月別アーカイブ: 2015年4月

分子標的薬の皮膚障害ー手足症候群

分子標的薬のうち、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬について書きましたが、がん細胞では様々なキナーゼが同時に活性化されていることが多く、複数のキナーゼを総合的に阻害する多標的キナーゼ(マルチキナーゼ阻害薬)(MKI)の方が抗腫瘍効果が高いとして、これらが使用されるようになってきました。マルチキナーゼ阻害薬は細胞増殖や血管新生に関与する複数のキナーゼを阻害するために様々な皮膚障害をきたしますが、その中でも特徴的で、最も日常生活に影響を与えるのが手足症候群です。知覚障害を伴うことから手掌・足底発赤知覚不全症候群ともよばれます。
日本で使われているMKIには、ソラフェニブ、スニチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブがありますが、2013年には、大腸がんに対する新規MKIのレゴラフェニブが発売されました。大腸がんは本邦で癌死亡が第3位と高率なために、この種の薬剤の使用と有害事象の増加も懸念されます。
上記の中で手足症候群の報告が多いのはソラフェニブ(ネクサバール)で根治切除不能又は転移性の腎細胞癌、切除不能な肝細胞癌に使われます。次いでスニチニブ(スーテント)も多いようです。これは、イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍と根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に使われます。
これらは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、EGFR、幹細胞因子受容体(c-KIT)、fms様チロシンキナーゼ3(FLT-3)などの多くのキナーゼ活性を阻害することで、抗腫瘍効果を発揮するそうです。
手足症候群の症状は、手や足の圧迫のかかりやすい部位に感覚異常を伴って発赤、腫脹を生じ、荷重部にタコ様の角質肥厚、黄色膿瘍様皮疹を生じます。膿瘍様水疱は針で穿刺しても内容液は出ず、表皮の層状の壊死を反映しているそうです。
この様な症状が生じる原因はMKIの働く機序からいろいろ想定されていますがよくは解っていないようです。
薬剤使用後1~数週間後と比較的早期に出現します。症状のグレードごとに対処しますが、確立された治療法はないために大切なのは発症、増悪の予防だそうです。初期段階からスキンケアと物理的な刺激を避けて皮膚を保護することです。
保湿とともに、木綿の厚手の靴下を履く、柔らかい靴の中敷きを使う、足に合った柔らかい靴を履くなどの注意が重要です。
発症した場合でも、足底装具を作成してもらうなどチーム医療、多職種連携の重要性が指摘されています。
また、手足症候群などの皮膚障害の程度が高度な程生存期間が長いということが分かっているので、症状をコントロールしながら、治療を続けるられるようサポートすることも重要です。

参考文献

清原 祥夫:分子標的治療薬による皮膚障害.皮膚疾患最新の治療. 編集 瀧川 雅浩 渡辺 晋一 南江堂 2013-2014 -29

和薬 孝昌: ソラフェニブによる薬疹の3例. 皮膚科の臨床52(3);315~321,2010

神山 泰介: ソラフェニブにより生じた皮膚障害の4例. 皮膚科の臨床52(3);323~326,2010

花輪 書絵: ソラフェニブによる手足症候群の4例. 皮膚科の臨床52(3);327~331,2010

伊藤 倫子: 多標的キナーゼ阻害剤による皮膚障害の3例. 皮膚科の臨床52(3);337~340,2010

分子標的薬皮膚障害対策マニュアル2011 第62回日本皮膚科学会中部支部学術大会 三重大学医学部附属病院 皮膚科・薬剤部 発行

松村 由美: 手足症候群: 皮膚障害の症状と対策. 日皮会誌:123(13),2690-2692,2013

Macdonald et al. Cutaneous adverse effects of targeted therapies. Part 1: Inhibitors of the cellular membrane. J Am Acad Dermatol. 2015;72:203-218.

