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医療用弾性ストッキング

先日の日本皮膚科学会東京支部総会で、企業展示を見て回っていたら、静脈瘤の患者さん向けの医療用弾性ストッキングの展示が目にとまりました。2年前から出しているとのことでしたが、今回初めて目に留まったのは、静脈瘤のことに意識が向いたからでしょう。興味がなければみれども見えずで、今回もスルーしていたと思います。
リムフィックスという会社で、担当者と話していたら、静脈瘤治療で実績のある御茶ノ水血管外科クリニックにも納入しているとのことでした。
弾性ストッキングは現在ではインターネットで個人的にも購入できるのでしょうが、この会社のものはレパートリーが豊富です。圧力タイプには弱圧、中圧があり、爪先あり、なし、薄手、厚手とタイプが分かれ、カラータイプもライトベージュ、ミディアムベージュ、ブラックと各種あります。膝までのハイソックス、ストッキング、パンスト型もあります。
連絡をとったら早速当院に製品を持ってきてくれました。
正しい装着、適応には血管外科など専門医の診断・指導が必要でしょうが、優れものだと思いました。
レックスフィット
レックスフィット女
レックスフィット男

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掌蹠膿疱症(3)病因

1)病巣感染
掌蹠膿疱症(Palmoplantar Pustulosis: PPP)の原因は明らかにされてはいませんが、扁桃炎や歯性病巣などの病巣感染が密接に関係していることが分かっています。
2)喫煙
喫煙者にこの疾患が多いことも分かっています。
3)金属アレルギー
金属、とりわけ歯科金属アレルギーもある程度の割合で陽性で、そういった例での関連性が分かっています。
4)自己免疫疾患
自己免疫性甲状腺疾患や、グルテン過敏性腸炎、2型糖尿病などの自己免疫性疾患を合併することがあり、特に欧米ではその割合が多く、疾患のバックグラウンドに自己免疫の異常が関与しているとされています。

個別にみていきます。

1) 病巣感染
欧米と比べると、日本人では扁桃炎や歯周炎などの病巣感染に伴って発症する割合が多いそうです。またその治療による有効率は扁桃炎が60%以上、歯性病巣が65~78%と高率です。この治療はPPP に伴う、骨関節炎(PAO)に対しても有効だそうです。
ただし、この両病巣ともに無症状であったり簡単な血液検査では診断がつかないなど診断が難しいとのことです。
歯性病巣はオルソパントモグラフィーによってX線上診断がつけられます。
扁桃炎では原因菌はA群溶連菌ではなくて、口腔常在菌であるαレンサ球菌に対する免疫寛容の破綻が原因と考えられています。学童期に扁桃炎を繰り返していたケースは扁摘の効果が高いそうです。
病巣感染に対する治療の効果は2,3か月でみられるものもありますが、長いものでは1~2年かけて徐々に軽快していくケースもあるそうです。
それ以上軽快しなければ別の要因を考えたほうがよいそうです。
扁摘については、耳鼻科と皮膚科にはやや温度差があるようです。当然のことながら耳鼻科では扁桃摘出術は身近な術式で、耳鼻科医が最初に修得する手術の一つで安全なものだそうです。手術時間は30分から1時間、入院期間は約1週間で、費用は扁摘が3600点で、入院合計は3割負担で概ね10万円程度だそうです。
2008年の高原らのアンケート調査では、PPPに対する有効な治療法について、耳鼻科では97%が扁摘をあげているのに対し、皮膚科ではステロイド外用薬を最も有効とし、扁摘は50%にとどまったそうです。
では、実際の有効率はどれくらいかというと、自然治癒やどれくらいの期間をみているかなど、客観的な評価は難しく、文献によって改善したものは60~90%と幅があります。
扁摘を行う目安として、扁桃誘発試験、扁桃打消試験があります。前者は1日で簡便ですが、後者は4~7日と煩雑です。誘発試験は扁桃に物理的刺激を与えて生じた生体反応から判定する方法で、扁桃マッサージ法、超音波誘発法、ヒアルロニダーゼ法などがあります。白血球や赤沈値の増加、体温、皮疹の変化などで判定するそうです。ただ的中率は7割程度で逆に健常人でも3割は陽性になるといいます。
従って、扁摘を決める決定的な試験はなく、症状の重い例、過去の扁桃炎や皮疹との関係扁桃肥大所見などを総合的に見極めて手術適応を判断するようです。
ただ、皮膚科医は扁摘についてはよく知らず、なんとなく危険と躊躇する傾向は否めず、もっと耳鼻科に相談する必要があるかもしれません。
 扁桃炎など病巣感染とPPPの発症の機序については完全には分かっていません。
ただ、PPPでは扁桃常在菌に対する免疫寛容機構が破綻し、常在菌に対して過剰な免疫応答をすると考えられています。その結果扁桃B細胞が活性化され、皮膚に共通高原のある熱ショック蛋白(HSP)などに対する抗体産生が誘導され、またT細胞も活性化され、cutaneous leukocyte antigen(CLA)を発現するT細胞が多数でき、皮膚に移行し、皮疹形成へつながると考えられています。(Visual Dermatology 高原 幹、 扁桃と掌蹠膿疱症(耳鼻科の立場から))

