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サットン母斑・メラノーマ関連白斑

◆サットン母斑
サットン(Sutton)母斑の頻度は全国262施設の白斑・白皮症患者統計では尋常性白斑(60%)、感染症原因白斑(11%)に続いて第3位(サットン母斑(8%))を占めています。サットン白斑は白ナマズに比べると少ないですが、 それでも決して稀ではない現象です。
サットン白斑は、先行する色素性母斑(ホクロ)を中心として、その周囲に楕円形に遠心性に拡がっていく白斑です。それで、halo nevus と呼ばれることもあります。
一方、サットン現象とは、メラノーマ(悪性黒色種)をはじめとして、良性の若年性黒色種、血管腫、老人性疣贅、繊維腫などの周囲に脱色素斑が生じる現象を指します。
幅広い年齢層に生じますが、10歳代に最も多くみられます。
原因としては、色素細胞や、色素細胞関連抗原に対する液性免疫、細胞性免疫の関与が想定され、またそれを裏付ける研究結果も報告されていますが、詳細は不明です。
躯幹、背部に好発しますが、顔、首に出現することもあるとされます。2~10mmのものが多いですが、稀には手掌大のものもあります。高率に尋常性白斑を合併します。
白斑は、当初は不完全脱色素斑ですが、次第に完全脱色素斑となり、最終的には中央の母斑も消失していくとされます。
そして母斑消失後は、徐々に色素も再生していくケースが多いとされます。
中心部の母斑を切除することによって、白斑の軽快、尋常性白斑への進展の抑制が期待されます。
◆黒色腫関連白斑
サットン現象の中で注意すべきは、悪性黒色腫に伴うものです。若年者は兎も角、中高年の”ホクロ”に白斑を伴った場合や白斑の形や色素の形が不整な場合はメラノーマも疑います。
またメラノーマの患者さんにはしばしば白斑がみられることがあり、黒色腫関連白斑と呼ばれます。
1)腫瘍の周辺部にできるもの、サットン現象といわれるものです。
2)原発巣や転移巣から離れた遠隔部に白斑がみられるもの。
メラノーマ細胞や正常色素細胞に対する免疫反応(細胞障害性T細胞の誘導、抗体の形成など)が白斑形成の病態と考えられています。
したがって、中高年に白斑がみられた場合には何処かにメラノーマ病変が潜んでいないか十分に確認しておく必要性があります。皮膚、特に手、足裏だけではなく、眼、口腔内、陰部粘膜にシミ様の色素斑がないか、消えてしまったホクロがないか、など問診、検診が勧められます。
白斑を伴ったメラノーマの予後については良悪諸説ありますが、多くは細胞障害性の免疫反応が起こっているのは予後良好のサインと考えられています。

参考文献

皮膚科臨床アセット 11 シミと白斑 最新診療ガイド
総編集◉古江増隆 専門編集◉市橋正光 中山書店 東京 2012

脱色素性母斑

小児の白斑でたまにみられるのが、脱色素性母斑です。うっかりすると尋常性白斑と見誤ることがあります。
これは先天性限局性の母斑ですので、その大きさは生涯不変です。
尋常性白斑とは以下の点で異なっていて鑑別できます。
ちなみに全国特定機能病院への調査では尋常性白斑が60%と最も多く、次いで感染症によるもの11%、サットン母斑8%、結節性硬化症7%、に次いで脱色素性母斑が6%を占めていました。
先天性の眼皮膚白皮症は2%です。

