月別アーカイブ: 2018年7月

日光皮膚炎

日光皮膚炎などとあえて疾患名を書くよりも、日焼けといえばそれで事足ります。
あまりにも日常茶飯事の事柄であえてブログに書くまでもないかもしれません。
しかしながら結構皮膚科の中では重要な項目でしかも奥の深い病態を内包しています。
太陽光線は、紫外線、可視光線、赤外線からなる連続スペクトル光線です。紫外線には短波長、中波長、長波長紫外線がありますが、人体に有害な短波長紫外線(C域UV,190~290nm) はオゾン層によって吸収され、地表には届かずおよそ300nm以上の中波長紫外線からより長い波長の光線が届いています。
(ただし、フロンガスなどで人為的にオゾン層が破壊されるとより危険な紫外線が地表に降り注ぐ危険性も指摘されています。)
日焼け(急性日光皮膚炎)は主に中波長紫外線、UVB(ultraviolet B, sunburn band,erythemal band、B域UV, 290~320nm)によって生じます。日光に当たった後、数時間後から赤み(紅斑)が始まり、12~24時間後にピークに達します。眼で確認できる最小の照射量を最少紅斑量(minimal erythema dose:MED)と呼びますが、真夏の伊豆では腹部でおよそ20分程度とのことです。(無論スキンタイプ、身体部位によって異なってきます。)
スキンタイプはFitzpatrickによりtypeⅠ〜Ⅵ(日焼し易い型〜し難い型)に分けられていますが、我々日本人の分類には不向きです。
日本人では佐藤によるJapanese skin type(JST1~3)がよく用いられます。紫外線高過敏型、中間型、低過敏型に分類されます。
一方長波長紫外線(UVA: ultraviolet A、320~400nm)は一般に紅斑は生じませんが、大量に照射すると紅斑を生じるとされます。また PUVA療法や薬剤性光線過敏症ではUVAが作用波長となりますので注意が必要です。
そしてUVAは窓ガラス越しでも通過するので車の運転中でも浴びることになります。
軽い日焼けならば、そのまま放置しても数日で軽快しますが、長時間日光に当たり激しい日焼けになると、紅斑、浮腫、水疱を生じ疼痛を伴います。広範囲に及ぶと発熱、悪心などの全身症状も伴うこともあります。
こうなると熱傷と同様の病態を取ります。
日焼け(sunburn)のあとはサンタン(suntan)炎症後色素沈着をきたしますが、これもUVBの作用によるとされます。強い日焼けをすると、1−3ヶ月後に両肩から上背部にかけて金米糖状、花弁状の褐色の色素斑を残します。これを光線性花弁状色素斑と呼びます。
慢性的に太陽光線を浴び続けていると肌の光老化が起きてきます。これにはUVAが大きな影響を及ぼします。紫外線は波長が長くなるほど、皮膚の深部にまで到達します。UVBは主に表皮内まで透過しますが、UVAは真皮まで透過します。真皮には膠原線維(コラーゲン)や弾性線維(エラスチン)が張り巡らされていて、肌はピンと張り、弾力が保たれていますが、UVAや近赤外線を浴び続けるとこれらが変性し、お肌の張りがなくなりシワ、タルミを生じてきます。これを光老化といいます。
さらに進むと光発がんの可能性も高くなってきます。日光角化症、有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色種などのリスクも出てきます。
【特殊なケース】
一般的な日焼けの他に、日焼けサロンなどでの人工的な日焼けのケースもあります。またPUVA療法など光線治療を受けていて、なおかつ太陽に当たったケース、薬剤性に光接触皮膚炎を起こしたケース(モーラステープなど)、降圧剤などを服用していて光線過敏性皮膚炎を生じたケースなどもあります。
その他の光線過敏症は当ブログに順次挙げています。太陽に当たった後どうも様子が変な場合は皮膚科受診することが肝要かと思います。
【治療】
軽度の日焼けであれば放置していても数日で軽快します。
高度な日焼けで紅斑・浮腫・水疱などを生じ痛みが強ければ氷水などで冷却します。治療は熱傷に準じます。アズノール軟膏やステロイド外用剤の塗布を行います。触ることすらできないほどの痛みの場合は一時的にはステロイドのスプレー剤の噴霧やローション剤が使いよいです。水疱、びらんとなった場合ではトレックスガーゼやポリウレタンなどの創傷被覆剤も使用し、湿潤環境を維持します。痛みには消炎鎮痛剤を内服します。早晩乾燥し、強いかゆみを訴えることが多いので抗ヒスタミン剤、保湿剤などを使用します。二次感染には十分注意が必要です。
【紫外線予防】
*当たり前のことですが、過度の紫外線に当たらないようにすることが大前提です。特に10-14時は紫外線が強いのでこの時間帯の太陽光線は避けることが大切です。
*戸外でも木立などなるべく日陰を利用することは日射病、熱射病の予防にも繋がります。
*日傘、帽子、襟のついた衣服で覆うこと、キャディーさんの衣服、格好が良い参考になります。
*眼の保護も必要です。特に日差しの強い海や山などでは必須です。
*日焼け止め、サンスクリーン剤を上手に使用することが大切です。
【日焼け止めの使い方】
先に述べましたように、主な日焼けの作用波長はUVBです。しかしながらお肌の老化防止にはUVAもしっかりカバーする日焼け止めが必要です。
UVBに対する日焼け防止の程度を表示する指標にSPF(sun protection factor)があります。これは例えば日光で15分で赤くなる人が日焼け止めを塗って150分まで赤くならない場合は10倍赤くなるのを延ばせたということでSPF10と表示されます。しかしこれは普段一般に使用される量よりもかなり多い厚塗りでの評価です。
この表示通りの効果を期待するには、顔にパール1個分のクリームを取り、数カ所に分散して満遍なく伸ばし塗ります。さらにパール1個分を同様に重ね塗りします。髪の生え際、うなじ、耳や目や鼻の周りなどは塗り忘れし易い部分です。
しっかり塗ったとしても汗をかいたり、こすれ取れたり、水に浸かったりすると効果はなくなってしまいます。こういった場合には2、3時間おきに付け直す必要性があります。
SPFは15~50+のものまでありますが、通常は15程度で十分です。海山などあるいは光線過敏症の患者さんではもっと数値の高いものを使うこともありますが、逆に紫外線吸収剤などによる光かぶれ(接触皮膚炎)のケースもあり注意を要します。
UVAに対してはPA(protection grade of UVA)という表示がなされます。こちらの方はPA+から++++までのものがありますが、通常は+ないし++でも十分かと思われます。
日本臨床皮膚科医会では「保育所・幼稚園での集団生活における紫外線対策に関する統一見解」をホームページ上に掲載していて、プールでも耐水性またはウォータープルーフのサンスクリーン剤を使うことを推奨しています。

