月別アーカイブ: 2015年2月

分子標的薬による皮膚障害

爪の疾患について、長いこと書いてきましたが、そろそろ種切になってきました。結構いろいろ調べて書いたつもりですが、東先生の教本やBaran&Dawberの教本を見てみると、ここに取り上げたものは、そのごく一部に過ぎないことに茫然としてしまいます。でもこの年になって初めてこんな爪の体系的な素晴らしい本に巡り会えたのは一寸した感動でした。
単にアンテナが機能していなかっただけかもしれませんが。EADVの学会で何でEuropean Nail Societyなどあるのだろうと思っていましたが、その意義、奥深さ、重要性を一寸だけ垣間見たような気がしました。

先日、といっても昨年になりますが、分子標的薬による皮膚障害の講演がありました。そこで、陥入爪が副作用として問題になっている事を教えて貰いました。最後にこの話題を取り上げて爪の話題から離れるつもりです。次は何になるでしょうか。自分でも風まかせといった感じで分かりません。

当日の講師は以前浦安で皮膚癌の講演をしていただいた静岡県立がんセンター皮膚科部長の清原祥夫先生でした。日本臨床皮膚科医会のブロック集会で今回は千葉県皮膚科の担当によるものでした。委員の先生方が、皮膚腫瘍の話も聞きたいという要望だったのですが、今回は腫瘍そのものではなく、治療薬の皮膚障害というテーマでした。
予想と違ったのですが、聴いてみてこれは全科に亘る、全ての人にいずれは降りかかるであろう(自分または家族に)ガンという厄介な疾患の治療において避けては通れない重要な事柄だと気付かされました。
調べてみても癌の治療薬の基本が解らないと仕方がないのですが、乏しい知識をしぼって書いてみたいと思います。

