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血管炎類似疾患

皮膚血管炎に類似した臨床症状を呈しながら、病理組織学的に血管炎を認めない一連の疾患があります。血管炎類似疾患といいます。
その中では大きく、出血性血管病変と閉塞性血管病変に分けられます。
下記のように分類されていますが、疾患は多岐にわたり、稀少疾患も含まれています。鑑別も大変で、疾患内容によっては当然ながら治療法も違ってきますし、中には急激に悪化し、早期診断・治療を行わないと重篤な状態に陥り、予後不良な疾患も含まれています。
聞いたことも、見たこともない疾患ばかりですが、列記してみました。
Ⅰ.出血性病変
1)止血機構の障害
A.血小板異常・・・特発性血小板減少性紫斑病、症候性血小板減少性紫斑病、本態性血小板血症、血小板機能異常
B.血液凝固・線溶系異常・・・血友病、von Wilebrand病、後天性凝固因子異常
2)血管壁の破壊、機能低下
A.血管に対する毒性・・・病原微生物(ウイルス、細菌、真菌、リケッチャ)、薬剤、化学物質、虫刺
B.血清、血漿蛋白異常・・・高ガンマグロブリン血症、マクログロブリン血症、全身性アミロイドーシス
C.血清あるいは支持組織の脆弱化・・・老人性紫斑、ステロイド紫斑、壊血病
D.原因不明・・・単純性紫斑、慢性色素性紫斑

Ⅱ.閉塞性血管病変
1)血栓・塞栓形成
A.感染・・・電撃性紫斑、敗血症性血管炎、感染性心内膜炎
B.血栓症・・・播種状血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病、本態性血小板血症、リベド血管炎、抗リン脂質抗体症候群、Sneddon症候群、アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、好酸球増多症候群、悪性萎縮性丘疹症
C.塞栓症・・・コレステロール結晶塞栓症、腫瘍塞栓(心房粘液腫など)、細菌・真菌塞栓
D.異常血液蛋白の血管内凝集・・・単クローン性(Ⅰ型)クリオグロブリン血症
2)血管壁の肥厚
A.血管壁の石灰化・・・calciphylaxis
B.血管内膜の細胞線維性増殖・・・Buerger病、閉塞性動脈硬化症、膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、、皮膚筋炎、シェーグレン症候群)
   (皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著 医学書院 東京 2013 p.291より)

全てを取り上げるのは大変ですが、時に血管炎の鑑別にあがる網状皮斑、チアノーゼ、壊死、潰瘍、指趾壊疽を主徴とする閉塞性血管病変の2,3について調べて書いてみたいと思います。

