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結節性多発動脈炎

結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa: PAN)はそもそも病理的な血管炎の始まりともいうべき名称で、1866年にKussmaulとMaierが剖検例において多臓器に分布する動脈の周囲に結節状の炎症がみられる疾患を見出し、結節性動脈周囲炎(periarteritis nodosa:PAN)という名称で報告したのがその嚆矢とされます。その後本症は動脈周囲のみならず、動脈全体の炎症であることが明らかになり、結節性多発動脈炎と呼ばれるようになりました。
さらに肉眼的に結節が確認できる(古典的)結節性多発動脈炎と、顕微鏡下でのみ血管炎が確認できる顕微鏡的多発血管炎(MPA)が含まれる概念となりました。その後ANCAが発見され、WG(GPA),CSS(EGPA),MPA 川崎病が独立した疾患として分離されてきました。さらにChapel-Hill会議(CHCC1994,2012)によって、PANは「中型動脈を主体に一部小動脈にも壊死性血管炎を認め、細動脈、細静脈、毛細血管(糸球体腎炎を含む)など小血管の炎症を伴わない全身性血管炎でANCAと関連のない血管炎」と定義されました。
これにより従来PANとして報告されてきた症例の多くはMPAと分類されることになり、統計も激変しました。現在では厳密なPANの診断基準に合致する症例は稀(年間発症率100万人あたり0.5人)となってきているそうです。
我が国におけるPANとMPAの比率は1:20程度との報告があります。
【病因】
欧米ではB型肝炎ウイルスの関与が指摘されてきましたが、本邦ではHBV感染の減少もあるためか、その関与はほとんどみられません。ヒトパルボウイルスB19, HIV, サイトメガロウイルスの関与も指摘されるものの明確ではなく、ANCAの関与もみられず不明です。
【臨床症状】
持続的高熱、体重減少、高血圧などの全身症状を伴って多彩な臓器症状がみられます。
1)皮膚症状(5~15%)・・・特に下腿に皮下結節や浸潤性紅斑、網状皮斑、蝕知可能な紫斑、水疱、潰瘍、指趾壊疽など多彩な皮膚症状を認めます。皮膚型PAN(cutaneous polyarteritis nodosa: cPAN)でも同様な症状を認めますが、全身型ではより潰瘍は大きく、多数出現し、急速に進展・増大する傾向があります。
2)腎症状(50%以上)・・・蛋白尿、血尿がみられ、しばしば初発します。腎動脈から葉間、弓状動脈が罹患し、高レニン血症を伴う高血圧を呈します。重症では腎不全に陥ります。MPAのような典型的な糸球体腎炎の像は呈しません。
3)腹部症状(15~50%)・・・小腸粘膜下・筋層の血管炎、腸間膜血管の血栓、肝臓・脾臓の梗塞をみます。これらにより腹痛、消化管出血、肝機能障害を認めます。急性胆嚢炎、虫垂炎で発症した例もあります。
4)中枢神経症状(20~30%)・・・脳梗塞、時に脳出血をみます。
5)末梢神経症状(50~70%)・・・神経栄養血管を障害し、単神経炎、多発性単神経炎がみられます。手足のしびれ、知覚障害、進行すると手足の運動神経も侵され、下垂手、下垂足を発症します。特に腓腹神経が侵されやすいとされます。
6)関節・筋症状(約80%)・・・左右対称性に関節・筋のこわばり、痛みを生じます。特に腓腹筋の症状は著明で同部からの筋生検で血管炎を認めることも多く見られます。
7)心・血管系症状(5~30%)・・・高血圧、虚血性心疾患、伝導障害、心外膜炎などがみられます。
8)呼吸器症状・・・頻度は低いものの間質性肺炎を認めます。
9)その他・・・ブドウ膜炎、虹彩炎、上強膜炎、眼底出血、中耳炎、副鼻腔炎、睾丸痛などがみられることがあります。
【検査所見】
炎症症状でみられるCRP、赤沈値高値、白血球増多、血小板増多などはあるものの特異的なものはありません。ANCA、 自己抗体も一般的には陰性です。
血管造影で腎動脈、腸間膜動脈、肝動脈で多発性動脈瘤、血管閉塞がみられることがあります。また四肢動脈の狭窄、閉塞を認めることもあります。
【病理所見】
腎、筋肉、神経、皮膚などの中小動脈の壊死性血管炎を認めることが診断につながります。腎動脈ではⅠ期変性期 Ⅱ期急性炎症期 Ⅲ期肉芽期 Ⅳ期瘢痕期に分類されます。皮膚小動脈では1)急性期(炎症初期) 2)亜急性期(炎症後期) 3)肉芽期(修復期) 4)瘢痕期に分けられます。
【診断】
厚労省アメリカリウマチ学会などの診断基準があります。厚労省基準では上記の主要症候2項目と組織所見によって確実例を決定しています。なお他の血管炎、とくにANCA関連血管炎、MPAが除外されたことによりPANと診断される症例が激減したことは先に述べました。なおPANに合致しながら、血管炎が細・小動脈に及ぶ症例も存在し、分類が困難なケースもあるとのことです。
【治療・経過】
寛解導入療法と寛解維持療法に分けられます。
寛解導入療法ではプレドニゾロンPSL(0.5~1mg/kg/day)を経口投与します。重症例ではステロイドパルス療法、それで不十分な場合はさらに血漿交換療法、シクロホスファマイド(CY)パルス療法、免疫抑制薬(アザチオプリン、メトトレキサート)を併用します。ガンマグロブリン、抗TNF-α抗体の有効例の報告もあります。通常PSL 1mg/kg/dayで4週間の初期治療を行い、治療開始時からIVCYまたは連日経口CY投与を併用します。IVCYは10~15mg/kg/回を3~4週間に1度 3~6回投与します。経口CYは1~2mg/kg/dayを用いますが、日本人では2mg長期は難しいそうです。免疫抑制剤使用に伴う易感染性に対処する必要性があります。
寛解維持療法では、再燃のないことを確認しつつステロイドを漸減し、維持療法(5~10mg/day)、アザチオプリンなどを併用します。また血栓溶解薬(ウロキナーゼ)、血管拡張薬(プロスタグランディン製剤)、抗血小板薬などを併用します。
発症3か月以内の急性期に適切な治療がなされれば予後は以前と異なり比較的良好とのことです。
予後決定因子としては(1)1日1g以上の蛋白尿 (2)尿毒 (3)心筋症 (4)腸管病変 (5)中枢神経系病変が挙げられています。

