月別アーカイブ: 2017年3月

SJS/TEN型重症薬疹

重症薬疹には、SJS/TEN型薬疹以外にDIHS, AGEP アナフィラキシー型の薬疹があげられますが、最も代表的で生命を脅かし、生命予後の悪いものがSJSなかんずくTEN型薬疹といえます。
【発生頻度】
頻度は薬疹の中では極めて少ないですが、一旦発症するとやっかいです。欧米の統計では発生頻度は100万人あたり毎年1~6人のSJSが、0.4~1.2人のTENが発症しています。日本でもそれぞれ1.6,0.5例と欧米とほぼ同様です。転帰はSJSでは軽快85.4%,後遺症12.6%,死亡率2.0%ですが、TENになると軽快48.5%,後遺症33.7%,死亡率33.7%と非常に予後が悪いことがわかります。(北見 周、飯島正文)
【臨床症状】
両者とも発熱を伴って皮膚の紅斑、表皮の壊死に伴う水疱・びらんを広範囲に生じます。また眼粘膜、口唇、外陰部などの皮膚粘膜部では出血・血性痂皮・びらんなど重篤な粘膜病変を伴います。またTENではさらに重症となり広範囲な紅斑と全身の10%以上の水疱・びらん・表皮剥離をきたします。
(詳細は後述)。
【原因】
原因の多くは医薬品、とりわけ解熱鎮痛消炎薬、抗てんかん薬、催眠鎮静薬、抗生剤(セフェム系、テトラサイクリン系)などが上位を占めています。ただ単純ヘルペスウイルス、マイコプラズマなどのウイルス感染症が原因となる場合や原因が特定できないケースもあります。

SJS/TENについて2016年に診療ガイドラインが作成されました。それに則って概略を書いてみます。
【Stevens-Johnson症候群】
主要所見
1.皮膚粘膜移行部(眼、口唇、外陰部)に広範囲で重篤な粘膜病変がみられます。これは出血や血性痂皮を伴ったびらんが広くみられ、眼では偽膜形成や表面上皮の欠損を伴う結膜炎で、多形紅斑の場合は粘膜症状は軽度とされます。
2.皮膚の紅斑、発赤は全身性で、表皮のびらん・水疱も認めます。紅斑は隆起せずに典型的な多形紅斑のターゲット型を示さずに、中央が暗紅色のflat atypical targetsを示し、融合傾向があります。
3.発熱があります。
4.病理組織学的に表皮に全層性の壊死性変化を認めます。顕微鏡の200倍視野で10個以上の表皮壊死を確認することが確定診断に重要とされます。特にこれは多形紅斑との鑑別に重要とされています。
5.EEMとSJSは別個の疾患で、上記の臨床、特に病理組織所見によって両者は鑑別されます。ただし、鑑別の難しいケースや当初多形紅斑様であっても後にSJSに進展するケースもあるとのことで、十分に経過をみて判断する必要があります。
【中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis;TEN)】
主要所見
1.全身にわたる広範囲な紅斑がみられますが、それに加え体表面積の10%以上の水疱・びらんがみられます。
10~30%の範囲ではSJS/TENオーバーラップと診断されることもあります。紅斑はatypical targetsもしくはびまん性紅斑の形をとります。
2.発熱があります。
3.感染症や自己免疫性水疱症も似たような臨床症状を呈することがあるので、それらを否定することも重要です。
4.病理組織学的所見では全層性の表皮の壊死性変化を認めます。SJSの場合と同様に200倍視野で10個以上の表皮壊死を確認することが確診には重要とされます。

典型例では診断は明確ですが、中には非典型例もあります。TEN without spotといい、SJSのターゲット型紅斑をとらず、いきなりびまん性の紅斑からシート状に表皮剥離するケース、粘膜症状を欠くケース、固定薬疹から発展するケースなどもあるようです。
TENとの鑑別で最も重要なものはブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcal scalded-skin syndrome:SSSS)とトキシックショック症候群(toxic shock syndrome:TSS)です。これらは細菌感染症なので、治療法が真逆と言っていいほど異なります。臨床症状に加えて、血液所見、病理組織所見が鑑別になります。