薬剤性血管炎

薬剤によって生じた血管炎を薬剤性血管炎といいます。その頻度はそれ程高くはないものの(全体の3%程度)、皮膚血管炎に占める割合は20~30%ともいわれ、見落とされがちなために実際はもっと多いとする意見もあります。それを念頭において置きながら医原性の副作用を最小限に防ぐことが求められます。
【発症機序】
1)ANCAの関連しないもの
a. 免疫複合体(IC)が関連するもの・・・薬剤またその代謝産物は低分子であることが多いのでそれ自身は抗原性はありませんが、ハプテンとして血漿蛋白あるいは組織蛋白と結合して抗原性を獲得します。そして対応する抗体とICを形成し、主に真皮小血管に白血球破砕性血管炎をおこします。
b. 細胞性免疫が関連するもの・・・感作リンパ球が薬剤抗原と反応することで種々のサイトカイン(IFN-γ, IL-6など)を放出し、各種細胞が集まり主としてリンパ球性血管炎を発症します。さらに活性化マクロファージも集まり肉芽腫性血管炎を生じることもあります。
c.薬剤自体の血管傷害・・・フェニルプロパノラミン、メタンフェタミン、エフェドリン、コカイン、サイトシンアラビノシドなどによって直接血管壁が傷害され、血管炎へと進展します。
従来,コカインは MPO-ANCA,PR3-ANCA,エラスターゼ -AMCA の産生を促進することが知られていましたが,最近,コカインの他にもアンフェタミンなどの 覚せい剤,あるいはメチレンジオキシメタンフェタミ ン(エクスタシー)などの違法な新規向精神薬などが, 血管内皮細胞を直接傷害し,血管炎や血栓症を誘導することが推測されています。しかし,薬剤常用者は多 種類の薬剤を同時に服用する傾向があるので,その発症には複合的な機序が介在している可能性があり,原因薬剤の同定も容易ではありません。
2)ANCAの関連するもの
ある種の薬剤によってANCAの産生が誘導され、顕微鏡的多発血管炎に類似した血管炎が発症します。特に発症の多いプロピルチオウラシル(PTU)について研究が進んでおり、PTUは好中球内のMPOに結合して構造変化し抗原性の増強がおこる結果MPO-ANCAを誘導すると考えられています。また一部ではPR3-ANCAを産生し、WG(GPA)様の臨床症状を呈することもあります。
最近では薬剤によって誘導される免疫応答にToll-like receptor 9とNALP3 inflammasomeを介した自然免疫が関与することが注目されています。好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)は活性化された好中球がDNAと細胞質内のMPOやPR3などの殺菌酵素を混ぜ合わせ、網状の構造物として細胞外に放出したもので、本来は生体防御に不可欠な自然免疫機構ですが、過剰なNETs形成は却って血管内皮細胞障害や血栓形成を誘発し血管炎の原因になるとされています。
また近年使用が急速に増えてきている生物学的製剤による薬剤性血管炎の場合は、薬剤自体のリンパ球活性化作用や種々の炎症誘発作用が複雑に絡んでいると推測されていますが、詳細はなお不明です。
なお、一時期ロイコトリエン拮抗薬内服中にCSS(EGPA)が発症したとの報告が多くなされ、原因薬とされたことがありますが、これは同剤を投与中にステロイド剤を減量あるいは中止したためにCSS(EGPA)が顕在化したのであって、ロイコトリエン拮抗薬が原因薬剤ではないという考えが支持されています。
モンテルカスト(シングレア、キプレス)
【原因となる薬剤】
多岐にわたり、ほぼすべての薬理学系統に及びますが、比較的多いものは下記の薬剤です。
《ANCAの関連しない薬剤関連性血管炎》