皮膚型結節性多発動脈炎
(cutaneous polyarteritis nodosa: cPAN)
1931年にLindbergが古典的PANと異なり、内臓などの症状を伴わず皮膚のみに限局したタイプがあることを報告しました。
その後多くの症例が報告され、独立した病型として確立してきました。しかしながら皮膚症状だけではなく、関節炎や末梢神経炎を伴うケースや、長期間観察後に全身型に進展したケースなども報告されています。
病因は一部c型肝炎、溶連菌感染の関与も示唆されるものの多くは不明です。炎症性疾患やミノマイシンなどの薬剤との関連も想定されています。
皮膚症状は全身型と比べて軽く、潰瘍も大きくはない傾向にあります。関節炎や末梢神経炎も皮疹部に限局するとされます。逆に遠隔、広範囲の場合は全身性のPANへの移行を注意する必要性があります。
検査所見で特異的なものはありませんが、aCL(抗カルジオリピン抗体)の高値、抗PS/PT抗体、抗LAMP-2抗体が高値であるとの報告があり、疾患マーカーとしての意義が検討されています。
治療としては、軽症例ではNSAIDs、循環改善薬の投与、治療抵抗例にはDDS、コルヒチンの投与を行います。循環障害の強い例やaPLの関与が考えられる例では循環改善薬を使用します。PANへの移行が考えられる例ではPANに対応した治療が必要となります。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 東京 医学書院 2012からの抜粋 まとめ

