月別アーカイブ: 2014年12月

今年も終わりに

一年があっという間に過ぎ去ってしまいました。
光陰矢の如し、です。年々時の過ぎ去っていくスピードが増していく気がします。それだけ老年に差し掛かってきている証拠でしょう。
少年易老学難成  少年老い易く学成り難し
一寸光陰不可軽  一寸の光陰軽んずべからず
未覚池塘春草夢  未だ覚めず池塘春草の夢
階前梧葉已秋声  階前の梧葉已に秋声
これは人口に膾炙した漢詩で朱熹の作とされますが、実は朱熹の詩文集には載っていないそうです。日本人の作になるともいわれています。
とまれ、行く川は流れ続け、元には戻りません。心身ともに老いを感じる今日この頃ですが、今しばらくこのブログを続けてみようかと思っています。
来年もよろしくお願いします。
皆様よいお年を。

中原寺メール12/25

【前住職閑話】
この季節、華やかな趣向を凝らしたイルミネーションに人々は誘われて何処も賑やかです。
しかし、冬枯れの自然の光景は何とも言えない深さがあります。
すっかり枯れ葉を落とした丸裸の幹や枝ぶりのたくましさ、寒風に見上げる遠い青空の美しさ、夜空に輝く大三角をはじめとする星座群は、人間の作り出すどんなイルミネーションでも比較になりません。
 久しぶりに混雑を避けて3,5キロほどの駅からの家路を歩いて帰りました。
ところが今の道路は人の歩く道ではなく、車道であることに気づき腹立たしくなりました。人が通らなければならない端っこの狭い道はガタガタ、障害だらけのでこぼこで細心の注意を払わなければなりません。
 車いすや杖や目の不自由な方たちはとてもとても通れるような道ではありません。何がアベノミクスだ、何が経済効果だ、政治家の視線は結局人間疎外の社会を作り出しているのが現状ではないかと苦々しい思いになりました。
 モノのない貧しさは困るけれど、弱者を中心としない心の貧困の広がる社会は最も恐ろしいことです。
 やさしさのない人間社会は、また私たち一人ひとりの問題であります。
みんなが安心して自然を眺め、心の育みと豊かさを感じられる時代になってもらいたいものです。

爪甲剥離症

爪甲剥離症とは、爪甲が爪床部から離れ、爪先端から根元のほうに向かって進行する状態のことです。爪甲剥離症には狭義の意味合いと、広義の意味合いが含まれています。
狭義とは爪の剥離のみを認め、爪甲には変形がなく、爪甲下の角質増殖もない状態です。
広義とは爪甲の剥離がみられれば、爪変形や角質増殖など他の変化があってもよいとするものです。例えば乾癬に伴った爪変化ではこれらの変化があわせて見られる場合もあります。一般的には狭義のものを爪甲剥離症と呼びます。
一般的に剥離した部分は白色~灰白色にみえますが、それは剥がれた部分に空気の層ができ、光の屈折率によるものです。ただし、二次的にカンジダ菌、緑膿菌の感染やごみなどの影響で茶色、緑色などを呈する場合もあります。
【原因】
全身性の疾患に伴うもの、局所性の原因によるもの、皮膚疾患に伴って生じるもの、薬剤性のものなどがあります。また上記のいずれの要因もみられず、原因のよくわからない特発性の場合もあします。まれに先天性に生じるケースもあります。
1)全身性の疾患に伴うもの
・甲状腺機能異常で爪甲は軟らかくなり、剥離し易くなるそうです。(亢進、低下共に)
・エリテマトーデスなどの膠原病による報告もあります。
・鉄欠乏性貧血による匙状爪(スプーンネイル)からの剥離.
・心肺疾患によるもの
・ポルフィリン症、ペラグラに伴うもの、(光線性の誘因?)
・梅毒
などなど
2)局所の要因
《外傷》
職業性に指先をよく使う人、(海外では毛皮職人、精肉業、屠殺業者など)、ゴム手を使う主婦など
《接触皮膚炎》
さまざまな刺激性の皮膚炎やアレルギー性の皮膚炎の報告があります。
消毒液の次亜塩素酸ナトリウム、洗浄剤のフッ化水素酸(これは骨まで到達する激しい皮膚炎を起こします。過去ブログ参照(2012.3.17)。マニキュア製品、エポキシ樹脂など。
《微生物感染》
カンジダ菌・・・局所の要因にカンジダ菌の感染を伴うケースがもっとも多いそうです。
剥離部分が水仕事などで年中湿っているとカンジダ菌が増殖してきます。そうするとさらに剥離は進行します。またよごれを取り除こうとして先の尖ったものや紙などで爪下を掃除することもさらに悪化原因となります。
頻度は少ないものの、白癬菌や癜風菌によるものも報告されています。
《皮膚疾患によるもの》
尋常性乾癬(後にまとめます)、扁平苔癬、接触皮膚炎、天疱瘡、皮膚腫瘍、多汗症などによるものなどがあります。
《薬剤性のもの》
種々の薬剤が原因となっています。
・最も有名なものはテトラサイクリン系統の抗生剤です。ドキシサイクリンが多いですが、ミノマイシンでも起こります。(薬剤誘発性光爪甲剥離症)オクソラレン。
・抗がん剤・・・ブレオマイシン、5-FU,
・レチノイド
・経口避妊薬
その他にも報告例は種々あります。
《先天性のもの》
種々報告例がありますが、省略します。
【治療】
治療は原因をみいだして、それの治療を行うことが原則です。
上記の各要因を問診し、該当項目があればその対処をします。
局所的には剥離した爪甲はできるだけ除去し、清潔にして、乾燥させます。硬いブラシでごしごしこすってはいけません。なるべく軟らかいもので優しく洗います。
鏡検でカンジダ菌がみつかれば抗真菌剤を使用します。みつからなければステロイド剤の外用が効果的な場合もあります。いずれにしても湿ったままが一番よくありません。