2) 喫煙
喫煙がPPPによくないのは、臨床的に以前から知られていました。しかし、その理由はよくわかっていません。2002年にスウェーデンのHagforsenはPPP患者の病変部組織において表皮内汗管および周囲の表皮細胞にもニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)タンパクの発現の増強を認めました。
(ちなみに日本とともにPPPの発症率の高いスウェーデンでは90%が女性でその95%が喫煙者だそうです。そして、スモーカーの発症リスクはそうでない人の74倍だそうです。)
また同時にPPP患者血清ではnAchR抗体の上昇が約半数に認められ、何らかの自己免疫反応が汗管およびその周辺に起こり、病気の発生につながっていると推測しています。
エックリン汗管は汗の排出を行いますが、一方神経内分泌器官でもあります。ニコチンは汗から排出され、コリン作動性の炎症惹起性の物質でもあります。従ってこれが、自然および獲得免疫に関与していることが強く疑われるとのことです。
汗管は外界からの刺激をガードする免疫器官としての役割も考えられます。そう考えるとPPPに幾多の自己免疫疾患が合併しているのも自己免疫の破綻を示唆している可能性もあるそうです。(Eva Hagforsen)

3) 金属アレルギー
PPPで歯科金属アレルギーの関与があるとされていますが、各施設での金属パッチテストの陽性率は大きな差があるといいます。しかも歯科金属除去のみでPPPが改善することは比較的に少なく、同時に歯性感染症、根幹治療、歯周病治療も必要です。
従って、単に金属パッチテストで陽性であるだけで、金属除去治療の指針にはなりません。陽性金属と使用している歯科金属との整合性などを歯科医師と相談しながら慎重な対応が必要でしょう。

4) 自己免疫疾患
日本の教本ではあまり強調されてはいませんが、Hagforsenによると、PPP患者では種々の自己免疫疾患を合併することがあるとのことです。
自己免疫性甲状腺疾患、セリアック病(グルテン不耐性腸症)、カルシウム代謝異常、2型糖尿病へのリスク、うつ病などです。
彼女は、PPPはエックリン汗管や内皮組織でのnAchR抗体を始めとする自己免疫反応による疾患と考えているようです。
日本ではあまり多くないようですが(特定のHLAタイピングに多い)、グルテン不耐症を伴ったPPPの患者さんでは、喫煙よりもグルテンフリーダイエットの方がより治療効果は重要だそうです。腸の病理組織検査では陰性でも、グリアジン、トランスグルタミナーゼに対する抗体が陽性の場合は有効だそうです。

(グルテンはお麩に含まれる小麦成分で、その他小麦、ライ麦、大麦などに含まれています。日本人では以前は摂取量は少ないものでした。しかし、食生活の欧米化、米食の減少などで、グルテン過敏症は年々増えてきているそうです。)