*セファクロル・・・ケフラール(セフェム系抗生剤)
エリスロマイシン・・・エリスロシン
アセチルサリチル酸・・・アスピリン
インドメタシン・・・インテバン、インダシン
*G-CSF/GM-CSF
*メトトレキサート・・・メソトレキセート、リウマトレックス(抗リウマチ薬、乾癬治療薬)
*イソトレチノイン・・・アキュテイン(本邦未承認薬)
フェニルプロパノラミン・・・風邪薬、鼻炎薬成分
メタンフェタミン・・・ヒロポン(覚醒剤)
コカイン
エフェドリン
サイトシンアラビノシド・・・シタラビン、キロサイド(抗がん剤)
《ANCAの関連する薬剤関連血管炎》
*ヒドララジン・・・アプレゾリン(降圧剤)
*プロピルチオウラシル(PTU)・・・プロパジール、チウラジール(甲状腺機能亢進症薬剤)
*アロプリノール・・・ザイロリック(高尿酸血症治療薬)
*d-ぺニシラミン・・・ペニシラミン,メタルカプターゼ(抗リウマチ薬)
*ミノサイクリン塩酸塩・・・ミノマイシン(抗生剤)
*フェニトイン・・・アレビアチン、ヒダントイン(抗痙攣薬)
スルファサラジン・・・サラゾピリン(抗リウマチ薬)
セフォタキシム・・・セフォタックス(セフェム系抗生剤)
シプロフロキサシン・・・シプロキサン(フルオロキノロン系抗生剤)
エタネルセプト・・・エンブレル(分子標的治療薬、関節リウマチ治療薬)
インターフェロンα
レチノイド・・・エトレチナート、チガソン(ビタミンA酸製剤、乾癬治療薬)
チアジド・・・フルイトランなど(降圧剤)
クロザピン・・・クロザリル(抗精神病薬)
(*印は頻度の高いもの)
【臨床症状】
1)ANCAの関連しないもの
IC血管炎の頻度が最も高く、白血球破砕血管炎の症状を呈します。時に発熱、倦怠感などの症状を伴いますが、通常内臓障害はみられません。IC血管炎では比較的早期(2週間以内)から発症するとされます。皮膚症状が主で、紫斑、蕁麻疹、紅斑、血管浮腫などが下腿を中心に出現します。通常内服中止後数週間で軽快消失しますが、時に腎症状、心・肺・肝症状、神経症状を伴い遷延する例もあります。
2)ANCAの関連するもの
・MPA類似のもの
PTUに代表される甲状腺治療薬は比較的若年者に使用されるために一般のMPAが60歳代であるのに比べ40歳代が多くみられます。発症までは様々で数時間から10数年に及ぶ例もあるそうです。症状はMPAに準じますが、全身症状はより軽度ですが、使用が長期に亘った例ではより重症化の傾向があります。
・CPN類似のもの
ミノサイクリンによるものでは一部はIC血管炎様で、一部はMPAまたはCPN様の網状皮斑、皮下結節、潰瘍、壊疽を伴ってきます。またミノサイクリン、ヒドララジンは、累積投与量に比例して薬剤性ループスの発症リスクを高めることがわかっています。
3)最近サイトカイン製剤や、造血系細胞成長因子製剤、TNF-α阻害薬などの生物学的製剤の使用増加に伴って。それらによる膠原病類似症状や血管炎症状を呈することが報告されるようになってきました。
【診断】
薬剤投与の臨床経過との関連性が最も重要な点となります。また薬剤を中止後の臨床経過、ANCA,CRP、好酸球の改善なども参考になります。しかしながら薬疹で用いられるリンパ球刺激試験やパッチテストの陽性率は低く、参考にはなりません。
疑わしい場合には早期に被疑薬を中止ないし変更して症状の推移を確認することが重要です。
【治療】
原因薬剤を中止することで多くの症状は軽快します。薬剤性血管炎は一般に予後は良好ですが、原因薬剤の中止が遅れた場合を含め一部では急速進行性腎炎など重症化する例もあり、その際はステロイド剤、免疫抑制療法が必要になってきます。

