月別アーカイブ: 2014年4月

顔のホクロ、シミ、癌

昨年の千葉市医師会学術講演会で、大原先生の皮膚癌の講演がありましたが、好評につき今年も第2弾をお願いすることになったそうです。
今年は主に顔のシミ、ホクロ、癌についてのお話でした。
この3者は時として、紛らわしく患者さんの心配の種にもなりますし皮膚科医も悩ますこともあります。
【ホクロ】
<ホクロって何?>
・・・ホクロは母斑細胞の塊のことです。良性の腫瘍といってもよいです。ホクロとアザの違いは前者が小さくて、生後しばらくしてから膨らんでくるもの、後者は中型、大型で生まれつきあるもの、大きさは変わらず、平らで少し隆起し、むしろ次第にうすくなります。
<ホクロって癌になるの?>
・・・小型のホクロ、中型のホクロから癌化することはあります。しかしその頻度は非常に少なく、正常の皮膚から癌になるのと差はないようです。ホクロが癌になったという話は良く聞きますが、それは元々癌だったが、素人眼にはホクロにしかみえなかった、というのが真相のようです。
現在ではこの鑑別にダーモスコピーが威力を発揮します。しかし100%診断できるわけではありません。
しかし、体全体を覆うような大型、巨大型のホクロ(先天性あざ)では話が異なります。100人のうち、5人くらいはその中からメラノーマが発生します。
<ホクロに似て非なるものは?>・・・
・青色母斑・・・青ボクロとも呼ばれます。細胞の種類が違います。青あざの細胞、真皮メラノサイトの増殖です。青い盛り上がり、しこりとしてみえます。7,8割の人がボールペン、鉛筆の芯を刺したといって来院します。この細胞がパラパラ増えれば蒙古斑となります。
・血豆・・・最初赤く、後に黒くなります。
・black heel・・・足裏、特にかかとなどの圧のかかる部位の皮下出血です。ときにメラノーマを心配されることもありますが、ダーモスコピーで区別がつきます。
・comedo(面皰)・・・毛穴のつまり、ニキビの初発疹です。白ニキビは閉鎖面皰、黒ニキビは開放面皰とよびます。角栓が表面から黒くみえます。
・soft fibroma(軟線維腫)・・・顔、頚などによくみられます。皮膚のポリープと説明すると納得する(わかり易い)ようです。
・脂漏性角化症(老人性イボ)・・・
体質(遺伝)、紫外線の影響で顔に良くできます。老人性のシミから続発します。
小さなものはskin tag,軟線維腫といい皮膚のポリプともいえます。表面が黒くザラザラしていて、小さな穴が多数開いていて軽石状にみえます。中高年のひとには元首相の福田赳夫氏の顔といえば想像できます。
・基底細胞癌(basal cell carcinoma: BCC)・・・顔の黒いホクロに似たもので、悪性のものは基底細胞癌が代表です。BCCは小さいものでもでこぼこしていて、多房性、多結節性になります。
・メラノーマも鑑別が必要ですが、顔にできるものはlentigo maligna melanomaのタイプが多く、シミとの区別が必要で、結節型のメラノーマは体幹に多く出血したり、じくじくしたりします。
<色の濃淡や隆起は悪性の印ですか?>
・・・褐色の色の濃淡も大事ですが、色の多彩さの方がより重要です。良性のシミは基本は褐色ですが、メラノーマでは黒、こげ茶、青、白、ピンク、灰色、などの多彩な色がみられることが多いです。
またホクロは次第に隆起してきて、色が抜けてきます。表面には毛穴があり、毛はしっかり残っています。字面だけをみれば、色が変わり、腫瘤が隆起となりますが、これに惑わされないことが必要です。
またクラーク母斑は中心部が濃く、周辺部が淡くなっていますが、これもシミ出しではなく、色の濃淡で悪性とはなりません。
境界鮮明、左右対称的なものは押しなべて良性です。
<治療は?>
・・・CO2レーザーも明らかなホクロならば良い適応です。脂漏性角化症の際はほとんど液体窒素療法でOKです。レーザーも使いますが、あまり皮膚面が平らになるまでやりすぎると痕が残ります。こつは少し痂疲を残す程度にやるとそこにも熱が伝わっていて、後できれいに取れます。
手術で切り取る場合、よく黒目と白目の関係で患者さんに説明します。黒目部分のホクロをとる場合、白目も含めて切り取ることになります。すなわち1cmとると3cmの縫合創ができるといった具合です。もう一つのやり方にパンチで丸く切り取る方法があります。開放創は傷の周りから縮もうとするので、丸くくり抜いて開放創にしておくと、縮んでニキビ痕、水ぼうそうの痕のように小さい傷で治せる場合もあります。ただ、おでこ、頬のようにでっぱった部分の傷は拡がりますのでやりません。眼の周りなど皮膚の余裕のあるところは良い適応です。

