月別アーカイブ: 2016年1月

膿胞性乾癬(5)顆粒球単球吸着除去療法

顆粒球単球吸着除去療法(Granulocyte and Monocyte Adsorption Apheresis:GMA)は炎症組織に集積し病変形成に関与する好中球、マクロファージおよび単球を除去し、それらの細胞機能を制御する体外循環療法です。多施設共同試験が実施され有効性と安全性が確認されました。しかしGPPは重症で、症例数が少ない疾患であるために二重盲検プラセボ対照試験を行うことは困難なために症例報告の積み重ねに頼らざるをえません。報告例では有効性は高く、QOL(Quality of Life)は有意に改善され、大きな副作用はみられなかったとされています。15例での検討で頭痛とめまいなどです。他の炎症性腸疾患での副作用も頭痛、発熱、立ちくらみ、めまい、吐気、顔面発赤、飛蚊症、動悸などで重篤なものはないようです。
ただ、留置針刺入部からの感染には十分注意が必要と記されています。
妊婦に対しては3例中2例に有効で、副作用は母子ともになかったとされていますが、安全性が確立されているわけではないので慎重に使用する必要性があるとされています。
小児に対しては使用経験が少なく、安全性は確立されていませんが、潰瘍性大腸炎などの使用経験から勘案すると体重25kg以上であればおおむね安全に使用できると考えられています。
関節症性乾癬に対するGPPの効果については21例中17例に効果がみられ、重篤な副作用はなかったとのことです。従って、GPPに伴う関節症状に対しても効果は期待できますが、有効性、安全性についての十分な根拠はないとされています。

実際の手技は以下の通りです。
酢酸セルロースビーズを充填したカラム(アダカラム(JIMRO))を用いて1回の治療で毎分30mlで60分間、合計1800mlの血液を循環させます。血液は肘静脈から脱血しカラムを通し対側の肘静脈に返血します。これを5日ー7日に1回、合計5回施行するのが基本的なプロトコールです。

好中球除去のメカニズムについては、金蔵によると、以下のように説明されています。
活性化した好中球は細胞表面に接着因子であるMac-1分子(インテグリンCD11b/CD18)を発現していてiC3bなどの活性化した補体がリガンドの一つになっています。一方GCAPのカラムに充填されているビーズの成分である酢酸セルロースアセテートは補体を活性化してその表面に吸着する作用を有しています。
したがって、好中球表面のMac-1と酢酸セルロースビーズ表面に吸着した活性化補体iC3bが結合し活性化した好中球が選択的に吸着除去されます。これによって血中の炎症性サイトカインレベルも低下し、炎症も沈静化すると考えられます。

GMAは臨床効果に優れ、副作用も少ない治療法です。2012年10月にはGPPに対して保険適応もされ、これから施行例も増えていくことと思われます。しかしまだ例数の少ない治療法であり、治療内容説明を懇切にして慎重に進めていくことが求められています。

参考文献

照井 正 ほか:[日本皮膚科学会ガイドライン]膿胞性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版、日本皮膚科学会膿胞性乾癬
(汎発型)診療ガイドライン作成委員会, 日皮会誌:125(12),2211-2257,2015(平成27)

Ikeda S. et al: Therapeutic Depletion of Myeloid Lineage Leucocytes in Patients with Generalized Pustular Psoriasis Indicates a Major Role for Neutrophils in the Immunopathogenesis of Psoriasis. J Am Acad Dermatol,2013;68:609-617.

