伝染性軟属腫(水いぼ)
  伝染性軟属腫(水いぼ)

病因
ポックスウイルスに属する伝染性軟属腫ウイルスが表皮角化細胞に感染して生じる感染症です。
ポックスウイルスは約50種もあり、昆虫に感染するエントモポックス亜科と脊椎動物に感染するコルドポックスウイルス亜科に分類されます。
伝染性軟属腫ウイルスには4種の亜科が知られており、通常の場合は1〜3型が、成人では4型が見られます。ウイルスは200−300nm程の大きさで楕円形をしており、ヒトに感染するウイルスの中で、最も大きなウイルスとして知られています。
感染はプールなどでの直接接触、またはタオル、ビート板などでの間接接触によります。プールや浴槽のお湯を介しての感染は否定されています。ウイルスは50度で失活します。

症状
直径1-3mmのドーム状に隆起した皮膚色ないし白色、時には淡紅色で表面に光沢のある小丘疹、小結節を作ります (写真1,2)。 大きくなると中央に窪みができるようになります(中心臍窩)。水いぼ自体は痒みはありませんが、時に周囲に赤みとかさかさを生じて痒みを伴うことがあります。これを軟属腫反応といいます (写真3)
特にアトピー性皮膚炎など皮膚が乾燥してバリア障害があると水いぼができ易くなりますし、また掻くことによって更に自家接種したり、二次的にとびひ(伝染性膿痂疹)を併発したりすることがあります。
でき易い部位は腋の下、側胸腹部ですが、全身どこにでもできます。顔、外陰部もでき易い場所です。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)/後天性免疫不全症候群(AIDS)エイズ感染症では軟属腫が多発し、大型の結節を生じます。成人で多発例、陰部に生じる例では性感染症としての側面も考える必要があります。

治療
自然治癒するもので、平均6ヶ月で自然治癒するとされますが、2−5年もの間治癒しなかった例も報告があるので、数の少ない初期のうちに積極的な治療が勧められます。
治療は基本的には、摂子(ピンセット)などでつまんで、白色粥状物質(軟属腫小体)を摘出することですが、痛みがあるのが欠点です。軟属腫小体はウイルスの感染で細胞が変性してできた塊です (写真4,5)
1,2個であれば、そのまま摘除しますが、多数になると無理ですので、痛みどめのテープが使用されます。これはペンレスといい、子供の注射の際などに用いられますが、1cm程度に四角く切って1時間程度貼っておき、その後摘除します。ペンレスは麻酔薬なのでアレルギーの生じる可能性があることに注意して使う必要があります (写真6)
 但し、ペンレスを使用しても泣いて暴れて取らせてくれない、取っても、取っても次々にうつっていく、アトピーなどで、掻いたり、ただれてとびひ状態、湿疹状態を混じる場合など他の治療方法を取らざるを得ない場合もあります。 その他にもさまざまな、治療法が試みられていますが、確実なものではありません。
*冷凍凝固法・・・いぼの治療に用いられる方法で、有効ですが、やはり痛みがあります。
*40%硝酸銀ペースト法・・・硝酸銀をペースト、団子状にして水いぼの頂点に塗布する方法で有効ではありますが、皮膚が黒変していくときに灼熱感を訴えることが多く、また乾燥前に触ったりすると黒いしみが付着する場合があります。
*サリチル酸(スピール膏)貼付方法・・・小さく水いぼの上に貼っておき、数日後に剥がすと皮膚がふやけて自然に軟属腫小体が排出されます。アトピー性皮膚炎などの場合、皮膚がただれたり、固定する絆創膏でかぶれたりすることがあります。
*ヨクイニン(ハトムギエキス)の内服・・・いぼの治療に用いられます。使用して効果的な例もありますが、むしろ無効な例が多い印象です。

普段の注意点
乾燥肌、アトピー性皮膚炎ではうつり易く、治りにくいので保湿などのスキンケア、抗アレルギー剤などの内服で掻かないように努めることが必要です。
バスタオル、下着などの接触でうつりますが、50度以上でウイルスは失活しますので、これらを共用しない、熱湯消毒するなどで感染を防ぐことが必要です。
プールでの感染が多いですので、原則として治癒まで水泳をさけることが必要です。ただ、水を介しての感染は否定的ですので、ウエットスーツなどの水着で肌の接触を避けるのも有効かと思います。

学校保健上の扱い
小児科、皮膚科の学会の統一見解は下記のようですが、種々の異なる見解もあります。
「伝染性軟属腫(みずいぼ):幼児・小児によく生じ、放っておいても自然に治ってしまうこともありますが、それまでには長期間を要するため、周囲の小児に感染することを考慮して治療します。 プールなどの肌の触れ合う場ではタオルや水着、ビート板や浮き輪の共用を控えるなどの配慮が必要です。この疾患のために、学校を休む必要はありません。」