【シミ】
<一般にシミは>
・・・老人性シミ、肝斑、後天性真皮メラノサイトーシス、そばかす、汗管腫、軟性線維腫など様々なものに対して“シミ“いう言葉が使われているようです。
一般的にシミは紫外線の影響を受けやすい頬にでき易く、髪の毛で隠れる額には少ないようです。
・肝斑・・・左右対称性で、境界は不鮮明です。赤茶色できたなく、べたーとした色調です。ビタミンC,トランサミンなどがよく使われます。
・後天性真皮メラノサイトーシス・・・額、鼻、眼瞼部にもみられることがあります。
灰青色に見えます。
・口唇のシミ・・・アトピー性皮膚炎の人で唇があれる人、舐めたりむしったりする人に単発や多発性にシミがみられます。炎症を繰り返すと色素斑が多発してきます。唇の色が全体にうすいのが特徴です。
・老人性色素斑・・・レーザーの良い適応になりますが、ほぼ必ずといってよいほどに炎症後色素沈着がでます。これを説明しておかないと、患者、医者ともに思わぬトラブルに巻き込まれることもあり得ます。
シミもそばかすもレーザーの適応になりますが、あざはなかなか完全には難しいです。手術するかどうか悩むところです。
・老人性シミとメラノーマ(lentigo maligma melanoma)の区別はベテランの医師でも結構難しいこともあります。シミは基本的に褐色の色調の濃淡ですが、メラノーマになるとそこに黒、茶色、灰色などの多彩な色が混じってきます。色の調子が違ってきます。ただ、大きくてもしこりがなくて平らならば早期癌です。(melanoma in situ)表皮基底層を破って真皮へ侵入していない状態。この状態で何年も平気な人もあります。手術で治る可能性が高いです。
逆に小さくてもしこりができてくると早期とはいえません。
【顔の癌】
顔の皮膚癌で、ホクロと似ていて最も多いのが基底細胞癌(BCC)です。
・BCCは局所破壊性ですが、基本的にあまり転移はせずに致死的ではありません。
・8割方は顔にできます。(顔の分節によくできるので、眼、鼻、耳のくぼみなど注意が必要です。)
・数㎜の小さなものでも、よくみると多房性、多結節性で表面、周りが平滑ではなくでこぼこしています。ホクロではまず腫瘤に子供の腫瘤が生まれることはありませんが、BCCではよくみられます。
病型はいろいろありますが、サボテンのように枝分かれしたり、扁平だったり、子供ができたり、腫瘤の中が抉れて出血したりします。ただ、出血といっても顔を洗ったときにかさぶたが取れて、血がにじむ程度です。
・BCCではダーモスコピーが良い診断方法になります。(樹枝状の血管がみえたりします。)

メラノーマ(悪性黒色腫malignant melanoma: MM)
顔に限っていうと、結節型のメラノーマは少ないです。多くが老人性シミと紛らわしい悪性黒子型メラノーマ(lentigo maligna melanoma: LMM)です。
・老人性のシミとLMMとの鑑別は結構難しくベテラン医師でも困難な場合があります。ダーモスコピーでも一番難しい部類です。
表皮基底層の細胞が不規則に増えて、色素が濃くなるので、ダーモスコピーで真上からみると表皮突起の延長部分が輪状に見えますが、その濃さが微妙に違い、輪の濃さの左右差がありますが、かなり判断は難しいです。
・それで、老人性シミでレーザー治療をやり、何度も再発を繰り返している中にLMMが混じっていることもあります。ただ、それでも平であって、しこりがなければ早期の癌として治療、治癒は可能です。