1)出生時ないし生後早期に出現する。
2)一生涯不変である。成長とともに正常化することもある。
3)罹患部位に知覚異常はない。
4)病変部の辺縁に色素増強はない。
5)完全な白斑ではなく、色調は少しくすんだ乳白色調の不完全脱色素斑である。
6)躯幹に発症することが多いが、顔面、頚部、上肢に生じることもある。
7)大きさは数cmから広範囲のものまであり、斑状、線状、帯状、渦巻き状など種々ある。時にBlaschko線に沿って出現することもある。
8)辺縁は鋸歯状を呈することが多い。
9)成長に伴って内部に色素性母斑や単純黒子が発生することがある。
10)多数存在する場合や、木の葉様白斑を呈するときは伊藤白斑や結節性硬化症も疑う。
11)ウッド灯(UVA)を照射することで、尋常性白斑と鑑別できる。尋常性白斑ではアイボリーホワイト、青白色の光を発するが、脱色素性母斑ではそれは見られない(off white)。

不完全脱色素斑である理由は尋常性白斑と異なって、基底層のメラノサイトは正常通り存在するからです。そしてメラノソームの大きさ、形や内部構造に著変はありません。しかしながらメラノソームは未熟なものが多く、メラノソームの数は減少しています。(一部の報告ではメラノサイトの数も減少しているとされます。)
メラノソームの合成の低下とケラチノサイトへのメラニンの受け渡しの障害がその病態と考えられています。

生下時には見られないこともあり、数年後に出現することもありますが、新生児の皮膚は比較的に白く、1年後徐々にメラニン色素量が増えてくるために目立ってくるためと考えられています。

特別な治療方法はありませんが、カモフラ―ジュ療法、植皮術、あるいはナローバンドなどの紫外線療法が行われることもあります。

参考文献

シミと白斑 最新診療ガイド 皮膚科臨床アセット 11
総編集◎古江増隆 専門編集◎市橋正光 中山書店 東京 2011

母斑と母斑症 皮膚科臨床アセット 15
総編集◎古江増隆 専門編集◎金田眞理 中山書店 東京 2013

小児の白斑

先天性の白斑と後天性の白斑がありますが、頻度では後天性の白斑が圧倒的に多数を占めます。
通常の外来でよくみられる(相談を受ける)白斑を中心に述べてみます。
【後天性白斑】
◆尋常性白斑・・・前に書いたので省略

◆顔面単純性粃糠疹・・・いわゆる”はたけ”のことです。学童期の頬や下顎に生じる直径3cm位までの境界が不明瞭な、表面に非常に細かい米糠ようの鱗屑を伴う不完全脱色素斑です。軽度の痒みを伴うこともあります。男児に多く、健常人の約1割にみられる程、日常よく見られる皮疹です。アトピー性皮膚炎の人に生じやすく多くは保湿剤のみで軽快します。あるいは放置してもいずれ(1年以内または思春期まで)に自然治癒します。ただ日焼けによって健常部との差が目立つこともあるので遮光は有用です。炎症後の色素脱失との説もありますが、詳細は不明です。

◆癜風・・・癜風菌(Malassezia 属(とくにM. globosa)による浅在性真菌症です。青年の躯幹上部に1-3cm程度の淡褐色斑または脱色素斑を生じますが、顔面、頚部に生じることもあります。表面に鱗屑を付けていて、メスで擦ると大量の粃糠様の鱗屑がとれ、癜風菌がみられます。色素異常の詳細は不明ですが、癜風菌由来の産物がチロシナーゼ活性に異常をもたらすためと考えられています。不完全色素脱失斑を呈します。

◆炎症後の白斑・・・様々な皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、乾癬、エリテマトーデス、感染症、薬剤など)で炎症がおさまったあとに色素沈着、色素脱失をきたすことがあります。熱傷のあとでもよく見られます。

◆Sutton母斑・・・別項で

◆Vogt-Koyanagi-Harada 病・・・別項で

【先天性白斑】

◆全身型・・・眼皮膚白皮症、Hermansky-Padlak syn. Chediak-Higashi syn. Griscelli syn. 前に書いたので省略

◆限局型・・・脱色素性母斑、まだら症、結節性硬化症、伊藤白斑、Waardenburg症候群、遺伝性対側色素異常症
これらは非常に稀な疾患ですが鑑別に重要なものもあり、後述