金蔵拓郎:膿疱性乾癬に対する顆粒球吸着除去療法. 臨床皮膚科67(5増):113-116,2013

GCAP 同上文献より

GCAPメカニズム

膿胞性乾癬(4)生物学的製剤

生物学的製剤は10数年前からクローン病、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、小児特発性関節炎、関節リウマチなどに臨床応用されてきました。乾癬においても2010年にTNFα阻害剤のインフリキシマブ(レミケード)とアダリムマブ(ヒュミラ)が乾癬に保険適応になりました。同剤は関節症性乾癬にも有効性が認められています。ただ膿胞性乾癬に対する保険適応はインフリキシマブのみです。2011年にはIL-12とIL-23に共通するサブユニットであるp40に対する抗体ウステキヌマブ(ステラーラ)が乾癬に保険適応となりました。2015年には抗IL-17A抗体であるセクキヌマブ(コセンティクス)が保険適応になりました。そして最近同剤は膿胞性乾癬も効能追加承認されました。
21世紀にはいり、IL-17 を産生するTh17細胞の発見を機に乾癬の病因、病態論はTipDC-Th17細胞を中心としたパラダイムシフトともいわれる程の大きな変貌をとげました。
そして、それは基礎的な理論だけではなく、その経路にポイントとして作用する生物学的製剤の目覚しい乾癬への治療効果によって実際の臨床、治療効果がその理論を裏打ちして、証明するといった相互発展を遂げています。さらに、現在もなおその理論に沿った薬剤の開発が続いているホットトピックスともいえる状態です。
膿胞性乾癬に対する生物学的製剤の効果検討も進んでいますが、GPPは稀な疾患であり、重篤な疾患であるためにランダム化対照比較試験は難しく、個別な症例報告の効果によらざるをえません。
乾癬のTipDC-Th17細胞系の病因の経路とターゲットとなる生物学的製剤の作用ポイントを示した図を参考に示します。
GPPは病因論で述べたように細胞増殖に関するIL-1ファミリーのIL-36RNの欠損が関与する一群もあり、将来的にはその部分をターゲットにした治療戦略も検討されることも考えられますが、現時点での薬剤について述べます。

◆TNFα阻害薬
インフリキシマブ・・・米国のガイドラインでも第一選択薬となっています。本邦でも有効との症例報告もあります。ただ、インフリキシマブでは導入時にアナフィラキシー反応(infusion reaction)がみられることがあります。GPPでは心・循環系の不全を合併することがあり、同剤の使用によるinfusion reaction は特に注意が必要とされます。またTNFα薬によるパラドキシカルな副作用として新たな乾癬の発症、乾癬の悪化、・膿胞化の報告があります。
また長期使用によって高率に(20~30%で)中和抗体が出現するとされます。
米国では第2選択薬として、UVB光線療法と並んでアダリムマブ、エタネルセプトがあげられています。エタネルセプトは即効性は劣るものの中和抗体の出現頻度は少ないとされます。ただ、本邦では認可されていません。
妊婦への使用は他疾患などをみると、使用可能とされていますが、ドイツでは禁忌となっています。
小児への使用に関しては米国FDAはリンパ腫や他の悪性腫瘍の発生率が高いという警告を発しています。ただ、これは併用された免疫抑制剤のためとも考えられています。
◆ウステキヌマブ
英国では皮膚疾患以外の使用経験が少ないために、乾癬治療の第2選択薬に、米国、ドイツでは第1選択薬に位置づけられています。
膿胞性乾癬では有効であったとの報告とともに、逆に同剤の使用によって既存の膿胞性乾癬が悪化したとの報告もあります。従って他の治療薬が奏功しないケースに限って使うべきとされています。
◆セクキヌマブ
最近同剤は膿胞性乾癬にも効能追加承認されましたが、まだ新しい薬剤なので慎重に使用すべきとされています。
◆アレファセプト
T細胞と樹状細胞の相互作用を阻害するアレファセプト、エファリツマブが米国FDAによって乾癬に認可されましたが、エファリツマブは致命的な感染症のために販売中止となりました。アレファセプトは膿胞性乾癬にも有効と考えられますが、これらは投与中止によってリバウンドし膿胞性乾癬を誘発することも憂慮されます。なお本邦では認可されていません。

生物学的製剤(TNFα阻害薬)の妊婦への投与については、米国のガイドラインではシクロスポリン、副腎皮質ステロイド、外用薬と並んで第一選択薬に位置づけされていますが、ドイツでは妊婦にたいしては催奇形性の危惧から禁忌となっています。
インフリキシマブの使用に際してはinfusion reactionを避けるためにジフェンヒドラミン(レスタミン)の前投薬が行われますが、これは催奇形性があるために妊婦には禁忌であることも考慮する必要性があります。
インフリキシマブはIgG1クラスの免疫グロブリン製剤であり、妊娠初期には胎盤は通過しませんが、中期以降は胎盤の通過が亢進し、新生児にも6ヶ月にわたりインフリキシマブが血中に残るとされ、出生後6ヶ月は生ワクチンは避けるように指摘されています。
小児への使用については、有効性の報告はあるものの長期使用による続発性悪性腫瘍の発症のリスクを考えて、シクロスポリンや全身ステロイドが奏功せず、関節症状が重篤なケースなどに短期間使用に留めておくべきとされています。