参考文献

掌蹠膿疱症の治療 あの手この手 責任編集 照井 正
Visual Dermatology Vol.11 No.10 2012

掌蹠膿胞症(2)症状

掌蹠膿胞症は、手のひら(掌)と足底(蹠)に無菌性の膿胞ができる疾患です。
目で見ればすぐに分かりますし、日常的にも時々みられる疾患なので典型的な症例の診断は簡単です。しかしながら似て非なる疾患(鑑別診断)は後で述べますように多くみられます。また疾患の概念が明確ではありません。特に本邦と欧米で乾癬との異同に対する考え方が異なっており、名称の混乱も見られます。そのことと、この疾患が増悪、寛解を繰り返すために治療効果の判定が難しいこともあり、疾患全体の解明が遅れている原因になっています。
掌蹠膿胞症はPPPと略記しますが、palmoplantar pustulosis, またはpustulosis palmalis et plantarisの日本語訳です。しかし欧米では長らく膿胞性乾癬の一亜型として考えられていました。従って名称も、同じPPPながら、palmoplantar pustular psoriasisやPalmoplantar psoriasisなどと表記されていることも多く、またPPPのうち10-20%に乾癬(psoriasis)が合併するとの記載もあります。
しかし、患者のHLAタイプを調べると、乾癬と掌蹠膿胞症は全く異なっているとのことです。現在は少なくとも日本ではこの両疾患は別個のものと考えられています。
【罹患率】日本とスウェーデンに多いとされています。
小児では少なく、成人に多く、しかも女性に多くみられます。
特徴的なのは喫煙者に多いことで、スウェーデンでは患者の90%が女性で、95%が喫煙者だといわれています。(Eva Hagforsen)
日本人では扁桃炎や歯周病などの病巣感染や、歯科金属アレルギーを伴う例が欧米などよりも多い傾向にあるようです。
【臨床症状】
手のひら、足底に2-4mm大の膿胞が生じます。膿胞性乾癬の膿胞との一番の違いは、掌蹠膿胞症の場合は、まず表皮内に単房性の水疱ができ、その後に膿胞になっていくのに対して、乾癬の場合は水疱はできずに、膿胞(Kogoj海綿状膿胞)を形成する点です。
膿胞は紅斑で取り囲まれ、乾燥していくと茶褐色の痂皮を作ります。膿胞の出現前に痒みがあり、後に痛みを生じます。重症例では足底の膿胞、痂皮、亀裂のために疼痛が強く歩行困難になる場合もあります。
中には角化が強いタイプもあり、経過中に一見掌蹠角化症のような足底全体が紅斑落屑と、強い角化、亀裂に覆われているケースもみられます。
一般的に左右対称的に出現しますが、片側のみの場合もあります。また炎症が爪周囲に及ぶと爪甲が変形し、爪甲下に膿胞を生じることもあります。この場合はHallopeau稽留性肢端皮膚炎(膿胞性乾癬の一亜型)との鑑別が必要になります。
掌蹠外にも皮疹ができることがあり、掌蹠外病変とよばれますが、臀部、四肢に乾癬様の紅斑落屑や膿胞ができますが、典型像ではないそうです。
掌蹠膿疱症は主に手足に限局した疾患ですが、患者さんの苦痛は意外と大きく、QOL(quality of life)を大きく損ねているようです。すなわち痛くて歩けない、人前で手を出せない、胸鎖関節痛などで腕が上がらないなどが原因で、広範囲に皮疹が拡がる乾癬などよりもQOLが低い場合もあるそうです。
経過は慢性で、寛解、増悪を繰り返しますが、平均3~7年くらいで軽快することが多いそうです。
【合併症】
◆骨関節症状
約10%にみられます。前胸部に最も多く、日本からの報告が最も早く、鎖骨骨髄炎、胸肋鎖骨間骨化症、掌蹠膿疱症性骨関節炎(Pustulotic arthro-osteitis: PAO)などとよばれています。
1987年には欧米から骨関節の炎症と無菌性の皮膚炎を来す疾患をまとめてSAPHO症候群という概念が提唱されました。
これは滑膜炎Synovitis ざ瘡Acne 膿疱Pustulosis 骨増殖症Hyperostosis 骨炎Osteitis の頭文字をとってつなげたものです。