眼皮膚白皮症

眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism:OCA)はごくまれな先天性の白斑を生じる疾患です。「1989年、富田 靖らのグループ(東北大学)が世界で初めてチロシナーゼ遺伝子変異を同定し、新しいゲノム医学の幕開けのさきがけとなったことは、日本における皮膚科研究の金字塔であるといってよい」と書いてあります。
(眼皮膚白皮症診療ガイドライン 日皮会誌:124(10),1897-1911,2014(平成26)より)

眼皮膚白皮症は近年その病因、病態が遺伝子レベルで解明されてきましたが、細かすぎてよく解りません。
ただ、大まかに捉えると以下のようになるのではないでしょうか。
*白皮症は生まれつき頭髪を含め、色が白いので診断は容易。
*ただ、軽症の場合は明確でない時もある、その際は眼底所見が診断の決め手になる。
*眼、皮膚症状のみのケースとその他の全身症状を伴うケースがある。
*全身症状を伴うケース(症候型)ではHPSなどのように出血傾向、血小板機能異常を伴うことがある。
*さらに一部の症候型では銀白色の頭髪(silver gray hair)を伴うことが特徴である。これは毛髪のメラニンがわずかに存在していて、疎に分布していることによる。このケースではCHS,GSを考える。

簡略にまとめたつもりが、やっぱりわかりにくいですが・・・。(専門家でない者がまとめるのは難しい。)

富田らの発見、その後の遺伝子解析の目覚ましい進歩により一見して眼皮膚白皮症とわかる病態の裏には、チロシナーゼ遺伝子だけではなくさまざまな分子遺伝学的な生理が関与していることがわかってきました。その分OCAの分類は年々複雑になってきており、一部の専門家でもない限りその詳細は把握することが難しいほどです。ここではガイドラインに沿って分類分けをざっとみていきたいと思います。
◆定義・概念
出生時より皮膚、毛髪、眼の メラニン合成が低下あるいは消失することによって、全身の皮膚が白っぽく なり、虹彩が青~灰色調をおび、頭髪が白、銀色または茶褐色 調を呈します。視力低下、斜視、眼振などの眼症状を伴うことが多いです。常染色体劣性遺伝です。全身症状を伴わない型(非症候型)と、全身症状を伴う型(症候型)に大別されます。
極めて稀な疾患で、2009 年の調査で、特定機能病院の新患患者の約2%、約40~160人が毎年受診すると報告されています。発症頻度は人種差が大きく、アフリカ系黒人に多いと報告されています。
◆非症候型眼皮膚白皮症
メラノソーム内部でのメラニン合成過程の酵素異常によってメラニン合成ができなくなってしまう、 またはメラノソームの膜表面たんぱく質の異常によってチロシンの輸送が阻害されたり、内部のpH環境を保つことが阻害されたりしてメラニン合成ができなくなってしまうといったことが病因となります。メラノソーム限定の異常ですので、基本的には症候型のような全身症状は認められません。
遺伝子異常の違いによって現在は7型(OCA1~7)に分類されます。日本人ではOCA1型が最も多く約34%を占めています。次いでOCA4(27%),HPS1(10%),OCA2(8%)の順になります。
OCA1型はメラニン色素合成で最も中心的な役割を持っている律速酵素であるチロシナーゼ 遺伝子の欠損によって発症し全くメラニン色素を作らない最重症型です。この原因遺伝子は日本人学者によって世界で初めて発見されたことは先に述べました。皮膚はピンク色を示し、白毛、羞明、視力障害を生じ、眼振を伴います。
遺伝子変異の 場所、種類によっては黄色変異型、温度感受性型など部分的に色素を有するバリアントもあります。
近年はチロシナーゼ遺伝子以外の遺伝子変異でOCAの症状を呈する症例が次々に発見されています。最近はゲノムワイドの遺伝子検索によってさらに多くの関連遺伝子の発見が予想されます。
◆症候型眼皮膚白皮症
症候型は細胞質内部の膜輸送経路にかかわる分子の異常によって白皮症を発症します。これらの遺伝子は直接メラニン色素合成に関わっているわけではなく、細胞質の膜輸送経路で機能しているたんぱく質をコードしています。
メラニン色素以外の細胞の重要な機能が同時に障害されます。すなわち血小板機能、ライソソーム機能障害などです。関わる異常によっていくつかのグループに分類されます。
❖このタイプでの代表的な疾患がヘルマンスキー・パドラック症候群(Hermansky-Pudlak syndrome;HPS)です。色素脱失以外の症状の他に出血傾向、間質性肺炎、肉芽腫性大腸炎などがあります。白皮症が明確でないケースもあるために、40歳以上の特発性肺線維症、クローン病などではHPSも考えておくことが必要です。HPSでは血小板機能を抑制するような薬剤(非ステロイド系抗炎症剤;NSAIDs)の使用には注意が必要です。現在まで9種類の原因遺伝子が特定されています。
❖チェディアック・東症候群(Chediak-Higashi syndrome;CHS)
ライソソームの膜融合の調節に関与するとされる遺伝子LYST遺伝子(1q42.1-2)の異常によって生じる稀な疾患です。白血球の機能異常によって感染症に罹りやすく、部分的な白皮症、白血球内巨大顆粒、色素細胞内巨大メラノソームを特徴とします。日焼けを起こしやすく露光部では逆に色素沈着を示します。骨髄移植などを行わなければほとんどの患者が呼吸器の再発性細菌感染症で亡くなるとされます。
❖グリセリ症候群(Griscelli syndrome; GC)
臨床症状はCHSと同様ですが、白血球内巨大顆粒や色素細胞内の巨大メラノソームは認めません。原因遺伝子によって3型に分けられます。筋力低下、運動神経発達障害、精神発達障害などを認めます。