参考文献

光線過敏症 改訂 第3版 監修 佐藤吉昭 編集 市橋正光 堀尾 武 東京: 金原出版;2002

錦織千佳子 日光皮膚炎. 皮膚科診療カラーアトラス体系7 編集/鈴木啓之・神崎 保 東京:講談社;2011.pp94-95

日光じんま疹と多形日光疹

平成29年度日本皮膚科学会研修講習会の講演をベースにまとめてみました。講師は関西医大の岡本先生でした。
  
日光蕁麻疹  関西医科大学  岡本 祐之
【日光蕁麻疹】
日光蕁麻疹は比較的稀れなタイプの蕁麻疹であり、日光照射後に露光皮膚に限局して紅斑・膨疹を生じますが、数時間で消退します。数分から数十分後に生じますが、ピークは30分前後が多いとされます。ごく稀には頭痛、めまいや吐き気などの全身症状を伴い、アナフィラキシー症状を呈した例の報告もあります。
小児から高齢者まで幅広い層にみられますが、女性の例が多く青年層に好発します。
発症の季節はやはり紫外線が強くなる春から夏が多数を占めていますが、夏季になるとhardeningといって光線に耐性がでてくる例もあるようです。
原因となる光線の作用波長は紫外線から可視光線まで様々ですが、日本では可視光線のみ、あるいは紫外線を含んだ可視光線領域が多くみられます。ただ、ヨーロッパ、北欧ではやや紫外線領域での発症が多い傾向があるそうです。
大部分の患者さんで、血清中に原因となる物質が存在し、作用波長の光線をin vitro(試験管内)で照射して、その血清を皮内注射すると蕁麻疹(即時型陽性反応)を生じます。それでIgE抗体依存性のⅠ型アレルギーと考えられています。ただその物質が何かは分かっていません。また症例によって作用波長が異なることより、抗原も単一ではないと推測されます。
患者さんによっては、蕁麻疹の発症を抑制する抑制波長や、逆に皮疹を増強させる増強波長を伴っていることもあります。
抑制波長は作用波長よりも長い波長のことが多く、そういった患者さんでは日光に当たっているときには蕁麻疹は出現せず、むしろ日陰に入ってからでることがあるそうです。
特殊な型の日光蕁麻疹として、日光に当たって数時間してからでるタイプの遅発型、特定の部位にだけでる固定型、眼瞼や口囲に血管浮腫がでる型、クロルプロマジンやテトラサイクリンなど薬剤が誘発因子となってでる型などがあります。
治療は他の蕁麻疹と同様に抗ヒスタミン剤が使用されますが、効果は今一つのようです。薬剤使用の前提として遮光、サンスクリーン剤の使用は重要です。
これらでなかなか改善しない例では徐々に光線を当て続けて耐性(hardening)を付けていく方法が奏功することもあります。日光浴、内服PUVA療法などが試みられています。
重症例ではシクロスポリンなどの免疫抑制療法、γグロブリン静注療法、血漿交換療法などがなされています。近年は難治例に対し、オマリズマブ(抗IgE抗体)が著効をしめした例の報告もあるそうです。

