疣贅(ゆうぜい)、いぼ
  疣贅(ゆうぜい)、いぼ

病因
パピローマウイルス科に属するヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus:HPV )が皮膚、粘膜上皮に感染して生じます。近年ウイルスDNAをクローニングする技術の開発によって150種以上のサブタイプが知られています。そのタイプによって臨床病型に違いが見られます。できやすい感染部位によって皮膚型と粘膜型、悪性腫瘍発症に関してハイリスク型、ローリスク型に分けられます。

臨床型 主なHPVの型
[皮膚型] 良性  
  ミルメシア 1
  尋常性疣贅 2
  青年性扁平疣贅 3,10
  疣贅状表皮発育異常症 多種のサブタイプ
[皮膚型] 悪性  
  疣贅状表皮発育異常症 多種のサブタイプ
[粘膜型] 良性  
  尖圭コンジローム 6,11
[粘膜型] 悪性  
  子宮頚癌,外陰部癌,Bowen様丘疹症 16


病因・病態
主にHPV2の感染によって起こります。このタイプが疣贅(いぼ)の中で最も多く、9割以上を占めます。
各年齢層に発症しますが、最も多いのは8歳をピークに6〜12歳です。
下肢、上肢、躯幹の順に多いですが、最も多いのは手指、足指(足趾)です。

症状
数mmから1cm位までの表面がざらざらして盛り上がった角化性の丘疹が基本型です。手足、膝など外傷を受けやすい部位に良く出来ます。(写真1−3)
顔、首などにできると外側に伸びる傾向があり、糸状疣贅、指状疣贅とも呼ばれます。 (写真4)
足底にできると、盛り上がりの少ない、表面がざらざらした角化性の丘疹または魚の目、タコ状になります。疣が複数癒合して敷石状になったものをモザイク疣贅といいます。 疣は一般的に表面がざらざらし、よく見ると黒い点がみえることがあります。これは、疣ウイルスが表皮の基底層部分で増殖するため、皮膚がでこぼこに隆起し、底の部分の毛細血管からの出血があり、固まって黒くみえるためです。これに対してたこは角質層が全体に厚くなっているために、ペンだこ、すわりだこなどのように、表面は比較的平らです。(写真5−7)
爪囲や爪下にできることもあり、治療が難しく、爪変形をきたすこともあります。 (写真8、9)

診断
専門医ならば眼で見ることによって、通常診断は容易です。しかし、特に年配者の疣は老人性疣贅、日光角化症、有棘細胞癌、その他の皮膚癌との鑑別を要することもあります。その際は皮膚生検をして、病理組織をみて確認する必要があります。
このように実は疣かと思っていて疣ではないこともありますので、自分で削ったり、膏薬を貼ったりせずに皮膚科専門医に診せることが大切です。

<<青年性扁平疣贅>>

病因・病態
主にHPV3,10,28の皮膚への感染によって発症します。
疣は小さな外傷から感染しますが、特にこの型では、顔、四肢の剃毛が関与しているとされます。特に最近は若い女性の四肢の剃毛の習慣から増加傾向にあるとされます。
それで、女性の発症は男性の2〜3倍多く、顔、四肢特に手背、前腕に多くみられます。

症状
主に顔、手背に多発性に生じます。数mm大の皮膚色ないし淡褐色の扁平な隆起性の皮疹です。顔ではあまり盛り上がりませんが、手背では角化性の隆起した丘疹となり、癒合することもあります。引っ掻くことによって自家接種され線状に配列することもあります。これをKoebner(ケブネル)現象と呼びます。(本来のケブネル現象は乾癬などでみられ、擦ったり、刺激したりしてその本来の病変ができることをいうので、ここでの自家感染した場合は一寸異なりますが)(写真10)
青年性扁平疣贅は他のタイプの疣と比べて、自然治癒が多いことが知られています。これは感染細胞表面の腫瘍抗原に対して起こる拒絶反応、免疫反応であるとされます。
多発する疣が一斉に赤く盛り上がり、痒くなり、数も増えてくることがありますが、その時期が自然消退の前兆のことが多く、しばらくしてから治癒するすることがあります。

<<ミルメシア>>

病因・病態
HPV1による感染で発症します。病理組織学的に細胞内に特異な封入体が見られることにより、ミルメシアは封入体疣贅ともよばれてきました。しかし、近年その他の疣贅でも封入体がみられることが分かってきました。