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著 医学書院 東京 2013 より抜粋 まとめ

参考文献

日本皮膚科学会 ガイドライン委員会
血管炎・血管障害診療ガイドライン2016年改訂版 日皮会誌 127(3),299-415,2017(平成29)

基礎から固める血管炎 編集企画 石黒直子 
石津明洋 血管の構造と血管炎の病理組織像を基礎から固める MB Derma,287:1-5, 2019
宮部千恵 川上民裕 ANCAとANCA関連血管炎を基礎から固める MB Derma,287:27-32, 2019

ループス血管炎

全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematodus: SLE)は腎・心・関節・中枢神経など多臓器障害をきたし、若年の女性に好発する原因不明の自己免疫疾患です。皮膚粘膜症状としては頬部の蝶形紅斑、円盤状皮疹、口腔潰瘍、光線過敏、脱毛などをきたします。検査所見としては抗核抗体(anti-nuclear antibody: ANA)陽性、抗dsDNA抗体陽性、抗Sm抗体陽性、梅毒血清反応の生物学的疑陽性(biological false positive: BFP)、LE細胞陽性、汎血球減少、補体低下などをきたします。
(あたらしい皮膚科学 第3版 清水 宏 著 より)
SLE患者の11~36%に様々なタイプの血管炎を生じることがあり、ループス血管炎(lupus vasculitis: LV)と呼ばれています。
女性発症の頻度が高い(1:9)中にあって、LVの合併率は男性が女性よりも多く(約2.2倍)、特に若年性男性のSLE患者に多くみられます。病勢を反映し、疾患増悪時、再燃時など疾患の活動期に認められやすいです。侵される臓器は皮膚が最も多く、約9割にみられ、一方内臓臓器の血管炎は10~20%と頻度は少ないものの、重篤な症状を呈することが多く、SLEの予後を左右するとされます。
1)皮膚血管炎
下肢に生じることが多く、一部では上肢、顔面に生じます。異なるレベルの血管炎が混在しうるので、多彩な皮疹がみられます。真皮の壊死性静脈炎が最も多く、それを反映して隆起性紫斑、血水疱、浸潤性紅斑、蕁麻疹様紅斑、浅い潰瘍などがみられます。また真皮下層から皮下組織の筋性小動脈も侵されることがあり、この際は皮膚型結節性多発動脈炎様の皮疹、浸潤性紅斑、小結節、網状皮斑、潰瘍などを認めます。
網状皮斑は抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibody: aPL)陽性患者で多くみられ、この場合は血管の閉塞(血栓)がみられ、血管炎様の変化をきたします。
なおSLEでも蕁麻疹様血管炎を生じますが、これはCHCC2012では別項目に分類されています。
2)内臓血管炎
SLEの活動期に生じることが多く、胸部大動脈から肺胞や糸球体の毛細血管まで中小の血管に血管炎が生じえます。特に多発性単神経炎が多くみられ(約20%)、感覚障害をきたします。内臓血管炎の主座は皮膚が小血管炎であるのに対し、中型の筋性動脈です。しかし病理組織で証明されることは少なく、またSLEの血管障害は1)動脈硬化性 2)血栓性 3)炎症性(血管炎を含む)に分類されていますが、臨床的にはこれらが互いに影響しながら複雑に混在し厳密に分類するのは困難とされます。
ループス血管炎は単一な疾患概念ではなく、SLE患者にみられる血管病変の総称ととらえられています。
病勢の悪化と共に生じることが多いので、ECLAM scoreなどを用いて病勢の評価を行います。一般的に活動性のある皮疹と関節症状を呈し、腎症状がありAPS(aPL陽性、弁膜症、血小板減少症)、クリオグロブリン血症を合併する場合はLVの頻度が高くなるとされます。またレイノー現象は血管炎の素地になり、多発神経炎による感覚低下、急激な腹痛、下痢などはLVを疑う兆候とされます。
《各臓器の症状》
・網膜の血管炎・・・視力障害
・多発性単神経炎・・・血管の血行障害による感覚麻痺
・中枢神経病変を伴うSLE(CNS lupus)・・・14~17%にみられ、精神症状、痙攣などを呈し、予後不良です。真の血管炎が証明される例は少なくリベド血管症(livedoid vasculitis現在はlivedoid vasculopathy)が考えられています。
・腸管の血管炎・・・回腸と大腸に多く、適切な処置がなされないと腸管壊死から穿孔に至り、死亡率は50%に上るとされます。
・ループス肺炎・・・肺胞領域の毛細血管炎による肺胞出血をきたします。
・稀な臓器血管炎・・・冠動脈、高安動脈炎、脳、膵臓、膀胱、尿道、肝臓、胆のう、子宮
・腎動脈・・・動脈のフィブリノイド変性や壊死
《治療法》
血管炎に対する特異的な治療法はありません。SLEの活動性に見合った総合的な治療法に準じます。
副腎皮質ステロイド内服が治療の中心となります。これでコントロールされない内臓病変などではさらにステロイドパルス療法、IVCY、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、ミゾリビン、アザチオプリンなどとの併用療法が施行されます。ヒドロキシクロロキンは皮膚症状の特に蕁麻疹様血管炎に有効であり、最近では抗CD20療法、生物学的製剤ベリムマブ(抗BLySモノクローナル抗体)、B細胞をターゲットとした新薬も試みられています。
皮膚潰瘍、指尖梗塞に対してはステロイドのほかに抗血小板薬、抗凝固療法アロプロスタジル、アルガトロバンなどの点滴、またaPL陽性など血栓形成傾向の強い患者にはアスピリン内服、ワルファリンの投与がなされています。2013年には抗凝固活性のモニタリング調節が不要な抗凝固薬non-vitamin K antagonist oral anticoagulants, new oral anticoagulant(NOAC):抗トロンビン薬、抗Xa薬が発売されました。

参考文献

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著 医学書院 東京 2013

日本皮膚科学会ガイドライン
血管炎・血管障害診療ガイドライン2016年改訂版 日皮会誌:127(3),299-415,2017(平成29)