参考文献

血管炎・血管障害診療ガイドライン2016改訂版 日皮会誌 127(3),299-415,2017(平成29)

血管炎症候群の診療ガイドライン 2017改訂版 日本循環器学会 

皮膚科臨床アセット 5 皮膚の血管炎・血行障害 総編集◎古江増隆 専門編集◎勝岡憲生 東京 中山書店 2011

ANCA関連血管炎

小型・中型の血管炎は大きく免疫複合体(IC)が関与するものと、抗好中球細胞質抗体(ANCA)が関与するものに分けられます。ICが関与するものについては先に書きましたし、ANCAが関与するもので、本邦で多い顕微鏡的多発血管炎(MPA, MPO-ANCA関連)についても書きました。
ANCAが関与する血管炎にはMPO-ANCA関連血管炎とPR3-ANCA関連血管炎があります。我が国での頻度は8:1であり、欧米で後者が多いのとは大きく異なります。しかし少ないながらも本邦においてもPR3-ANCA関連の血管炎はありますのでそれについてもまとめてみたいと思います。
ANCA関連血管炎はpauci-immune vasculitisとされています。pauciとは少しの、わずかなという意味で、ANCA関連血管炎ではICはおおむね陰性ですが、陽性のこともあります。この理由として、ANCA,AECA,ブドウ球菌由来抗原がIC抗原となり得るものの血管壁に沈着したICは早期に浸潤細胞によって貪食され、結果的に蛍光抗体法は陰性になると考えられています。
CHCC2012での分類で小型血管炎はANCA関連血管炎には下記の3つが挙げられています。
1)顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangitis :MPA)
2)多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s) (granulomatosis with polyangiitis [Wegener’s] : GPA)
3)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss) (eosinophilic granulomatosis with polyangiitis [Churg-Strauss] : EGPA)
更にもう一つのカテゴリーとして免疫複合体性小型血管炎(immune complex small vessel vasculitis: immune complex SVV)が挙げられていますが、これについては既に書きました。