参考文献

東 禹彦: 爪 基礎から臨床まで 金原出版 第1版 第7刷 2013

Adam I Rubin and Robert Baran: Physical Signs. Baran & Dawber’s Diseases of the Nails and their Management,4th ed. Edited by Robert Baran, David A.R. de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas. 2012 John Wiley & Sons. p72-75

o爪剥離

肥厚爪・鉤彎爪

鉤彎(こうわん)爪( onychogryphosis ) とは、爪甲が分厚く、硬くなり、鉤型に彎曲したものをいいます。時には山羊の角のように爪甲が後方を向く場合すらあります。
肥厚爪、厚硬爪甲(hypertrophoid nail, pachyonychia)とは爪甲が厚く硬くなったもので、多くは爪先端の皮膚の隆起を伴っています。
その原因は大きく分けて2つあるとのことです。
1)足趾遠位端の隆起
軟部組織の先端が隆起してくると、下図のように爪の成長が遮られて伸びなくなりその手前で厚く盛り上がってしまいます。
隆起する原因としては繰り返しの深爪や抜爪があります。外傷後に爪甲下出血をし、爪甲が脱落し爪がなくなった結果生じる場合もあります。ハイヒールや先端の狭い靴が当たり、深爪を繰り返しているケースもあります。
更に、陥入爪の治療の一環として、フェノール法、手術法が行われますが、このことも、原因の一つとなります。

すなわち、これらの方法は爪の両端に対して施行すると、爪甲、爪床、爪母(爪の側縁部分)を一括して切除するので、爪甲と側爪郭の連絡が絶たれるという欠点が生じます。

爪は正常では後爪郭、左右の側爪郭、先端の爪下皮の4辺によって下床に固定されているのですが、陥入爪の患者さんは深爪のために爪下皮の固定が無くなっていることが多いので、側爪郭での固定が絶たれると爪甲は後爪郭の1辺のみで支えられることになります。そうすると下からの圧力に抗しきれなくなって下図のような状態になってきます。これは術後数年、あるいは10数年たってから生じることもあるそうで、東先生はこれらの方法の問題点を指摘しています。ただ、陥入爪のひどさ、切除の幅、術式、術者の技術など様々な要素が絡んできますので一概にこれらの方法が駄目だという事ではなく、むしろ必要な場合もありますので念のため申し添えておきます。

 