生物学的製剤使用上の実際留意点
*生物学的製剤承認施設(日本皮膚科学会が認可)のみで導入ができる・・・大学病院、地域の基幹総合病院など。
*レミケードは2ヶ月に1回 5mg/kgの静注、ヒュミラは2週に1回、40mgの皮下注(自己注射も可能)、ステラーラは3ヶ月に1回、45mgの皮下注。
*レミケードは注射薬なので、注射時の反応(infusion reaction)などに注意が必要で、特に間隔を開けた後での再投与時は注意が必要で前投薬など必要。
*活動性結核患者など重症感染症患者、B型肝炎患者、うっ血性心不全患者、悪性腫瘍治療中の患者、脱髄疾患患者、などは使用禁忌
*副作用では結核などの感染症、薬剤によるアレルギー反応(多形滲出性紅斑、扁平苔癬、パラドキシカル皮疹など)
肝機能障害(併用される抗結核薬の影響も)
*治療費が高額。しかし現在では高額医療制度が導入され、保険者から認定証を入手すれば、自己限度額を超える分を窓口で支払う必要がなくなっている。 J Visual Dermatol 13:308-311,2014 根本 治 より

引用文献

照井 正 ほか:[日本皮膚科学会ガイドライン]膿胞性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版、日本皮膚科学会膿胞性乾癬
(汎発型)診療ガイドライン作成委員会, 日皮会誌:125(12),2211-2257,2015(平成27)