そこで今回はANCA関連血管炎の中で1)MPAほど発症頻度は少ないものの 2) GPA 3) EGPAについて書いてみます。

🔷 GPA[Wegener’s] 多発血管炎性肉芽腫症
以前はWegener肉芽腫症と呼ばれていましたが、CHCC2012では、人名を冠した病名(エポニム)を避けて病因や病態に基づく記述的な病名に名称変更するよう推奨されました。
それにより、多発血管炎性肉芽腫症(Wegener’s)と変更されました。なお新名称が周知されるまでの間、新名称の後ろに旧名称をカッコ書きで追記するとされています。
1939年ドイツの病理学者Wegenerが1)上気道および肺の壊死性肉芽腫 2)全身の中・小型血管の壊死性肉芽腫性血管炎 3)壊死性半月体形成腎炎の3つの病理的特徴より独立疾患として報告したのに始まります。(1931年にドイツの医学生Klingerによる報告例あり)。
近年本症の疾患活動期にはPR3-ANCAが90%以上陽性で、しかも疾患活動性、病勢を反映することが明らかになり、これが自己抗体として病因に関与していると考えられてきています。
【病因】
鼻腔や口腔など上気道の感染症をきっかけに例えば黄色ブドウ球菌由来のスーパー抗原と自己抗体であるPR3が交差反応することで免疫反応を惹起、進展することが考えられています。しかしその過程で樹状細胞、T細胞、接着分子の関与するデータもあるものの詳細はまだ解明されていないそうです。
【臨床症状】
上気道(E), 肺(L), 腎(K)の3つの病変がそろっている全身型と、腎症状を伴わないEまたはL,EL のみの病型の限局型に分けられます。
発熱、体重減少、などの全身症状に加え、関節痛、上強膜炎、多発神経炎、心虚血、消化管出血、胸膜炎などの症状もみられます。
1)上気道症状
初発症状としてほとんどの例に見られます。鼻閉、鼻出血、鼻漏などがあり進行すると鼻中隔穿孔なども生じます。また眼痛、ブドウ膜炎、中耳炎、難聴、嗄声、気道閉塞症状を呈することもあります。
口腔では難治性、持続性の潰瘍を形成し、出血斑を伴うイチゴ状過形成歯肉炎を生じます。
2)肺症状
咳、血痰、胸痛、呼吸困難などの症状を呈し、X線やCT像で浸潤影、空洞像などを認めます。
3)腎症状
血尿、蛋白尿を認め半月体形成腎炎、急速進行性腎炎から腎不全へと進行します。
4)皮膚症状
経過中半数以下と多くはありませんが、特に全身型で多く症状がみられます。主に四肢に隆起した紫斑、丘疹、結節、血水疱、膿疱、網状皮斑、潰瘍と多彩です。潰瘍は壊疽性膿皮症のような外観を呈することが多いとされます。最も多い症状は浸潤を触れる紫斑とされます。また皮膚科からの報告例では血水疱を伴って、多彩な皮膚症状をきたした例が多く、これらを見た時同症を鑑別として考慮の要があります。
【病理組織】
鼻粘膜生検で巨細胞を伴う出血性壊死性肉芽腫性病変、腎生検で半月体形成腎炎、皮膚生検で白血球破砕性血管炎あるいは血管外肉芽腫性炎症や肉芽腫が典型とされています。他の血管炎と異なって血管壁の周囲に組織球浸潤、ときに類上皮細胞多核巨細胞などによる肉芽腫を認めます。この場合は臨床的には結節を呈するとされます。
【診断基準】
厚労省では上記症状、組織所見検査所見などから確実例、疑い例などの診断基準を作成してあります。
確実例は
a)E,L,Kの1臓器症状を含め主要症状の3項目以上の例
b)E,L,K 血管炎による主要症状の2項目以上と組織所見の1項目以上の例
c)E,L,K 血管炎による主要症状の1項目以上と組織所見の1項目以上+PR3-ANCA陽性例
【治療】
以前は呼吸器合併症や腎不全などによって極めて予後の悪い疾患でしたが、早期診断を下し、病型、病期に応じた適切な免疫抑制療法を徹底的に施行することによって完全寛解例もでてきたそうです。
シクロホスファミドとプレドニゾロンによる併用療法が治療の柱になりますが、具体的治療法は内科専門書、血管炎ガイドラインなどを参照して下さい。近年はBリンパ球表面抗原(CD20)に対するモノクローナル抗体リツキシマブでの治療の有効性が明らかになってきています。