東 禹彦.  爪 基礎から臨床まで.  第1版第7刷  金原出版  2013 ,  p150 より

陥入爪オペ 陥入爪手術10数年後

爪変形手術後 陥入爪手術10数年後

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2) 爪甲下角質増殖
爪床は正常な状態では、角化しませんが、病的状態になると、爪床上皮は角化してきます。形成される角質は皮膚と同質のものです。爪甲下の角質増殖が起こると、爪の増殖、発育方向は上方へと向かいます。角質がデブリのように厚く積み重なると、爪の発育方向は真上に、さらに高度になると爪甲の先端が後方へ向かうこともあります。
角質増殖の原因としては、爪白癬が最も多いです。爪カンジダ症でも起こりえます。また乾癬や掌蹠膿胞症、などの炎症性角化症、さらには接触皮膚炎(一次刺激性、アレルギー性)でも生じます。

こうわん爪2

 爪白癬を長年放置したもの、他の爪の鏡検で真菌陽性.爪の成長方向は後方に向き、第2趾に当たり傷つけている.
【治療】
1)の爪遠位端の隆起による場合は、手術的に隆起部を平坦化する方法があります。

爪手術
(東 禹彦 原図 参照)
人工爪を作成したり、テープで隆起部を圧迫して皮膚が浮き上がらないようにするのもある程度の効果はあるようです。
2)の爪甲下角質増殖による場合は、原因になる治療を行うことになります。
いずれも分厚くなった爪甲をヤスリや爪切りで薄く削ります。

参考文献

東 禹彦: 爪 基礎から臨床まで 金原出版、 第1版 第7刷、2013

 

 

 

 

 

 

急性爪囲炎、瘭疽

急性爪囲炎(acute paronychia)は爪囲のわずかな外傷(さか爪、陥入爪、刺し傷など)をきっかけとして、爪囲に発赤と腫脹を生じ、浅在性のものは表面から黄色い膿が透けてみえます。深在性になると爪囲全体が発赤、腫脹して指先全体に及びます。熱感があり、痛みを伴います。
原因菌は多くが黄色ブドウ球菌によります。なかにはA群溶連菌によるものや、大腸菌、緑膿菌によるものもあります。A群溶連菌によるものでは爪囲に水疱を形成することが多いです水疱性遠位指端炎(Group A streptococcus blisterling dactylitis )。

瘭疽(whitlow, felon)は刺し傷、爪囲炎などが誘因となって指尖球部のび漫性の発赤、腫脹を伴い、激しい痛みがあります。病変の場が脂肪組織と細い筋膜の入り組む閉鎖空間なので排膿が起きにくく難治です。電灯に透かしてみると他の部分よりも混濁した部位がみられます。進行すると血管が閉塞して指尖部の壊死、骨髄炎を併発し、骨の壊死に陥ります。早期の診断にはMRIが有用だとのことです。骨X線像上の骨萎縮像、骨破壊像、骨膜反応などの急性骨髄炎の変化は10日前後しないと明確にならないそうです。
治療は切開、排膿して抗生剤の点滴、静注などになりますが、使用する薬剤は細菌培養の結果がでるまでは、可能性の高いものを選択する経験的治療(empiric therapy)を行います。3日間使用しても改善がみられない場合は抗生剤の見直しが必要とされます。
最近はMRSAなどの薬剤耐性菌なども考慮の必要性があります。
爪囲に水疱ができる急性の疾患では、疱疹性瘭疽(herpetic whitlow)も考えておく必要があります。
これは単純性疱疹ウイルスによる感染症です。小児では指しゃぶりなどによる口腔内からのHSV-1型ウイルスによる感染が多いですが、成人の場合陰部からのHSV-2型ウイルスによる感染症もみられます。
タピオカに似た小水疱ができ、癒合して大きな水疱、血水疱になることもあります。
ヘルペスが疑わしい場合は水疱蓋や水疱底の塗抹標本をギムザ染色してウイルス性巨細胞を認めれば確認できます。

参考文献

Noah Craft et al: Superficial Cutaneous Infections and Pyodermas. p1694-1709
Fitzpatrick’s Dermatology in General Medicine 7th ed. K Wolff, LA Goldsmith, SI Katz, BA Gilchrest, AS Paller, DJ Leffell. Mc Graw Hill, 2008