❖Silver hair syndrome
CHSとGSは極めて稀な疾患ですが、両者ともにsilver (gray) hairが特徴的です。すなわち銀白色の光沢のある毛髪を有しています。これは毛髪のメラニンが疎に分布しているために光の回折効果によって生じるとされます。露光部では日焼けを起こし易いためにむしろ光線過敏症と疑われることもあります。

◆生活指導
(1)紫外線防御・・・メラニン色素が少なくなっているために、眼の保護、光線過敏、光老化、光発癌への対応が必要です。サンスクリーンは個人の日焼けの程度に応じて使用します。頻繁に日焼けを起こさなければサンスクリーン剤を使用しながら屋外活動も許可します。サンスクリーンだけではなく、服装や帽子によって遮光する、10時―2時は屋外活動を避けるなどの注意も有効です。
(2)定期的な皮膚科受診・・・長年の日光照射によって日光(光線)角化症を発症し易くなります。これは皮膚癌へと進行していくリスクがあるためにシミ、いぼ状腫瘤、カサカサした斑点があるときは皮膚科専門医の診断を受け、皮膚癌の有無をチェックすることは重要です。
◆眼科的側面
白皮症の症状が眼に限局している型もあり、眼白皮症といいます。視力低下、眼振、羞明などがみられます。OCAの型によって眼科的な症状やその程度は異なってきます。
対応及び治療も程度で異なりますが、矯正眼鏡の装着、斜視、眼振に対する外科的手術、遮光眼鏡の装着などがなされます。
羞明予防のためにカラーコンタクトレンズの装着もなされています。

