パッチテスト                    2012.10

  アレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)は接触した物質が抗原となって皮膚炎を起こす、Tリンパ球を介した遅延型(W型)アレルギー反応です。【接触皮膚炎(かぶれ)の項目参照】このタイプのアレルギーの原因検査の方法としてパッチテストが有効です。

パッチテストの原理
ある抗原物質によって接触アレルギーになっている時は(例えば金属アレルギー)、全身の皮膚が一様に感作されていますので、かぶれた場所だけではなく全身がその物質によってかぶれる準備状態にあります。パッチテストはこの原理を応用して接触アレルギーの原因物質を検索する検査方法です。

パッチテストの方法
Finn chamber, Heye`s chamber,パッチテスト「トリイ」等を用いて上腕の内側や背中の外見上正常な場所に48時間パッチ絆を貼付します。軟膏や固形物は約5mm、水溶液の場合はろ紙に15μl滴下します。
48時間後にパッチテストユニットを除去し、数十分後テープ除去による刺激反応が消失してから1回目の判定をします。場合によっては貼付72時間後、96時間後、1週間後の判定を行います。

パッチテスト判定基準
国際接触皮膚炎研究班(International Contact Dermatitis Research Group:ICDRG)の判定基準で判定します。
ICDRG基準            反応

     -            反応なし
     +?           紅斑のみ
     +            紅斑+浸潤、丘疹
     ++           紅斑+浸潤+丘疹+小水疱
     +++           大水疱
     IR           刺激反応
     NT           施行せず
          +以上を陽性反応とする

高頻度で陽性になる物質については日本接触皮膚炎学会が至適濃度を検討して「ジャパニーズスタンダードアレルゲン25種類」が作られています(2008年)。
これは川村らにより、1970年に始められたものですが、1994年には24種類決定されましたが、その後の陽性率の変遷に伴って、いくつか差し替えがなされています。
当初は接触皮膚炎学会から入手できたのですが、薬事法の関係で入手できなくなりました。近年は鳥居薬品と海外技術交易(株)を通じてBrial allergenから輸入した抗原試薬で賄うという一寸面倒くさい入手方法になりました。

2010年からは佐藤製薬からパッチテスト6種類が発売になりました。
これは欧米で20年来用いられていたTRUE(Thin-layer Rapid Use Epicutaneous) TESTの日本版ですが、12種類のうちわずか6種類のみ発売されました。
これの利点は、レディーメイドの試薬で、アルミホイルの中にあるパッチユニットをそのまま背中に貼るだけでよいという利便性です。ただ貼るだけですから、準備の手間がかからず、誰でも一定のアレルゲン量が貼れ、3年間は保存が効くという優れ物です。欠点はまだ6種類のみの発売ということと、値段が高いということです。
米国ではこのTRUE TESTのみがFDAで認可され、12種で2枚シートで売られているとのことですが、日本でもこれが安価で使用できるようになればもっと普及するかもしれません。

ただ、パッチテスト自体が手間暇がかかり、医師・患者双方に負担がかかる検査で、しかも保険点数が低くなかなか普及しません。
しかし、原因がわからず、湿疹としていたものが原因の除去で治癒できる事を考えると有意義な検査といえます。ただ、金属アレルギーのように陽性といっても食物に含まれるもの、歯科金属など完全に除去できないものもあり、結果の意義の判断は慎重にするべきとの事です。

パッチテストの際の注意点
*パッチ絆創膏は濡れてはいけないので、貼付中は入浴不可です。ただし、濡れなければシャワーなども可です。
*皮膚炎が収まっていない時期に施行すると皮膚炎が悪化し易いので、落ち着いてから施行します。
*反応が陽性に出れば、その部分がかぶれ、シミになることもあります。

その他のパッチテスト

◇オープンパッチテスト
染毛剤、パーマ液、脱毛クリームなど。直径2cmの大きさに塗布して20分後に変化を確認し、洗い落とします。 その後、48時間、72時間後に判定をします。

◇光パッチテスト
上背部に通常のパッチテストと同様にパッチユニットを貼ります。但し、同じ物を2重に貼ります。そして、24時間後、ないしは48時間後に片方にUVAを照射します。一般にUVAを出す蛍光ランプを用います。照射量はヨーロッパでは5J から10J(ジュール)/cm2とされています。日本でも施設によって異なっており、一定の方式は決まっていないようです。最少紅斑量の2/3量としている教本もありますが、そもそもUVAでは紅斑はよほど大量に当てないと紅斑はでません。その後の判定はパッチテストの時と同様です。パッチテスト部で陰性で、光照射部で+以上であれば陽性で、光の影響によって皮膚炎ができたことが分かります。このような例を光接触皮膚炎といいます。
近年、ケトプロフェンという光感作物質の入った痛み止めの湿布薬で光かぶれの出るケースが多発しています。これは最近医師の処方箋がなくても薬局などで購入できるようになったために更に多くの発症例が出ることが懸念されています。

◇repeated open application test(ROAT)
アトピー性皮膚炎や化粧品かぶれなどで、パッチテストが困難だったり、反応が偽陽性ではっきりしない場合に有用です。化粧品など使用品を肘に一日2回反応が出るまで、あるいは出なくても7日間連続して塗布して反応をみる方法です。実用的で、使用可能な製品をスクリーニングするのに役立ちます。

ジャパニーズスタンダードアレルゲン25種(写真1)
Finn chamber,トリイパッチユニット(写真2)
TRUE TEST ユニット(写真3)
パッチテスト試薬 Brial Allergen 他(写真4,5)
パッチテスト陽性例(写真6)
成分パッチテスト例、ステロイド外用剤の抗炎症作用のために4日後に反応陽性 (写真7)
ケトプロフェン配合湿布薬による光接触皮膚炎 (写真8)
光パッチテスト陽性例 (写真9)

参考文献

高山かおる  接触皮膚炎診療ガイドライン  皮膚疾患最新の治療  2011-2012

鈴木加余子、矢上晶子、松永佳世子  ジャパニーズ・スタンダードアレルゲンの陽性率
                  臨床皮膚科 65,64,2012

松永佳世子  接触皮膚炎  皮膚科の臨床  51(11)特:49;1323,2009

殿岡永里加、中田土起丈  新しいパッチテスト試薬  臨床皮膚科 66,143,2012