基礎から固める血管炎 編集企画 石黒直子 
長谷川 稔 全身性疾患関連血管炎を基礎から固める MB Derma,287:64-69,2019

下肢静脈瘤治療ーUp-to-Date

先日、下肢静脈瘤治療の講演がありました。
ずっと血管炎のことを書いてきて、静脈瘤は一寸そこからはずれますが、下肢の脈管異常という観点からみれば、むしろこちらの方が、メインです。講演内容の骨子をまとめてみました。
講師は千葉静脈瘤クリニックの河瀬 勇 先生でした。
【成因】
下肢静脈瘤とは、立った時に下肢の静脈の血管が瘤のように浮き出ている状態のことをいいます。
心臓の帰り道である静脈内の血液は、立った状態の場合は重力に逆らって下から上へと戻っていかなければなりません。そのために重要な働きをするのが、ふくらはぎの筋肉です。これが、収縮することによってポンプのように血液を送り出しています。それで第2の心臓ともいわれます。
さらに、脚の静脈には多くの逆流防止弁がついており、血液が下方向へ逆流しないような仕組みになっています。この逆流防止弁が壊れてきちんと閉じなくなり血液が逆流してしまうことが静脈瘤の原因になります。
血液が逆流すると、血液が徐々に溜まり、滞ってくるために静脈は太くなっていき、瘤のような外観を呈するようになります。
さらに、進行すると、脚のむくみ、重たさ、疲れやすさ、こむら返り(足がつる)、痛みなどの症状が出てきます。さらに進行すると皮膚炎(湿疹)ができたり、色素沈着、ついには皮膚潰瘍などをおこすようになっていきます。
静脈瘤そのものは良性の病気ですが、症状がでて、日常生活に差支えがでてくるようになると治療の対象になります。
【なり易い要因】
・女性(男性の3倍)・・・妊娠や出産など脚の静脈に負担がかかる要因がある。
・長時間立ち仕事をする人・・・調理師、美容師、販売員など
・長時間デスクワークの人や膝・腰などが悪く1日中座りっぱなしの人
・遺伝性・・・親、兄弟に静脈瘤があるなど
【種類】
CEAP分類というものがあって、臨床・病因・解剖・病理的な側面から分類されています。臨床的には重症度を軽いほうからC1~C6まで分けています。C1はクモの巣状あるいは網目状で C6は活動性潰瘍のあるものです。
一般的には臨床的に4つのタイプに分けられています。軽いほうから
・蜘蛛の巣状静脈瘤・・・赤く細い血管がクモの巣状に皮膚に拡がったのもで、伏在型にはなることはありません。
・網目状静脈瘤・・・青く細い血管が蛇行してみえます。
・側枝型静脈瘤・・・伏在静脈から枝分かれした、やや細め(2~3mm)の血管が浮き出てこぶ状になったものです。
・伏在型静脈瘤・・・脚の付け根の静脈弁が壊れてできた大伏在静脈瘤と、膝裏の弁が壊れてふくらはぎに症状が現れる小伏在静脈瘤にわけられます。いずれも直径4mm以上に太くなり手術の対象となってきます。
【検査】
・トレンデレンブルグ検査
・ドップラー聴診
・エコー(超音波)・・・現在の主流です。脚にゼリーを塗ってプローブを当てて血栓の有無や逆流を確認します。
・CT・MRI
【治療】
・圧迫療法・・・弾性ストッキングによる圧迫が代表的です。症状の改善や進行予防に役立ちますが、それのみでは治癒しません。
・硬化療法・・・静脈瘤に硬化剤を注射し、その後弾性ストッキングや弾性包帯を巻き、静脈瘤をつぶす方法です。外来で数10分程度で簡便な方法ですが、進行したものでは再発してしまいやすい欠点があります。
・手術療法
1)高位結紮術・・・脚の付け根を数cm切開して、逆流をおこしている静脈を糸でしばって切離する手術です。しかし再発が多かったり、創合併症、血管損傷などの副作用の可能性もあり徐々に施行例が少なくなっているそうです。
2)ストリッピング手術・・・脚の弁不全がおきた静脈の中に細い針金(ワイヤー)を挿入して静脈と糸で結び、針金ごと静脈を抜き取る手術です。切開する場所が多く、麻酔のために入院が必要な場合が多いなど大変ですが、再発率が低く、かつてはこの治療法が主流でした。
・血管内治療
1)血管内焼灼術(endovenous thermal ablation: ETA)・・・静脈を内側から焼いて塞いでしまうレーザーファイバーや高周波カテーテルによる治療です。
2011年から本邦でも保険適応になり、急速に普及してきて、現在では70%以上がこの治療が施行されているそうです。
・レーザー(endovenous laser ablation: EVLA)
・高周波(ラジオ波)(radiofrequency ablation: RFA)
・Steam Vein Sclerosis
・マイクロ波
ETAでは熱焼灼による痛みに対して、麻酔(主に低濃度大量局所浸潤麻酔(tumescent local anesthesia: TLA))が必要です。そのために次のNTNTも開発されてきています。
EVLAの種類
2010年 認可 2011年保険適用 980nm 半導体レーザー Cerelas D 980nm Diode laser(ELVeSレーザー980)
ヘモグロビンに特異的に吸収され、術後の疼痛、皮下出血、再疎通などが少なくなかった。それを改善するため水に吸収される
2014年 ELVeSレーザー1470. Radial 2 ring fiber 認可
2015年 LSO 1470レーザー 認可
2016年 FOXレーザー 認可
2018 細径光ファイバー 認可
RFA
欧米では広く普及しています。我が国では2014年に保険適用になるなどごく最近の使用となっています。焼灼は連続的ではなく、1か所を20秒ずつ焼灼しながら、分節的に牽引して行われます。