アトピー性皮膚炎と皮膚バリア構造

NHKのアレルギー、アトピー性皮膚炎の話題を書いたばかりですが、今日千葉県皮膚科医会総会の特別講演は慶應大学の天谷先生のアトピー性皮膚炎の話でした。(天疱瘡の専門家でその抗原がデスモグレインであることを発見した世界的な研究者なので天疱瘡の話かと思いましたが、アトピーの話でした。)
講演はは茶のしずく石鹸の話から始まって、例のピーナッツアレルギーの話から、effector T cell, T-regの話、バリア障害、アトピー性皮膚炎に対する保湿剤の早期介入の話と進みましたので、ああ先週テレビで聞いた話だ、と思っていましたが、それはまくらで本題はこの後でした。
難しい話でよくは判らなかったのですが最先端の研究とはこういうものをいうのだろうと、何となく感じました。
それでその興奮と、おぼろげな記憶が消え去ってしまう前に備忘録として書き止めました。正確な伝達である自信はありませんが、アウトラインはそんなにずれていないと思います。
2006年にMclean, Irvineらによってアトピー性皮膚炎患者でフィラグリン遺伝子の変異が発見されました。天谷先生はこの報告を聞いて、皮膚に備わっているバリア機構を解明してアトピー性皮膚炎の発症メカニズムにせまろうという研究を展開していったとのことです。バリア障害の本質は何か?これからは角層を中心に調べていこう、と思ったそうです。
皮膚(表皮)は、最外層から角層、顆粒層、有棘層、基底層となっています。
角層は最外層にあって皮膚が乾燥して壊れていくのを防ぐとともに、刺激物や病原体が体内に侵入するのを防ぐバリア機能があります。皮膚にはその他にもう一つバリアの働きをする構造物があります。角層の下にあって細胞間の隙間をシールするタイトジャンクション(TG)という構造物でバリアの役目を担っていると考えられます。これまでは2次元的には判っていましたが、3次元的な立体構造は判っていませんでした。
慶應グループはその構造を3次元的に可視化することに成功し、炎症が生じた場合は抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞(LG)がタイトジャンクションを壊すことなく、細胞突起を潜望鏡のようにTGの外側に突き出し、外界の抗原、異物を取り込むことを発見しました。
TGには細胞同士がくっついている部分にTricellulinという弱い部分があり、それらの部分を通して突起を伸ばしているそうです。
TGには3層あり、最下層はフィラグリンによって異物を通さない層(K ↓、Alginine↓)、中間層がNMF(natural moisturizing factor)を含む水分保持機能を持つ層(K↓,A↑)、上層がスポンジのような働きをする部分(K↑,A↓)に分かれているそうです。(質量分析顕微鏡(TOF-SIMS)を用いた解析による)
TGの3次元構造の可視化やLGとの関係の観察は久保亮治先生が京都大学月田研究室で培った細胞生物学のテクニック、知識が役立っているそうです。
角層は死んだ細胞なのに、TGが3層でその上の角層は12層になっていて、13層目からは剥がれ落ちていくようにプログラムされているそうです。なにがそれを制御しているのかなどまだまだわからないことがいっぱいとのことでした。
またLGでも上方に手を伸ばすものだけではなくて、(IDEC: inflammatory dendric epidermal cell)という横方向に手を伸ばしている細胞があることもわかってきたそうです。これはヒトだけにあってマウスにないので働きはまだよくわかっていないけれど、これが悪さをするのではないか、と述べていました。
さらにノックアウトマウスでフィラグリンを欠損したマウスでは抗原がバリアを通過してしまうことも示されました。
さらに、LGをいったん皮膚からなくすると再生は毛の周辺から始まるそうです。2光子顕微鏡で細胞が毛の周辺にびっしり集まってくるビデオを見せてもらいました。皮膚樹状細胞と毛嚢による免疫制御は今後の研究課題だそうです。毛を中心に免疫細胞を呼び込み、皮膚の免疫サーベイランスを司っているかもしれないと壮大な話でした。

正確には理解できないけれども、皮膚科の最先端の研究の一端を見せていただき、圧倒される思いでした。そういえば、昨年来2光子顕微鏡の皮膚科での草分け的な研究を進めている京都大学の椛島健治先生や慶應大学の久保亮治先生の3次元的な画像を講演会などでみせられ、百聞は一見にしかずとの言葉通り、この目で免疫細胞の動きをみて、この分野の研究の進展に眼を見張る思いでした。今日はさらにその感を強めました。
講演の後で、天谷先生に「椛島先生の2光子顕微鏡のライブイメージングのビデオもとてもスマートでエレガントだったけれど、延々と写真を撮り続けて寝不足でグロッキーになっている院生?研究生?の写真がありましたけど、実は力仕事なんでしょうね。」といったら「こちらの毛嚢のビデオも延々数ヶ月にわたる根気の要る仕事の結果ですよ。」といわれました。すいすいと湖を滑るような白鳥も、実は水面下では必死に足で水かきを動かしているものの例え通りです。