PAOはSAPHO症候群の中に含まれることになります。3割強がPAOだそうです。
前胸部が最も多く発赤、腫脹、疼痛があり、運動制限をきたします。次いで仙腸関節、脊椎、下顎骨、恥骨などが多く四肢末梢関節が侵されることもあるそうです。
治療法は関節リウマチに準じますが生物学的製剤の効果は不定のようです。(この製剤によって逆に掌蹠膿疱症が生じることもあります。)
◆アナフィラクトイド紫斑、IgA腎症
頻度は多くはないようですが、時に掌蹠膿疱症の経過や悪化中に紫斑やIgA腎症を生じることがあります。掌蹠膿疱症の原因の一つには病巣感染(歯周病や扁桃炎など)が関与するといわれますが、同じように紫斑、IgA腎症にも病巣感染による免疫複合体か関与するといわれます。これら共通の基盤の上で、溶連菌やαレンサ球菌などに対して過剰な免疫反応をおこし皮膚や腎臓や骨などに炎症を起こすことが考えられています。
【鑑別診断】
掌蹠膿疱症とみた目が似ていて異なる疾患はかなりあります。
◆感染症
・掌蹠の疥癬・・・時には小水疱、小膿疱がみられる場合があります。無論ダーモスコピーなどで仔細にみて疥癬トンネル、疥癬虫がみつかれば区別はつきます。ちなみに掌蹠膿疱症でのダーモスコピーの像は水疱の中に膿疱がみられるのが特徴だそうです。
疥癬では、指間などに白っぽい線状の疥癬トンネル(0.5x5mm程度)を作ることが特徴です。仔細にみると人字型、船の水尾(みお)型に見え、水尾徴候と呼びます。また外陰部、臀部、腋窩、肘等には結節を作ります。それと手足の膿疱、水疱などでは疥癬虫を見つけることが可能ですが、体幹部の丘疹ではまずみつかりません。虫はダーモスコピーでは胴部は白く見えにくく、顎体部、前足部は黒くみえますので、三角黒点としてみえます。
・白癬症・・・いわゆる水虫のことです。足白癬には小水疱型(汗疱型)、趾間型、角質増殖型がありますが、小水疱型は水疱の他に膿疱を形成して、掌蹠膿疱症と似る場合があります。しかし水疱、膿疱蓋をハサミで取って顕微鏡でみれば水虫ならばほぼ確実に真菌をみつけることができます。
掌蹠膿疱症の経過中に水虫に感染している例をみることもあります。従って怪しいときには真菌の顕微鏡検査をすることが重要かと思います。
・汗疱の二次感染・・・時に汗疱に溶連菌などの細菌がついて膿疱化することがあります。しかし臨床上で掌蹠膿疱症のような典型的な単房性の膿疱をとるケースは少ないようですし、細菌培養などの検査をすれば区別できます。
◆汗疱
基本的には手汗をかきやすい、小水疱のみであるなどの症状によって区別できます。時に金属アレルギーを有していることがあります。
◆好酸球性膿疱性毛包炎
頻度は多くはない疾患ですが、一応手足の膿疱をみたら考えておくべき疾患です。
典型的には顔面、体幹、四肢などに痒みを伴う毛包一致性の丘疹や無菌性膿疱が環状、局面状にでき、中心部は色素沈着と軽い鱗屑を残して軽快する病変です。しかし、手足に初発することもあります。実は手足には毛包がないので、好酸球性膿疱性毛包炎という病名はやや不適切だという向きもありますが、この疾患概念は近年HIV感染症に伴ってみられるなど新たな拡大展開がみられています。
いずれにせよ、目で見るだけでは正確な鑑別はできず、血液中や組織中の好酸球の増加があることを確認することが必要です。特に掌蹠外皮疹があるものについては病理組織検査で確認することが重要になってきます。
◆急性汎発性膿疱性細菌疹(Acute generalized pustular bacterid : AGPB)
Pustular bacteridという概念は1930年代にAndrewsが提唱しました。1974年にはTanがAGPBとして報告し、膿疱はPPPのように手掌、足底から足背から四肢、体幹部までにも拡大すること、上気道感染が先行し、血清ASO値が上昇すること、病理組織学的にleukocytoclastic vasculitisを伴い、IgM,C3の沈着を伴うこと、一過性で再発しないことなどを特徴としました。
AGPBは急性一過性であることと、掌蹠外病変がPPPと異なり、膿疱のみであることなどが鑑別点になります。