従来伏在型静脈瘤に対する治療はストリッピング手術や高位結紮術が行われてきましたが、皮下出血、神経障害、術後疼痛、創感染などの合併症が多くみられました。それに代わる治療法がETAです。現在保険認可されているEVLA用レーザー機器は4種類です。超音波ガイド下に穿刺して、TLA麻酔を行いながら罹患静脈の焼灼を行うのが一般的です。ファイバーの牽引速度は静脈の径、厚さ、血液の有無で変わるそうです。術後は皮下出血・血腫の予防、血栓合併症の予防などの目的で弾性包帯、ストッキングなどによる圧迫療法が行われます。
【ETAの禁忌】
《禁忌》
・急性期深部静脈血栓症(DVT)
・急性期表在静脈血栓症(SVT)
・歩行困難
・妊娠あるいは授乳中
・全身状態不良(多臓器障害、DIC、ショック、前ショック状態など)
《慎重適応》
・DVTの既往
・若年者、多発性あるいは再発を繰り返すSVT
・先天性血栓性素因(高ホモシステイン血症、アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、プラスミノーゲン異常症等)
・後天性血栓性素因(膠原病、悪性腫瘍、薬剤、ネフローゼ症候群、炎症性腸疾患、骨髄増殖性疾患、多血症、抗リン脂質抗体症候群等)
これらはETAは施行可能であるが、治療法の何らかの変更あるいは他の治療法が可能かを検討し、患者本人に十分な説明を行って承諾を得る必要がある。
薬剤・・・経口避妊薬(ピル)、エストロゲン製剤、ステロイド剤、骨粗鬆症治療薬(ラロキシフェン、バゼドキシフェン)、抗精神病薬など
*局所麻酔下の日帰り手術で早期歩行することによって、術後の深部静脈血栓症のリスクをへらすことができるとされます。

2)非焼灼非浸潤麻酔治療(non-thermal non-tumescent: NTNT)・・・以前からフォーム硬化療法やカテーテルを用いた硬化療法が行われていましたが、最近n-ブチルシアノアクリレート(NBCA)という医療用接着剤を用いた血管内治療が試みられるようになりました(Vena Seal)。一種の糊(glue)、アロンアルファのような瞬間接着剤を用いた治療法でグルー治療とも呼ばれます。レーザー器機も浸潤麻酔も要らない画期的な治療法として脚光を浴びています。良好な治療成績が報告されていますが、糊は異物であり、アレルギー(アナフィラキシー、アレルギー性接触皮膚炎)などの可能性もあり、この治療法についての長期的な評価は将来の検討課題とのことです。
・本幹硬化療法
・mechanochemical ablation(MOCA)
・NBCA(グルー)治療

当日河瀬先生は血管内焼灼術の豊富な自験例を元に、日本静脈学会のガイドラインに沿って分かり易く解説して下さいました。また実際の施術のビデオも見せていただき、より実地に近く理解できました。先生のホームページにも詳しい解説があるので参考にされるとよいかと思います。(そういう意味では敢えて耳学問のこのブログ記事は必要ではないのかもしれませんが)

現在の下肢静脈瘤の治療は2011年の血管内焼灼術の保険適用以降、従来の手術療法にかわりパラダイムシフトとも呼ばれるほどの治療の変革をきたしました。
しかしながら全てETAの適応になるわけではなく、あくまで症状があり、日常生活に不便のある下肢静脈瘤でしかも大小伏在静脈、副伏在静脈のケースで治療禁忌のない例に適用するとされています。
日本静脈学会は「下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン2019」を作成していますが、その最後に一般の方向けのまとめという項目も設けてあり、解り易く解説してあります。情報の必要な方は参考にされるとよいかと思われます。

下肢静脈瘤については当ブログにも過去に取り上げています。
2014.1.18から数回に亘って
こちらも参考にしてみて下さい。

参考文献

下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン 2019 日本静脈学会

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン5: 下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン 日本皮膚科学会ガイドライン
日皮会誌:127(10),2239-2259,2017(平成29)