参考文献

重症多形滲出性紅斑 スティーヴンス・ジョンソン症候群 中毒性表皮壊死症
診療ガイドライン 2016(簡易版) 重症多形滲出性紅斑ガイドライン作成委員会 編

皮膚科臨床アセット 2 薬疹診療のフロントライン 
総編集◎古江増隆 専門編集◎相原道子 東京 中山書店  2011

薬疹の診断と治療 アップデート 重症薬疹を中心に 塩原哲夫 編 医薬ジャーナル社 2016

皮膚科光線療法推進の会セミナー

今年も皮膚科光線療法推進の会主催セミナーがありました。第4回の今回は、乾癬、掌蹠膿疱症の光線療法についてのセミナーでした。4名の専門の先生方によるそれぞれ異なる紫外線照射器による治療報告がありました。
小林里美先生(聖母病院)は局所型TARNABを、新谷洋一先生( シンタニ皮フ科)は半身型ダブリン紫外線治療器を、橋本喜夫先生( JA旭川厚生病院)はターゲット型エキシマライトセラビームを、外川八栄先生( 千葉大学 )はターゲット型エキシマライトVTRAC紫外線照射器を使った治療報告をされました。
それぞれに治療に難渋する疾患ですが、さすが熟練の技を披瀝されました。当院でもダブリン型、VTRACを使用していますので興味深くとても参考になりました。ただなかなか上手く治療効果の上がらないケースも多く、一寸したコツ、選ぶ症例、やり方の巧拙などもあるのかと思いました。当日の講演内容からの要点を。
【光線療法の参考になる点】
🔷各機器の特性(2016.6月2日の記事を再掲)
*VTRACは輝度(照射率)の高いのが特徴で、光線の深達度が深い、短時間で照射できるなどの利点がある一方、周辺健常部への色素沈着が目立つ傾向がある。最大パワーは4500mJと通常ナローバンドUVB照射機の180倍の強さがある。
*ターナブは小型で取り回し易いが、照射に時間がかかる。
*セラビームはエキシマフィルターによって、紅斑の生じやすい短波長側をカットする光学フィルターを付属しているが、ヘッドが大きいために取り回しにくい傾向がある。最近、ハンディータイプのセラビームミニも発売された。
以上の様な点から爪の病変に対してはVTRACは効果が高く、他の機器では低い傾向にあります。但し明確な効果をみた臨床試験はまだないそうです。今後外用剤との比較試験が必要とのことです。
TARNAB,セラビームは紅斑反応をカットするフィルターを備えているために、余計な紅斑、色素沈着反応がでにくいようです。ただ紅斑反応が出にくいために強く当てすぎて光ケブネル現象を起こすことがないように注意が必要です。
🔷光線療法の効果は体幹部とりわけ背部から現れ、最後まで残るのが下肢です。全身型のナローバンドUVBで治療し、残った部分をターゲット型エキシマライトで治療するやり方も一歩進んだテクニックです。
🔷照射回数は、入院の場合は週4,5回でも可能ですが、外来では週1,2回が現実的です。講演の先生方も大方そのようにされていました。照射エネルギーは機器の種類によっても、照射部位によっても異なります。厳密にはまず初めにMED(最少紅斑量)を測定し、その7割程度から開始し、反応の程度を見ながら10~20%ずつ増量していきます。(尋常性白斑ガイドライン)。ただそれぞれの機器に習熟した先生が適量から漸増していくのが良いようです。照射量は個人個人で異なり、また皮膚の状態によっても異なりますが、掌蹠膿疱症ではセラビームだと800~900mJでも良いケースもあります。
🔷掌蹠膿疱症に対しては、まず病巣感染や自己免疫性甲状腺炎などの原因検索と治療が前提として重要です。その先での光線療法は全身性の副作用を伴わず有効です。ただ強力なステロイド剤外用剤で薄くなった皮膚では光線療法は余計ヒリヒリしたり火傷することもありうるので、そういった場合はむしろ弱いステロイド剤やワセリン、亜鉛華軟膏などでラップ療法を行なって皮膚萎縮の回復を待ってから照射するのも一法です。
膿疱にはステロイド剤よりもむしろビタミンD3製剤がよく、針で潰してその部分だけ外用するのが良いです。
🔷小児に対しての使用ガイドラインは乾癬、白斑により、10歳、16歳以上が推奨されていますが、年齢による明確な使用ガイドラインは今後の課題です。白斑や掌蹠膿疱症に対し、小児に使用する先生もありますが、光発ガンなどのリスクを十分に説明した上で期間限定で使用するのが妥当と話されていました。
🔷副作用
急性期では火傷、光ケブネル現象などによる病状の悪化などがあり、慢性期では光発ガンがあります。そのために回数が450回、トータルの照射量が1000ジュールまでとされています。ただし、これはPUVA療法から類推されるもので、ナローバンドUVBでは使用経験年数がそれ程長くないので、今後の検討課題といえます。
長年光線療法を行なった患者さんに免疫抑制剤などの治療を行なった場合などは発癌に格段の注意が必要です。
紫外線療法では汗孔角化症が生じることもあることを知っておくことは重要です。その際には早めに中止することが必要です。
【深紫外線LEDの開発】
今回の講演では第1部で理化学研究所の平山秀樹先生の「深紫外線LEDの開発」という講演がありました。
基礎研究の話で難しく、ごく一部しか理解できませんでしたが、先年日本人がノーベル賞をとったあのLEDの研究の部類といえば皆なんとなくピンとくるかもしれません。
ただし、波長が200~350nmの深紫外線LEDの開発の話でした。殺菌、浄水、空気清浄、LED照明、樹脂加工、印刷、塗装、接着、環境破壊物質の高速分解処置などの幅広い応用分野に期待されているそうです。話はもっぱらUVC領域でしたが、UVB領域の皮膚治療などの医療分野でも今後期待できるとのことでした。
実用化できれば、省エネルギー、小型化、劣化しない、自由に波長を選択できる夢の機器ができるそうです。
もっとも凄いと思ったのが、アメリカとの開発競争の話でした。向こうは軍事産業を見据えて、国の補助金が日本より2桁多いそうです。それをはね返して、世界一の発光効率を叩き出しているのが、理研の窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)半導体をベースとした高効率・高出力・深紫外線LEDだそうです。
日進月歩で発光効率が上昇しつつあり、将来は水銀ランプに置き換わる勢いのようです。
日本のこの分野の素晴らしさを垣間見ることができ、一寸興奮しました。皮膚科の分野でもこのLEDの機器が導入される期待感を抱かせる話でした。