症状
ミルメシアは蟻塚様の孤立性の丘疹を呈しますが、主に小児の掌、足底にみられ赤く、痛みを伴うことが多いです。

<<尖圭コンジローマ>>

病因・病態
HPV6,11型が外陰部に感染して発症します。主に性行為によって感染するので性感染症の一つに分類されています。
欧米では性的に活動性のある人のうち75-80%が一生に一度は子宮や外陰部などの粘膜型のHPVに感染するといわれています。近年日本でも若年者の罹患率が増えてきています。

症状
外陰部や、肛門周囲に乳頭腫状の丘疹としてみられます。大きくなると、鶏冠状やカリフラワー状の腫瘤を形成します。(写真11、12)

治療
残念ながら、確実に治癒させうる絶対的な治療方法はありません。また、疣はウイルス感染症ですが自然治癒することもある疾患です。ですから、治療を始める前に患者さんにこのことを周知、納得してもらってから治療を選択することが必要かと思います。
治療の選択で考慮するする因子は、患者さんの身体的・精神的な苦痛の程度、病変の大きさ・部位、罹っている長さ、患者さんの(疣に対する)免疫力、患者さんの希望する治療方法などです。また、治療による痛み、傷痕の残るリスクも考慮する必要があります。
乳幼児は、自然治癒が多いので、液体窒素による疣冷凍凝固法などの痛みのある治療は通常不必要です。
一般的に行われている治療方法を列記します。
*液体窒素療法(いぼ冷凍凝固法)
綿球法:綿球の先を細くして、液体窒素を含ませて疣に当てる方法で、いぼが白く凍結するまで当て、離して融解させることを反復します。組織は凍結壊死(cryonecrosis)に陥り、疣の組織が除去されます。この治療方法が標準の治療法ですが、痛みが強いことと、毎週行っても治癒に数カ月かかることもあり、それでも取れないこともあります。先端を冷やしたピンセットで疣とつまむ方法、スプレー法といって特殊な装置で疣に液体窒素を噴霧する方法などがあります。
施行後に、水疱、血水疱を生じることがありますが、我慢できればその位が効果は大です。但し、強すぎると潰瘍から瘢痕を作ることもあります。
*いぼ剥ぎ法
局所麻酔下に先の尖った鋏を使って疣を剥ぎ起こし切除します。電気焼灼などを併用することもあります。
*活性型ビタミンD3外用療法
本来は、乾癬、角化症治療剤ですが、単独またはサリチル酸(スピール膏)などと併用して外用し有効との報告もあります。
*炭酸ガスレーザー療法
疣の部位に局所麻酔をした後に、レーザーで蒸散させる方法です。うまくできれば治癒率も高いですが、深くやりすぎると瘢痕を残すことがあり、また蒸散によって空気中にウイルス粒子が飛び散る危険性もあります。
*ヨクイニン内服療法
はと麦の種子から得られるエキスです。ほとんどのタイプの疣に保険適応になります。もともと疣は自然治癒の期待できる疾患ですが、ヨクイニンは腫瘍免疫の賦活をもくろんで使用されます。内服後速やかに疣が消退することもありますが、効く場合とあまり効かない場合があります。
*シメチジン内服療法
H2ブロッカーで胃炎や胃潰瘍に用いられますが、これも免疫賦活作用、抗腫瘍作用があるとされます。効果例の報告もありますが、ヨクイニンと同様に効果が一定しません。
*イミキモド(ベセルナクリーム)
2007年から尖圭コンジローマに対して、イミキモドの外用が保険適応になりました。インターフェロンなどの産生促進によるウイルス増殖抑制作用や、細胞性免疫賦活作用によって効果を発揮するとされます。
*その他の治療法
レチノイドの内服、モノクロル酢酸、フェノール、グルタールアルデヒドなどの外用、抗がん剤のブレオマイシン局所注射、5FU軟膏の外用など種々の療法が試みられていますが、いずれも保険適応はなく細胞毒性など注意を要するものもあります。

一般的に3ヶ月以上同一治療を続けて効果がなければ、他の治療法に切り替えた方が良いとされます。あるいは、免疫機序、暗示効果を期待して医師を変えて軽快する例もあるとされます。