生物学的製剤による乾癬治療の工夫と注意点 責任編集 佐伯 秀久
Visual Dermatology Vol.13 No.3 2014

乾癬図  J VisualDermatol 13:230-234,2014 佐伯 秀久より

膿胞性乾癬(3)治療全般

日本皮膚科学会ガイドラインによる治療のアルゴリズムを示します。
膿胞性乾癬(汎発型)(GPP:generalized pustular psoriasis)を全身性炎症疾患ととらえて、1)急性期の心・循環器系、呼吸不全に対する全身管理 2)皮膚症状に対する治療 3)高頻度にみられる関節症状に対する治療
これら全身性炎症反応に対する急性期の治療の側面。
急性期を脱した後の、慢性期の長期的な治療計画、それには治療による副作用、QOL(Quality of Life)も考慮したもの、が呈示されています。
まず、それに即した治療の全般についてまとめてみます。
【急性期膿胞性乾癬の全身症状に対する治療】
GPPでの直接死因は心・循環不全が多いです。疾患そのものによる肺疾患(ARDS:acute respiratory distress syndrome/capillary leak症候群)や乾癬治療薬のメトトレキセート(MTX)やレチノイン酸(チガソン、アシトレチンなど)による肺合併症が稀に生じます。
MTXは肺線維症とともに肝不全も引き起こします。
これらの全身性の重篤な症状を乗り越えるには、原因薬剤の中止とともに副腎皮質ステロイド全身投与(プレドニゾロン換算1mg/Kg/day)が推奨されます。
また生物学的製剤のなかでTNFα阻害薬のインフリキシマブ(レミケード)の有効例の報告はありますが、逆にinfusion reactionによる悪化も懸念されます。
急性期の救命的な時期の治療はステロイドの全身投与が主役になっていますが、この薬剤は二律背反的な側面があります。
というのは、ステロイドの全身投与によって膿胞性乾癬を引き起こすことがわかっているからです。ステロイド剤はあくまで乾癬治療薬というよりも全身症状を改善する薬剤としての位置づけです。
ステロイド剤以外の薬剤では、全身症状の改善のために下記のものも使われますが、上記のように副作用もみられます。
【急性期膿胞性乾癬の治療】
乾癬そのもの、あるいは関節炎などの治療薬剤については下記のようなものがあります。
◆エトレチナート(チガゾン)
その催奇性のために先進国では唯一日本だけがいまだ認可、使用されています。海外ではほとんどの国で半減期のより短いアシトレチンが使用されています。
GPPに対しては、0.5~1.0mg/kg/日を使用します。有効性が高いですが、長期に亘ると肝障害、過骨症、骨端の早期閉鎖、催奇形性などの副作用に注意が必要です。また使用によって皮膚が薄くなり、ビタミンD3外用薬の吸収が高くなり、高カルシウム血症に注意が必要となります。
小児への使用は骨への副作用による成長障害も懸念されるために他の治療が使えない場合に限り使用されます。妊婦への使用は当然禁忌です。
◆シクロスポリン(ネオーラル)
GPPの第一選択薬の一つとして推奨されています。
通常2.5~5.0mg/kg/日(分2)で開始されます。長期使用によって高血圧、腎機能障害がでるために、これらの定期的なチェックが必要です。本邦では使用期間の規制はありませんが、イギリス、ドイツでは原則2年、アメリカでは1年間の使用期間が推奨されています。
小児にも使用可で、保険適応のある薬剤はシクロスポリンとエトレチナートのみですが、いずれも長期副作用に注意が必要です。
また長期使用によって皮膚の有棘細胞癌の発生率が高くなることがわかっています。副作用を避けるためにできる限り低用量で、短期間あるいは間歇投与が推奨されています。
妊婦に対しては禁忌薬剤となってはいますが、他に適当な薬剤が少ないことなどを考慮して、慎重に使用せざるを得ないこともあります。
◆メトトレキサート(MTX)
エトレチナートやシクロスポリンに治療抵抗性の例や関節炎の激しい例などに推奨されます。ただし、この薬剤は日本では乾癬に対して保険適応がまだないので慎重に、説明を十分にして使用する必要があります。
通常7.5mg/週1回(12時間毎に3回に分けて内服)します。
特に関節症状には有効です。肝障害、骨髄抑制、間質性肺炎、催奇形性などの副作用があります。口内炎、嘔気、嘔吐などの副作用は葉酸1~5mg/週の予防内服で軽減されます。ただし、その効果は減じる可能性があります。
小児では米国で若年性関節リウマチに使用承認されてはいますが、本邦での使用例は多くはありません。また妊婦では胎児への催奇形性があるため(メトトレキサート胎芽病)使用禁忌です。
長期内服による肝障害については関節リウマチ患者の解析で(3808例、平均内服量10.5mg/週、55.8ヶ月)、20.2%に肝酵素の上昇あり、12.9%の症例では正常の2倍以上、3.7%では肝毒性のために治療中止となっています。汎血球減少は1%前後と稀とされています。
◆ダプソン(レクチゾール)
第一選択薬ではありませんが、上記の薬剤が無効な場合は使用を考慮するとされています。保険適応はありません。好中球接着能、遊走能を阻害することによって抗炎症効果を発現すると考えられています。通常50~100mg/日(分2~3)使用します。
副作用として貧血、肝障害、腎障害などがあり、DDS症候群(薬剤性過敏症候群)など重篤な薬疹の報告もあり注意が必要です。
◆ステロイド内服
先に書きましたが、急性期での全身症状を改善する薬剤としての意義は高いですが、ステロイド剤によって膿胞化を引き起こすという、重大な副作用があります。したがって、GPPの治療薬としてはむしろ不適当です。しかし、他剤が効果がない場合や、妊婦に生じる疱疹状膿痂疹などのように禁忌薬剤が多く、他剤が使用できない場合は使用されます。ただし、この場合でも胎盤通過性の少ないプレドニゾロンを使うべきとされます。また使用に際してはステロイドのメジャーサイドエフェクト(主要副作用)の易感染性、消化性潰瘍、精神症状、糖尿病、血圧上昇、骨粗鬆症などに注意が必要です。
◆外用療法
GPPの急性期治療としては積極的に有効とはいいがたいとされています。ただ急性期を乗り切った皮膚症状対しては、維持療法、補助療法として使用されています。
*ステロイド外用剤
補助療法として日本でも海外でも使われていますが、強力かつ大量、長期のステロイド外用剤の中断によって膿疱性乾癬が誘発されることもあるので、その使用量、期間には十分注意する必要があります。
*活性型ビタミンD3外用剤
慢性期を脱した場合は補助的に用いられますが、これも膿疱性乾癬を誘発した報告があるので、注意しながら使用する必要があります。
◆光線療法
PUVA療法については、急性期はおおむね適応はないとの意見が多く、安定期に入ってからは有効との意見もあります。ただ、その光毒性による副作用、とりわけ慢性にわたると光老化、発癌性もあり、積極的には推奨されません。また妊婦には8-MOPは禁忌なので、PUVA療法は禁忌です。
近年はPUVA(長波長紫外線)療法に替わって中波長紫外線療法、narrow-band UVB療法が多く行われていますが、まだその歴史は浅く、効果の程度や光老化や光発癌に対しての長期的は影響はよくわかっていません。
第一選択というよりも、他の治療法との併用、補助としての位置づけのようです。

