を受け発症に至る、経路がわかってきました。
抗IL-4R抗体や、ステロイド、プロトピックなどはこのフィラグリンの発現を是正することがわかっています。その意味でもこれらの薬剤が治療に有用であることがわかります。
しかしながら、注意しなければならないことは、ステロイド剤はフィラグリンの発現を低下させますが、皮膚を萎縮させるという欠点があります。タクロリムス(プロトピック)やピメクロリムス外用剤は皮膚を萎縮させずにフィラグリンを回復させます。
タクロリムス外用剤は1週間で2,3回の外用で皮疹の再燃を減らすことがわかっています。その後、1週間に1回の外用でも同等の効果があるとの報告もあります。
今までのreactive療法はアトピー性の皮疹に対して治療するという方法でしたが、proactive療法は一旦軽快したとしても再発しないように治療するという考え方です。
程度によってステロイド剤、プロトピック、保湿剤となりますが、例えばプロトピックにしても、全身に使うわけではなく、再燃しやすい部位、例えば頚などに使い、炎症の繰り返しや炎症後の色素沈着,からくるdirty neckを防ぐことに役立ちます。また四肢屈曲部などに使います。目安としては中等症なら半年、重症ならば2年間とのことです。

これが外用剤のプロアクティブ療法ですが、内服にも同様の考えが適用できます。
抗ヒスタミン剤はいわゆる痒み止めですが、最近インバース・アゴニストという考えかたがわかってきました。(当ブログの抗ヒスタミン剤の使い方の項でも触れました。)
すなわち、従来はヒスタミンがH1受容体に結合して、シグナルが伝達されると考えられていました。しかし、最近はヒスタミンが結合していなくても受容体は持続的に自然に活性化(自律活性)していることがわかってきました。そしてヒスタミンはこの活性型H1受容体に結合して活性化状態にシフトしたまま安定化させるというのです。
抗ヒスタミン薬はこれに対し、不活性型H1受容体の方に結合して平衡を不活性化状態にシフトするというのです。
アトピー性皮膚炎では、痒みを自覚しない時でも常にヒスタミン受容体は活性化の方へシフトしていることから寛解時でも連続して抗ヒスタミン薬を内服する有用性があるということでした。

治療のツールは変わりませんが、病態の理解が深まるともっと突っ込んだ適切な説明ができるように感じました。

講演2は長くなったのでまた後日