クロモミコーシス
  黒色真菌症(クロモミコーシス)

黒色調を呈する菌群があり、黒色真菌と総称されますが、その中でヒトに病原性を示すものの代表が黒色真菌症(クロモミコーシス)です。その他に、黒癬、褐色真菌性嚢腫などもあります。
黒色真菌症は、熱帯・亜熱帯の多湿地帯に多いとされますが、日本でも300例以上の報告があります。
●原因菌
土壌中に存在する菌が皮膚の外傷部位から侵入して発症します。Fonsecaea monophoraによって起こるものが最も多いですがPhialophora verrucosa などもあります。、諸外国では別菌種がみられます。(以前は Fonsecaea pedrosoiと呼ばれていた菌ですが、近年分子生物学的な手法を用いた再同定の結果F. monophoraということが確認されました。 矢口貴志 2007)
●症状
外傷を受け易い顔や四肢に出来易いです。丘疹から始まり、ゆっくりと拡大して暗紅色から紫紅色の局面性病変があり、表面には鱗屑、痂皮(皮むけ、かさぶた)を付着します。中心部が瘢痕性になったり、巨大局面や疣状の隆起性病変を形成することもあります。 そして辺縁は堤防状に隆起することもあります(図1)(稀にはリンパ節から内臓、脳などへ転移する例もあります。(小児、免疫機能低下の場合)
●診断
鱗屑、痂皮、あるいは分泌物のKOH直接鏡検で、球形で褐色の厚い細胞壁をもつsclerotic cell(硬壁細胞:SC)が、単数または数個集塊してみられます。(図2)
病理組織:表皮は偽上皮腫性過形成を示し、伸長した表皮が異物を取り囲んで排出する経表皮排除現象がみられます。真皮内に慢性肉芽腫性炎がみられ病巣内にSCが間質内に、または巨細胞内に単数、または複数認められます。【HE染色弱拡大】(図3)【PAS染色強拡大】 (図4)
巨大培養:Fonsecaea pedrosoi(F. monophora)の巨大培養の肉眼所見を示します。サブロー・デキストロース寒天培地で27度で14日間培養すると直径2.5cm前後の黒色ないしオリーブ黒色の集落を形成してきます。表面に灰色の短毛(気生菌糸)が密生します。(図5)
黒色真菌症(クロモミコーシス) スライド培養:Fonsecaea pedrosoi(F. monophora)の顕微鏡所見を示します。Cladosporium様の出芽型、シンポジオ型(分生子がジグザグに木の葉様に小突起を生じる型)、まれにフィアロ型(分生子細胞の先端開口部より、襟状に産生される型)の分生子形成がみられる多形性真菌です。ここではCladosporium型の分生子形成を示します。(図6)
●治療
病変の大きさにもよりますが、可能であれば外科的に切除するのが最も確実で早い方法です。
薬物療法としては最近はイトラコナゾール100-200mg/日あるいはテルビナフィン125-250mg/日の内服が行われています。投与期間は通常数カ月かかります。但し、これらの有効率は60-70%とされていますので、内服1,2カ月で効果がよくない時は外科的切除、または局所温熱療法に切り替えます。
局所温熱療法とは、使い捨てカイロを病変部局所にに毎日10時間程圧抵する方法です。 有効例では1カ月程で効果が見られますので、さらに数カ月間続けます。
●経過、予後
皮膚の局所に留まっている時は、治療で軽快、治癒しますが、原因菌の種類や、患者の年齢、免疫力の状態によっては内臓や脳にまで転移し、不幸な経過をとることがあります。とくに小児の場合は注意が必要とされます。

文献 皮膚科サブスペシャリテイーシリーズ 
1冊でわかる皮膚真菌症 文光堂 2008
黒色真菌症 岩津都希雄