蕁麻疹(4)病型別特徴

蕁麻疹の分類についてまとめましたので全体像はつかめたかと思います。
それで、今回はそれぞれ細かく分類された病型の臨床的な特徴について、調べてみたいと思います。

*特発性蕁麻疹・・・特別な誘因がなく、毎日のように出没して、特に夕方から夜間にかけて悪化することが多いです。蕁麻疹の形状は円形、楕円形、地図状など多彩なことが特徴といえば特徴です。
急性蕁麻疹では風邪などの感染症症状が(特に小児で)、慢性蕁麻疹では疲労・ストレスが関連することが多いようです。
また成人女性では月経との関連を訴えるケースもあります。
膠原病との関連では全身性エリテマトーデス(SLE)との関連が多く、SLEの7%に蕁麻疹様症状が合併するといわれています。特に蕁麻疹様血管炎はSLEの初期症状となることがあります。
また内臓悪性腫瘍、胃潰瘍でのピロリ菌感染も関連があるとされますが、どのような機序で結びついているのかは明確ではありません。
慢性蕁麻疹ではまた、B型肝炎、C型肝炎との関連もあるとされ、甲状腺疾患を合併するケースもあります。特に女性の場合は甲状腺機能をチェックしておくこと良いかもしれません。
慢性蕁麻疹の30~60%で抗IgE抗体、抗FcεRI抗体などの自己抗体が認められますが、時々蕁麻疹がでる理由がよく説明できず、自己抗体が直接の原因かどうかは未だ不明です。
また、近年特発性の蕁麻疹ではDダイマーやFDPなどの凝固因子の血中濃度に異常が見出されています。凝固反応の過程で形成される凝固因子が蕁麻疹の誘発の原因になっている可能性もあり、抗凝固剤が抗ヒスタミン剤の効かない蕁麻疹に有効だったという報告もあるそうです。
 ただ、これらさまざまな検査異常や、関連の因子は直接の原因というよりも蕁麻疹を誘発する背景因子として捉えたほうが良さそうです。
また、このタイプではステロイド剤の全身投与が効果があることも特徴です。ただし、治療の原則は抗ヒスタミン剤ですので安易なステロイド剤の内服などはお勧めできません。

*刺激誘発型の蕁麻疹
特定の刺激ないし負荷をかけることによって蕁麻疹が誘発できるタイプのものです。
1) アレルギー性の蕁麻疹・・・食物、薬品、植物(天然ゴム、ラテックスを含む)などの摂取、曝されることによって生じます。特異的IgEを介したⅠ型(即時型)アレルギー反応でもっとも典型的な蕁麻疹のアレルギー反応といえます。このタイプではアナフィラキシー反応といってショックなどの生命に危険な状態も起こす可能性もあり得ることを知っておくことが必要です。
最も典型的な即時型アレルギーですが、ヨーロッパアレルギー臨床免疫学会のガイドラインではこれは蕁麻疹の分類には入っていないそうです。その理由は「症候の一つとして蕁麻疹が生じる医学的状態、例えばプリックテストや、日常的には症状が出ない急性のアナフィラキシーは蕁麻疹とは区別する」からだそうです。
食物を摂取して口腔粘膜の痒み、浮腫などを主症状として発症するⅠ型アレルギーを口腔粘膜症候群と呼びます。大きく3群に分けられています。、
1. 食物による消化管感作(クラス1食物アレルギー)・・・乳幼児などに多いタイプで学童期には耐性を獲得するケースが多いですが、ナッツ類ではアナフィラキシーに発展するケースが多いとされます。
2. 環境抗原との交叉反応(クラス2食物アレルギー)・・・花粉―食物アレルギー症候群、ラテックス―フルーツ症候群があります。特に後者はアナフィラキシーを発症し易いといわれていますので注意が必要です。天然ゴム製品を頻繁に使用する職業の人(医療従事者、美容師、ゴム製造業、患者など)に多いといいます。
3. 食物による経皮・経粘膜感作・・・調理師、主婦、美容・趣味などで頻繁に食品に触る機会のある人、特にアトピー性皮膚炎などで皮膚バリアのある人にリスクが高いとされます。チコリ、レタス、小麦、魚など。

2)食物依存性運動誘発アナフィラキシー・・・食物摂取だけではなく、それに加えて運動すること、あるいはアスピリンなどのNSAIDs(消炎鎮痛剤)を内服することで症状を誘発するものです。食品蛋白質は腸管から吸収されますが、運動や薬剤によって腸管上皮の吸収が亢進され、アレルギー反応を誘発します。
小麦によるものが有名です。(ω-5グリアジン、高分子量グルテニンが主要抗原)また魚介類、特にエビによるものも有名です。