下肢静脈瘤net

リウマトイド血管炎/悪性関節リウマチ

関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)は関節滑膜炎と骨・軟骨破壊を特徴とする全身性自己免疫疾患ですが、関節以外にもさまざまな臨床症状を伴います。
1951年 SokoloffらはRA患者の筋生検で約1割に動脈周囲炎がみられたことを報告し、1954年にはBevansらが急性の関節外症状によって死亡したRAの2剖検例を悪性関節リウマチ( Malignant RA: MRA)の名称で報告しました。
病理学的に血管炎を認めたものをリウマトイド血管炎(Rheumatoid Vasculitis :RV)と呼びます。RAの関節外症状には血管炎と似た症状を呈する病態が多くみられます。
膠原繊維の変性、血管内膜の線維性肥厚、動脈硬化および動静脈の血栓形成によってもたらされた潰瘍、網状皮斑、これらは臨床的には血管炎と区別がつかない場合も多々あります。したがって真の血管炎と診断するには病理診断が必須となってきます。
その後、欧米では血管炎を伴ったRAはRVと呼ばれるようになり、MRAという呼称は用いられなくなって日本独自の呼称となりました。
厚労省研究班の定義によればMRAとは「血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性もしくは重篤な臨床病態を示すRA」と定義されていて、1973年から特定疾患(現指定難病)として公費負担の対象となっています。MRAの診断項目には血管炎との関連が明らかでない肺線維症、間質性肺炎、胸膜炎などが含まれており、MRAとRVは同一ではありません。しかしながら、MRAの病態の中核をになうものはRVであることは事実であり、MRAはそれを包括した概念といえるかと思われます。
Chapel-Hill分類(CHCC2012)ではRVとして記載されていますが、実臨床に即して、本邦の血管炎症候群の診療ガイドラインにならってMRAについてまとめてみました。
【疫学】
MRAはRA患者の0.6-1.0%にみられ、医療費助成受給者数は平成25年度で6697人となっており、年々増加傾向にあります。診断時の年齢のピークは60歳代で男女比は1:2で女性が多いです。ただし、MRAとしてみると男性が多い傾向にあります。近年ではMTXをはじめとした早期治療の進歩によって、RVの発生頻度は減少傾向にあるとのことです。
【発症機序】
不明ですが、血管炎の発症には、血管を標的にする自己抗体の関与、免疫複合体沈着による炎症の惹起、局所における細胞性免疫の活性化などが関与していると考えられています。それで、炎症局所においては免疫グロブリン、C3,C4の沈着があり、血清中のリウマトイド因子(rheumatoid factor: RF)が高値を示し、免疫複合体陽性、低補体価がみられます。
RVの遺伝的因子として、HLA-C*03が独立した危険因子で、KIR2DS2を介してナチュラルキラーT細胞活性化に関与していると考えられています。RVではRAよりもHLA-DRB1*0401との関連が強いとされます。また環境因子としては喫煙が強い関連があるとされます。
【病理所見】
MRAのスペクトラムは広く、末梢の小血管炎から中枢の中型血管炎にまで及びます。侵される血管炎の大きさによって、臨床症状も多彩となります。
血管炎の所見は今まで述べてきたものと同様ですので、詳記しませんが、小型では白血球破砕性血管炎で免疫複合体性血管炎を、中型動脈の血管炎ではPANに類似するpauci-immune 型血管炎を呈します。また一部では、リウマトイド結節様の肉芽腫性血管炎(palisading granuloma)を呈します。
またMRAには血管炎に関係しない間質性肺炎や肺線維症が主体の肺臓炎もあります。
【臨床症状】
皮膚では真皮細静脈から皮下組織の筋性中型血管まで幅広いレベルを障害するために、紫斑、網状皮斑、白色萎縮、爪下出血、爪周囲血栓、皮膚潰瘍、指趾壊疽、壊疽性膿皮症など様々な皮膚症状がみられます。多発神経炎、上強膜炎、臓器病変を反映して、発熱、体重減少、漿膜炎、腸管、腎、脾臓、膵臓、睾丸などの血管炎による炎症症状を呈します。また血管炎以外に間質性肺炎・肺線維症、リウマトイド結節などを認めることもあります。通常肘などにできますが、後頭部、まれには肺内にできることもあります。
【検査所見】
RVに特異的な検査はありません。白血球、血小板増多、CRP上昇、赤沈値亢進などの炎症症状を認めます。高ガンマグロブリン血症、抗シトルリン化ペプチド(cyclic citrullinated peptide: CCP)抗体陽性、RAHA, RAPAテストが2500倍以上、RF 960 IU/ml以上が診断基準の1項目となっています。抗CCP抗体はRAの早期診断に有用なマーカーで、さらにこれの陽性例は陰性例と比較して関節破壊が進行し易いとの報告があり、EULAR/ACRから出されたRAの新分類基準に取り入れられています。