最後に大原先生のコメントは「シミとメラノーマって結構難しいんだ」という言葉でした。
ベテラン専門医でも難しいものもあれば、明らかに大丈夫なものもあり、字面でいうと却って混乱、心配することもあります。素人が的確に判断するのはまず無理です。そのために皮膚科医がいるので何でも癌が心配ならば皮膚科専門医にまず診てもらうのが良いと思いました。

中原寺メール4/17

【前住職閑話】~ダライ・ラマ法王の手は柔らかい~

昨日はチベット仏教の最高指導者でノーベル平和賞のダライ・ラマ法王とごく間近に接する機会をいただきました。

港区芝にあるグランドホテルで曹洞宗教誨師連合会結成50周年があり、ダライ・ラマ法王の記念講演がありました。来賓として招かれた私の席が法王とわずか4メートルほどの近い障害物のない距離で話を聞くことができたことは幸運であり、終わって降壇されたときに法王の差しのべた手を握れたのは感激でした。慈悲の実践者にふさわしい柔らかい手でありました。

法王は世界各地を巡り、平和・非暴力・異なる宗教間の調和・地球規模での責任感・仏教の慈悲を伝えるメッセージを発信し続けています。また科学者との対話にも力を入れ、さらに中国によるチベットの仏教が迫害されている歴史の中で、法王の徹底した慈悲心の考えや行動に欧米では多くの人びとが関心をもって法王のもとに集まってくるそうです。

話の中で特に印象に残ったのは、常に70億人の一人であること。わが心の持ち方が怒りや敵を作る。因果の道理を知らない無智が平安(さとり)を妨げる。もろもろの事象には実体(それ自身によって存在するもの)がないので執われを持ってはならないこと、などでした。