講演会のお話はここまでなのですが、余計なお話を。
時々、椛島先生のブログ「きたきゅーから椛島健治の頭の中を送ります」というのを覗いているのですが、その中の本棚コーナーというのがあって、そこにまんが本の紹介がありました。
東村アキコの「かくかくしかじか」というものです。
「某先生のブログで紹介されていたので読み始めています。漫画とばかにするなかれ。。。
http://blog.hypoxia.jp/hypoxia-research/ 」というコメントが書いてありました。
某先生とは京都大学の麻酔科の先生のようですが、椛島先生に影響を与えた先生だとか、なぜか不思議に心惹かれてKindle版をダウンロードし読み始めました。No.4まで読んだら、最後のNo.5がなんとまだ電子版がないのです。
当日会場のホテルに着く前に本屋に駆け込んでNo.5を買って講演の合間も読んでしまいました。
今年のまんが大賞に選ばれただけあって確かに感動もののエンディングでした。
本の中の絵の先生のブレない生き方、弟子の指導法への感動でしょうか。著者自身の才能のためでしょうか。

これは1日たって、月曜日に書き足していますが、今日の椛島先生のブログに
「どうでもいいことですが、僕のブログの隣に出している本棚コーナーですが、誰にも褒められることはなかったのですが、「かくかくしかじか」は面白かったです、と数名から感謝されました。
漫画恐るべし。
・・・とありました。

NHKスペシャル「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」より

4月5日(日)のNHKスペシャル「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」を興味深くみました。
近年増えてきたアレルギー、国民病とも言われる花粉症、食物・動物アレルギーを根本的に治す鍵を握る”Tレグ”とよばれる免疫細胞を中心として、最先端の研究に迫るというものでした。
最近の報道は進んでいて、一般の皮膚科の教科書にものっていないような情報も多くみられます。
今回の放送は、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど、皮膚科に直接かかわる話題であり、また制御性T細胞(regulatory T cell: T-reg)の発見者である坂口先生が出演するなど興味をそそられるものでした。
坂口先生と大隅先生がノーベル賞にも近いといわれるガードナー国際賞を受賞したこともこの放送の契機になったのでしょうか。

アレルギー性の病気、自己免疫病などの病気は、自分の体を攻撃する「自己反応性T細胞」と「制御性T細胞」の両者のバランスの上に立っているそうです。T-regは自己攻撃性の細胞を押さえ込み、アレルギー反応を起こさないように働きます。
アメリカで近代文明に背き自給自足など独特の生活習慣をもつアーミッシュの人々ではTレグが多く、アレルギーが少ないそうです。家畜が出す細菌などを子どもの頃吸い込むことによってTレグが反応性に多くなると考えられているそうです。これは生後3歳頃までで、この時期きれいすぎると免疫系が刺激を受けなくなるそうです。
(そういえば視点は違うかもしれませんが、元東京医科歯科大学の藤田紘一郎先生は、きれいな社会の落とし穴として、回虫などを持つきたない生活のほうがアトピーやスギ花粉症は少ないという説を力説されていました)
番組の中から、皮膚科に関係のあるアトピー性皮膚炎、食物アレルギーの話題を。
2000年の米国小児科学会のガイドラインでは妊娠、授乳中は卵、ナッツは避けて、乳製品は1歳から、卵は2歳から、ナッツは3歳から食べるように指導していました。
ところが、2008年には食品を避けることによってアレルギーを予防する証拠はない、と発表したそうです。
2015年2月に衝撃的な研究結果が発表されました。アレルギーの世界的な権威といわれるロンドン大学のギデオン・ラックという教授の報告です。
生後6ヶ月から11ヶ月の赤ちゃん300人を2つのグループにわけて、一方には週3回以上ピーナッツを食べる、もう一方のグループではピーナッツを避けて食べないように指示しました。
そして、4年後5歳時でのピーナッツアレルギーの発症頻度を比べました。なんと、ピーナッツを食べたグループの発症率は3.2%だったのに対して、食べなかったグループでは17.3%と高い発症率でした。
マウスの動物実験でピーナッツを食べさせたマウスではTレグ細胞が大幅に増えていることが実証されました。これは、定期的に食物タンパク質(ピーナッツ)に晒されていると攻撃細胞も増えるけれど、それに対してピーナッツ専門のTレグも増えるということです。
但し、NHKでも繰り返し、注意していましたが、これは未だ赤ちゃんがアレルギーを発症していないケースでの話で、離乳食は色々な食物を食べてよい、ただし食べて何か変ならばすぐに医師に相談すること、です。すでに発症した人は専門医師に相談すべきです。
それでは、ピーナッツアレルギーのきっかけは何か? ロンドン在住の乳児湿疹の男児のケースが紹介されていました。その子は8ヶ月の頃湿疹のスキンケアのためにピーナッツオイルを使い始めました。そして3歳頃にピーナッツアレルギーを発症してしまいました。皮膚からのアレルギーの成立が考えられました(経皮感作)。
アトピー性皮膚炎では最近バリア機能障害ということが科学的にも証明されてきました。(全てではありませんがフィラグリン遺伝子という魚鱗癬などの角化異常症で変異を示す遺伝子の異常が明らかになってきました。) 皮膚の小さな傷がずっと続いていると、そこから食物成分などが異物として体内に取り込まれます。皮膚には樹状細胞というものがあり、それが手を伸ばすようにヒトデのように広がりこれらを異物として認識し、攻撃細胞に伝達、増加します。Tレグの抑制範囲を超えた臨戦状態が続くことになります。(最近は3Dイメージングでこれらの免疫細胞間の動的な動きをビデオでみることができます。)
では、なぜ皮膚からはアレルギー(経皮感作)になり、口から腸では免疫抑制的(経口免疫寛容)になるのか、は次のように考えられています。
腸管は本来いろいろな異物が侵入してくる場所なので、Tレグ細胞が多く存在して、免疫の関所として機能しています。しかし、皮膚の傷は本来のものではない、異常事態なので、侵入してきたものを外敵と認識して炎症反応を起こすからのようです。
皮膚の炎症はなるべく早期に治して、長引かせないのがアトピーを重症化させないこつだそうです。長いこと、アレルギー物質に晒されていると治りにくく重症化することもわかってきています。それで最近は乳児期からの保湿などの早期介入による皮膚バリアの保護の重要性がいわれてきています。
それではTレグを人為的に増やしてアレルギーをコントロールできるか?
実はその試みも始まっているとのことです。
ご存知の方も多いと思いますが、スギ花粉症に対する舌下免疫療法というものがあります。少量の花粉エキスを定期的に体内に取り入れて徐々に花粉に慣れさせ、Tレグを増やしていこうというものです。千葉大学耳鼻科での研究内容が紹介されていましたが、7割の人には効果があるとのことでした。
更に新たな試みが紹介されていました。つくば市の農業生物資源研究所で作成された特別なお米を1日1回食べるだけで花粉症が改善されるというものです。
花粉の中からアレルギーをおこす成分を取り除き、それをお米の中に導入して、徐々に花粉に慣れさせるものです。この方法で長年の重症の花粉症が軽快した人が紹介されていました。
今後はスギだけでなく、他のアレルギー物質の導入も検討されているということです。