眼皮膚白皮症

尋常性白斑2016

尋常性白斑(白斑、白なまず)については過去に当ブログに書きました。(2012.4.6)。
おおよそのところは繰り返しになってしまいますが、新しい知見も含めて再度書いてみます。
◆名称について
2011年ボルドーのVGICC会議で従来尋常性白斑(vitiligo vulgaris)が白斑(vitiligo)と改変されました。尋常性という文言がやや差別的な不適切な響きを持つからのようです。脱色素斑全体の用語としてはleukoderma(白斑)がもちいられるようです。ただ、我が国ではvitiligoもleukodermaも白斑と訳されます。したがって、白ナマズを白斑と命名すると却って混乱を招きかねません。どのように落ち着くのか、決まるまで従来のように尋常性白斑としたほうが間違いがなさそうです。
◆臨床分類
汎発型、分節型に分けられます。以前は限局型もありましたが、これはいずれは汎発型か分節型に発展するために使われなくなりました。汎発型は全身あるいは左右対称性に発症し、自己免疫アレルギーの関与が多くに認められています。
一方分節型では神経支配領域に一致したかの如くに発症すること、またメラノサイトと神経突起との接触像がみられることなどから末梢神経異常によるとの考えかたが有力です。
VGICC分類では非分節型(nonsegmental vitiligo(NSV))、分節型(segmental vitiligo(SV))、分類不能型(undeteremined/unclassified vitiligo)に大別されました。
ケブネル現象は外力の刺激によって原疾患が生じる現象ですが、病歴によって疑われるものを1型、臨床症状を認めるものを2型、誘発されたものを3型と分類しています。
初期の発疹は不完全な脱色素斑(くすんだ白色)で始まりますが、いずれは境界明瞭な完全脱色素斑(真っ白)となり、逆に周辺部では色素増強を認めることが多くなります。
◆検査所見
特に汎発型ではメラノサイトをはじめ、甲状腺、副腎、胃壁細胞などに対する臓器特異性抗体がしばしば認められます。
液性免疫、細胞性免疫異常を示唆するばかりではなく、近年は自然免疫に関与するNALP1などの疾患感受性遺伝子異常も認められています。
欧米人では甲状腺疾患、関節リウマチ、I型糖尿病、乾癬、悪性貧血、全身性紅斑性狼瘡、アジソン病、クロ――ン病、潰瘍性大腸炎などの頻度が有意に高いことが報告されています。日本人でもその傾向はあり、特に甲状腺疾患、円形脱毛症との合併が多くみられます。
自己免疫異常はメラノサイトのみならず、病変部にCD4,CD8細胞が浸潤すること、種々の炎症性サイトカインが高発現していることなどからも推定されています。
◆疾患感受性遺伝子
ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS)やGWASメタ解析によって複数の疾患感受性遺伝子が同定されています。
1.メラノサイトの自己抗原呈示
TYR,OCA2,MC1R
2.局所の免疫応答
CCR6
3.
全身の免疫応答
獲得免疫HLA, IL2RA,FOXp1,FOXP2,FOXP3,TSLP,XBP1,CLNK,BACH2,SLA,CD44,IKZF4,SH2B3,TOB2
自然免疫 PTEN22,NALP1,IFIH1,CASP7,TICAM1
また欧米人での疫学解析によって尋常性白斑のひとは悪性黒色腫を発症しにくいことが明らかになりました。腫瘍免疫と自己免疫の関連を示唆するデータといえます。
◆その他の病因
上記の様々な自己免疫の関与を示唆する所見の他には、色素細胞はNOや酸化ストレスである過酸化水素に対して、非常に敏感であり、病変部ではこれらが増加しているとの」報告があります。また一方でカタラーゼ、ユビキノール、ビタミンEといった抗酸化物質が低下しているとの報告もなされています。また病変局所でEカドヘリンの発現が低下しメラノサイトの皮膚への接着が弱くなり、皮膚から脱落するとの報告もあります。
◆治療(ガイドラインより)
推奨度:A 行うよう強く勧められる
推奨度:B 行うよう勧められる
推奨度:C1 行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない
推奨度:C2 根拠がないので勧められない
推奨度:D 行わないよう勧められる(無効あるいは有害であるエビデンスあり)