しかしこれらの言葉の説く一つ一つは、言葉によって伝わるのではなく、語り手のすべてを包み込む柔和な人格によるものだと深く感じました。

よき人に出会い、よき言葉に出会った、仕合わせな恵みのひと時でした。

ボウルダー、ロッキー山脈へ

ホテルのコンシェルジェにいろいろと情報を教えてもらったものの、やはりロッキーマウンテンに行きたい気持ちには抗えませんでした。
翌朝は早朝に起きると、ボウルダー行きのバスにとび乗りました。たったの5ドルです。そこはロッキーマウンテン国立公園までの途中の町です。そこまで行けば何とかなるのではないか、と思いました。レンタカーがあるかもしれない、そこからシャトルバスやツアーがでているかもしれないという何とも虫のいい、何の裏づけもない甘い期待がありました。
バスは大平原の中をひた走ります。名前の判らない白っぽい樹木がぱらぱらとみえます。
多分、2百年足らずの昔はネイティブアメリカンが昔ながらの生活を送っていたところなのでしょう。デンバーの空港にはターミナルの通路にアメリカン・インディアンの写真が何枚も掲げてありました。この地では、彼らの滅びの歴史悲話があります。しかしながらそのことももう今では知るよすがもありません。
はるか遠くにロッキーマウンテンが見えますが、近くには山らしいものも見えないためにここがマイルハイシティーである高地であることも忘れてしまいそうです。
小1地時間でボウルダーのバスターミナルに着きました。途中所々で学生らしい若者が下車していきました。自転車もバスの荷物置き場に載せてくれていました。
ボウルダーはロハス発祥の地といわれ、静かで綺麗な街でした。まだ朝早いせいか人のでも少なく、たまたま開いていた雑貨店に入りました。何かアジア人の主人でした。3年前にネパールから移住してきたとのことでした。マップと山の情報を知りたいというと街のメインストリートの方を指し示してくれました。パールストリートは人もまばらですが、静かなきれいなところでした。観光案内所にしばらくすると職員が来ましたのでロッキー山脈の公園の入り口のエステスパークまで行きたいというとタクシー以外はないといいます。近くのホテルにいけばシャトルがあるかもしれないというので行ってみました。
ホテルフロントのお嬢さんは親切で、エステスパークまではシャトルはなく、タクシーしかないけれど、ここからバスでNederlandというところまでいけばそこはとても景色のいいところでロッキーマウンテンも見えるといいます。そこで散歩するのもいい、と2つのオプションを示してくれました。どちらを薦めるかと聞くと、バスなら5ドルだし、Nederlandがお薦め、ということでした。確かに1,2万円も払って公園に行くよりはよさそうな気がしてきました。それでバスに乗りました。バスは山道を辿り、次第に高度を上げ、渓谷の様相を呈してきて周辺には雪も見えるようになってきました。
かなり期待がもてそうです。ところが、Nederlandのバス停で下車すると、遠くにロッキーマウンテンは見えますが、辺りはだだっ広い丘状で、別荘様のシャレーが点在するだけの寒村で何もありません。確かに綺麗な景色に間違いはないけれど、勝手に想像していた上高地やシャモニーの景色とは似ても似つかぬところでした。しばらく歩き回ってまた帰りのバスに乗ってボウルダーに戻ってきました。午後からEstes Parkまでタクシーで行くか思案しましたが、どうせ遥か遠くに山を見るだけだと却って欲求不満になるだけだと思い断念しました。
このままデンバーに帰るのももったいないので、しばらくボウルダーの街を散策することにしました。街のマップを片手に適当に歩くことにしました。
街を貫くWalnut streetという通りを歩いてみました。時折、散歩する人とすれ違いましたが会釈すると笑顔で挨拶が返ってきます。ジョギングする人、サイクリングする人もみられますが、人影はまばらで静かな街でした。住宅の路地から車がでてきて、こちらが止まっていると決まって先にいけ、というように合図して止まって待っていてくれます。たかが一人の旅行者のために却って恐縮していまいます。地図を見ながらどちらに行こうか思案しているとご婦人が何か手助けが必要かと近づいてきます。道を教わって歩いていくと更にまた大丈夫かと念を押すように道順を教えてくれました。
時間がゆっくりと流れていくような心地よい雰囲気の街でした。これがロハスとは直に結びつきはしないでしょうが、人に優しい生き方の実践のようにも思われました。
ただ、行けども行けども平屋の住宅で、ビルや商店やましてや飲み屋などは出てきません。コロラド大学の分校、高地トレーニングスポーツセンターなどの施設にも行き着けずまた別のストリートを戻ってきました。
ボウルダーのダウンタウンのパールストリートモールには看板があって、犬やその他の動物、バイクやスケボー、フリスビーなど禁止と、かなり厳格な規制が掲げてありましたが、これも人に優しい生き方を目指すためのものなのでしょう。アメリカで「最も健康的な町」といわれるのもむべなるかな、といった感じでした。
小生も自然が好きで山に憧れ、野山にわけいりますが、一方でしばらくすると無性に街の猥雑な雑踏が恋しくなったりします。あまりに健康的で、優良なこの町の環境ではかえって息苦しくなるかな、とも思いました。
今回の旅は当初はコロラドスプリングスからPikes peak(4300m)、Garden of the Godsなどへのドライブを考えていました。天気が悪く泥縄的にバスを乗りついでボウルダーに来ましたが、いかにも準備不足で行き当たりばったりの旅行でした。
ボウルダーなど本当はしばらく住んでみてロハス的な生き方が垣間見れることでしょう。残念だけどもうこの地には来ることもないかもしれないと思いながらバスに乗り込みデンバーへと帰っていきました。
b3デンバーからボウルダーへ
b4デンバーからボウルダーへ
b1ボウルダーの看板
b2
b5ボウルダーからNederlandへ
b7Nederland