ただ、先にも一寸書きましたが、食物アレルギーに対する経皮感作、経口免疫寛容は動物実験ではかなり研究が進んできましたが、こと人に対する治療手段としては専門家の中でも賛否両論があるようです。経口免疫療法を積極的に勧めるという意見からすべきではないという意見まであります。一番の問題はすでに発症している食物アレルギーの治療で間違ってアナフィラキシーを誘発してはいけない、ということでしょう。
実際の患者さんは自己判断すべきではなく、専門家に診断、判断をゆだねるのが肝要です。

今回の放送でも明らかなように、アトピー性皮膚炎に対しては、皮膚のバリアを壊すことなく、保湿剤などで保護することが重要ですし、炎症がひどく燃え盛らないうちに湿疹を治す、ということが大切です。
最近、アトピー性皮膚炎については、バリア障害をきたす遺伝子群の異常や、アレルギー関連の遺伝子の異常とともに環境要因の関与も続々とみつかってきていると聞きます。それに伴って治療方法、対処方法もより科学的に客観的に解ってくるよう期待がもてそうです。

セツキシマブと牛肉アレルギー

セツキシマブ(アービタックス)は抗ヒト/マウスキメラ型EGFRモノクローナル抗体です。頭頸部癌、EGFR陽性の治癒切除不能な進行性、再発結腸、直腸癌に用いられます。通常成人には週1回、初回は400mg/m2(体表面積)を2時間かけて、2回目以降は250mg/m2(体表面積)を1時間かけて点滴します。
セツキシマブの可変部(Fab部分)の30%はマウス由来で残りはヒト由来です。
セツキシマブにはたまにアナフィラキシーが起きるのですが、その原因が、Fab部分のα-galという物質にあり、それはまた、牛肉成分、マダニの成分にも共通して存在するということが分かってきたそうです。
アメリカ東南部地方にこれらが多く見られたことから明らかにされたそうですが、日本でも島根大学のグループの研究で島根でのマダニによる日本紅斑熱、牛肉アレルギー、セツキシマブの関連性が明らかになってきたそうです。
ことは、セツキシマブという聞きなれない薬だけの話ではなく、牛肉、豚肉アレルギー、魚卵アレルギー、マダニ咬傷という身近な話に拡がってきたようです。そこでその話題を紹介したいと思います。