ネイルケア

爪の疾患について、いろいろと書いてきましたが、一般的にはあまり馴染みがなかったり、関係ないかもしれません。むしろ普段の爪のお手入れ、ネイルケア、ネイルアートの方に興味があるのかもしれません。そちらの方面は全く素人ですのでブログに書くのも気がひけますが、一応調べてみました。参考になりますかどうか。
【爪マニキュアの歴史】
爪のマニキュアの歴史は意外と古いそうです。古代エジプトでは紀元前3000年にはすでにヘナによる爪の染色がなされていたそうです。赤系統のマニキュアは王族など高貴な階級しか許されなかったといいます。クレオパトラは濃い赤さび色のマニキュアを好んだとか。しかし本当の爪マニキュアと言えるのは中国に起源があるそうです。また爪を長く伸ばすことも労働をしない上層の社会階級のシンボルとも見做されていたそうです。
 現代のマニキュアが発達したのは、20世紀に入って自動車産業が盛んになり、速乾性のラッカーが開発された1930年代からといいます。日本のネイルケアは戦後ヨーロッパから導入され、美容院、理容院の美容メニューの一つとして普及してきました。
1970代からは主にアメリカで、付け爪(義爪、スカルプチュアネイル)やその上に装飾を施すネールアートが流行し、追って我が国でも普及発展してきました。
日本では、欧米から導入された技術を元に、NPO法人日本ネイリスト協会が日本独自の普及活動をテキストの作成、セミナー、検定試験、コンテストなどを通じて行ってきたそうです。
【ネイルケア施術手順】
1)ファイル(ヤスリ)・・・ヤスリを用いて爪の長さや形を整えて二枚爪になることを防止する。爪に対して45~90度の角度で当てて、一方向に引き、爪の表面を削らないこと。
2)クリーンアップ・・・フィンガーボールなどに微温湯を入れて、指先を数分間浸けてふやかし、メタルプッシャーなどで、甘皮を浮かせて、ささくれや余った甘皮、爪の上の不必要な角質を除去する。キューティクルニッパーなどを用いる。
3)プレパレーション・・・ジェルネイルやアクリル樹脂による付け爪の事前処理。アクリルの持ちをよくするために、爪甲(ネイルプレート)上の不必要なルースクーティクル、汚れ、油分、水分を取り除き、ジェルやアクリル樹脂の密着度を上げるために行う。
3)仕上げ方
  1.パフィング・・・ナチュラルネイルを磨きつやを出す。
  2.ポリッシュ・・・ネイル化粧品でカラーリングして仕上げる。
  3.ジェルネイル・・・UVで硬化する人工爪で仕上げる。
  4.エクステンション・・・アクリル樹脂で長さを出す。
具体的な施術は専門書、あるいはプロの施術者に依るとしても、最近はセルフネイルブームもあり、自己流の間違い、問題点も指摘されています。注意点をピックアップしてみました。頻度的には少ないかもしれませんが、下記のような事例もあることを知ってネイル・ケア、ネイル・アートを楽しむことが大切かと思われます。
【注意点】
・ニッパーなどでカットする際に深爪はしないこと。原則スクエア・カットをする。キューティクルニッパーでのカットで生きた皮膚をカットしないこと、感染症の恐れがある。
・ヤスリ(ファイル)は両方向に引かないこと、二枚爪の恐れがある。角度に注意。目の粗さなど用途に応じて適切に使い分けること。
・メタルプッシャーなどで、過度に甘皮を後退させたり、除去したりすると爪に横溝を形成したり、爪囲炎を生じたりすることがある。
・ネイルラッカーやネイルハードナーなどによる接触皮膚炎の報告がある。日本ではホルマリンの使用は禁止されたそうだが、外国品でそれを含むものもあり、刺激、かぶれなど健康障害に注意が必要。日本人の爪は比較的強く、ネイルハードナーの使用は少ないが、(ホルマリン入りの)ハードナーを繰り返し使用すると、爪の丈夫さや耐久性を劣化させ、脆くなりやすい。
・除光液の主成分としてアセトンが使用されていることが多いが、頻回に使用すると爪甲を乾燥させ、脆く割れ易くなる(二枚爪)。
・ベースコート、トップコート、ネイルハードナー、ネイルラッカーなどはいずれも成分は類似しているので接触皮膚炎をおこす可能性はある。その際は爪甲剥離、爪下出血、爪囲炎、爪甲下角質増殖などの症状を引き起こすことがある。ただし頻度はそれ程多くない。
・濃いネイルエナメルを使用していると着色してくることがある。透明なベースコートを使用することによって防げる。
・スカルプチュアネイル(義爪)による、爪郭の発赤、腫脹、爪甲剥離などの報告がある。
・紫外線で硬化するアクリル樹脂で接触皮膚炎をおこしたケースがある。アクリルモノマーは皮膚から浸透し指の神経を刺激し、しびれ感や疼痛をきたすことがある。
・付け爪を接着する瞬間接着剤(cyanoacrylate glue)での接触皮膚炎の報告もある。
・付け爪や義爪は装着後日数がたってくると爪甲と接着面との間に隙間が生じてくるために、そこから細菌や真菌が侵入して増殖する可能性がある。緑膿菌、カンジダなどの真菌の付着に注意する必要がある。(それぞれの疾患については過去の当ブログを参照して下さい。)
・アクリルモノマーの液を誤飲してメトヘモグロビン血症になったケースがある。
・ジェルネイルやアクリルネイルを取り除く際に必要以上に削ったり、繰り返して過度にアセトンに晒したりすると爪を傷める。

参考文献

東 禹彦:爪 基礎から臨床まで. 金原出版 第1版第7刷 2013

Douglas Schoon and Robert Baran. Cosmetics: the Care and Adornment ofthe Nail. Baran and Dawber’s Diseases of the Nails and their management, Fourth Edition.
Edited by Robert Baran, David A.R.de Berker, Mark Holzberg and Luc Thomas. 2012 John Wiley and Sons, Ltd. p471-483

木下美穂理: ネイルケア,皮膚科医のための香粧品入門.皮膚科の臨床 Vol.56. No.11 p1680-1686, 2014

 