皮膚癌の最新治療―AADより

レンタカーを借りた日が雪だったので(仕方なく?)学会場に出向きました。
プレナリーセッションは皮膚癌の演題をいくつかやっていました。
最初はErvin H, Epstein, Jr.先生のThwacking the Hedgehogという演題でした。基底細胞母斑症候群(Gorlin 症候群)や転移性基底細胞癌に対する最新治療の報告でした。盛んにヘッジホッグという言葉がでてきましたが、初めて聞く言葉で何のことかわからないままで、後で調べて基底細胞癌の責任遺伝子のPTCH1シグナル伝達経路のことだと知りました。この癌を形成する責任遺伝子のシグナル伝達を阻止する薬剤を投与すると転移性の病巣がなくなったり、多発した癌が消失したスライドは衝撃的でした。
癌発生の首根っこの遺伝子をターゲットとして、それのシグナルを阻止するというピンポイントの薬剤が奏功するというのは、すごいことだと思いました。Epstein先生のscience worksという言葉には重みがありました。
2題目はLynda Chin先生のGenomic Medicine: Transforming Research and Patient Careというもので、メラノーマに対する遺伝子治療の基礎と臨床のレビューでした。様々なメラノーマ関連の遺伝子をターゲットにした治療で進行したメラノーマの生存率も伸びてきているとのデータのようでした。よく解からない中でも動物実験レベルではありましたが、コンビネーション治療でメラノーマの腫瘍が消失した(?)スライドはこれもまたびっくりでした。あまりに複雑な遺伝子の関与、経路があり多くの薬剤のコンビネーションがあって、しかも英語がよく判らないので本当のところ理解できなかったのですが随分皮膚がんの治療も進んでいるのだなーという印象を受けました。
日本に帰ってからみた記事でも近年の目覚しい進歩のことがでていました。普段進行癌などに関わることなどないのですが、この分野の世の中の大きな変動の予感を感じたことでした。
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(マルホ デルマレポート Vol.26 2013より抜粋)

【「皮膚癌の治療に携わる医師にとって素晴らしい時代が到来しました。これらの新薬(ビスモデギブ、ベムラフェニブ、イピリムマブ)は、標準化により進行性皮膚癌の治療を革新しました」と、ニューヨーク州のRochester大学Wilmot Cancer Center皮膚科准教授であるSherrif F. Ibrahim先生は語る。これらの新薬が登場する前は進行性黒色腫患者や進行性BCC患者に対する治療薬の選択肢がなかった、と同先生は説明する。・・・・】

特別監修 国立がんセンター中央病院 皮膚腫瘍科 山崎直也 先生 コメント
【最近の分子標的治療薬による癌治療の進歩には目をみはるものがあります。それがとうとう皮膚癌の世界にもやってきました。今回のレポートでは、2011年から2012年にかけて米国で承認された悪性黒色腫と基底細胞癌に対する3種類の新薬が紹介されています。・・・・日本でもこれらの強力な新薬を、早く実臨床に導入することが必要です。】