【多形日光疹】
日光照射によって生じる原因不明の内因性アレルギー性皮膚疾患と考えらえています。頻度は先の日光蕁麻疹よりも多く、それ程稀な疾患ではありません。特に欧米では治療の必要のない軽症例を含めると人口の10~20%が多形日光疹の症状を呈するとされています。青年層の成人女性に好発します。
皮疹の出現は日光に当たった後、遅発性に出現しますが、症例により異なります。照射後4~8時間以内に出現するケースが多いですが、2~3日後に発症するケースもあります。日光蕁麻疹と異なり、皮疹は24時間以上続きます。
臨床症状は露光部に丘疹、紅斑、小水疱などがみられますが、症状は多彩で、湿疹型、小水疱型、局面型、多形紅斑型などに分類されています。時に 日光蕁麻疹との合併もみられます。
大多数は春から夏にかけて発症しますが、真夏は日光に対して耐性(hardening)を示すために、症状はむしろ軽快傾向にあります。従って顔や手背などの年中日に当たっている部位は腕などと比べると皮疹が出にくいようです。季節と共に自然軽快しますが、また翌年に同様に再発することを繰り返す例が多いようです。
日光に対する遅延型(Ⅳ型)アレルギー反応と考えられていますが、その抗原となる内因性物質は明らかではありません。
作用波長は中波長紫外線(UVB)の症例が多いものの長波長紫外線(UVA)あるいはUVB~UVA両領域に過敏性を示す症例も多くみられます。ただし光線テストでは通常のテストでは正常のことも多く、大量あるいは反復照射で元々の皮疹が誘発されることが多いとされます。従って、決まった検査法は確立されていません。
鑑別診断としては薬剤性光線過敏症、光接触皮膚炎、ポルフィリン症、色素性乾皮症、日光蕁麻疹など他の光線過敏症を否定する必要性があります。これらの原因が明確でなければ多形日光疹と診断されますが、形態も作用波長も多彩であるために多形日光疹は単一疾患ではなくいろいろな疾患も混在している可能性もありえます。
時に慢性光線性皮膚炎との鑑別が問題になることもありますが、同症は発症年齢が高齢者であること、苔癬化など慢性湿疹の像を呈すること、長期に持続すること、hardening現象がみられないことなどで鑑別します。
治療は遮光、サンスクリーン剤の使用を原則とします。その上でステロイド外用剤、抗ヒスタミン剤などを使用します。hardening現象を利用して、適度の紫外線を定期的に照射する紫外線療法も行われています。PUVA療法、ナローバンドUVB療法が有効との報告もあります。

参考文献

堀尾 武. 日光蕁麻疹. 監修 佐藤吉昭 編集 市橋正光 堀尾 武 光線過敏症 東京: 金原出版;2002. pp131-141.

岡本祐之. 多形日光疹. 監修 佐藤吉昭 編集 市橋正光 堀尾 武 光線過敏症 東京: 金原出版;2002. pp141-148.

上出良一. 日光蕁麻疹の鑑別診断・治療・臨床経過. 総編集◎古江増隆 専門編集◎秀 道広 皮膚科臨床アセット16 蕁麻疹・血管性浮腫 パーフェクトマスター 東京:中山書店;2013. pp 231-236.

