麻疹(はしか)
  麻疹(はしか)

病因
麻疹ウイルスの感染によります。麻疹ウイルスはパラミクソウイルス科に属する一本鎖 RNAウイルスで直径100-250nmで二重膜のエンベロープを持ちます。感染力は強く空気感染・飛沫感染し、抗体のない小児が暴露されると、感染率は90%以上とされます。小児にみられますが、最近は成人例もあります。春季に多く小流行がみられます。

症状
カタル期:感染後およそ8〜12日の潜伏期を経て38〜39度の発熱、全身倦怠感が2,3日続きます。眼球、眼瞼結膜の充血や咽頭痛、咳、くしゃみ、鼻汁などの上気道症状(カタル症状)がみられます。
発疹期:一旦解熱し再び39〜40度の発熱がみられます。この時期に発疹、口内のKoplik斑ももみられます。Koplik斑とは、口腔内頬粘膜・歯肉の点状の白斑で麻疹に特徴的にみられるとされます。発疹はまず顔から始まり、急速に体幹部、四肢に拡大します。個々の赤みの大きさは人差し指の爪甲大位までで、融合傾向が強いですが、所々に健康な皮膚を残します。上気道症状や消化器症状(下痢、吐き気、嘔吐)を呈します。全身のリンパ節は腫脹します。
回復期:発疹期が5〜6日続いた後急速に解熱し、発疹は落屑となり色素沈着を残して治癒します。

診断
血清診断:
*IgM ELISA・・・発疹出現後4日〜28日
一回の検査で診断可能ですが、偽陽性、偽陰性の例が見られ注意が必要です。伝染性紅斑(りんご病、パルボウイルスB19感染症)突発性発疹(ヒトヘルペスウイルス6、7(HHV-6,7))デング熱などで麻疹IgM抗体が弱陽性にでることがあります(偽陽性)。また逆に発疹出現後4日以内の麻疹や、修飾麻疹(後述)の場合は抗体が陰性となり、検出されない場合もあります(偽陰性)。
*IgG ELISAペア血清・・・1回目:発疹出現から7日間  2回目:1回目から2〜4週後  抗体価の陽転、または有意の上昇で診断
ウイルス検出
ウイルスの分離・培養・・・咽頭ぬぐい液、血液、尿  カタル期ならびに発疹出現後7日間
ウイルス遺伝子の検出(RT-PCR,Realtime PCR/LAMP)・・・咽頭ぬぐい液、血液、尿  カタル期ならびに発疹出現後7日間
以上のことから分かるようにIgM検査には限界があります。PCR検査によるウイルスの検出が麻疹診断の確実な手段といえます。

合併症
一般的に予後は良好ですが、脳炎、肺炎、中耳炎、血小板減少症などがあります。成人では小児より重症化するとされます。

治療
麻疹の治療は対症療法で、解熱剤、補液などそれぞれの症状を和らげる療法が主体になります。重症例ではγーグロブリン製剤の使用、二次感染があれば抗生物質を使用します。

非典型的麻疹
異型麻疹
1966年から不活化ワクチンと弱毒生ワクチンが使用されてきましたが、この不活化ワクチンを接種された人が後に麻疹に感染すると中毒疹様の発疹を生じ大葉性肺炎を発症するなどの問題が生じ1971年にこのワクチンは中止になりました。従って近年では異型麻疹の発症はごく稀です。
修飾麻疹
麻疹のワクチンを接種しても十分な免疫が得られない場合をprimary vaccine failure(PVF)(2〜3%)、接種したが免疫が低下した場合をsecondary vaccine failure(SVF)(10%)といいます。このような状態(SVF)で麻疹に暴露すると軽症の麻疹「修飾麻疹」を発症します。カタル症状、全身症状も軽く、軽度の紅斑、丘疹で終わってしまう例もあります。またKoplik斑も見られない例が多いです。但し、症状は軽くても伝染力はありますので、麻疹と気付かずに伝染させてしまうことがあり注意が必要です。2007年には大学生を中心に成人麻疹の大流行が起きましたが、修飾麻疹も多くみられました。

予防
母体から移行する麻疹抗体は生後6カ月で消え始め、12カ月で完全に消失します。 また1回接種では前述のようにPVF,SVFがあるため欧米などでは多くの国で乳児期、学童期の2回接種が行われています。これらのことから、本邦でも2006年から麻疹・風疹混合(MR)ワクチンが導入され、第1期は生後12カ月から24カ月まで、第2期は5〜6歳の接種が開始されました。さらに2007年の大流行を受け2008年から5年間は第3期中学1年生、第4期高校3年生に相当する1年間にもMRワクチンを接種するようになっています。麻疹の流行を減らすためには接種率を95%以上に保つ必要がありますが、現在はまだ80%程度とされます。流行阻止のために対象になっている人は是非接種するようにして下さい。

WHOは2012年までに日本を含む西太平洋地域に於いて麻疹を撲滅するという目標を定めました。これに向かって2008年から麻疹の全数届け出を定めワクチン接種も1〜4期と排除の努力がなされていますが、まだ十分な接種率には至っていない状況です。