DAR de Berker, B Richert, R Baran. The nail in childhood and Old Age. p183-209.
Baran & Dawber’s Disease of the Nails and their Management, 4th ed. Edited by R Baran, D de Berker, M Holzberg, L Thomas. Wiley-Blackwell, 2012

RJ Hay and R Baran: Fungal(Onychomycosis) and Other Infections Involving the Nail Apparatus. p240-250. Baran & Dawber’s Disease of the Nails and their Management, 4th ed. Edited by R Baran, D de Berker, M Holzberg, L Thomas. Wiley-Blackwell, 2012

ひょうそ 急性爪囲炎

ひょうそ2 急性爪囲炎

指ヘルペス 疱疹性瘭疽(herpetic whitlow)

緑色爪

緑膿菌による爪の感染症によって生じます。
緑膿菌は鞭毛を有するグラム陰性桿菌で、ある種のものは青い色素(pyocyanin)を持ち、またある種のものは水溶性の黄緑色の色素(fluorescein)を持っているので、創部のガーゼは青緑色を呈します。(1882年に患者創部のガーゼから始めて分離されました。)
緑膿菌は一般的には消化管や湿潤な自然環境中に広く存在しているものの、普段は病変をおこしません。ただ、皮膚が湿潤環境になって蒸れたり、外傷、熱傷、褥瘡などで潰瘍を形成したりすると増殖し症状を呈してきます。また後で述べるように、免疫不全や栄養状態が悪い場合や癌患者などでは、重篤な全身感染症を引き起こし、致死的ともなります。いわゆる日和見感染症として院内感染を引き起こす重要な細菌でもあります。
【緑色爪】
爪の緑膿菌の感染によって、爪が緑色に変色してくるので、診断は比較的に容易です。水仕事をする女性に多く、ほとんどが爪カンジダ症、あるいは爪白癬症などを伴っています。時に爪囲炎を伴い、圧痛があります。Wood灯での蛍光発色は診断の手助けになります。
治療は局所を乾燥させること、また随伴するカンジダ症を治療することです。東先生によると、緑膿菌に対する抗生剤を使用しなくても、病変部の爪を短く切って乾燥させ、抗真菌剤でカンジダの治療を行えば治癒させることができるとのことです。
【毛包炎】
プールやホットタブの後、躯幹など水着が擦れる部分にかゆみを伴う紅色丘疹や膿疱を生じます。大部分は自然治癒しますが、時に外耳炎や乳腺炎などを併発することがあります。
【外耳炎】
swimmer’s earと呼ばれるように水泳後に湿潤したままでいると、外耳炎を生じ、耳介や耳軟骨にも腫脹が拡大してきます。高齢者や免疫不全の患者などでは軟骨や骨にまで進展し第7神経更には第9,11神経障害なども引き起こし重篤になることもあります。
【皮膚潰瘍】
湿った環境に長時間晒された足趾間の傷、熱傷の潰瘍、外傷などの表面にも緑膿菌がみられることがよくありますが、全身状態に問題がなく、デブリードマン(壊死組織を掻把し、取り除くこと)を行い、シルバーサルファダイアジン(ゲーベンクリーム)、ゲンタマイシンなどの抗菌剤を外用すれば治癒に持っていけます。
【菌血症】
悪性腫瘍、血液疾患、糖尿病、ステロイドなど薬剤使用などで免疫不全状態にあると、重篤な全身の感染症に発展していきます。グラム陰性桿菌は細胞壁成分にリポポリサッカライド(LPS:エンドトキシン)を持っていて、菌が一旦血中に入るとエンドトキシンショックを引き起こし、致死率は極めて高くなります。腸管症状を起こすと高熱と下痢を伴い、チフス様症状を呈します。
皮膚症状としては4つのタイプがあるそうです。
1.水疱・・・単独または集簇して生じます。血疱となり破れることもあります。小児では周りが赤くなって、多形紅斑ににることもあるそうです。
2.壊疽性膿瘡・・・紅斑、丘疹から水疱、血疱となり、破れて潰瘍、壊死組織となります。黒い痂疲をつけて周りを紅斑が取り囲みます。
3.壊死性蜂窩織炎・・・一見褥瘡に似た症状を呈することがありますが、褥瘡ができるような圧迫部分とは異なります。
4.紅斑、紅色丘疹・・・躯幹に生じ、チフスの際の皮膚症状に似るそうです。
その他には脂肪織炎、結節、血管炎、DIC、血小板減少に伴う紫斑などがあります。