ポルフィリン症

頻度はそれ程多くはありませんが遺伝性の光線過敏症(一部後天性もありますが)のなかで忘れてはならない重要な疾患です。
平成29年度の皮膚科研修講習会での中野先生のお話を中心に書いてみます。

ポルフィリン症      講師 中野 創 弘前大学 皮膚科

【ポルフィリン症とは】
ヘム蛋白合成経路にかかわる酵素異常のために、ポルフィリン体あるいはその前駆物質が体内に蓄積することによって皮膚症状、消化器症状、神経精神症症状を生じる疾患の総称。
その酵素異常に対応して現在では9つの病型に分類されていますが、なかには非常に稀な病型もあり、また皮膚の症状を呈さない病型もあります。
ヘム蛋白の中で最も有名なのは血色素であるヘモグロビンで、血中の酸素運搬を行っています。それ以外にも下記の種々のたんぱく質が含まれています。
ミオグロビン・・・筋肉内での酸素貯蔵
チトクロームC・・・細胞内電子伝達系の必須分子
チトクロームP-450・・・薬物などの解毒を司る、種々の薬剤の代謝、相互作用などで実臨床でも重要になってくる
カタラーゼ・・・過酸化水素の分解
ヘム合成経路を下の図に示します。(図1)
【分類】
経路の各段階で作用する酵素があり、その異常によって蓄積するポルフィリン体、あるいは前駆物質が変わってきます。その物質の違いによって大きく光線過敏などの皮膚に症状を呈する皮膚型と、皮膚には症状はなく、急性の消化器症状、神経症状を主体とする急性型に分類されます。ポルフィリン体は光毒性を持つために光線過敏を生じますが、ALAなどの前駆物質では光毒性を示しません。(表1)
ここでは主に皮膚型について説明します。
元々ポルフィリン症は稀な疾患ですが、本邦で1920~2010年までに報告された例で、多い順に晩発性皮膚ポルフィリン症300例程、骨髄性プロトポルフィリン症200例程、急性間歇性ポルフィリン症200例程、異型ポルフィリン症50例程、遺伝性コプロポルフィリン症、先天性骨髄性ポルフィリン症、各40例程と極めて稀です。
この中で急性間歇性ポルフィリン症は光線過敏などの皮膚症状をおこさず、腹痛、嘔吐、便秘などの急性腹症を特徴としますので、皮膚科では扱いません。従って、晩発性皮膚ポルフィリン症、骨髄性プロトポルフィリン症の2疾患が皮膚科医が扱う主なものとなります。
【晩発性皮膚ポルフィリン症 porphyria cutanea tarda:PCT】
幼児例や遺伝性と思われる例もありますが、大部分が飲酒歴の長い中高年の男性にみられます。C型肝炎や避妊薬が誘因になる場合もみられます。
コプロポルフィリノーゲンⅢを生成するウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素(UROD)の活性低下によって発症します。
後天性の場合でも、URODの先天的、遺伝的な活性低下が潜在しこれに上記の誘因が加わって発症すると考えらています。
日光曝露後、顔や手背などの露光部に紅斑、水疱、びらん、痂皮などを生じます。繰り返し慢性化すると瘢痕やびまん性色素沈着、多毛などを生じ、皮膚はごわごわして厚くなるものの、一寸した外力で破れやすく、線状のびらん、色素沈着、瘢痕を残しやすくなります。
検査所見では血清鉄値、フェリチンの高値が特徴で、肝機能異常、B,C型肝炎ウイルス陽性も多くみられます。ポルフィリン体では赤血球のポルフィリン体は陰性で尿中のウロポルフィリン、コプロポルフィリンが高値となります。
治療は誘因となる飲酒や薬剤の禁止、遮光が原則です。一般的な治療方法は鉄負荷改善を目的とした瀉血療法です。2,3週ごとに300~500mlの瀉血を行います。これらのコントロールができれば予後は良好ですが、肝癌の併発も多くみられます。
【骨髄性プロトポルフィリン症 erythropoietic protoporphyria:EPP】
PCTに次いで多い病型です。
ヘム代謝系の最終段階で働くフェロケラターゼ(ヘムシンセターゼ)の欠損によってプロトポルフィリンが蓄積するために生じます。
臨床症状は光線過敏ですが、その程度は軽重種々で、軽微な小びらん、小瘢痕、色素沈着程度のみのケースから急性期に紅斑、びらん、紫斑、水疱などを生じ、慢性期には皮膚が厚く粗造となりシワが目立ち、強皮症様の外観を呈するケースもあります。
検査所見では、血中ポルフィリン体が増加し、かつ尿中ポルフィリン体は陰性です。蛍光赤血球、光溶血現象も診断の補助になります。現在は遺伝子診断が可能ですが、浸透率の低い常染色体優性遺伝とされており、染色体の遺伝子変異ともう1本の遺伝子の組み合わせで酵素活性の程度、発症するか否かが規定されているそうです。(図2)
治療は、ビタミンA前駆物質であるβカロテンが有効であるとの報告もあります。光線過敏発症に重要な役目を果たすfree radicalまたは1重項酸素を消去するとされています。皮膚症状のみの例では予後は良いですが、胆石、肝疾患との合併例があり、肝硬変や肝不全を生じるケースもあります。胆汁うっ滞にはデオキシコール酸、肝不全には肝移植、骨髄移植が試みられています。
増悪因子となるアルコール、バルビツレート、スルフォンアミド、エストロゲンなどの薬剤は避ける必要があります。
【先天性骨髄性ポルフィリン症 congenital erythropoietic porphyria:CEP】
極めて稀な疾患です。
ウロポルフィリノーゲンを生成するウロポルフィリノーゲンⅢ合成酵素(UROS)の活性低下によって尿、便、血中に異性体Ⅰ型ポルフィリンが蓄積、過剰排泄されます。
生後間もなくから高度な光線過敏が発症します。紅斑、浮腫、水疱、潰瘍、瘢痕など。繰り返していくうちに色素沈着、脱失が混在し、皮膚は粗造となり強皮症様となります。おむつがピンクに着色したり赤色尿で気づかれるケースが多いとのことです。
またポルフィリンが歯牙に沈着するために、赤色歯牙となります。溶血性貧血、脾腫、骨粗鬆症、角結膜障害など多彩な症状を呈し、予後不良ですが、一方軽症例もみられます。