足趾の潰瘍・壊死

膠原病の指・足趾、爪囲のことを書いていて、どうも気になることがあります。
足先の色の変化や傷はよくみかけるのですが、その原因は千差万別でしかも重大な病気であったり、その部分症状だったりすることがあります。
自身で全て経験したわけではないのですが、教本によると潰瘍→壊死→壊疽→切断などの記載もあります。
膠原病、とりわけ強皮症からの壊死は注意が必要ですが、その他にも壊死をきたす疾患は様々です。
仔細にそれぞれを書くのは一寸無理ですが、結構多くの病気があるということだけでも参考にして下さい。
足先の色、温度、痛みには十分気を付けて注意を払っておいて下さい。特に糖尿病の方、動脈硬化の方。
◆全身性強皮症
◆全身性エリテマトーデス(SLE)
◆クリオグロブリン血症
◆糖尿病性壊疽
◆コレステロール結晶塞栓症
◆Buerger病
◆結節性多発動脈炎、各種血管炎
◆閉塞性動脈硬化症
◆趾端紅痛症
◆細菌性壊疽、敗血症
◆電撃性紫斑病
◆悪性腫瘍
◆凍傷
◆低温熱傷
◆クラインフェルター症候群
◆プロテインS異常症
その他にもいろいろな疾患の部分症状として挙げられています(HIV、サルコイドーシス、ハンセン氏病などなど)。この中で末梢動脈疾患(peripheral arterial disease: PAD)の徴候のひとつであり、安静時にも痛みのある足趾の潰瘍、壊死をきたす重症虚血肢( critical limb ischemia: CLI)については以前当ブログに書きましたので参考にして下さい。(2014年3月)
いつか機会があれば血管炎などについて調べて書いてみたいと思います。

足趾潰瘍

足趾潰瘍2

膠原病の指・爪 (3)

エリテマトーデス(紅斑性狼瘡, lupus erythematosus:LE)の中心に位置するともいえる全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)はまた膠原病、全身性自己免疫疾患の代表的な疾患ともされています。様々な免疫異常を背景に多臓器を侵します。
その原因、発症要因は明確ではありませんが、遺伝的な素因が関係していることは確実なようです。その上に様々な環境要因があいまって自己に対する偏った免疫応答が惹起され、様々な組織障害が誘導されていくステップをとります。
免疫応答の異常ではT細胞の異常もありますが、近年はB細胞の異常がSLEの病態の中心であると考えられるようになってきたそうです。
SLEの診断は診断基準によって診断されますが、2012年には新しい分類基準(SLICC criteria:The Systemic Lupus International Collaborating Clinics)が提唱されました。
新しい分類は「急性及び慢性皮膚エリテマトーデス」として様々な皮疹が診断項目に組み込まれ、従来のものよりも皮疹や皮膚生検の重要性が高まったそうです。その分SLEに見られる多彩な皮膚の状態を的確に判断できる皮膚科医の需要、責任が高まったともいえます。
従来は1982年に制定された米国リウマチ学会(ACR)のSLE分類基準が改定され、広く使用されてきましたが、そこでは1)顔面紅斑と光線過敏の重複がある 2)特徴的な皮膚症状が入っていない 3)重要な神経所見が少ない 4)低補体血症が入っていない などの問題点もあったそうです。これらを勘案して作られた新しい分類基準では診断感受性が大きく向上したそうです。
LEはバリエーションが大きく、全身型のSLEから中間型LE(intermediate LE: ILE)、皮膚限局型LE(cutaneous-limited: CLE)まであり軽症から重症まで幅広くあります。

SLEの全体像を書くのは手に余りますし膨大になりますので、ここではLEの皮疹についてのみ触れますが、それについてもはなはだ多彩で、LEにのみみられる特異的皮疹と他疾患でもみられる非特異的皮疹を合わせると30種類以上もあるとのことです。
そこでLEの皮疹を特異疹を主体に調べてみました。