これらの治療には、緑膿菌に有効な抗生剤の全身投与、局所抗菌剤の投与のみならず、外科的なデブリードマン、膿の排出なども必要です。菌血症になると原疾患の治療も含め、多臓器不全などの治療も必要になってきます。
近年は、多剤耐性緑膿菌(MDRP: multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa )が院内感染症の起因菌として、ブドウ球菌とともに問題になってきています。カルバペネム、アミノグリコシド、フルオノキノロンに耐性を示し、治療が極めて困難で施設内部のみならず、外部にも伝搬していく危険性が指摘されています。日本では2006年のデータで分離される緑膿菌の約2.5%がMDRPであったということです。分離される医療機関も年々増加しているようで、危惧されています。

参考文献

Morton N. Swartz: Gram-Negative Coccal and Bacillary Infections. p1735-1739
Fitzpatrick’s Dermatology in General Medicine 7th ed. K Wolff, LA Goldsmith, SI Katz, BA Gilchrest, AS Paller, DJ Leffell. Mc Graw Hill, 2008

東 禹彦: 爪 基礎から臨床まで 金原出版 第7版 2013

切替照雄: 多剤耐性緑膿菌. 感染症診療 update. 感染症診療の現在 H.現在問題となっている耐性菌 S63  日本医師会雑誌 第143号・特別号(2)、2014

緑色爪

緑色爪2

 

 

爪のカンジダ症・爪囲炎

カンジダ症はCandida albicansによる感染症です。皮膚、爪、粘膜、内臓などあらゆる臓器に病変を起こしえます。健康な人でも皮膚、口腔内、膣、糞便から分離される常在菌です。普段は症状は生じませんが、高温、多湿などの局所の抵抗力の低下や免疫力低下など全身的な要因が加われば病原性を発揮してきます。またステロイド剤や抗生剤の使用など医原性にも生じることもあります。すなわちいわゆる日和見感染症の代表です。

いろいろな病型分類法がありますが、一般的にみられるものを中心に簡便なのは下記の日本医真菌学会疫学調査のための分類のように思われます。
1.カンジダ性間擦疹
2.カンジダ性指趾間びらん症
3.カンジダ性爪囲爪炎
4.爪カンジダ症
5.口腔カンジダ症
6.外陰カンジダ症
7.おむつカンジダ症
8.その他、非典型的なカンジダ症

頻度が高いのはカンジダ性間擦疹で、どの病型でも女性のほうが多くみられます。特に爪および指間びらん症では顕著です。間擦疹では巨乳や腰の曲がった人、肥満の人のシワの間が蒸れてでき易くなります。オムツ部カンジダ症が高齢者と赤ちゃんに多いのは想像がつくと思います。

ここでは爪およびその周囲のカンジダ症にしぼってまとめてみたいと思います。

◆カンジダ性指趾間びらん症
指間では水仕事の多い女性や、飲食業、理容、美容業などの人に多くみられます。太い指の第3指間が開きにくいためにでき易い部位です。足趾間ではゴム長靴をはく、足が濡れたり蒸れたりする職種の人に多くみられます。
指の付け根の赤みで始まり、次第に拡大して皮がむけ、びらん面となり辺縁に襟飾り様の鱗屑をみるようになります。痛痒さがあります。
◆カンジダ性爪囲爪炎
やはり水仕事の多い人にでき易いです。爪囲の発赤・腫脹から始まり、次第に爪甲の波状の不整形、変形、混濁などを生じできます。横溝を生じることもこの疾患の特徴です。時に排膿がみられます。これらのことにより、黄色ブドウ球菌感染症などによる細菌性爪囲炎(瘭疽)と間違われることもあります。
◆爪のカンジダ症
爪囲の発赤・腫脹がなく、爪白癬と似て爪先端から混濁、肥厚してくるタイプがあり、爪カンジダ症と呼びますが、比較的稀なタイプです。しかし、爪先端部が剥離して白濁してくる爪のカンジダ症(カンジダ性爪甲剥離症)は比較的多く見られます。
これらの病変に対し、炊事などで保護するためとして、絆創膏などを巻くケースが多くみられますが、蒸れ、浸軟などによって悪化した絆創膏下のカンジダ症を伴ってくることを散見します。