2008年、米国東南部でセツキシマブによるアナフィラキシーが多くみられ、その原因がセツキシマブのFab部分のgalactose-α-1,3-galactose(α-gal)に対する抗糖鎖IgE抗体によることが解明されました(Chung)。現地では住民の20%が抗体陽性だったそうです。
牛肉摂取後3〜6時間後に生じる遅発性蕁麻疹、アナフィラキシーがセツキシマブのアナフィラキシーが多い地域と合致していること、牛肉アレルギーの原因もα-galであることが判明しました(Commins)。
これは牛肉だけではなく、豚肉、などの哺乳類(四つ足)の肉、カレイ魚卵とも交差アレルギーを生じることがわかってきました。
これらの情報を受け、島根大学ではセツキシマブ使用予定の患者さんについて調査をして同様の結果を見出しました。
すなわち、セツキシマブでショックを起こした患者さんのうち、牛肉アレルギーが1名、牛肉アレルギー特異的IgE抗体陽性が4名でした。要するに全例で陽性というわけではなかったそうです。
しかし、ウシサイログロブリンを抗原としたα-gal特異的IgE抗体(CAP-FEIA法)やウエスタンブロット法では全例陽性にでました。事前にこれらの検査を行うことで、セツキシマブを使用予定の患者さんのアナフィラキシーを予知、予防することが可能となってきたそうです。
マダニについてはロッキー山紅斑熱は、キララマダニがリケッチャを媒介して発症するのですが、マダニの消化管にα-galが存在することが証明されたそうです。そして、マダニの咬傷とともに、α-galのIgE抗体価が上昇していたそうです。
島根大学では日本紅斑熱を媒介するフタトゲマダニを調べ、その唾液腺にα-galが存在することを突きとめたとのことです。

牛肉や豚肉のアレルギーがマダニ咬傷と関連しているなんて驚きでした。
お茶石鹸や、アニサキスアレルギー、花粉症や口腔アレルギーなど食物アレルギーの複雑さ、奥深さを考えさせられる話題でした。

参考文献

千貫 祐子 ほか. セツキシマブによるアナフィラキシーの予知予防. 日皮会誌:124(13),3090-3092,2014

桜の季節

桜が満開になりました。桜花と初夏のような陽気に誘われて、お昼休みに青葉の森に出かけました
桜は満開、善男善女が平日の昼下がりにも関わらず、大勢繰り出して人だかりで賑わっていました。ずっと通勤、皮膚科の診察室、街中歩きの往復だけで、自然に触れなかったせいもあり、とても新鮮でした。やはり、自然はいい、そういえば久しぶりに青空を眺めたような気がしました。
一年に一度だけの桜の開花、心身ともにリフレッシュされます。
桜の花を愛でる度に最近は劉 希夷の詩歌を思い起こします。
年年歳歳花相似
歳歳年年人不同
春を通り越していきなり初夏の陽気になりましたが、花冷えは世の常の慣い、翌日には雨が降り、風も強く吹きました。散り際の潔いのは良いのかどうかは知りませんが、もうすでに散りかかってきました。

数日たって休診日を利用して、親戚の病のお見舞いに行ってきました。帰り途に都内を通るので、妻を誘って千鳥ヶ淵の桜を見にいってきました。あまりにも有名な桜の名所なので、もう既に何回もみたようなデジャブの感がありましたが、桜の満開の季節に来たのは初めてです。
北の丸公園から武道館を通って靖国からお堀端を歩きました。小生にとっては滅多にない一寸したデート気分のそぞろ歩きでした。新鮮な気分でした。
しかし、病の人をお見舞いしたこともあってか、諸行無常の感を感じていました。少し前まであんなに元気だった人が、病の床に臥せっている現実。

4月はフレッシュマンが活躍する季節。同世代の皮膚科の先生方がそろそろ職務を全うして職場を卒業していく季節です。小生はといえば最近のめまぐるしいほどに進歩しつつある皮膚科学に目を丸くしながら、付いていくのに四苦八苦している状態です。

現役バリバリの先生方の皮膚科のブログも多くみられます。セピア色に色あせた古い知識と聞きかじった新しい知識を教本を見ながら繋ぎ合わせたブログを書き続けるのもいかがなものか、という気もし始めています。
それでも、いまだ多くの人が当ブログを訪問してくださっているようです。それにまだ書き足りないような思いも多少あります。
今しばらくは皮膚科の記事を書き続けていこうかと思っています。

桜2

桜1

桜3

桜4

千鳥がぶち1

千鳥がぶち2