3)非アレルギー性の蕁麻疹・・・食物で生じる蕁麻疹でも非アレルギー性のものがあります。食品中に含まれるヒスタミンやヒスタミンン類似物質を含むもの、不耐症(イントレランス)によるものがあります。サバやマグロなどはヒスチジンを多く含み長時間放置すると酵素によってヒスタミンを生じます。これによって非アレルギー性の食中毒様の蕁麻疹を生じることがあります。これを仮性アレルゲンと呼びます。非アレルギー性なので通常のアレルギー検査では検出できません。
豚肉やタケノコもヒスタミンを含みます。なるべく新鮮なものを食することが大切です。

4)不耐症(イントレランス)
アスピリン不耐症・・・アレルギー機序ではない薬理作用によって蕁麻疹や喘息を生じることがあります。食品中の防腐剤、保存料、着色料などとの交叉過敏性があります。
タートラジン(黄色4号)、黄色5号、赤色2号、赤色102号など
亜硝酸過敏症・・・酸化防止剤として食品に広く含まれます。保存剤、漂白剤としても使われています。
グルタミン酸ナトリウムも仮性アレルゲンとして蕁麻疹を生じさせることがあります。
造影剤によるものもこのタイプに含まれます。

5)コリン性蕁麻疹・・・粟粒大から小豆大の癒合傾向のない小さな蕁麻疹ができ、周りを紅斑に囲まれることもあります。痒みよりもピリピリした痛みを感じることも特徴です。体温が上昇するようなこと、運動、入浴、熱い食物、辛い食物、精神的な緊張で誘発されるのが特徴です。
それで、通常は夏季の暑い時期に症状が悪化します。
原因は明確ではありませんが、ヒスタミン、アセチルコリン、汗アレルギー、血清因子があげられています。

6)物理的蕁麻疹は蕁麻疹全体の約10%を占めますが、物理的な刺激によって蕁麻疹が誘発されることを問診すれば比較的簡単に原因が推定されます。
それぞれに、誘発刺激試験が用意されています。

多くの蕁麻疹は自発的に皮疹が現れて特別なエピソードはないのですが、(むしろストレス、寝不足、お風呂、お酒などの非特異的なことが多いのですが)
、中には特定の刺激に反応して皮疹が誘発できる場合があります。
誘因は上にあげた様に多彩ですが、「蕁麻疹の原因は何ですか?」の解答の一助になればと長々と書きました。
「これがあなたの蕁麻疹のアレルギーの原因です。」という答えを期待していた方にはすっきりしない結果かもしれませんが、逆に意味のない検査をむやみに繰り返すことの不必要なことは少しは分かっていただけたかと思います。
 学術的には意味のある検査でも、日常の生活、対応にはあまり関係のないものもあります。
秀先生の講演の際に紹介されたクリーグランド・クリニックの検査報告は一つの示唆になります。
300数十例の蕁麻疹の患者さんに各種のアレルギーを含めた血液検査、一般検査などを行い、187例の追跡調査ができました。そして、検査によって治療方法、蕁麻疹への対処方法が変わったかどうが調べたところほとんどの例で変わらず無関係だったとのことです。
秀先生は蕁麻疹の出現を「ダイアルロック理論」と銘打って説明されていました。
蕁麻疹の症状は皮膚マスト細胞の急激な脱顆粒で出現します。それには直接因子や背景因子(主として内因性、持続性)などさまざまな因子が関与していますが、その積算が一定の閾値を超えたときに誘発されるというものです。あるいはいくつかのダイアルロックが揃ったときに鍵穴が開く、と言っても良いかもしれません。
 逆にいずれかの因子が除去されて積算量が反応閾値を下回れば症状は消失する、といった理論です。
 これは、蕁麻疹の患者さんが実際に生活していく上で現実的で役に立つ考え方だと思いました。あまり一人の犯人探しに躍起になる愚は避けたいものだと思いました。

参考文献

秀 道広 ほか:蕁麻疹診療ガイドライン.日皮会誌:121(7),1339-1388,2011

皮膚科臨床アセット 16 蕁麻疹・血管性浮腫 パーフェクトマスター
総編集◎古江増隆 専門編集◎秀 道広  中山書店 2013

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