【診断】
大体は臨床症状からカンジダ症は推定できます。しかし、やはり診断を確定するためには、KOH真菌鏡検で仮性菌糸と胞子塊をみいだすことが必要です。Candidaの菌糸は胞子から発芽して伸びて形成されるので隔壁部では細くなって白癬菌のように竹の節のような均一の太さではありません。そして、ところどころに出芽型胞子がブドウの房状にみられるので白癬菌との鑑別はつきます。しかし、爪やステロイド剤を使用したりして菌が著しく増えていたりすると白癬菌と区別がつきにくくなる場合もあります。そのようなケースでは真菌培養をすれば、区別はつけられます。
逆に培養でのみカンジダが分離できたとしても、病巣で鏡検してカンジダが増殖している証拠の菌糸型を見出せなければ、カンジダ症とは断定できません。偶発的に付着していたり、常在菌である場合も考えられるからです。

【治療】
上記のカンジダ症の治療の前提として、カンジダ菌が発育し易いような蒸れた状態、高温、多湿のような局所の環境要因の改善が重要です。またもし、全身的な要因、例えば肥満や糖尿病や免疫不全、血液疾患などがあればそれらの治療、改善も重要になってきます。
<薬物治療>
イミダゾール系統の抗真菌薬の外用
この系統の薬剤にも多種類あり、効能・効果の記載はありますが、最小発育濃度(MIC)は異なります。さらにTrichophyton属(白癬菌の代表菌種)とカンジダ属のMICは薬剤によってかなり異なります。抗真菌剤といっても菌種によって効能・効果の優劣があり、あるいは効果、適応のない薬剤もありますので注意を要します。
Candida albicansに対するMICの低いもの(効果の高いもの)には次のような薬剤があります。
ケトコナゾール(ニゾラール)
ルリコナゾール(ルリコン)
ラノコナゾール(アスタット)
ネチコナゾール(アトラント)
ミコナゾール(フローリードゲル:口腔用製剤)
ビホナゾール(マイコスポール)やアリルアミン系統のテルビナフィン塩酸塩(ラミシール)などはカンジダ症に対してはMICが高くカンジダ症に対しては効果は高くありません。
またチオカルバミン酸系統のリラナフタート(ゼフナート)やベンジルアミン系統のブテナフィン塩酸塩(メンタックス、ボレー)は白癬には有効ですが、カンジダ症には適応はありません。
爪カンジダ症、カンジダ性爪囲爪炎などでは外用剤でなかなか治らない場合があります。そのような場合ではイトラコナゾール(イトリゾール)の内服を行います。1日1回、50~100mg。
しかし、局所の清潔と乾燥に努めることが同時に重要です。

参考文献

皮膚科臨床アセット 4 皮膚真菌症を究める
総編集◎古江増隆  専門編集◎望月 隆  中山書店 東京 2011

東 禹彦  爪 基礎から臨床まで 金原出版 第7版 2013

カンジダ性爪囲炎1小 カンジダ性爪囲爪炎

カンジダ性爪囲炎2 カンジダ性爪囲爪炎 高度になると細菌性爪囲炎に似て鑑別を要します

爪カンジダ症 爪先端の混濁・肥厚を認めると爪白癬との鑑別が必要です。この例はずっとは絆創膏を巻いていたケース。

培養 培養をするとクリーム状のコロニーがみられます。

白癬菌だと以下のように粉状、綿状の集落がみられます。

真菌培養小

カンジダ性指間びらん症 カンジダ性指間びらん症

カンジダ性指間びらん症2小 カンジダ性指間びらん症

爪白癬の新しい外用薬

昨日は千葉県皮膚科医会の講演会がありました。「感染経路に基づく白癬治療と爪白癬治療の新しい展開」という演題で、講師は埼玉県済生会川口総合病院皮膚科の加藤卓朗先生でした。
このところ爪の疾患について書いてきましたが、実はこれらの爪疾患をみるときに常に考えておくべきなのは真菌感染症がないかどうかということです。
当日は真菌感染症全体とともに、新たに発売になった日本初の爪白癬の外用薬クレナフィンについての講演でした。