🔷EGPA[Churg-Strauss] 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
1951年ChurgとStraussによって気管支喘息が先行し、病理解剖組織所見で著明な好酸球浸潤を伴う肉芽腫性血管炎がみられた13症例をアレルギー性肉芽腫性血管炎として報告したのに始まります。
それ以来Churg-Strauss症候群と呼称されてきましたが、CHCC2012以降EGPAという名称に統一されたのは、GPAと同様です。
【病因】
好酸球の組織浸潤に伴って、その細胞質から脱顆粒された細胞毒性蛋白が血管や臓器へ沈着し、組織破壊をきたすことによって生じる炎症性疾患とされます。末梢血リンパ球に占めるCD4(Th2タイプのサイトカイン)の割合が高く、治療と共にこれらやIgE,好酸球、その活性に関与するとされるEotaxin-3の値が減少し、それは病勢の指標になります。
その誘発因子は特定されていませんが、多くの例で喘息やアレルギー性鼻炎の先行がみられ、おそらくアトピー素因のある人が種々の抗原刺激によりTh2リンパ球の活性化を受けて発症すると想定されています。そして炎症の修復過程で肉芽腫および肉芽腫性血管炎の像を呈するものと思われます。
喘息の治療薬ロイコトリエン拮抗薬との関連も、発症に関与するかの議論もあります。しかし現在ではステロイド治療薬から同剤への切り替えがきっかけで全身性ステロイドによって抑え込まれていた血管炎の症状が顕在化して、同剤が一見病気の発症の誘因のようにみられるとの見解だそうです。
【臨床症状】
1)先行するアレルギー性疾患
先にも述べたように、気管支喘息の先行が最も多いようです。しかしその重症度とは相関しません。またアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎もみられます。
2)好酸球の組織浸潤
全身の組織に浸潤しえますが、肺や消化器に浸潤し、好酸球性肺炎、抗酸球性胃腸炎を生じます。
3)全身性血管炎症状
発熱、倦怠感、易疲労感、体重減少などがみられます。臓器病変は血管炎によるものと好酸球浸潤によるものが混在しています。
1.多発単神経炎・・・下垂足が最も多く、下垂手もみられます。
2.皮膚病変・・・ANCA関連性血管炎のなかでは最も高頻度に(50~60%)皮膚症状がみられます。蝕知性紫斑が最も多いですが、蕁麻疹、紅斑、丘疹、結節、血痂、水疱、潰瘍、網状皮斑など多彩な症状を同時期にあるいは時期を変えて出現します。
3.肺症状・・・30~40%にみられ、X線でさまざまな肺浸潤像がみられます。GPAのように空洞化することは稀とされます。
4.消化器症状・・・肺と同様に多くみられます。腹痛が多く、下痢や出血を伴うこともあります。
5.心症状・・・好酸球浸潤による心筋炎、心内膜炎、冠虚血などがみられます。特にANCA陰性例に多く心不全や心筋梗塞も起こり、心症状の有無は予後に大きく関わってきます。
6.腎障害・・・GPAやPAN(結節性多発動脈炎)と異なり、一般に重篤な腎障害をきたすことは少なく、巣状分節性糸球体腎炎の像をとることが多いようです。腎炎を伴う例ではMPO-ANCA陽性例が多いとされます。
7.その他の臓器病変・・・関節炎、関節痛、筋症状も半数以下ながらみられます。上強膜炎、中枢神経症状もみられ時として脳出血もみられます。
【検査所見】
末梢血好酸球増多は必発です。ただステロイド治療例、慢性例では低い場合もあります。
赤沈、CRP、リウマトイド因子、Th2サイトカイン(IL-5,IL-13,IL-2 receptor)、Eotaxin-3などは高値を示します。腎炎を伴う例ではMPO-ANCAが陽性でその値は病勢と相関します。
【病理所見】
1)組織への好酸球浸潤 2)肉芽腫性炎症 3)壊死性血管炎の3つですが、単独でみられることも共存することもあります。好中球浸潤が主でMPO-ANCA陽性で腎症をきたす好中球性血管炎の像から、逆にANCA陰性で好酸球浸潤が主で腎症をきたさない好酸球性血管炎の幅広い病理組織像のスペクトラムを示しますが多くは両者が混在した中間像を示します。
【診断】
アメリカリウマチ学会では1)喘息 2)好酸球増加 3)単または多発神経炎 4)肺浸潤 5)副鼻腔の異常 6)血管外好酸球増加の6項目のうち4項目をみたせば、同症と分類するという基準を発表しました。この基準は臨床症状に重きを置き、病理組織所見が揃わなくても診断できるという簡便な方法です。厚労省では1998年に診断基準を作成しています。主要臨床所見、臨床経過の特徴、主要組織所見から判定するものです。これは先行する気管支喘息を診断の絶対必要条件とはせず、非定型例も早期診断することを可能にしたものです。
【治療】
EGPAはPANやGPAと比べて、ステロイド剤に良く反応し、重篤な腎障害は少なく、予後は比較的よいとされます。しかし心不全や消化管出血で予後不良なケースもあり、また多発単神経炎は残存することも極めて多いとのことで注意が必要です。
ステロイド、シクロホスファマイドの併用が施行されますが、アザチオプリンなども併用されます。また難治例では免疫グロブリン大量療法なども施行されます。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 東京 医学書院 2012 からの抜粋 まとめ

参考文献

血管炎・血管障害診療ガイドライン2016改訂版 日皮会誌 127(3),299-415,2017(平成29)