1)ステロイド外用薬  推奨度:AないしB
推奨文:尋常性白斑の治療にステロイド外用薬は有効である。
体表面積20%以下の限局型において治療の第一選択肢となる。12歳以下ではクラス4(moderate)のステロイドを1日1回4ヵ月を目安とする。12歳以上ではクラス2か3(very strong or strong)を4~6ヵ月外用する。外用開始2カ月までに効果がみられなければ他の方法を選択する。汎発型にはステロイドの効果は20%以下で効きにくい。
したがって、限局型では推奨度A,汎発型では推奨度B。

2)活性型ビタミンD3外用薬 推奨度:C1-C2
推奨文:尋常性白斑に対してビタミンD3外用薬を単独では効果が弱く、PUVAやNB-UVB療法と併用することは行うことを考慮してもよい。
保険適用はないが、多くの施設で使用されている。露光部、非露光部での成績が異なること、報告によって評価に差があることなどエビデンスレベルは低いがPUVAやNB-UVBとの併用で有効との報告もあり、目立った副作用もないことからC1とする。

3)タクロリムス軟膏 推奨度:B
推奨文:治療効果が高い可能性があるが、長期安全性は不明であり、3~4ヵ月を目処に効果判定を行う。
本邦では70%以上の施設で使用されている。海外から1日1回ないし2回の外用で有効であり、さらに密封療法で効果が増強するとの報告があり、さらに紫外線との併用も検討されている。しかし、長期の観察例はなく、紫外線発癌を検討した例もない、本邦では紫外線併用は認めていない。

4)PUVA療法 推奨度:B
推奨文:尋常性白斑にPUVA療法は有用である。
1960年前後から試みられていた。1996年米国のガイドラインで同療法が推奨された。有効ではあるが、治療後の再発もかなりの率である。また光発癌などのリスクもある。ナローバンドUVB療法のほうが効果、再発率、副作用、施行の簡便性などの点からPUVA療法よりも有意に優れているとの報告が多く、これにとって替わられる傾向にある。

5)ナローバンドUVB照射療法 推奨度:B
推奨文:成人の尋常性白斑の患者に対する治療としてNb-UVBはPUVAよりも治療効果に優れ、保険適応もあり、紫外線療法の中で第1選択としてよい。
Nb-UVBは311±2nmの波長をもつUVB紫外線で1980年代からヨーロッパを中心に乾癬の治療に用いられ始めた。1990年代からは尋常性白斑へも応用されるようになった。PUVAに対する優位性の報告はあるが、一方部位による効果の差があり、躯幹、四肢に対して、手足などのの末端部での効果は劣る。2008年の英国のガイドラインでは、回数の上限をスキンタイプⅠ-Ⅲ(色白)では200回まで、Ⅳ以上では医師と相談の上さらに追加が可能としている。年齢については長期のエビデンスがないものの、小児については紫外線発癌に留意し、1年未満の照射や、200回未満の照射とする考えがある。本邦のガイドラインでは15歳以上を推奨としている。小児に対しては副作用についてのインフォームド・コンセントを得たうえで、施行することが望ましいとしている。

6)エキシマレーザー/ライト照射療法 推奨度:C1
推奨文:308nmエキシマレーザー/ライト治療器の特性を理解した上で、治療効果が期待できる皮疹に対して308nmエキシマレーザー/ライト治療を行ってもよい。
Nb-UVBとの比較において、エキシマレーザー/ライトの治療での色素再生は有意に優れていた。エキシマは紫外線を病変部のみに照射できるために正常部位への紫外線の影響を回避できるメリットもある。しかし一方で広範囲への照射は難しい。(照射口径を考えると労力が大変)
エキシマレーザー/ライトは高額であること、近年の導入であること、機器ごとに照射プロトコールが異なることなどより、厳密なRCT(randomized controlled trial,ランダム化比較試験)はまだない。客観的な治療効果の評価はこれからの研究による。よって推奨度はC1であるが、実際はNb-UVBより優る。