皮膚眞菌症については過去に当ブログ、ホームページに書きましたのでそれも参照して下さい。
2011.4.3 水虫 4.21 爪水虫内服 4.30 カンジダ症 5.5 マラセチア感染症 5.14 スポロトリコーシス
6.8 クロモミコーシス
(思えば当初はホームページの「皮膚疾患解説」を重点的に書いていたのですが、その後ブログの方のみになってしまい、すっかりホームページの方はご無沙汰になってしまっています。計画性のなさをさらけ出した感じです。)

今回の講演の内容で重点となると思われる部分をピックアップしてみます。

*癜風(Malassezia furfur)菌はヒトの常在菌で皮脂の多い所に多くみられますが、普通の真菌培養では増殖せず、オリーブ油重層で増えてきます。しかし、胞子形しかみられません。生体では毛包周囲では胞子形で開口部分では菌糸形となり癜風を発病してきます。これを避けるように外用療法を行います。
*カンジダ症では、日和見感染症として全身免疫低下を考慮する必要があります。特に舌カンジダ症を見たときは以下のことを念頭におくことが必要です。多い順に、ステロイド剤内服、膠原病、悪性腫瘍、糖尿病などです。(HIV感染症などは免疫不全の最たるものでしょうが、例数が少ないのでここにはでていませんが)
*カンジダ性指間びらん症・・・一般的に水仕事の多い主婦に多いと成書にありますが、その他の上記などの全身的な要因も考慮したほうが良いとのことでした。
*浅在性皮膚真菌症にはカンジダ症、マラセチア感染症(癜風)などがあり、稀なものでは黒癬、アスペルギルス症などもありますが、圧倒的に多いのが皮膚糸状菌症(白癬ーいわゆる水虫)です。その原因菌は白癬菌(Trichophyton)、小胞子菌(Microsporum)、表皮菌(Epidermophyton)の3属に大別されます。
*Microsporum gypseum・・・好土壌菌で、なかなか治らない外傷ではこの菌が関係していることもあります。たまには頭皮の毛に寄生するケルズス禿瘡(とくそう)の原因菌になることもあります。(多いのはMicrosporum canis, Trichophyton tonsurans)。培養すると白、または黄白色になります。
*Microsporum canis・・・好獣性菌で、ペットのネコやイヌから感染することが多いです。ペットを抱っこした部分にできることが多いです。またケルズス禿瘡の原因菌にもなります。培養すると菌糸は放射状に伸び、綿毛状、羊毛状になります。
*Trichophyton rubrum・・・好人性菌で足白癬の多くを占めます。この菌とTrichophyton mentagrophytes(好獣性菌)で99%を占めるそうです。
*加藤先生はフットプレス法といって、足を乗せられる大きさの真菌培養板を用いて、各地のいろいろな場所での真菌の検出率を検討されています。それによると銭湯や旅館、健康ランドなどでの足拭きマットでは多くに検出されるとのことです。ただ、足に菌が付着することと発病することは別だとのことです。自分の足で実験してみたところ24時間もすれば検出できなくなるそうです。足拭きマットの後で靴下を履く前に再度足を拭くことで付着率は随分減少するそうです。日本のように多くの場所で裸足になる機会がある環境では菌の付着を防ぐことは容易ではありませんが、乾燥させて蒸れないようにする、清潔にしておくことで予防効果はアップするとのことです。ただ、洗いすぎて足などに細かい傷をつけることは逆効果になりますので注意を要します。清潔にした上で蒸れない素材の5本指の靴下をはくのが良いそうです。
*足白癬、爪白癬は靴の中での高温、多湿の環境が大きな発症因子となり、工業国など長時間靴を履き続ける環境は真菌にとっては発育に好都合です。逆に付着しても低温で乾燥した状態では発症は少ないそうです。
*室内などの水虫から落ちた皮(鱗屑)中の真菌はなんと半年以上も生息するそうです。ですから普段のお掃除は大切ですし、家族内に水虫の人がいれば同時に治療する必要があるということです。
*爪白癬・・・足白癬が先行するのが普通です。正確な頻度は不明ですが、Japan Foot Week研究会の調査では人口の約20%が足白癬に罹り、その45%に爪白癬がみられたとのことです。欧米、アジアでの調査もほぼ同様の成績とのことです。高齢になるにつれて頻度は高くなります。T. rubrumが85%程度、T.mentagrophytesが15%程度だそうです。(東 禹彦)
*爪白癬の治療・・・内服薬が原則です。テルビナフィン250mg連日6ヶ月内服、イトラコナゾールパルス療法(1日400mgを1週間内服、それを1ヶ月ごとに3クール施行する)が行われています。日本ではテルビナフィンの使用量は125mgとなっていますが、加藤先生によると、治験中の成績で両者の治癒率に大差がなかったことと、当時治験薬剤などで副作用がいろいろ問題になった時期でもあったことが関係しているようです。
内服は有効で、治療法も簡単という長所もありますが、また逆に使用禁忌があること、副作用のリスクがあること、高価なことなどの欠点もあります。また高齢者はいろいろな薬をすでに飲んでおり、さらに飲むことへの抵抗感も大きいようです。
ここにきて、日本で初めて爪白癬に適用のある外用剤クレナフィンが発売になりました。1g中にエフィナコナゾール100mgを含む外用液でハケと一体型のボトルになっています。
これはケラチンとの親和性が低く、爪甲での透過性に優れているために爪の下層の(爪床)の白癬菌をも殺菌するというものです。効果の程度はこれからの評価に待たなければなりませんが、内服できない患者さんにとって朗報であることにはまちがいないでしょう。当院でも使い始めてからの患者さんの反応は従来の外用剤と比べて比較的良いようです。