掌蹠膿疱症と乾癬は別個の疾患ではありますが、掌蹠外病変がある場合にはその異同に苦慮することもあります。遺伝子的には疾患関連遺伝子座のHLAタイプは異なるものの、この両者は非常に近縁の疾患であり、乾癬と掌蹠膿疱症の家族例をみることもあるといいます。

【疾患のバックグラウンド】
自己免疫性の疾患と考えられており、自己免疫性甲状腺疾患、グルテン過敏性の腸炎などや2型糖尿病を伴いやすいともいわれています。

参考文献

Visual Dermatology Vol.11 No.10 2012
特集 掌蹠膿疱症の治療―あの手この手  責任編集 照井 正

掌蹠膿胞症2

掌蹠膿胞症1

掌蹠膿胞症3

疥癬水疱、膿胞はみえても疥癬です.

掌蹠膿胞症ではありません.

疥癬虫鏡検すると疥癬虫がみつかります.

 

掌蹠(しょうせき)膿疱症 (1)

日本皮膚科学会東京支部学術大会のシンポジウムに「掌蹠膿疱症―基礎から臨床へ――」がありました。
掌蹠膿疱症は皮膚科では比較的によくみられる疾患です。患者さんもこの病気のことをよく知っている人もいて、そこそこビオチン、光線療法も効きますが、寛解増悪を繰り返すので、治療もまんねりになった感がありました。
そういえば、いつかこれについて調べます、といってそのままにしていました。
理解しているつもりになっていた疾患ですが、出席してみて最新の情報を見聞きし、知らないことが多いことを知らされました。
学会から帰って調べてみたら、日本皮膚科学会のHPの皮膚科Q&Aの掌蹠膿疱症の項目は照井会長が執筆していて、またVisual Dermatologyの掌蹠膿疱症の治療の特集号も責任編集 照井 正となっていました。
掌蹠膿疱症の喫煙とアセチルコリン受容体の病態の解明を進めたスウェーデンの女性学者Eva Hagforsenを招いてのシンポジウムでした。
Visual Dermatologyの初めには羅針盤として照井先生の
 掌蹠膿疱症に挑戦!! 治療法の確立と病態の解明を目指して
という巻頭言が載せてありました。
沢山あるシンポジウムのひとつではありましたが、先生の掌蹠膿疱症、乾癬に対する並々ならぬ思いが感じられました。そういえば東北大学で田上八郎先生の薫陶を受けた先生だからかもと思いました。
それで、主にこの特集号を種本に、掌蹠膿疱症について調べてみることにしました。

東京支部学術大会の特別企画に思うこと

明日は日本皮膚科学会東京支部学術大会が東京で開催されます。
よりによって、この悪天候で開催者会長の日本大学皮膚科の照井正教授は頭の痛いことでしょう。
小生は外来が終わってから出席の予定ですので、午後からゆっくりの参加です。
プログラムをみていたら、特別企画として、「日本の皮膚科治療は世界水準といえるか?~他国の状況を知り、日本の治療事情を考える~」という一寸刺激的な企画がありました。日本の皮膚科の基礎研究は世界レベルだそうです。しかし、治療においては東南アジアを含め他の国でも一般に使われている薬や医療器具が使えなかったりして、他国に遅れをとっているウイークポイントもあるそうです。中国、韓国、台湾、タイからの皮膚科医を招いてこれらの問題を討論をすると書いてありました。日本側からは帝京大学の渡辺晋一先生が講演するそうです。
 渡辺教授はレーザー、真菌、細菌学の専門家で当ブログでも度々引用させてもらっていますが、講演会の度に辛口のコメントを聞かされてきて、なるほどと思っていたところでした。
 東南アジアの若手の皮膚科医を育てるプロジェクトがあって、日本から毎年教育講演に行くそうですが、渡辺教授も行く機会があるそうです。その際に日本の医学は進んでいるのに治療の遅れているのに逆にびっくりされることもあると話されていました。例えばニキビの治療、また乾癬の治療でも世界のスタンダードと一寸ずれているとのことでした。ニキビ治療薬の標準治療薬が使えなかったり、いまだに乾癬にチガソンを使っていたり、MTXが標準治療からはずれていたり、シミの治療でもトランサミンは欧米では使われないなどなどです。
講演で一番盛り上がったのが、日本でやっとアダパレンがニキビに使われだしたこと(東南アジアに何年遅れか)、まだ乾癬にチガソンを使っていることなどだったそうです。
 日本はある意味アジアでは皮膚科学は進んでいて、独自の教科書を持っています。東南アジアなどは独自の教科書がなく欧米の教科書を使っていたりとのことでした。ということは勉強する人は逆に世界基準の進んだ知識を持っていることになります。
渡辺先生の抄録に以下のように書いてあります。
「日本の皮膚科教授は基礎医学に留学するか、皮膚科に留学しても研究目的である。そのため海外でどのような薬が使用されているかを知らない。もちろん欧米の皮膚科教科書を読めば、世界標準治療は記載されているが、そこまで読む人はほとんどいない。そのため、日本の治療は、日本独特の進化を遂げたものになっている。・・・」
 何も欧米が一番でそれに全て右へならい、することもないと思いますが小生のような一開業医でも一寸日本と外国では治療が違うな、と思うこともあります。
 ヨーロッパのEADVやアメリカのAADで臨床の講演をする日本の皮膚科教授はほとんどみあたりません。たぶん研究皮膚科学会では多いのでしょう。優秀な先生も多いので是非外国でも日本の皮膚科ここにあり、というような日本人の講演が聴けるような日がくるといいなと思いました。でも日本人は言葉の問題があるのかなという気がします。
 ただ、上記の話題は一部の分野、トップクラスの話で、日本の皮膚科専門医の診療レベルは相対的にみて世界的にも高いのだと思います。
しかし、皮膚科を専攻していなくても開業すると皮膚科の看板も出せるという現在の日本の診療システムは一寸問題があると思います。
国は医療費の高騰の問題もあり、一般総合診療医を増やしてゲートキーパーとして皮膚病を診察し、難しい皮膚疾患だけを皮膚科専門医に回すという構想を持っているようですが、皮膚科ってそんな片手間で解かるようななまやさしい分野ではないと、(個人的には)思います。
何かとりとめのない結論になってしまいましたが、なるほどと思うところがあり、書いてみました。