【特異的皮疹】
多くは蛍光抗体法で表皮基底膜部にIgGなどの免疫グロブリンや補体C3などの沈着がみられます。(ループスバンドテスト陽性)
<急性型皮疹>
◆蝶形紅斑・・・SLEで最も代表的な重要な皮疹で、SLE患者の50~70%にみられ、約20%が初発症状として出現するとされます。鼻背をまたいで両方の頬に蝶が羽を広げたような形で赤みがび慢性に拡がるタイプと、小型の紅斑が多数その部位にあって、全体として蝶形にみえる場合があります。日光曝露後に発症することが多いようです。急性期には浮腫性紅斑ですが、次第に鱗屑を伴うようになります。
皮膚筋炎でも同様な皮疹をみますが、境界は不鮮明な浮腫性の紅斑のことが多く、また脂漏性皮膚炎に似て鼻唇溝にも紅斑をみることもあります。SLEではその部位より下方を避けることが特徴とされます。
◆特殊型皮疹・・・結節性皮膚ループスムチン症、水疱性LE型皮疹、血管炎型皮疹
<亜急性型皮疹>
◆SCLE(subacute cutaneous LE)・・・1979年にSontheimerらが新しいLEの亜型として提唱しました。環状紅斑と丘疹鱗屑性皮疹があります。環状紅斑はシェーグレン症候群(SjS型環状紅斑)や新生児のLEでも見られますが、SjSでは表皮の変化がより少なく、SCLEではやや鱗屑を付しているようです。上肢や上半身の露光部に多く、白人女性に多いそうです(男女比 1:9)。日本人ではSjS型が多いそうです。抗SS-A抗体と密接に関連しているといわれます。
丘疹鱗屑型の皮疹では乾癬に似た紅斑落屑性の皮疹をとります。
慢性型の皮疹程浸潤がなく、角栓は認めません。皮疹は軽い萎縮と色素脱失を残すそうです。
<慢性型皮疹>
◆DLE(discoid LE)型皮疹・・・円板状エリテマトーデスの皮疹は境界が明瞭な円形~楕円形の紅斑局面を呈します。貨幣大までのものが多いです。初期は隆起性浮腫性紅斑ですが、次第に表面に角化性鱗屑や角栓ができ、さらに中心部は萎縮していき色素沈着、脱失を残します。辺縁部は赤み、褐色調が強く融合して地図状になってきます。顔面、頭部、耳、手背などの露光部に生じることが多いですが、躯幹、四肢にも多発する播種状型(wide spread DLE)もあります。
通常DLE型皮疹を持つCLEがSLEに移行する確率はごくわずかですが、SLEには全てのタイプの皮疹が現れる可能性があります。
◆凍瘡状LE型皮疹(chilblain lupus)・・・寒冷によって悪化するDLE型皮疹の亜型です。手指に凍瘡様の紅斑とDLE様皮疹をみます。ILEから軽症のSLEのことが多いそうです。
◆深在性LE型皮疹(lupus erythematosus profundus)・・・ループス脂肪織炎(lupus panniculitis)ともいいます。皮下脂肪織に非特異的な炎症を生じます。20~60歳代の女性に多く、顔面(頬部が多い)、頭部、四肢、臀部などに好発します。皮膚色から赤褐色の皮下硬結を生じ、最終的には陥凹した局面を残します。石灰化や潰瘍を生じることもあります。
SLE,ILEに伴うこともあります。治療はいかに瘢痕などの醜形を残さないようにするかが肝要です。
【非特異的皮疹】
多くは血管・循環障害に関連のある発疹で、SLEの早期診断の補助になりますが、他の疾患でもみられるもので、除外診断など慎重な判断が必要です。
慢性型では通常みられないのでSLEに適合するかどうか他の所見とあわせて診断します。
<手指の皮疹>
・Raynaud現象・・・強皮症で高率にみられますが、皮膚筋炎、SLEでもみられます。
・凍瘡様紅斑・・・しばしばSLEやシェーグレン症候群の初発症状としてみられます。
春を過ぎても持続するしもやけ様の紅斑は注意を要します。
・爪囲紅斑、・・・皮膚筋炎で最も高率にみられます。強皮症でもみられますが、この両者では爪上皮の出血点(nail folod bleeding:NFB)がみられます。SLEでは稀とされます。
・肢端壊疽・・・血流障害が高度になれば生じます。強皮症で最も問題になりますが、SLEでも生じます。ただし、血管炎や閉塞性動脈硬化症、関節リウマチ、糖尿病など種々の疾患でも生じますので鑑別が必要です。
<手指以外の皮疹>
・リベド(網状皮斑)・・・真皮、皮下脂肪織境界部の動脈性血流障害を反映して生じます。血管炎、循環障害(抗リン脂質抗体症候群など)
・皮膚潰瘍・・・SLEで上記のリベドや皮膚潰瘍、白色皮膚萎縮がみられた場合は抗リン脂質抗体症候群を考えて動脈の血栓症、動脈閉塞による症状をチェックする必要性があります。
・紫斑・・・いずれの膠原病でも生じることがあります。