冬の谷川岳

最近家人にせっつかれて、古いアルバムの整理をはじめました。断捨離ではないけれど、ごたごたと溜まった本や山の道具やアルバムなどは、自分でも何とか整理しなくては、とは思っていました。それで古いアルバムの整理、処分を始めていたら古い山の写真に若い頃の思い出が蘇ってきました。
冬の谷川岳、思い返せば青春のごく一時期のことでしたが、憑かれたように通っていたことがありました。とりわけ冬の一の倉沢は魔の山谷川岳の代名詞のようなところですが、なぜか心惹かれるところでした。
多くは天候の模様眺めで、一の倉沢出合いから引き返したものでした。雪洞を掘って寝ていたら、次第に天井が下がってきて逃げ帰ったこともありました。雪崩の巣である一の倉沢に突っ込んでいくのは一寸勇気が要りました。どういう判断で入ったのか、今は良く思い出せません。先輩の後についていっただけかもしれませんし、厳密な天気読みはしていなかったように思います。ただ雪の落ち着いている時、夜明け前に一の倉尾根からテールリッジに取り付いて、雪崩の危険地帯からのがれるようにしていたようです(ほんの数回のことですが)。
色褪せた写真をみていたら、途切れ途切れながら当時の事が蘇ってきました。腰までのラッセル、吹雪の中でのビバーク、かじかんだ手、凍った手袋を岩に叩きつけながらの登攀、針金のように凍って硬くなったザイルに難渋した事などが思い出されます。
昔の日記から
「壁に取り付けばもうこっちのものだと思っていたが甘かった。雪と氷にまとわれた中央稜は意外に厳しくピッチはあがらない。その上にかじかんだ手、凍った手袋、アイゼンに重荷、着ぶくれときている。夏とは段違いのきつさだ。Ⅱ級、Ⅲ級といった表示のピッチグレードが最低Ⅳ級に感じられる。ビレーしている間にも寒さのためか眠気が襲ってくる。・・・」
「下降と決まった時の二人のほっとした顔。本谷の雪崩は怖いがニノ沢の奴だけ気をつければよいーーといってどうしようもないのだがーー五体満足に帰れると思ったのはこの時だったろう。・・・」
また別の日記では。
「南稜から一ノ倉尾根までの雪壁は約40m 6Pで終了。五ルンゼの直登も結構難しい。その先でビバーク。翌日はうって変わって吹雪。立って歩けず、四つん這いでやっとピークへ。4人でかたい握手。S先頭で稜線をいくがルートは判らず。偶然肩の小屋前にでる。この後もリングワンデリングしながら、西黒尾根を目指すも判らず。天神尾根を降る・・・」
最近懐かしさもあって谷川岳のことを調べていたら、「大氷壁に挑む 谷川岳・一ノ倉沢」というDVDがあり、買ってみました。
氷壁のスペシャリスト廣川健太郎氏がその仲間と2010年冬の一ノ倉沢滝沢第三スラブを登った際のドキュメンタリーでした。あの当時では第三スラブ、通称「三スラ」は伝説のクライマー森田勝が冬季初登攀を成し遂げた超難関ルートとして有名でした、というより、あんな雪崩の巣を登るなんて尋常な人のやることではないと思われていました。
その後、いろいろな人が登るようになり、ルートの情報も増えたのでしょうが、やはり危険と隣り合わせな険悪なルートであることに変わりはないでしょう。ビデオで間近にルートを見せてもらい、雪崩やシャワースノウをかいくぐりながらの氷壁の登攀は圧巻で、とても常人の近づける場所ではないと思いました。これをみたら自分らのやっていたことはほんのママゴト程度のことのように思われました。しかしながら一ノ倉沢に入っていく時の緊張感、臨場感は相通じるものを感じました。
一ノ倉沢には多くの岳人が眠っています。中には今野和義や吉尾 弘といった日本を代表するようなトップクライマーもいます。「近くて良い山」ながら一方で悪絶でいったん牙をむくと手が付けられないほどの魔の山に変身します。そこがまた海外を目指すような岳人を魅了するのでしょう。