深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis: DVT) 再び

一寸しつこいかもしれませんが、DVTについて再度書きます。
先日、県医FAXシャトル通信で産婦人科医学会より会員の皆様へお願いという文書が送られてきました。
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「最近、ピル服用者の血栓症が問題となっています。患者さんの多くが、最初に内科・整形外科・脳外科を受診しています。血栓症の早期診断にご協力をお願いします。」
以下の症状を訴えて、女性が受診されたときには、ピル/エストロゲン服用の有無を尋ねてください。服用者では血栓症の検索をお願いします。早期に診断できれば、救命が可能です。  
激しい頭痛・・・・頭蓋内静脈洞血栓症
下肢の急激な疼痛とむくみ・・・・下肢深部静脈血栓症
息切れ・胸痛・・・・肺塞栓症
四肢の脱力・麻痺・構音障害・急性視力障害・・・・脳梗塞

避妊のほかに、卵巣機能不全・月経困難症・子宮内膜症・更年期障害に処方されていることがあります。
エストロゲン薬には、経口薬の他に貼付剤・ゲル・スプレーもあります。
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最近も、下肢の腫脹、潮紅、痛みを伴ったり、静脈瘤のある患者さんが時々お見えになります。整形外科、内科、皮膚科などの通院歴のある方もあり意外とDVTは見逃されている可能性もあります。小生も今まではこのようなケースでは丹毒、蜂窩織炎などをまず最初に考えていました。重症の方は病院に紹介はしていましたが、DVT、肺血栓・塞栓症までは考えが及ばなかったのを反省しています。
急性のDVTは2,3日もすると側副血行路ができ、腫れや痛みなどの症状も自然に軽快することがあるようです。しかし、いったん深部静脈に血栓ができると、下肢の静脈は表在静脈系をバイパスとして還流せざるをえなくなり、負荷がかかって二次性の静脈瘤ができます。そして、検査でも一次性のものと同様な結果になる事もあるそうです。
しかし、治療方法は大違いです。(前のブログに書きました。)
DVTは急性期は勿論のこと、慢性期にも大きな問題をかかえているように思えます。

以前はDVTは欧米に比べて、日本人では稀といわれていたそうです。しかし、決して少なくはありません。
一般の人は勿論、医療者側ももっとDVTに対する認識を深めることが重要かと思いました。
繰り返しになりますが、DVTの原因などについて下にまとめます。
【DVTの原因】
血栓の原因はVirchowの3主徴とよばれる3つに分けられます。
1. 静脈内壁の障害
  カテーテル検査、外科手術、スポーツなどでの外傷
2. 血液凝固の亢進
  脱水、癌、感染症、手術、エストロゲン製剤の使用(ピルなど)
  血栓ができやすい病気・・・抗リン脂質抗体症候群、プロテインC/S欠損症
               アンチトロンビンⅢ欠損症
               ベーチェット病など血管炎症候群
3. 静脈のうっ滞
    長時間同じ姿勢・・・飛行機(以前はエコノミークラス症候群、最近は旅行者血栓症、ロングフライト血栓症と呼ばれる)
タクシー運転手、長距離トラック運転手、長期臥床
    うっ血性心不全、静脈瘤、肥満、妊娠、ギプス包帯固定