図2

【付記ーヘマトポルフィリンによる光線過敏】  自験例より

癌治療に対する治療に光感受性物質とレーザー光源を併用して癌細胞を死滅させる治療法があります。これを光線力学療法(Photo Dynamic Therapy PDT)と呼び肺癌、食道がん、子宮頸がんなど各種癌の治療に応用されています。
これは基本的にはポルフィリン体を光感受性物質として用い、がん組織に集まったところに作用波長の光線を当てて癌細胞を死滅させる治療法です。
1980年代に肺癌、胃がんなどの治療法として実用化されましたが、当時はヘマトポルフィリン誘導体(Hematoporphyrin Derivative :HpD) が用いられていました。
治療のあとに、結構光線過敏症がみられました。現在ではより副作用が少ない物質で、腫瘍組織にターゲットを絞った方法に進化しているようですが、基本原理は同じです。
HpDの構造はプロトポルフィリンに似ています。後者の2つのビニール基が水和によってヒドロキシエチル基に変換したものです。HpDの吸収波長、作用波長は基本的にその他のポルフィリンと同様とされます。すなわち400~410nm(Soret帯)に強い吸収波長を持ち、一部は紫外部から可視光700nm近くまで及びます。
自験例は早期胃がんの患者さんに、アルゴンレーザー光照射48~72時間前にHpD2.5~5mg/Kgを静注し、内視鏡下に腫瘍に光を30分程照射治療が施行されました。静注10日前後で多くの患者さんの露光部に軽度から中等度の蕁麻疹様紅斑、浮腫、色素沈着がみられました(図3)。
BLBランプ(長波長紫外線)、Bランプ(ブルーライト、)、プロジェクターランプ(可視光線)にシャープカットフィルターを装着して検査したところ、作用波長は長波長紫外域から500nm以上まで紅斑を生じました(図4)。
ポルフィリン症の光線過敏は主に400~450nmと可視光にまで及んでいるのでより広い波長の遮光が必要ということになります。
ポルフィリン(原則HpDも同じ)の光線過敏の発症機序は先にも述べましたが、HpDにより吸収された光エネルギーはHpDを励起し、それが基底三重項状態の酸素(triplet oxygen)を励起一重項酸素(singlet oxygen)に変換します。同時にfree radicalも形成されます。これらにより組織の酸化が生じますが、細胞の膜、特に脂質に富むライソゾーム膜での過酸化脂質の形成が膜を損傷し、各種酵素を放出させ細胞障害を引き起こし、更にヒスタミンなどのchemical mediatorをも産生しさらに障害を」進める、と説明されています。

 図3

 図4

 

 BLBランプで励起されたHpDの赤色蛍光