以上のような、従来の治療方法だけではなく、近年は乾癬治療薬として生物学的製剤や顆粒球単球吸着除去療法(GMA)などが脚光を浴びてきました。これらについては別項で取り上げてみたいと思います。

【関節症状への治療】
GPPでは合併する関節症状や虹彩炎などの眼合併症の治療が重要とされています。長期の炎症の結果血清アミロイドA(SAA)の上昇が続き二次性アミロイド―シスの原因ともなりうるとされています。
一般的に関節リウマチに準じた治療がなされています。
◆メトトレキサート(リウマトレックス)
週1回低用量(2.5~5mg)の試験投与から始めて、漸増し7.5~22.5mg/週まで増量します。関節炎に対してはシクロスポリンとほぼ同等の効果があるとされます。副作用では肺線維症は関節リウマチに比べて低く、一方肝線維症や肝硬変は乾癬のほうが高いとされます。以前はMTX蓄積使用量1.5gごとに肝生検が推奨されましたが、最近は肝炎などリスクのない人では総使用量が3.5g~4gに達した人では肝生検をするか他剤への変更を考慮するとされています。
◆生物学的製剤
TNFα阻害薬のインフリキシマブ(レミケード)、アダリムマブ(ヒュミラ)は関節症性乾癬に適応があり、有効です。エタネルセプト(エンブレル)は日本では適応がありません。
TNF阻害薬以外の生物学的製剤のウステキヌマブ(ステラーラ)は抗IL-12/23p40抗体ですが、2011年に関節症性乾癬に対し適応になりました。第一選択剤ではありませんし使用例は少ないですが、セカンドラインとして位置づけられています。
最近コセンティクス(ヒト型抗ヒトIL-17Aモノクローナル抗体)も膿胞性乾癬の適応の効能追加承認がなされました。まだ経験は浅い製剤ですが、期待の持たれる製剤です。
◆サラゾスルファピリジン(サラゾピリン)
2~3g/日で末梢の関節炎に軽度の効果を示します。
◆アザチオプリン(イムラン)
軽度の効果は期待できるとされます。
◆エトレチナート(チガソン)
軽度の関節炎症状に有効とされます。ただし、同剤によって過骨症や骨端の早期閉鎖などの骨への副作用があることも留意する必要性があります。
◆シクロスポリン(ネオーラル)
軽度の関節炎症状に有効とされています。NSAID内服と併用する場合に腎機能の悪化を増強する危険性があり特に注意が必要です。
◆副腎皮質ステロイド
罹患関節が少ない場合は関節内投与が有効です。激しい関節症状があり、他剤が奏功しない場合は使用されますが、同剤によって膿胞性乾癬が誘発されることなどを考慮すると安易には使用できません。
◆顆粒球単球吸着除去療法(GMA)
安全な治療として推奨されてはいますが、まだ経験が少ない治療法でさらなる検討が必要とされています。

引用文献

照井 正 ほか:[日本皮膚科学会ガイドライン]膿胞性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版、日本皮膚科学会膿胞性乾癬
(汎発型)診療ガイドライン作成委員会, 日皮会誌:125(12),2211-2257,2015(平成27)

