にきびQ&A(10)その他の治療、悪化させる薬

Q:にきびの治療法で、その他の方法はありますか。
A:いくつかの薬剤があります。
1) 経口避妊薬(ピル)
ピルは卵巣性のアンドロゲンや副腎性のアンドロゲンを低下させる作用があります。低用量ピルに含まれるエストロゲンは血中の性ホルモン結合蛋白を増加させ、遊離テストステロン(FT)を減少させる作用があります。
日本では中用量ピルや低用量ピルでのニキビ治療の報告があり、いずれも血中のFTを低下させ、ニキビへの効果があったそうです。
そして、第3世代1相性ピルのマーベロンが最も効果があったそうです。
しかし、ピルには肥満、高血圧、血栓症などの副作用があり、子宮頚癌や乳がんのリスクを高める可能性もあるとのことでニキビ治療に対する安易な治療は避けるべきとされています。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、「他の治療が不十分で避妊を容認する成人女性に対してはピルを使用しても良いが推奨はしない、使用する場合は保険適用外であること、種々の副作用があることを十分に周知する」必要があるとなっています。

2)プレグナンジオール(ジオール)
プレグナンジオールは黄体ホルモン(プロゲステロン)の代謝産物として尿中に排泄されるもので、もうホルモン作用は有しないとされますが、黄体ホルモンと競合的に毛嚢脂腺に作用して黄体ホルモンの作用を弱める、また抗アンドロゲン作用によってニキビに効果を発揮するとされます。
ただ、プロゲステロンだけで、ニキビの悪化は説明できず、詳しい機序はまだよく解っていません。
ガイドラインでは「他の治療で改善が不十分な成人女性に対して、選択肢の一つとして推奨する」(C1)となっています。

3)スピロノラクトン(抗アンドロゲン療法)
高アンドロゲン血症によって、男性化がみられるために難治性のニキビができることが知られています。多のう胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)では、卵巣の多のう胞性の腫大、肥満、男性化、多毛、無月経を呈し、難治性のニキビができます。この様なケースでのニキビ治療に関しては、婦人科にて精査の上で、アンドロゲンの働きを抑制するスピロノラクトン治療が行われます。
スピロノラクトン(アルダクトン)は以前より、利尿効果があり、高血圧症に広く使われてきました。男性では女性化乳房、女性では月経不順などの副作用がありますが、ニキビに効果があります。ただし、保険適用はありません。
先日も、性同一性障害の女性の患者さんが来院し、男性ホルモンを使用し始めてからニキビが増えてきたと訴えられました。まさに男性ホルモン剤の作用を間近にみた例でした。

4)イソトレチノイン
ビタミンAの代謝産物で、脂腺の分化、増殖を抑制し、大きさを減少させ、皮脂の産生を抑制し、毛包漏斗部の角化異常を是正します。従って、欧米では重症の結節や膿疱例に対しては第1選択薬となっています。
米国ではアキュテイン、欧州ではロアキュテインの名称で難治性痤瘡に使用されています。しかし、これには重大な副作用があり問題になっています。その一つは催奇性があることです。妊娠中、可能性のある女性は使用してはいけません。また近年、イソトレチノインによるうつ病の増加と自殺率の上昇ということが問題になっています。先年のEADV(ヨーロッパ皮膚科学会)のニキビの講演でもこの事が話題にされていました。自殺の問題は統計上明確ではありませんが危険性はあります。
これらの事を兼ね合わせると、効果があるからといってネットなどで個人的に購入、使用することは厳に慎んで下さい。

Q:ニキビを悪化させるような薬剤がありますか。
A:いくつかの薬剤はニキビを悪化させます。
1)ステロイド
ステロイド剤の内服、外用でニキビは悪化し、また新たに出現します。特徴は病期のそろった紅色丘疹が多発してみられることです。
鑑別はマラセチア毛包炎です。これも形の揃った紅色丘疹がみられます。また面皰はみられません。
先日も、マラセチアの検査はできますか、という電話がありました。受診していただいて、診察すると胸に紅色丘疹が多発しています。ネットで調べてマラセチアと思い、マラセチアを専門の(?)東京の西の方の皮膚科まで行ったとのことです。そしてニゾラール(マラセチアの薬)を処方されて悪化したと来院しました。マラセチアの検査は出来ないので出来る皮膚科に行くように(??)とのことだそうです。均一な紅色丘疹はマラセチア毛包炎でも合っていますが、よく見ると毛細血管拡張があります。これはマラセチアではみられずステロイド皮膚の特徴です。以前ステロイド剤を使ったでしょう、と聞くと案の定美容形成・内科でフルコートを処方されしばらく使っていたということです。
こういう状態をステロイドによる「酒さ様皮膚炎」とよびます。使っていたステロイドを中止すると炎症の抑えが効かなくなって一時的に皮疹は悪化するのです。しつこく伝えていないと患者さんは止めて悪くなった、と混乱してしまいます。
ちなみにマラセチアはズームブルーという染料で染めます。ただ、かなり長くおかないと染まりません。患者さんも染まりませんでしたが、何時間か置くと染まってきたかもしれません。というのはステロイド痤瘡でもステロイドによってマラセチア真菌が増えているという報告もあるからです。
こういったsteroid acneはよく目にします。アトピー性皮膚炎など注意はしていてもステロイドニキビが多少なりとも出てしまうのはよくあります。

2)ダイオキシン
PCBのような有機塩素化合物はダイオキシン類と総称されて種類によっては、催奇性や発癌作用があります。
転写因子であるaryl hydrocarbon receptor(AhR)を介して生体に様々な影響をあたえます。皮膚にみられる症状は塩素ニキビ、色素沈着が特徴です。
塩素ニキビは尋常性痤瘡と異なり、眼の下、耳周辺、腋窩、鼠径部に好発します。
日本では1968年に発生したカネミ油症事件が有名です。
海外ではベラルーシ大統領のユーシェンコ氏が何者かにダイオキシンを盛られて顔面に塩素ニキビが多発した例が有名です。

3)EGFR阻害薬
EGFR(epidermal growth factor receptor)阻害薬は大腸癌、胃癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌など、EGFRを過剰に発現している癌に抗癌作用があるとされます。
皮膚では表皮、付属器などに多く発現されていますので、細胞の増殖・分化などが障害されてニキビ様の発疹ができます。セフキシマブ(アービタックス)に最も多く出現し、次いでエルロチニブ、ゲフィチニブに多くみられます。脂漏性皮膚炎を合併している

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