このようにみてきますと、手指の発疹のみでSLEの全体像を判断するのは無理がありますが、早期診断や急性増悪の指標として、重要な役割を持っているように思われます。

病勢の増悪時の皮疹は、口腔潰瘍、蝶形紅斑、水疱、血栓、血管炎に伴う症状(紫斑、潰瘍、皮下結節、リベドなど)などとされます。顔面、手の皮疹は外来診察の短い時間でもチェックできます。
何よりも特別な機器を用いず、侵襲的な検査も行わないで、経時的な観察ができるのは有利な点と思われます。

参考文献

Visual Dermatology Vol.8 No.10 2009 手と顔から見つける膠原病 責任編集 佐藤伸一

皮膚科臨床アセット 7 皮膚科膠原病診療のすべて 総編集◎古江増隆 専門編集◎佐藤伸一
中山書店 2011

東 禹彦: 爪 基礎から臨床まで. 金原出版 第1版第7刷 2013

茂木精一郎. 膠原病update 新しい診断基準 日皮会誌:124(13),2603-2607,2014

蝶形紅斑 蝶形紅斑

爪囲 爪囲軽度紅斑

紅斑 指腹軽度紫紅色斑

蝶形紅斑2 紅斑が集まって全体として蝶形紅斑

足 足趾の紫斑

DLE 丘疹鱗屑型~DLE型(?)

随分前に経験した例で水疱を多発したSLEの患者さんですが、どこを探してもカラー写真が見当たりません.白黒ですが参考までに載せました.

水疱 初診1年前に手掌、足底に紅斑、2~3か月前に蝶形紅斑、口腔内潰瘍、脱毛.妊娠を契機に悪化.顔は全体に紅斑、色素沈着.口囲には紅斑落屑と糜爛.四肢手掌足底には滲出性紅斑があり、四肢では水疱を形成.
LE陽性.抗核抗体1024倍.抗ENA抗体40960倍.STS(-).C3,C4低値.
膠原病内科に転科してプレドニン80mg/日より治療、漸減して軽快.

水疱組織 耳前部の組織.表皮下水疱.液状変性あり、蛍光抗体直接法ではIgGの表皮真皮境界部への沈着あり.(ループスバンドテスト陽性)

腎臓 腎臓糸球体に微小変化.メサンギウムにIgG,M,Aが軽度に陽性.血管炎、尿細管の変化なし.

 

 

中原寺メール 2/1

【前住職閑話】
 1月13日から9日間の日程でインドへ3回目の旅をしてきました。
仏蹟、つまり仏教が生まれたところ(ブッダガヤー)、その教えが初めて説かれたところ(サルナート)、霊鷲山(釈尊が説法された聖地ラージギール)、ナーランダ(最も栄えたかつての佛教大学)等、2度目の聖蹟巡拝でした。
そしてこれら釈尊の聖地である州は「ビハール州」といい、サンスクリット語の「ビハーラ」ということだと聞いてとても嬉しくなりました。
ビハーラは僧院、寺院あるいは安住。休養の場所を意味します。現代では末期患者に対する仏教ホスピス、または苦痛緩和と癒しの支援活動をいいます。
 そこで偶然出会った一人旅の40代の女性。聞いてみれば船橋市に在住の方、10月に夫を亡くし、傷心の身を携えながら何かに導かれるようにこの聖地に来たといいます。
 しばし同じテーブルで夕食を共にしながら、人生について、死について、仏教について語らう中で、彼女は時に涙を浮かべながらインドへ来てよかったと、その眼は澄んで顔は清らかに安らいでいました。
 しかし帰国したその日から、連日ニュースはイスラム国の人質事件です。ビハーラどころか憎しみと殺し合いの人間世界の愚かな悪業の連鎖に、生きることの苦しみを深く感じます。
 釈尊の言葉、「怨みは怨みによって果たされず、忍を行じてのみ、よく怨みを解くことを得る。これ不変の真理なり。」を繰り返し味わっています。