【診断基準・重症度】
臨床症状、組織所見、検査所見などを総合して診断基準が設けられています。また血管炎症状、心肺症状、腎臓、視力、関節、神経症状などの程度により、1度から5度までの重症度に分けられており、3度以上が厚労省MRAの認定対象となっています。
【治療】
MRAやRVは病態や重症度が多彩であるために、個々の病態ごとに治療薬が選択されます。
・活動性のRAがあり、メトトレキサート(MTX)の禁忌がなければ、軽症の血管炎に対してはMTXをはじめとする抗リウマチ薬(disease-modifying anti-rheumatic drugs:DMARDs)が用いられます。
・皮膚病変や漿膜炎のみの場合は中等度ステロイド(PSL換算0.5mg/kg/日)を使用、多発神経炎、多臓器障害、急性・亜急性間質性肺炎などでは主にステロイドパルス療法(mPSL 1000mg 点滴静注 3日間)を含む高用量ステロイド(PSL換算 1mg/kg/日)が施行されます。
・重症の全身性血管炎では以前から静注シクロホスファマイド(IVCY)(500-750mg/m2/月)または経口CY(1-2mg/kg/日)が用いられています。しかし副作用として、重症感染症、膀胱がん、血液系悪性腫瘍の報告もなされていますので、使用に際しては注意が必要です。軽症例、維持療法としてはより安全なアザチオプリン(1-2mg/kg/日)が用いられています。
・近年はTNF阻害薬などの生物学的製剤も重症例に用いられています。またリツキシマブ(抗CD20抗体)、トシリズマブ(抗IL-6レセプター抗体)、アバタセプト(CTLA-4Ig)なども有効との報告がなされてきています。
しかしながらTNF阻害薬をはじめとした生物学的製剤による血管炎発症の報告もあり注意が必要です。
RVに基づかないリウマチ肺への抗TNFα製剤の使用はコンセンサスがなく、少なくとも進行性の間質性肺炎を伴う場合は使用しない方がよいとされます。
・保険適用外ながら、治療抵抗例では血漿交換療法や高用量ガンマグロブリン静注療法(IVIG)がRVに有効との報告もあります。
【RAによる下腿足部潰瘍】
RAの約10%に足部潰瘍が生じると報告されています。好発部位は中足趾節間(MTP)関節、趾節間(IP)関節、次いで第1足趾MTP内側です。多くは表層性の潰瘍で、多発再発し易いです。足変形、感覚脱失、足関節/上腕血圧比(ankle brachial pressure index: ABPI)の低下は足部潰瘍のリスクを上昇させます。原因は多彩で血管炎によるものは少なく、末梢循環障害、疾患活動性、ステロイド内服、感染症などの原因の精査が必要で、その上で一般的な創傷治療の手順によって治療を行います。治療では血管炎の有無を見極めることが大切で、そのためにも病理所見が必要とされます。非血管炎の場合は多くは強い循環障害と考えられ、「静脈うっ滞による下腿潰瘍」「圧迫に伴う軟部組織の虚血性壊死による潰瘍」(関節の変形や拘縮および装具の不適切な装着などが原因)、「皮膚の脆弱性を基盤とした外傷性潰瘍」などが原因となってきます。

血管炎症候群の診療ガイドライン (2017年改訂版)ⅩⅣ.悪性関節リウマチ ー 日本循環器学会  より 抜粋 まとめ

参考文献

皮膚血管炎 川名誠司 陳 科榮 著 医学書院 東京 2013

血管炎・血管障害診療ガイドライン 2016改訂版 日皮会誌:127(3) 299-415,2017(平成29)

創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン4:膠原病・血管炎にともなう皮膚潰瘍診療ガイドライン 日皮会誌:127(10), 2239-2259, 2017 (平成29)

関節リウマチに伴う皮膚病変 池田 高治 pp262-265
皮膚科臨床アセット 7 皮膚科膠原病診療のすべて 総編集◎古江増隆 専門編集◎佐藤伸一 東京 中山書店 2011