皮膚科臨床アセット 5 皮膚の血管炎・血行障害 総編集◎古江増隆 専門編集◎勝岡憲生 東京 中山書店 2011

顕微鏡的多発血管炎

顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis: MPA)はANCA関連血管炎の一つです。皮膚症状は30~60%に紫斑や網状皮斑がみられるとされます。したがって一般の皮膚科医にはどちらかというとなじみがないというか、まず最初に考える病名ではありません。ところが、川上先生の内科専門医へのアンケートでは「多くの一般内科医にとって血管炎といえばANCA関連血管炎であり、その代表である顕微鏡的多発血管炎をイメージします。・・・(岡崎貴裕先生)」とあります。逆に皮膚科医は血管炎というとIgA血管炎や皮膚動脈炎(結節性多発動脈炎)をイメージします。このように、皮疹からみるとマイナーな感じのMPAですが、重要な位置をしめる血管炎の一つです。さらに欧米ではANCA関連血管炎といえば旧Wegener肉芽腫症(WG)が多いのと異なり、我が国ではMPO-ANCAとPR3-ANCAの頻度は8:1と断然MPAが多く、欧米との違いが顕著です。
🔷ANCAとは
抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)は1982年にDavies DJによって発見されました。初めてANCAを盛り込み、腎臓病理所見に基づいて血管炎を分類したのがChapel Hill分類(CHCC1994)です。ANCAは主にIgG分画に属する自己抗体であり、蛍光染色パターンで細胞質型(cytoplasmic: C-ANCA)と核周囲型(perinuclear: P-ANCA)に分けられます。ELISA法によって代表的な対応する抗原はそれぞれ好中球アズール顆粒中のプロテイナーゼ3(PR3)とミエロペルオキシダーゼ(MPO)であることが分かっています。先に書いたように欧米に多いWGでは活動期にPR3-ANCAが80-95%と高率に認められるのに反し、本邦で多いMPAではMPO-ANCAが活動期には約75%に陽性に見られます。
発症機序はまだ解明されてはいませんが、MPO-ANCA-IgGがMPOと結合し(体質+感染や環境からの刺激などにより)MPO酵素を活性化し、活性化されたMPO酵素が過酸化水素と塩素イオンとでHOClという極めて細胞毒性の強い活性酸素を産生し微小血管の内皮細胞を壊死させることによって血管炎を発症すると考えられています。内皮細胞が壊死する過程で、活性化された好中球と内皮細胞の膜接着因子の発現による両者の接着も必要とされます。しかしなぜ自己抗体が産生されるかは明確にはわかっていません。
さらに最近では好中球が細菌を死滅させるために放出するneutrophil extracellular traps(NETs)や好中球から放出される小さな粒子microparticlesが病因に関連していることが明らかにされてきているそうです。
【臨床症状】
MPAは50歳以後の中高年に多く発症します。やや女性が多いようです。ただ、若年女児に発症するケースも稀ながらあるそうです。約7割のケースでは発熱、全身倦怠感、体重減少、筋肉痛、関節痛、感冒症状などの非特異的な症状をきっかけとして発症し、その後急速進行性腎炎、肺出血、間質性肺炎などの腎肺症状を呈してきます。発症1〜2週間前に上気道感染症を認めるケースが多いとされます。病型では、1)全身型 2)肺腎型 3)限局型(単一臓器に限局する) に分けられます。
(1) 腎症状 ・・・80〜100%と最も高頻度にみられます。顕微鏡的血尿を初発としてタンパク尿、腎機能低下、貧血などが起こり、進行すると腎不全から腎透析へと進むこともあります。
(2) 肺症状・・・25〜60%にみられます。咳、血痰から始まり、肺胞出血、間質性肺炎、肺線維症などに進行します。
(3) 皮膚症状・・・30〜60%にみられます。下腿に多く見られますがその他の部位にもみられます。紫斑、網状皮斑、浸潤性紅斑、丘疹、結節、皮膚潰瘍、蕁麻疹、浮腫、手足末端の出血斑など多彩な症状がみられます。皮膚症状は関節痛、神経炎、眼症状を合併する確率が高いとされます。