八ヶ岳へは

先日の連休に八ヶ岳を目指しました。一年前と全く同じ気持ちです。折角の連休、寒がりで準備不足なのに山道具を車に積み込んでいました。歳のことも考えずに全く成長(反省)の色がみられないと妻もあきれ気味です。
日曜日の朝は快晴、道路も混んでおらず、快調な滑り出しでした。京葉道路から首都高、中央道と全く渋滞にも巻き込まれずに小淵沢まできました。昨年は4WDでしたが、今回は普通車で来たので昨年凍結していた八ヶ岳鉢巻道路は避けて、諏訪南インターから直上していけるところまでいこうと皮算用しました。
ところが今年は様子が変です。美濃戸に近づいてもいっこうに雪が現れません。とうとうチェーンなしで美濃戸口まで辿り着きました。なんと千葉から3時間一寸で着いてしまいました。
見上げると阿弥陀岳から続く南八つの稜線は黒々としていて、うっすらと雪をつけているだけです。今年は楽勝で頂上までいけるかと、幸先良くルンルン気分でした。
美濃戸から北沢への道も昨年は雪道だったのに、全く雪はありません。轍をたどって沢を越え、ややいくと左に下草のある車道がありました。何となく赤岳山荘へのショートカットのような気がして、大した疑問もなくそちらの道を辿りました。唐松などの枯れ木の道で木漏れ日も差込み気持ち良い道でした。まるで小春日和の晩秋の山を逍遥しているかのような快適な時間でした。ところがしばらくいくと車道は途切れていました。やはりなんとなく変でしたから普通ならば元来た道を戻るのが当たり前でしょうが、気持ちでは前に進んでいると思っています。目をこらすと上の方へ点々と赤布が続いて見えました。ああ、これはやはり山越えの冬道なのだ、と思い込みました。細い踏み跡を赤布を頼りに進みました。前方に山小屋らしいものが見えてきたときはやっと正規の道に合流できたかと思ったものでした。
しかし、何か様子が変です。熊よけの金網ネットが張り巡らされてあり、そこの金網を外して(勿論元にもどしておきましたが)、家屋に近づいてみるとそこは別荘地でした。
今にして思えば、このとき元来た道を引き返せば、まだ傷は浅く、その日のうちに赤岳鉱泉まで入ることもできたのでした。
でもその時は折角まともな道にでたのに、また道なき道を引き返して山越えするよりは道路を辿って元に戻れば、と安易に考えて別荘地を出口に向かって進みました。それが間違いの元でした。途中からスマホも使え、地図をみると、近くに美濃戸への道が平行して走っているように思われ進んだのですが、別荘地の裏手の細道を辿ると、いくつもの道が途中で途切れてしまっていました。それもそのはずで美濃戸への道との間には北沢からの沢が流れており、それを渡渉しなければ対岸に渡れないのでした。どこかに道があるのでは、と探しながら歩いているうちにどんどん下流のほうに下っていってしまいました。さすがにこの季節、狭いといっても冷たい沢を渡る気にはなれません。しまいにはゴルフ場を越えて右蓼科、左茅野との標識がある道にまで下っていってしまいました。大回りもいいところです。もう登山どころではありません。車道をひたすら美濃戸へと歩き続けました。晴れていた天気も次第に曇り空となり、おまけに冷たい風まででてきました。
ほとほと歩き疲れて美濃戸へと戻った時はもう午後の陽光もだいぶ傾いて翳ったころでした。
若い頃なら翌日日帰りで頂上往復も考えたかもしれませんが、もうその元気もありません。
疲れた身を引きずりながら車で帰路につきました。
とんだ一日でした。
それでも数日たって疲れもとれてくると硫黄岳からの本沢温泉や赤岳、横岳などの雪稜が恋しく思われてくるのでした。山バカは死ぬまで治らない(かもです。)

