マラセチア感染症
  マラセチア感染症

Malasseziaは酵母に属する真菌の一種で癜風患者の鱗屑(皮膚表面のかさかさ)から見つかりました。この菌は自ら脂質を作れず、ヒトの常在菌なので体の皮脂の多い場所、頭部、首、躯幹に多く見られます。そして癜風、マラセチア毛包炎の原因菌になりますし、脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の悪化因子となります。
【癜風】
●症状
躯幹の上部、首、上腕に生じます。小さい斑点から大きい地図状の斑点を生じます。色は赤褐色の色素斑や、逆に白色の脱色素斑となります。英語名をtinea versicolorといいますが、玉虫色(versicolor)の由来はここからきています。表面をメスで擦ると米糠様の鱗屑が剥がれます。 (写真1)
●診断
剥がれた鱗屑を顕微鏡で調べると、くの字型に曲がった短くて太い菌糸がみられます。コットンブルー、メチレンブルーなどで染色するとよりはっきり見分けられます。 (写真2)
またWood灯(365nmの長波長紫外線)を当てると黄色調の蛍光を発します。
●治療
ケトコナゾール(ニゾラール)外用剤は高い抗菌力があり、有効です。
またルリコン、アスタットなども有効です。ラミシール、マイコスポールなどはやや効果が劣ります。外用を1カ月程続けます。脱色素斑は治癒後も数カ月続きますが、治療を続ける必要はありません。癜風は比較的治り易い病気ですが、逆にまた再発も多いです。高温、多湿を好む菌ですから、汗かきで油症の人は発汗後に必ずシャワーを浴びて清潔にし、風通しを良くするなどのスキンケアな必要です。
【マラセチア毛包炎】
●症状
6月から10月の夏季に主として躯幹上部に毛包一致性の紅色丘疹として見られます。すなわち赤いニキビ様の発疹ですが、白にきび、黒にきびなどの点(面ぽう)がみられないこと、膿胞(化膿した小さな点)がみられないモノトーンなのが特徴とされます。しかし実際診療していて、普通のにきびやアトピー性皮膚炎に出来易いステロイドによるにきびなどとの区別はかなり難しい印象を受けます。
●診断
丘疹をピンセットなどでつぶし、KOH液につけて顕微鏡で確認します。ただし、球形の胞子なので、油滴などと区別が難しいです。専門の先生はズームブルーで染色したり、皮膚生検(皮膚の一部を切り、顕微鏡でみること)などします。いきおい眼でみる診断になりがちですが、染色を取り入れたいと思います。
●治療
癜風と同様の外用剤治療を行います。治りにくい場合はイトラコナゾール(イトリゾール)内服100mgを連日行います。
【マラセチアと脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎】
●脂漏性皮膚炎
頭部、顔面、胸背部などの脂漏部位に赤くかさかさした湿疹を生じる慢性疾患ですが、皮脂腺の活動が活発な乳幼児期や中高年の男性に多く見られます。
 病変部からマラセチアがみつかることと、抗真菌剤で症状が軽快すること、動物実験で同様症状が再現できることでこの菌と病気の関連が深いといわれています。
●アトピー性皮膚炎
マラセチアとアトピー性皮膚炎との関係については明確なことはわかりませんが、アトピー性皮膚炎病変部にマラセチアの菌量が多いこと、マラセチア特異IgE抗体が上昇することなどから病気の悪化因子と考えられています。実際ケトコナゾール外用やイトリコナゾールの内服によってアトピー性皮膚炎が軽快する例も報告されています。

参考資料 皮膚科臨床アセット 皮膚真菌症を究める 中山書店2011