「いぼ」について考える

疣(いぼ)について、考えてみました。疣はポピュラーな病気で、毎日のように疣の患者さんが受診します。大体は目でみれば診断は容易に付きますが、中には疣、魚の目と自己診断されたものが、皮膚癌だったりすることもありますので、やはり皮膚科専門医に診てもらうことが大切だと思います。
かつて、大学勤務時代に疣・魚の目と自己判断し、赤い肉芽腫を削ったり、たこの吸い出し膏薬などを使用していた方が手遅れの無色素性悪性黒色腫だったことがありました。この方は不幸にして残念な経過をとりました。
また、年寄りの疣だと思っていたものが、日光角化症(有棘細胞癌)だったり、基底細胞癌だったりする例もたまにありました。
話を、本物の疣に限ってみても、治療に関してはなかなか治らず、悩ましい思いをすることが結構あります。  
疣はウイルスによって感染する皮膚疾患ですが、免疫力によって自然治癒することもあります。逆に先天的に免疫力の低下した稀な疾患、疣贅状表皮発育異常症では、疣は全身に拡大していき、遂には悪性腫瘍を生じることもあります。
疣の治療はホームページに書きましたように、液体窒素によるいぼ冷凍凝固法、いぼ焼灼法などの疣の組織を根こそぎ剥ぎ取るような痛みを伴う強力な治療法から、漢方薬を飲んで免疫力を賦活するなどの優しい治療法まであります。いってみれば、北風療法と太陽療法の例えに相当するかもしれません。
現在の保険診療で疣に対する適応が認められているのはほぼ上記の治療法のみです。しかし、いずれも治療成績は一定していません。すぐに治るケースもありますが、何カ月も何年も皮膚科に通っているのに治らないというケースもあります。
それで、疣の治療は民間療法も含めて、保険適用外の治療も多種多様あり、それぞれの皮膚科医が苦労し工夫し治療しているようです。中には「いぼとり地蔵」が良いとするものもあります。いずれも、上記の北風と太陽の間のどこかに位置する治療法といっていいかと思います。
このようにいぼの治療成績が一定しないのは、患者サイドの疣に対する免疫力が個人、個人で異なっていることによると思われます。
それでも、やり方によって治療成績を上げることも可能かと思います。思いつくままに、経験したエピソードを列記します。
*昔、疣の処置をやっていると、教授がそんな生ぬるいやり方ではだめだと、大きな綿棒にたっぷり液体窒素を含ませて疣の周りが真っ白くなるまで何回も処置を繰り返しました。患者さんは痛さを必死で我慢しているようでした。それから数日して、疣の周りまで大きな水疱になって歩くのもままならないといって再受診しました。患者さんはとても辛そうで不満げでしたが、長らく治らなかった疣が水疱の治癒と同時に治っていました。耐えられるならば強力にやるのが効果的でしょう。但し、水疱を作って苦情を言われたことは度々あります。
*足底の大きな疣の女子がいました。大きく盛り上がって周りが赤くなっています。化膿しているかと思って、抗生剤、痛み止めを内服してもちっとも効きません。液体窒素をいくら頑張っても効きませんし、痛がって手も付けられません。本人も母親も不安になり、次第に不信勝ちになってきました。本当に疣ですか、という始末です。削って少しでも疣の体積を小さくしようとしましたが、痛がって処置もままなりません。仕方なく局所麻酔をして削ることにしました。最初は痛がっていたものの麻酔が効いたのでこことばかり疣の底まで削りました。少し血は滲んでいたものの、この時とばかり強く液体窒素を押し付けました。この時を境に疣は急速に縮んでいき、周りの赤みもなくなっていきました、多分体が疣と戦っていたのでしょう。結果として強力な治療法も良い場合もあると思いました。
ただ、手術療法は一般的とはいえませんが。
*足底の疣は治りにくいのですが、ブレオマイシンという抗がん剤を薄めて局所注射するのはうまくいくとかなり効果的でした。但し、麻酔薬を混ぜてもその痛みは激しいものがありました。痛い程度に表皮基底部分に射ち当てるのがこつですが、深くやりすぎると皮膚の壊死を起こす恐れもあります。適当に射つのが難しいのと、痛みが辛そうなので現在はやっていません。
*炭酸ガスレーザーも効果はあります。しばらくやっていましたが、皮膚の焦げる臭いはしますし、蒸散した空気中にもウイルス粒子が散らばるとのこと、やりすぎると火傷痕に残ることなども考慮し、現在はやっていません。
*漢方薬のヨクイニンは不思議な薬です。長年治らなかった手の多数の疣の患者さんが、内服後1カ月でほぼきれいになった例がありました。これは効いたなと思う例は多数あります。ところが、いくら飲んでもちっとも効かないという人も多くあり、この見わけがなかなかつきません。多分免疫力の違いなのでしょう。
*疣のなかでも、青年性扁平疣贅は自然治癒の多い疣です。手や顔に多数でき、ひどくなって赤く膨らんできた、といって受診した患者さんには厳かに、「これは良い兆候です。数週間すると治ってきますよ。」といってヨクイニンを渡すと大体治ってきます。このような時は易者か占い師になったような気分です。名医かなとも思いますが、たまに外れる時もあり、こうなると藪医者に格下げです。
*疣には暗示療法というのもあります。得てして、医師を信用していて積極的に治療をする方が治癒率が高いように思われます。(科学的ではないですが) それで、はかばかしくない場合は思い切って主治医を変えてみる(ころころ変えるのは賛成し兼ねますが)のもありかと思います。
*フェノールやステリハイド、モノ・トリクロル酢酸もうまく利用すると疣が腐食し剥がれて良いとのことですが使用には注意が必要です。

「たかが疣、されど疣」、ウイルスの遺伝子配列は全て解明され学問は進歩しているのに疣の治療は一筋縄ではいきません。あまり治療に関してウイルス学者の講演も聞きません。それ程に現代の科学を越えたところの何かがあるように感じます。皮膚疾患解説の疣の項目も参照してみて下さい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)