学生から社会人になってからは、さすがに岩から遠ざかりました。それでも時に谷川岳の冬の稜線歩きもやっていました。それもいつの間にか遠のいていきました。
もう、冬は一ノ倉沢の出合いまでも行くことはありますまい。古い写真を一部残して、あとは記憶の片隅に留めながらフェードアウトしていくでしょう。

これを機会に古いアルバムとDVDで一寸蘇った若き日の谷川岳のことを書いてみました。

一ノ倉沢出合い、正面に衝立岩、向かって右にコップ状岩壁、左に滝沢を望む

中央稜基部

南稜

南稜最終ピッチ

南稜上部

乾癬治療薬オテズラ発売

新規乾癬治療薬PDE4阻害剤オテズラ(Apremilast; Otezla)については、以前当ブログでも紹介しました(2016.9.22)。それがいよいよ3月1日発売されます。
それに先立って発売直前の乾癬のフォーラムが開催されました。その時の情報をお伝えしたいと思います。
まず国内臨床試験結果を自治医科大学の大槻マミ太郎先生が、海外の乾癬治療をTufts大学のMichael Sobell先生が解説されました。最後にエキスパートの先生方によるパネルディスカッションがありました。
内容は繰り返しになるところも多いですが、かいつまんでそのさわりを。
◆国内臨床試験結果
❖実は経口PDE阻害剤は1,3,4,5、非選択的とあり、すでに発売され使用されています。PDE3;シロスタゾール、PDE5; ED、非選択的;テオフィリン、 しかしながらPDE4阻害剤はオテズラが国内初めてです。
❖オテズラの作用機序は、以下のように考えられています。
PDE4はcAMPを不活性型のAMPに分解する酵素で、免疫細胞内のシグナル伝達を調節しています。
乾癬では病巣でPDE4が過剰に発現しており、細胞内CAMPの低下によって各種炎症性サイトカインの産生が亢進しています(TNF-α、IL-23、IL-17、IFN-γなどの炎症性サイトカインの発現増加、IL-10などの抗炎症性サイトカインの減少)。
オテズラによって、PDE4は阻害され、細胞内のcAMP濃度を上昇させます。その結果として上記の炎症性サイトカインの産生を抑制し、逆にIL-10などは上昇させ、乾癬の炎症反応を抑制し、乾癬の症状を軽減するとされています。
❖試験結果
254例の中等度~重症の乾癬患者の治験が行われました。16週後の時点ではプラシーボ群には改善はなく、オテズラ20㎎、30㎎群ではPASI75を達成した率はそれぞれ23.5%、28.2%(海外では33.1%)でした。近年の目覚ましい改善率を有する生物学的製剤には及びませんが、従来の内服製剤を考えるとなかなかの改善率です。
興味深いのはPASI20以上の重症例でも有効な例があることです。爪乾癬への効果も見られましたが、統計学的な有意差はでていません。またこの薬剤の特徴は早期から痒みが改善することです。
❖有害事象
下痢や腹部不快感が容量依存性に10%以上でみられました(20㎎<30㎎ 14.7%)。それを軽減するためにスターターパックという薬剤の包装キットが準備されており、2週間かけて徐々に増量し慣らしていくようにされています。
また上気道炎などの感染症もみられましたが、重篤なものはみられませんでした。
また軽度の体重減少がみられますが、その原因、機序は明らかではありません。
❖オテズラ薬価
 10㎎/日  324.20円
 20㎎/日  648.40
 30㎎/日  972.60
 30㎎/月  17506.8円(3割負担)・・・シクロスポリン250㎎とほぼ同等の値段
国内の薬価は海外と比較して、最低値に設定されたそうです。
◆海外の乾癬治療
ESTEEM 1,2 study という臨床試験があり、10週でPASI75達成率が28.8%、33.1%でした。またPASI50達成率は58.8%ありました。