皮膚筋炎(3)治療

皮膚筋炎の病変は皮膚だけではなく、筋肉、肺、関節、心臓、消化管などいろいろな臓器にわたります。従って内科、小児科など多くの科の連携による治療が必要です。
《治療の指標》
治療の主体は筋炎の鎮静化、筋力の回復、保持にあります。しかし、その前に多く合併する悪性腫瘍がないかどうかスクリーニングすることは治療の前提となります。
また予後を左右する大きな因子、間質性肺炎については常に注意を払う必要があります。
咳、息切れなど呼吸器症状がないか、聴診でパリパリ音などの肺臓炎の気配はないか、疑わしければ血液ガスでチェックすることが必要です。
筋炎では病初期は安静が重要ですが、鎮静化してきたら神経内科医の主導のもとに筋力回復のためのリハビリテーションを進めることも必要です。長期の臥床安静は却って筋力の回復を遅らせることにもなり兼ねません。
《薬物療法》
副腎皮質ステロイド
以前より第一選択薬として用いられています。成人ではプレドニゾロン換算で1~1.5mg/kg/day、小児では1~2mg/kg/dayを初期投与量とします。2~4週間後にCK,アルドラーゼ、GOT,GPTなどの値、皮疹の再燃やMR、筋電図の所見などを指標に漸減していきます。維持量としてPSL5~10mg/dayを一年以上使用します。
治療抵抗例や血管炎、間質性肺炎を伴う場合などでは、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1000mg/dayx3日点滴)などを行います。
免疫抑制剤
急性間質性肺炎の進行など重症例では、さらにシクロスポリン、アザチオプリン、シクロホスファミド、メソトレキセートなどの免疫抑制剤も同時併用されます。
ヒト免疫グロブリン大量静注療法は保険適用外ですが、難治性筋炎、間質性肺炎に有効とされています。
ヒト免疫グロブリン 0.4mg/kg/dayx5日または1g/kg/dayを毎月2日、1~3か月ごとに点滴静注
抗CADM140抗体(抗MDA5抗体)陽性のCADMでは高頻度(50~75%)に急速進行性間質性肺炎を生じることが分かっているために病初期より免疫抑制剤も含めた強力な治療をすることが推奨されています(先手必勝)。それでも時に死の転帰をとることがありますが、急性期を乗り切れば再発は少ないとされています。
タクロリムス、ミコフェノールなどの免疫抑制剤は今後の症例の集積を待つ必要があるとのことです。
《悪性腫瘍合併例》
治療抵抗性のことが多く、悪性腫瘍の治療によって皮膚筋炎の症状も軽快することもあります。できれば悪性腫瘍の手術などを行うことが必要ですが、ステロイド剤使用中での手術に危険性が伴う場合もあり、難しい判断を迫られる場合も多いようです。
《予後》
間質性肺炎、悪性腫瘍などの合併症のない皮膚筋炎は一般的に生命予後は良いとされます。しかし、サブタイプにもよりステロイド剤を離脱できるまでの期間は個人差が大きいそうです。
《皮膚病変》
経験的にステロイド外用剤が用いられますが、効果は限定的です。タクロリムス軟膏も一定の効果があるようです。海外ではクロロキン、サリドマイド剤、DDS(ダプソン)などが用いられることもあるようです。ステロイド剤、免疫抑制剤の全身投与が有効なようですが、確実に有効な治療法は確立していません。

参考文献

皮膚科臨床アセット 7 皮膚科膠原病診療のすべて
総編集◎古江増隆 専門編集◎佐藤伸一  中山書店 2011 東京
61 皮膚筋炎の治療・経過・予後  沢田泰之

皮膚筋炎(2)病因・検査・自己抗体

【病因】
HLAをはじめとする遺伝的な素因をベースに自己免疫疾患が発症すると考えられています。Susceptibility phase, Induction phase, Expansion phase, Injury phaseという4相が想定されています。例えばJo-1という自己抗体はHLA-DR3と強く関連しているというように。約半数の患者さんにみられる紫外線の感受性もTNF-αプロモーターや補体の異常と関連しているそうです。またコクサッキーウイルスやバルボウイルス、エコーウイルス、HIVウイルスなど様々なウイルスが免疫寛容を失わせる要因と考えられています。そして、自己抗体ができる相になります。CD4陽性T細胞や様々な自己抗体や免疫複合体の産生が筋肉の炎症、血管内皮細胞障害を生じると考えられています。初期の病変は小血管の虚血がみられます。 
【検査所見】
筋肉・・・*徒手筋力テストで筋力の低下がみられる。5(正常)から0(筋収縮が全く起こらない)まで5段階に分類されています。
     *筋電図で筋原性パターンがみられます。
     *画像検査では、MRIや超音波検査で筋炎の像がみられます。
     *筋生検では他の筋疾患との鑑別にも有用ですが侵襲的な検査ですし、画像検査などで病変部を特定してから行う必要性があります。
     *血液検査ではクレアチンキナーゼ(CK)の上昇がみられます。ただし、ステロイド剤を使用していると低値を示します。
      アルドラーゼ(ALD)は半減期が長いために治療経過をみるのに有用です。しかしステロイドミオパチーや肝障害などでも上昇します。
肺病変・・・間質性肺炎は急性にも、慢性にも生じます。感染症、カリニ肺炎などとの鑑別が必要です。空咳が特徴的ですが、常に聴診が重要です。初期では血液ガスでのPO2の低下が最も鋭敏です。
     誤嚥性肺炎や呼吸筋麻痺による低換気も注意を要します。
悪性腫瘍・・・種々の悪性腫瘍の合併が報告されているのでスクリーニングが必要です。
【自己抗体】
以前は皮膚筋炎で検出できる自己抗体はJo-1抗体のみで、かつ5~10%程度しか陽性例はありませんでした。しかし、近年75%以上で特異抗体がみつかり、臨床的な病型と密接に相関することがわかってきました。
◆抗アミノアシルtRNA合成酵素(amynoacyl tRNA synthetase: ARS)抗体(Jo-1, EJ, PL-7, PL-12, OJ, KS, Ha, Zo)
ATPの存在下でtRNAの3`末端にアミノ酸を結合する酵素で、すべてのアミノ酸(20種類)に対応するARSが細胞質内に存在します。
抗ARS抗体を持つ一群は比較的に均一な特徴を持つために抗ARS抗体症候群とよばれます。
*さまざまな程度の筋炎.
*間質性肺炎や多発性関節炎やレイノー症状や発熱が比較的高率にみられる.
ただし、間質性肺炎は慢性型が多い.
*mechanic`s handがみられる.
*筋炎の再発率が高いとされるので、当初からステロイド剤のみではなく、他の免疫抑制剤も併用したほうがよい.長期戦が予想される.