膿胞性乾癬(2)病因

1991年Marrakchiらはチュニジア人血族家系にみられた家族性汎発性膿胞性乾癬(familial generalized pustular psoriasis:FGPP) 患者の遺伝子解析からその原因遺伝子を解明しました。
9家系16人の患者さんの解析から染色体2q13-q14.1に存在するIL-1ファミリーの一つであるIL-36RN(IL-36受容体阻害因子遺伝子)に変異があることが発見されました。IL-36RNはIL-36と拮抗して表皮角化細胞、真皮樹状細胞などの上のIL-36受容体(IL-36R)と結合してその下流のシグナル伝達を抑制します。FGPPではIL-36RNの機能が欠損しているためにその抑制機能が正常に働きません。IL-1ファミリーは炎症惹起性のサイトカインです。その結果この経路の炎症を惹起するシグナルが持続して伝達され病像が形成されると考えられています。
それで彼らはこのFGPPをDITRA(deficiency of interleukin 36(thirty six) receptor antagonist)と呼ぶことを提唱しました。
日本人の患者さんについては名古屋大学の杉浦らが31例の遺伝子の変異解析を行いました。その結果、乾癬の症状が先行していない7例はすべてDITRAであることが解かりました。一方乾癬の症状を有したGPPでは20例中わずか2例のみにDITRAを認め、なおかつこの症例は乾癬感受性の遺伝子も有していました。
すなわち杉浦らの解析によればGPPのみで乾癬を伴わないものがDITRAであり、乾癬を伴うものは遺伝学的に異なる範疇に分類されることになります。
また海外の報告では、掌蹠膿胞症やHallopeau型稽留性肢端皮膚炎やAGEP(急性汎発性発疹性膿胞症)の一部でIL36RN遺伝子の変異が報告されているとのことです。
この遺伝子とは別に、表皮細胞特異的NFκB促進因子CARD14遺伝子の変異による幼児発症のGPPも報告されているそうです。
GPPの分類は今後もこの遺伝子変異を糸口として変わっていくかもしれません。
また治療に関しても、DITRAの類症ともいえるDIRA(deficiency of interleukin-1 receptor antagonist)がreconbinant IL-1 RN:kineret(anakinra)によって著効を呈することなどが解かり、DITRAについても希望をもてる新規治療と考えられます。
IL36RN遺伝子の変異箇所は人種によっても異なり、日本人ではc.28C>T(p.Arg10X)とc.115+6T>C(pArg10ArgfsX1)の2つの創始者変異にほぼ集約されているそうです。

一寸前までは、乾癬の中での膿胞性乾癬の位置づけや病因などはほとんど不明であったことを思うとまさにパラダイムシフトといえる感があります。
IL36RN遺伝子の検討はこれらの周辺疾患も含めてさらに重要になっていくだろうとのことです。

参考文献

Marrakchi S, et al.:Interleukin-36-receptor antagonist deficiency and generalized pustular psoriasis. N Engl J Med.2011;365:620-628.

杉浦一充:膿胞性乾癬の遺伝と多様な病型.臨床皮膚科 68(5増):15-19,2014.

照井 正 ほか:膿胞性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版.日皮会誌 125:2211-2257,2015.

GPP 臨床皮膚科 68(5増):15-19,2014.より

シグナル 臨床皮膚科 68(5増):15-19,2014.より

IL36RN 日皮会誌 125:2211-2257,2015.より

 

膿胞性乾癬(1)分類・臨床

近着の日本皮膚科学会雑誌に膿胞性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版 という記事がでていました。
膿胞性乾癬は乾癬の最重症型の病型です。長年その原因、乾癬の中ででの位置づけは不明でしたが、ごく最近遺伝子異常が発見されるなどパラダイムシフトともいえるほどの考えの変化がおきてきました。
それらのことも含め、内容をまとめてみました。