痒みに対しては2週後には、効果が現れ、その効果は32週まで持続していました。爪乾癬に対しては16週でも効果は現れましたが、32週では爪の伸長に伴ってもっと明らかになりました。統計的には鬱の発生は高くありませんが、元々その傾向のある人では注意が必要です。もし現れるとすれば、早期です。この薬剤は使用を中止すれば、徐々に皮疹は悪化しますが、リバウンドはなく、再開すればまた以前の効果は期待できます。
オテズラの良い適応は以下のような人です。・痒みの強い人 ・注射より内服を好む人 ・頭部、爪、手に皮疹のある人 ・バイオ(生物学的製剤)の効かない人 ・関節症状が中等度にある人 などです。
副作用では下痢が問題になりますが、これは小腸でのクロライドチャンネルが活性化され、水和が生じ脱水に至ると考えられています。これを避けるには少量、頻回の食事、カフェイン、人工甘味料を避けるなどの食生活を励行することが有用です。
◆パネルディスカッション
❖今後の乾癬治療の変化
・中等症の乾癬にはオテズラが第1選択になっていくのではないか。
・爪、頭部の乾癬、針恐怖症の人、チガソンが効かない人、癌の既往などでシクロスポリン、バイオの使えない人などは良い適応となりそう。但し、癌の既往のある人への使用は慎重にすべき。
・爪にはそこそこ効くが、それ程効かない印象。
・この薬剤が炎症性性サイトカインやIL-10(抗炎症性サイトカイン)などに作用する点は気になる。
・効果、安全性を総合的にみるとかなり有用性の高い薬剤。
・効果に差があり重症例でも効く例があるが、それをあらかじめ予想することは困難、指標はない。
・シクロスポリンは最長2年のしばりがある。CyAからオテズラへの変更、切替は世界の流れである。
・どのように切り替えていくかの、ガイドラインはないがオーバーラップしながら徐々に切替ていく方向。
・併用療法については、外用、ナローバンドUVBとの併用は問題ないが、MTX,免疫抑制剤との併用は問題があるかもしれず、これからの課題。
・オテズラは診療所レベルでも使えるが、乾癬自体が全身性の疾患で、腎機能、感染症などを考慮すると、病診連携、あるいは内科クリニックなどとの診診連携が必要となってくるかもしれない。
・関節症性乾癬に対しては3関節より少ないもの、早期、軽症のものは同剤が第一選択肢となっていくであろう。但し、体軸関節炎、進行性のものはバイオの適応。
・一番問題になりそうな消化器症状についても、事前に良く説明して、スターターキットを用い、上記のSobell先生のいわれた注意点を励行すれば、薬剤の助けなしでも使用は続行できるのではないか。
・定期的な検査は必須とはされていないが、腎機能などのチェックは必要であろう。また事前にB型肝炎などがないかの、抗体価検査も必要ではなかろうか。

以上のような講演内容で、久しぶりにクリニックレベルで使用可能な乾癬の薬剤が登場し、多くの乾癬患者さんにとって朗報となるような予感のしたことでした。
オテズラは中等度からバイオを使わない(使えない)重症の乾癬患者さんにとって期待できる薬剤と感じました。重篤な副作用がなく、広く使えそうですが、注意事項は、あえて付け足すとすれば。
妊娠している人は禁忌。腎機能の低下している人はクレアチニンクレアランス値によって、投与間隔を開け、量を減らす必要があること。鬱の発生率は高くはないが、その傾向のある人は十分観察し注意して使うこと。免疫抑制剤ではないが、抗炎症サイトカインにも作用するので感染症にも注意を払うこと。オテズラはCYP3A4で代謝されるために誘導剤(リファンピシン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、フェニトインなど)と併用するとオテズラの血中濃度が下がり、効果も減ずること。などです。