これらの誘因の中でも特に、静脈血栓塞栓症の既往、血栓性素因、下肢麻痺、下肢ギプス固定は危険因子の中でも最も注意を要するものとされています。
下肢深部静脈血栓は左側下肢にできやすいです。それは、左の総腸骨静脈と右の総腸骨動脈が交差しているために、左総腸骨静脈を圧迫するので左側に多いとされます。

上記の誘因があって、しばらく動かなかった人が動き始めたり、トイレに立ったりしたことをきっかけに深部静脈に血栓ができると急性深部静脈血栓症をおこします。
さらに一部は肺血栓塞栓症を起こします。
下肢の片側の色調の変化(赤くなる)、腫脹、痛み、これらが立位になると悪化する、下腿筋肉の硬化、圧迫すると痛くなるなどの症状は要注意です。
しばらくたって軽快しても早期に医療機関を受診することが肝要と思われます。
更に、胸痛、呼吸困難、咳、息切れなどの症状は肺血栓梗塞の際にみられるとのことです。こうなると一刻も早く受診する必要性があるかと思います。

参考文献

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)

静脈瘤 治療(II)

保存的な治療法、すなわち手術以外の治療法は前回に書いた、圧迫療法が主になりますが、それ以外のものには次のようなものがあります。
◇間歇的空気マッサージ装置
リンパ浮腫用に開発されたものだそうですが、波動式空気マッサージ装置(ハドマー、メドマー)があり、足部から大腿部まで空気のカフが末梢部から中枢部へ順次圧迫を進める装置です。周術期の深部静脈血栓症の発生予防に頻用されているそうです。これは高額で大型であるために、電気店で販売されているふくらはぎ用のエアーマッサージャー(エアキュット)が便利でお薦めだそうです。ただし、これは浮遊血栓のあるDVTがある時は肺血栓・塞栓を助長するために禁忌です。
(伊藤孝明 皮膚外科学 16 うっ滞性潰瘍・下肢静脈瘤 P545)

手術治療
一次性静脈瘤の治療法には、本幹治療法として、ストリッピング(静脈抜去術)や高位結紮術、血管内レーザー焼灼術などがあります。アメリカではレーザーが第一選択として推奨されています。分枝の瘤には硬化療法や静脈瘤切除術が行われています。またこれらを組み合わせて行う場合もあるようです。
【高位結紮術】
中等度の伏在型静脈瘤に対して行われます。大伏在静脈では鼠径部、小伏在静脈では膝窩部で結紮または結紮切離を行います。局所麻酔で皮膚を2~3cmほど切開して行います。
鼠径部では大伏在―大腿静脈分岐部より1.5横指下側の大伏在静脈部分を太い絹糸で2重結紮し、その間を離断します。さらに頭側に結紮を追加補強します。
 更には、再発を予防するために大腿内側や膝下の分岐部や深部静脈との交通枝なども離断する場合もあります。
 小伏在静脈では膝窩部分で静脈の切離をします。
高位結紮術のみでは再発するリスクも高いために、後日硬化療法も併用する施設が多いそうです。最近はより根治性の高いレーザー治療やストリッピング手術をする施設が増えているそうです。
【ストリッピング手術(静脈抜去術)】
伏在静脈の拡張が高度で鼠径部での静脈径が8mm以上の場合に選択する施設が多いそうです。再発率が少なく、最もスタンダードな治療法です。
腰椎麻酔・硬膜外麻酔などが使われますが、最近では大量低濃度局所浸潤麻酔(TLA: tumescent local anesthesia)と静脈麻酔、大腿神経ブロックなどを併用して日帰り手術を行う施設も多いそうです。
《TLA・・・大伏在静脈に沿って、生理食塩水で希釈したキシロカインを大量に注入して浸潤麻酔を行う方式。長時間の鎮痛作用が保たれ安全に使用できるために日帰り手術の標準的な麻酔方法になっているそうです。》
高位結紮術を行ってから、下腿1/2の高さの大伏在静脈を露出させ、ここからストリッピングワイヤーを挿入し、鼠径部に出たワイヤーをヘッドに換えて抜去するBabcock法とワイヤーに静脈を結紮して、静脈を内翻させて引いて抜去する内翻ストリッピング法があるそうです。後者の方が神経障害や疼痛が少ないそうですが、抜去途中で静脈が断裂することもあるそうです。
小伏在静脈高位結紮術は腓腹神経障害を生じる恐れがあるので一般にはストリッピングは行われません。(あるいは限局的ストリッピングを施行。)
これは根治術ですが、術後5年で3~4割で他の表在静脈を介した再発を認めるとのことです。
伏在静脈を抜去して血行は大丈夫か、との心配される向きもありますが、他の血行路があり、問題ありません。ただし、深部静脈が閉塞していないことが前提になりますが。
【血管内焼灼術】
伏在静脈内腔にレーザーを照射して焼灼閉塞させる方法です。American Venous Forumでは血管内レーザー焼灼術が伏在静脈本幹治療の第一選択枝として推奨されています。欧米では1998年から、日本でも2002年から行われているそうです。
2011年からは980nmの半導体レーザーが保険認可され、その有効性が認知されだし、本邦でも第一選択となりつつあるとのことです。一般に日帰り手術が行われ、下肢圧迫療法をしたうえで歩行帰宅できるそうです。まれに術後、皮下出血、皮膚熱傷、DVT などが合併症として発生するそうです。
なお、上記以外の波長や高周波(ラジオ波)は保険適用がなく、自由診療となるそうです。
【硬化療法】
1994年に保険適用になり、2006年に硬化剤ポリドカノールが承認されました。硬化剤を直接静脈に注入して弾性包帯で圧迫します。(圧迫硬化療法)
最近は空気と混合して注入する泡状硬化療法、フォーム注入療法も行われています。
ただし、硬化療法は立位で径8mmを越える高度な伏在静脈瘤には単独での適応はありません。高位結紮術などとの併用が行われています。
クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤、側枝型静脈瘤などの小静脈瘤には硬化療法や血管レーザー(Vbeam, Gentle YAG など)が用いられています。

