STI(性感染症)研究会

千葉県STI研究会に出席しました。
STIとはsexually transmitted infectionの略で性感染症のことです。
以前はSTD Sexually transmitted diseaseと呼んでいたのですが、感染(infection)しても病気(disease)を発症しないこともあり、上記のように表記するようになりました。
出席者は産科、婦人科、泌尿器科の医師に薬剤師、保健師が主で皮膚科医はほとんどいなかったようでした。性感染症は皮膚科でも取り扱いますが、主に梅毒、ヘルペス、尖圭コンジローマなどに限られ、クラミジア、淋病などは一般には取り扱いません。さらに性感染症教育などもあり、普段出ている皮膚科の会とはかなり趣の異なった会でした。
まず性感染症の発生動向が提示されましたが、女性ではクラミジアが60%、ヘルペスが20%、次いで尖圭コンジローマが10%程度だそうです。男性の場合はこの差が少ないそうです。
クラミジアは世界でも最も多い性感染症ですが、男性では前立腺炎、副睾丸炎などを起こします。排尿時に痛くなったり、尿道が痒くなったり、分泌物が増えたりします。女性ではおりものが増えるなどの症状が出にくので感染に気づかずに進行することもあります。子宮頚管炎、内膜炎、卵管炎などを起こし、進行すると骨盤腹膜炎や肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)を起こし女性の不妊、子宮外妊娠の原因となります。また多くの慢性骨盤痛の原因にもなっているそうです。産道感染により新生児に感染することもあります。クラミジアに感染しているとバリア障害のためにHIV(エイズ)に感染する確立が3~5倍増えるそうです。
淋病は男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎を起こします。特に女性では無症状で経過することが多く、咽頭、直腸の感染でもあまり症状はみられないとのことです。時には角膜潰瘍も生じます。抗生剤で治療しますが、耐性菌が80%もみられます。
ヘルペスは最近は1型2型の区別なく感染がみられるとのことです。初感染で早く十分に治療しないと神経節へ潜伏し易いです。
HPVはHuman papilloma virus の略ですが、20代の女性では30~50%に陽性だそうです。ウイルスの亜型が多くありますが、ローリスク型の6,11型では尖圭コンジローマに、ハイリスク型の16,18型では子宮頚癌になる恐れがあります。但し感染しても継続するのは10%程度でその中の一部から前癌病変に進行するということです。日本では毎年15000人の子宮頚癌患者が発生し3500人が死亡しているとのことです。Young mother killerと呼ばれる所以です。諸外国には遅れをとりましたが、日本でもHPV予防ワクチンが使用可能になりました。HPVは多数の無症状感染者があり、性体験のない低年齢に接種するのが有効とされています。(現在ワクチンは公費助成の対象になっているそうですが、詳細は市区町村によっても異なるので、担当部署に問い合わせて下さい。)
HIV/AIDSは全世界では感染者の数は3000万人以上いるといわれ、中でもサハラ砂漠より南方のアフリカはその6割近くを占めるなど惨憺たる状況にあります。欧米諸国の発生率が減じている中で、東欧からロシア、アジア諸国は増えているようです。日本では登録者数はHIVが1000人位、AIDSが400人位(2006年)とのことですが、ネットでみると8000人位のHIV陽性者がいるとありました。まだ数は少ないとはいえ、先進国の中で唯一日本だけが、HIV感染者の数が増加しているとのことです。これに危機感をもったためか、厚労省は今年から性感染症の疑いがあれば、エイズの血液検査を保険で認めるようにしたとの話がありました。HIVは感染しても2~3週間位して軽い風邪のような症状がでるだけで、自然に治っていきます。そして数年から10年後に免疫不全による諸症状を起こしエイズを発症します。従って血液検査をしないとなかなかわからないままということになります。このままの勢いでいくと風俗産業など介してアウトブレイクする心配もあります。時に週刊誌などに興味本位で記事が出ることもありますが、熱しやすくさめ易い国民性もあるのか、地道な撲滅キャンペーンはなかなか浸透しません。クラミジア、ヘルペス、梅毒などの他の感染症があると格段にHIVに感染し易いこと、コンドームでそれをかなり防ぎうることを市民に周知することが重要でしょう。
梅毒は感染してから3週間程で性器に赤く硬いしこりやただれができ、その近くにあるリンパ節(ソケイリンパ節)が無痛性に腫れてきます(第1期梅毒)。一旦症状は治まりますが、その後3ヶ月以内に体にいろいろな形の赤みのある発疹が出現してきます(第2期梅毒)。バラ疹、丘疹、膿疱、乾癬様などいろいろありますが、梅毒を疑う情報がないと皮膚症状のみではなかなか診断がつきません。スライドの中には岡本教授の提供されたものもあり、あの患者さんの口腔粘膜斑だな、と思われるような懐かしいものもありました。現在の梅毒は新鮮例は散発的に報告されるのみですが決して絶滅されたわけではありません。
これら疾患の呈示、解説の他に若者への性感染予防啓発のシンポジウムもありました。
その中で、「高校卒業時の同窓生へのピアエデュケーション経験」という講演を大学1年の女子学生が行いました。香港生まれというから、帰国子女でしょうか。エイズ撲滅活動のボランティア活動などを通じて、若者の性感染症について他人事としてではなく、自分自身の事として予防啓発に努めていこうという意識に目覚めた人でした。利発で分かりやすく、明快な話し方で仲間に訴えた性感染予防啓発の内容を我々にも話してくれました。
こういった内容の話を学校の教師や医師やいわゆる学識経験者といわれる人が若者に話すと得てして上から目線というか、説教口調になり勝ちです。これが同じ仲間の提言だと抵抗なく同世代に受け入れられるのでしょう。出席者のアンケートにも好意的な意見や、辛い思いをした女子からのもっと早くに知識を持っていれば、という後悔の思いや、男子学生からの男子がもっと女子を大切にしなければ、基本的な知識を教わって来なかったので非常にためになった、等の意見が述べられたとのことです。
こういう草の根の運動がもっと拡がっていけば若者の性感染症の予防にももっと役立つと思いました。
性感染症は感染症の中で重要な位置を占めていますが、普段の外来診療ではほとんど相談を受けたことがありません。若者の、ましてや若い女性から性病の相談を受けたこと等皆無です。かつては皮膚科は皮膚病花柳病科(性病科)と呼ばれた時代もあった程、治療の中心にあった科ですが、近年はすっかりマイナーな存在になってしまった感があります。今回の研究会でも皮膚科医はほとんどいませんでした。しかし、皮膚症状や粘膜症状を見る目や、梅毒、ヘルペス、コンジローマの治療などはやはり皮膚科専門医の存在価値を示すものです。性器ヘルペス、コンジローマは時々みうけますし、本人が意識していないながら梅毒も稀にみることはあります。逆にフォアダイス状態などの独立脂腺などをいぼなどの性病と思い悩んでいるケースもあります。気がかりであれば、やはり専門医に相談してもらいたいと思いました。
今回の研究会に出てみて性教育の話、パラメディカルの人の話など、参考になりインスパーヤーされました。機会があったらまた出席してみたいと思いました。

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