◆抗155/140抗体(抗p155抗体)(抗TIF1抗体)
Transcriptional intermediary factor 1 (TIF1)を抗原とする抗核抗体です。抗核抗体の力値が低い傾向があります。皮膚筋炎の約20~25%に陽性で成人では悪性腫瘍合併のマーカーになります。
一方、間質性肺炎は稀とされます。

◆抗CADM140抗体(抗MDA5抗体)
高頻度(50~75%)に急速進行性間質性肺炎を生じます。そのために早期から強力なステロイドパルスや免疫抑制薬(タクロリムスやエンドキサンなど)の治療などが推奨されています。初期を乗りきれば予後は良く、再燃は少ないとされます。ただし、強力な治療にも抵抗し死亡例もあるとのことです。欧米では少なく日本や中国など東アジアでは多いとされます。
ピコルナウイルス(RNA)が関与し、血管障害性の皮疹が特徴です。肘や臀部に紫斑、壊疽がみられ易いです。
筋症状が軽微な( amyopathic DM: ADM)型を取ることが多いとされます。

◆抗Mi-2抗体
蛍光抗体間接法での力価が高いことが多いです。
定型的な皮疹をとりますが、悪性腫瘍や間質性肺炎は少なく、予後の良いサブセットです。小児皮膚筋炎でもみられます。
生命予後は良いですがCKやANAは高いことが多く、再燃し易く、筋症状にあわせてじっくりと治療する必要のあるタイプです。

◆抗MJ抗体(抗NXP-2抗体)
140kDaのNXP-2を対応抗原とする抗核抗体です。小児皮膚筋炎にしばしば認められます。石灰沈着が多くみられるとされます。
成人では悪性腫瘍合併例が多いとされます。

上記のように近年皮膚筋炎の特異的自己抗体が次々に明らかになり、また同一個人では一種類の抗体しか持たないことも分かってきました。また特異抗体の種類によって病型サブセットも推定できるので治療や予後を決めるのに役立つツールとなってきました。
しかしながら、年齢、人種差によって異なる像を呈することもあり、それのみに頼ることはできないようです。

参考文献
皮膚科臨床アセット 7 膠原病診療のすべて
総編集◎古江増隆 専門編集◎佐藤伸一 2011 中山書店
59 抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体症候群 小川文秀
60 皮膚筋炎で検出される自己抗体(抗ARS抗体を除く) 藤本 学

Fitzpatrick`s Dermatology in General Medicine 7th Edi Vol.2
Wolff, Goldsmith, Katz, Gilchrest, Paller, Leffell McGrawHill 2008
Chapter 157 Dermatomyositis pp1536 Richard D. Sontheimer, Melissa I. Costner