単純ヘルペス
 
単純ヘルペス


●病因
単純ヘルペスウイルス1型(Herpes simplex type 1: HSV-1)と2型(HSV-2)による接触感染で発症します。1型は顔面など上半身の病変に多く、2型は陰部、臀部など下半身の病変に多いですが、いずれの型も全身の神経節に潜伏感染を起こし、病変を発症する可能性があります。初感染後にウイルスは知覚神経末端から上行性に神経節に運ばれ、神経細胞の中に遺伝子の型で潜伏します。初感染は不顕性感染のことが多く症状は出ず、発症は10%程度とされます。
●症状
【ヘルペス性歯肉口内炎】
HSV-1の初感染は殆どが不顕性感染(無症状)ですが、一部ではヘルペス性歯肉口内炎を起こします。乳幼児が主ですが、時に成人でも発症します。感染後、2−7日の潜伏期を経て不機嫌、発熱、のどの痛みなどを伴って、口腔粘膜、舌、口唇に小水疱が多発し、びらん、潰瘍となります。歯肉は発赤、腫脹しリンパ節腫脹を伴います。痛みのために飲水、摂食障害などを起こすことがあります。 (写真1,2)
【口唇ヘルペス】
直接接触、唾液などから感染します。初感染後は、三叉神経節などに潜伏感染し、風邪などの発熱や、日光、ストレス、疲労、月経などの誘因によってウイルスが再活性化し発症します。ぴりぴり感、違和感、熱感、痒みなどの前兆があり、浮腫性の紅斑を生じ、小水疱や膿疱となります。その後、破れてびらん、痂皮(ただれ、かさぶた)を生じ1週間程で治癒します。全身症状は殆どありませんが、所属リンパ節の腫脹があることもあります。 (写真3,4,5)
【顔面ヘルペス】
再発ヘルペスが、口唇以外の顔面にも発生することがあり、顔面ヘルペスと呼びますが、眼の周辺に生じた時は、角膜ヘルペスなどの眼病変を起こし、視力障害など起こす事がありますので注意が必要です。 (写真6)
【Kaposi水痘様発疹症】
アトピー性皮膚炎、ダリエ病などの皮膚炎の上にヘルペスウイルスが感染し、自家接種によって広範囲に小水疱が拡大します。発熱と共に最初は限局していますが、すぐに播種状に拡大して、一見水痘様に見えます。膿疱となって4−5日で痂皮を形成しますが、新しい皮診を次々に生じて拡大し、時に細菌の二次感染を起こします。多くはHSV-1の初感染によりますが、再発による場合もあります。 (写真7,8)
【ヘルペス性?疽】
口腔内からのHSV-1感染が多いですが、最近は陰部からのHSV-2感染が多くみられます。ささくれなどの小さな傷から感染し、指先に小水疱、膿胞ができます。自発痛が強いです。小児は指しゃぶりなどから感染し、成人では歯科医などの医療従事者に見られます。 まれにHSV-2による場合もあります。
【性器ヘルペス】
成人男子の亀頭、包皮、女子では、陰唇、膣、会陰部などに小水疱、びらん、潰瘍を生じ、疼痛が激しく、リンパ節腫脹、排尿困難が見られる事もあります。女性では性器局所の熱感、違和感、倦怠感、発熱などの症状が先に現れる事があります。一般的に男性ではその前駆症状は女性に比べて軽い傾向があります。
性行為で感染することが多く、性感染症(sexually transmitted infections: STI)の一つに含まれています。HSV-2による感染が多いとされていますが、HSV-1のケースも多く見られます。初感染の際の症状は再発より重くなりますが、HSV-1の方が、より重症化する傾向があります。
再発性の性器ヘルペスでは、大多数がHSV-2によるものです。
比較的高齢者になると、再発病変が殿部に移動して発症することもあります。
出生時に産道からHSVの感染を新生児が受けると新生児ヘルペスを発症することがありますが、重症になり易いです。
●治療
・軽症
アシクロビル(ゾビラックス)200mg錠を1回1錠、1日5回内服します。それを連日5日間持続します。またはバラシクロビル(バルトレックス)500mg錠を1回1錠、1日2回内服します。
再発型の軽症例ではアシクロビル軟膏、ビダラビン軟膏を1日数回塗布します。但し、表皮内の薬剤浸透量を保つためには内服が原則です。
・中等症
上記内服療法を行います。
・重症
アシクロビル注射用(1バイアル250mg)5mg/kgを1日3回7日間点滴静注します。
髄膜炎、脳炎、エイズ患者などの免疫不全患者の場合のような重症の場合は大量長期の 薬剤使用が必要になってきます。
・性器ヘルペス再発抑制
おおむね年6回以上再発する人が対象になります。
バラシクロビル(バルトレックス)1日1回1錠を連日内服します。1年以上の継続投与後一時中断して、それでも再発が頻回ならばさらに継続します。
これらの、抗ウイルス薬は腎臓で排泄されますので、高齢者、腎機能低下の場合は使用量、間隔を変えるなど減量して用います。また水分摂取を十分にして浮腫み、脳症などの副作用に注意を払う必要があります。

●生活上の注意
単純ヘルペスは、親子や夫婦など家族内の感染が多いですので、症状のある間はほおずりやキスなどの接触は避けること、タオルなどの共用はしないことなどなど、接触感染しないように注意する必要があります。
抗ウイルス剤を内服中はたくさんの水を飲み、腎臓に薬剤が蓄積しないようにします。また尿量が減少したり、浮腫みがでたら、薬剤の副作用も考えて主治医に相談することが大切です。
ヘルペスの症状が出ている時期は性行為は避ける必要があります。


参考文献

皮膚科臨床アセット 3 ウイルス性皮膚疾患ハンドブック   
総編集◎古江増隆 専門編集◎浅田秀夫 中山書店

標準皮膚科学 第8版 監修 西川武二 編集 瀧川雅浩 富田 靖 橋本 隆    医学書院