【定義・分類】
古典的には1910年にvon Zunbuschが報告した、乾癬の患者に発熱を伴って全身皮膚に潮紅を生じ、無菌性の膿胞が多発するようなケースを指します。
しかしながら、臨床、病理的に類似した種々の病態があり、その定義は成書によって異なっています。
日本皮膚科学会のガイドラインの定義では以下のようにまとめられています。
・発熱を伴い、全身の潮紅皮膚上に多発する無菌性の膿胞を生じる。
・病理組織学的にKogoj海綿状膿胞を特徴とする角層下膿胞がみられる。
・乾癬の先行する例としない例がある。
・粘膜症状や関節炎がしばしばみられる。
・稀に呼吸器不全、眼症状、二次性アミロイドーシスがみられる。
大きく4つの臨床型に分けられます。
1)von Zunbusch型、 acute generalized pustular psoriasis(GPP:急性汎発性膿胞性乾癬)
2)小児汎発性膿胞性乾癬
3)疱疹状膿痂疹
4)Hallopeau 稽留性肢端皮膚炎
但し、小児のcircinate annular formは含まない。
乾癬のステロイド剤などで一時的に膿胞化したものは含まない。
acute generalized exanthematous pustulosis(AGEP: 急性汎発性発疹性膿胞症)は除く。
角層下膿胞症は除く。
日本皮膚科学会の膿胞性乾癬の定義は「特定疾患(指定難病)としての膿胞性乾癬」としての厚生労働省研究班で提唱したものに準拠したもので、医療費の補助の側面があり、純粋な医学的な定義とは若干の違いがあります。
様々な分類方法がありますが、欧米では一般に以下のように分類されています。
汎発型
1)急性型(von Zunbusch)
2)疱疹状膿痂疹・・・妊娠、ホルモンなどの異常に伴ってGPPを生じたもの、乾癬の既往がない.
3)稽留性肢端皮膚炎の汎発化
4)小児の膿胞性乾癬
5)circinate annular form・・・再発性環状紅斑様乾癬
限局型
1)掌蹠膿胞症
2)Hallopeau稽留性肢端皮膚炎・・・手指あるいは足趾先端部分に無菌性膿疱や紅斑・落屑を生じる。手、足全体に広がったり時には全身に拡大し、汎発化することもある.
3)刺激外用薬などによる乾癬の膿胞化
日本では掌蹠膿胞症は膿胞性乾癬とは別疾患とする考え方が主流です。
【統計的事項】
膿胞性乾癬は乾癬患者全体のおおよそ1%程度とされます。
小児期、30歳台に多く見られます。(小児では女児が多いです。)
男女比は1:1.2で一般の乾癬の男女比が2:1であることからするとかなり異なっています。
医療費受給者数は2004年が1426人、2010年が1679人となっています。
発症年齢は男性が30歳台と50歳台に、女性が20-30歳台と50-60歳台に二峰性のピークがあります。
【病理組織】
角層下に大型の好中球を入れる膿疱がみられ、膿疱の辺縁部には多房性のKogoj海綿状膿疱(Kogoj’s spongiform pustule)がみられます。真皮上層は毛細血管の拡張があり、好中球、リンパ球からなる細胞浸潤がみられます。尋常性乾癬のような表皮肥厚はみられません。

【病因】
膿胞性乾癬の病因は長年不明でしたが、2011年にその一端が解明されました。チュニジア人の血族結婚の家系に生じた家族性GPPの研究からIL-36受容体阻害因子遺伝子の変異がその原因であることが解明されました。その詳細は次回に。

参考文献

照井 正 ほか:膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版.日皮会誌: 125(12),2211-2257.2015

皮疹環状 環状紅斑様乾癬、数年後には下図のようにGPPに移行しています.(この型は膿疱性乾癬の特殊型としての考えが一般的)

膿疱性乾癬3 同一人、数年後

膿疱性乾癬

膿疱性乾癬組織 Kogoj海綿状膿疱

乾癬 尋常性乾癬

乾癬病理 表皮の規則正しい肥厚、不全角化がみられます.真皮乳頭層の延長、毛細血管拡張と浮腫、炎症細胞浸潤がみられます.

年の初めに

明けましておめでとうございます。
丁度新年の初めに当ブログの総閲覧数が100万回を越えました。当初は一日十数人の訪問者数だったかと思います。それを思うといささか感慨深いものがあります。日々多くの皆様に訪問いただきありがとうございます。
ただ、前回の記事にも書きましたが、最近書くことの難しさも感じています。医療は生き物なので、100%の正解はないのかと思います。医師ごとに考えは違いますし、ここに書いたことに異論のある方もあるかと思います。これだけ多くの人に見ていただいて有難いと思いつつも、これはあくまで一つの参考意見としてみていただきたいと思います。責任逃れに聞こえるかもしれませんが、当ブログ記事については責任は負いかねます。
ともあれ、いろいろと知ろうとすればするほどに皮膚科の奥深さを感じます。興味の偏りはありますが、これからもこのブログに微力ながら思いを注いでいきたいと思います。
本年もよろしくお願いします。