【爪白癬の治療での要点】
・まず、何よりも真菌症であることを確かめること、乾癬、掌蹠膿胞症、鉤彎爪、扁平苔癬、爪異栄養症など白癬でない疾患での爪異常は多数あります。
・内服薬剤が原則、テルビナフィン250mg内服のほうがイトラコナゾールパルス療法より成績が良い(Robertsら、 東 禹彦 著書より)
・白癬菌以外ではテルビナフィンは無効なので、イトラコナゾールにきりかえる。
・楔型に混濁している爪白癬は白癬菌腫(dermatophytoma)を形成して、白癬菌が胞子になっている可能性が高い。休眠中の胞子の場合はMICは1000倍にもなっているそうで、薬剤は効かない。このような場合はグラインダーやヤスリなどでその部分を削りとる。
・外用薬の浸透を高めるためにいろいろな工夫が考案されています。
重層法・・・抗真菌剤に尿素軟膏やサリチル酸、ビタミンD3軟膏などを重ねて塗り、爪を軟化させます。
密封療法(ODT療法)・・・上記薬剤をラップで包むやり方です。
爪削り術・・・ヤスリやドリルで削る、穴をあける方法です。テクニックが難しく、面倒ですが慣れれば100円ショップの手回しドリルなどでも上手に穴をあけている人もいます。
・レーザー療法・・・先日の学会で順天堂浦安病院の須賀先生はエルビウムヤグレーザーでの有効例を呈示されていました。

参考文献

皮膚科臨床アセット 4 皮膚眞菌症を究める
総編集◎古江増隆  専門編集◎望月 隆 中山書店 2011

東 禹彦 爪 基礎から臨床まで 金原出版 第7版 2013

表在型爪白癬 表在性白色型爪白癬(superficial white onychomycosis :SWO)

全爪型爪白癬 深在型白色型?爪白癬(proximal subungual onychomycosis : PSO)

遠位爪白癬 遠位部および側縁部爪甲下爪白癬(distal-lateral subungual onychomycosis : DLSO)

全爪型爪白癬2全爪型爪白癬(total dystrophic onychomycosis : TDO)

爪白癬図 爪白癬の感染経路  東 禹彦著 爪 基礎から臨床まで p117 より

爪乾癬 爪乾癬(psoriasis)  見た目では爪白癬と区別がつかないケースもあります。真菌検査が重要なことがわかります。

鉤わん症 鉤彎爪