一次性静脈瘤の治療方法はTLAなどの麻酔方法の進歩や血管内レーザー療法の進歩によって近年大きく変化、進歩してきているようです。
(詳しくは専門の血管外科、静脈瘤専門センターなどのHPを参照して下さい。)

【DVTの治療方法】
深部静脈血栓症による二次性静脈瘤については、深部静脈の還流障害によって表在静脈が側副血行路として拡張、蛇行したものですので、高位結紮術、ストリッピング術などを行うと、静脈血行路を遮断することになり、かえって静脈うっ滞を悪化させます。
従って、手術は原則禁忌です。ですから深部静脈の開存を血管エコーなどで術前に確認することが重要になっています。
◇圧迫療法
弾性ストッキングなどで下肢の静脈高血圧を改善し、腫脹の軽減化、血栓のさらなる防止、だるさなどの症状の改善が見込まれます。
◇抗凝固療法
DVTの急性期(約1週間)には肺塞栓が起こり易いとされています。入院の上、ヘパリン、ワーファリンなどの抗凝固療法が必要となります。
ヘパリン 初回 5000単位静注
        10000~15000単位を24時間持続点滴
その後APTT値をチェックしながら増減、経口抗凝固薬(ワーファリン)を使用。
◇血栓溶解療法
ウロキナーゼの持続的静脈内投与方法。血栓が遊離する危険性もあり限られた症例のみに使用されるそうです。また全身投与は大出血の危険性が高まるためにあまり行われないそうです。
◇下大静脈フィルター留置
下肢の血栓が肺に塞栓症を起こさないように腎静脈以下の下大静脈にフィルターを留置するもので、永久型と非永久型があるそうです。1~2週間ならば回収可能だそうです。
慢性期には、弾性ストッキングをきっちりと着用する習慣をつけることが重要です。むしろ長時間の安静、座位は避け動くほうが静脈流を活発にします。脱水状態にならないようにすることが肝要です。
またワーファリンを服用中はその作用に拮抗するビタミンKを含む食品を避ける必要があるそうです。
すなわちアロエ、青汁などの摂取は禁止となります。

参考文献
皮膚外科学 監修 日本皮膚外科学会 学研メディカル秀潤社 2010 東京
伊藤孝明 16 うっ滞性潰瘍・下肢静脈瘤 p540-549

日本医師会雑誌 第142巻・第9号 平成25年(2013)12月
特集 末梢動脈・静脈・リンパ管の病気update
長江恒幸、重松 宏:下肢静脈瘤の診断と治療 p1975-1979

駒井宏好、山尾 順:深部静脈血栓症の診断と治療 p1981-1984

日本皮膚科学会雑誌: 121(12), 2431-2448, 2011(平成23年)
日本皮膚科学会ガイドライン
創傷・熱傷ガイドライン委員会報告―5:下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン
伊藤孝明 ほか