(4) 神経症状・・・10~60%で末梢神経炎がみられ、ほとんどの例で多発単神経炎の症状を呈します。(手足のしびれ、感覚がない、力が入らないなど)。稀に脳血管症状をとり、脳出血、脳梗塞などがみられることがあります。
(5) 消化管病変・・・腹痛は多くみられ、時に消化管出血、穿孔をみることもあります。
【検査所見】
MPO-ANCA陽性、CRP陽性、赤沈値上昇、腎障害(血尿、蛋白尿、尿円柱、BUN,クレアチニン値上昇)、胸部X線所見の浸潤陰影像、間質性肺炎や肺線維症の所見
【病理組織所見】
腎生検で壊死性半月体形成性腎糸球体腎炎、肺では肺胞出血を伴う肺胞毛細血管炎、腓腹神経では肉芽腫を伴わない栄養小動脈の壊死性血管炎、皮膚では真皮や皮下組織の肉芽腫を伴わない壊死性小動脈炎、細静脈炎を認めます。小血管壁にフィブリノイド変性と核破砕を伴います。
【診断】
厚生労働省診断基準があります。(1998年)
1.主要症候・・・1)急速進行性糸球体腎炎 2)肺出血または間質性肺炎 3)腎・肺以外の臓器症状(上記)
2.主要組織所見(上記)
3.主要検査所見(上記)
*判定
確実
a) 主要症候の2項目+組織所見陽性例
b)主要症候の1)2)+MPO-ANCA陽性例
疑い
a)主要症候の3項目を満たす例
b)主要症候の1項目+MPO-ANCA陽性例
【治療】
寛解導入法と寛解維持療法があり、厚労省の治療プロトコールがあります。軽症例、重症例によって治療方針、薬剤も異なりますが、基本的にMPAは急速進行重症の疾患ですので可及的早期に寛解導入法を開始して、病勢を鎮めコントロールすることが重要です。むしろ内科、全身療法となりますので専門成書を参照して下さい。ここではアウトラインのみピックアップします。
1)全身性MPAおよび急速進行性糸球体腎炎型(重症例)
ステロイドパルス療法かシクロホスファミドパルス療法で病勢のコントロールを図ります。そして経口ステロイドで寛解維持へと移行していきます。血清クレアチニン値が6mg/dlに達した場合は血液透析を導入します。
2)疾患活動性が高く脳出血など最重症例
ステロイドパルス療法にシクロホスファミドパルスあるいは経口投与を併用します。さらに血漿交換法も併用します。またBリンパ球表面の分化抗原CD20に対するモノクローナル抗体である分子標的治療薬(リツキシマブ)の併用も行われています。
3)限局型・・・逆に生命の危険のないような皮膚、筋肉、末梢神経に限局する軽症の場合は過大な治療は避け、経口プレドニン15~30mg/dayや抗凝固薬、抗血小板療法などを施行します。
寛解維持療法では再燃のないことを確認しながら経口ステロイドの漸減をしていきます。最近はステロイド長期投与による副作用の観点からアザチオプリンが寛解維持療法の中心となっています。またその他の免疫抑制剤としてメトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、ミゾリビンなどが試みられています。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 東京 医学書院 2012からの抜粋 まとめによる

参考文献

血管炎・血管障害診療ガイドライン2016改定版 日皮会誌 127(3),299-415,2017(平成29)

血管炎症候群の診療ガイドライン 2017年改訂版 日本循環器学会

皮膚科臨床アセット 5 皮膚の血管炎・血行障害 総編集◎古江増隆 専門編集◎勝岡憲生 東京 中山書店 2011
高橋一夫 顕微鏡的多発血管炎の診断と皮膚症状 pp104-110
高橋一夫 顕微鏡的多発血管炎の治療 pp111-117
高橋一夫 顕微鏡的多発血管炎の臨床経過・予後 pp118-122

川上民裕 顕微鏡的多発血管炎 皮膚疾患 最新の治療 2017-2018 編集・渡辺晋一・古川福美 南江堂 東京 2017.pp75