7)ステロイド内服 推奨度:C1
推奨文:進行性の尋常性白斑に対して行ってもよい。
進行性の症例のみに限定して、プレドニン(0.3mg/kg)2カ月、その後漸減5カ月で終了、ステロイドパルス(メチルプレドニゾロン8mg/kgx3days)などが行われるが、エビデンスの高い報告はない。

8)免疫抑制剤
現時点では評価に耐えられる報告はない。今後の研究報告に期待。

9)植皮・外科手術 推奨度:A-C1
推奨文:尋常性白斑に対する外科手術は1年以内に病勢の進行のない症例に対して、整容上問題となる部位のみに行われるべきである。
1960年代から試みられている。(1)分層植皮術 (2)表皮移植術 (3)ミニグラフト (4)培養技術を用いないメラノサイト懸濁液注入法 (5)培養技術を用いたメラノサイト含有表皮移植術/懸濁液注入法 がある。
皮膚移植術でも、吸引水疱蓋表皮移植、1mmトレパンを用いたミニグラフト、エキシマレーザーとの併用など様々な試みがなされているようです。表皮移植は分節型で有効であり、汎発型では移植後再び色素脱失がみられたり、採皮部にケブネル現象としての白斑の新生がみられたりすることがあるので、その適応には慎重であるべきとされます。培養技術を用いる治療は今後の研究課題といえます。

10)カモフラージュメイク療法 推奨度:C1
推奨文:尋常性白斑患者にQOL改善を目的として、白斑専用のカモフラージュ化粧品を用いて化粧指導(カモフラージュメイク)を行ってもよい。但し、尋常性白斑を治療する効果がないことおよび保険適応でないことに配慮が必要である。
種々の化粧品メーカーで肌質にあったメイク化粧品が発売されています。さらに水に濡れても落ちにくいようなスプレーを併用するなどの工夫をする報告もあります。顔面、手など目立つ部位の白斑では良い適応となりえます。

11)脱色療法 推奨度:C1
推奨文:成人の広範囲および治療に反応しない長期間経過した尋常性白斑患者にQOL改善を目的として、脱色療法を行ってもよい。
様々な治療を行っても改善せず、QOLが低下した場合はハイドロキノンモノベンジルエーテルによる脱色療法を考慮してもよい。
ただ、この方法は白斑の治療というより、残存した正常色素を脱色し、永久白斑を作ることになるので、十分なインフォームドコンセントを得ることが必要です。また皮膚の刺激感、接触皮膚炎などの副作用もあります。また逆に部分的な色素再生の可能性もありえます。本邦での保険適応はないために自家調剤もしくは輸入となります。
これらのことにより、本邦ではあまり施行されていません。

参考文献

尋常性白斑診療ガイドライン より
鈴木民夫 ほか 日皮会誌:122(7),1725-1740,2012 (平成24)

大磯 直毅 尋常性白斑研究と臨床的意義 日皮会誌:123(13),2494-2496,2013(平成25)

皮膚の色(3)

白斑、白皮症は先天性、後天性と多岐に亘り、皮膚科医でも専門領域の医師でもない限り、その全貌を把握するのは至難の業かと思われます。それにGWASなど遺伝子検索の飛躍的な進歩によって次々に新たな分類項目が増えていくといった状況のようです。
尋常性白斑診療ガイドラインの分類表を掲げてみました。あまりに細かく分かれていて、このようなブログに出す意味もないかもしれませんが、色が白くなったといってもこんなに多くの可能性があること、それでもやはり後天性の白斑の多くは、尋常性白斑(白ナマズ)であることをみていただければよいかと思います。
この尋常性白斑という名称すらも、敢えて”尋常性”と頭書をつける必要はなく、白斑とするという方向にあるようです。

白斑分類

白斑患者数

日本皮膚科学会尋常性白斑診療ガイドライン より

鈴木民夫 他 日皮会誌:122(7), 1725-1740, 2012