伝染性紅斑(りんご病)
  伝染性紅斑(りんご病)

病因、疫学
ヒトパルボウイルスB19(最近の正式分類ではエリスロウイルスB19)による感染症で、顔の発疹がりんごの頬のようであるために俗に「リンゴ病」とも呼ばれます。感染は一過性で一度感染すると終生免疫を獲得します。
のど、鼻の分泌物から飛沫感染によってヒトに感染します。感染後約1週間でウイルス血症を起こし、呼吸器系からのウイルス排出は感染後7〜11日目に起こり、発熱などの感冒様症状を引き起こします。その後抗体が作られてウイルスは次第に減少しますが、感染後14〜18日後に発疹を生じるとされます。従ってこの時期(発疹出現後)になってからの登園、登校停止は感染防止の意味をなさないということになります。
ちなみに、このウイルスは1975年イギリスで肝炎ウイルスのスクリーニング中に偶然発見され、その時の検体番号がパネルBの19番だったことから、命名されたそうです。そして、1983年にこのウイルスが伝染性紅斑の原因であることがわかったそうです。
最近の流行はほぼ5年ごとで、風疹の流行とほぼ一致しますが、2000年以降はこの差がはっきりしなくなったとのことです。一年中発生しますが、冬から春にかけて多く、夏は少なくなる傾向があります。患者は集団生活をおくる5〜9歳がピークで、成人では抗体の保有率が上昇するために少なくなります。ただ、成人では症状が風疹に似るために誤診、あるいは見過ごされていることもあります。

症状
感染後、7〜11日後にウイルス血症に伴って、感冒様症状が発生します(発熱、咽頭痛、頭痛、筋肉痛、鼻水、下痢、嘔吐など)。小児では軽く、成人では強くでる傾向があります。感染後14〜18日後に両頬部に平手打ち様の熱感を伴う紅斑(リンゴのような赤み)を生じます。次いで腕、手の外側(伸側)に爪甲大の紅斑が出現し、これらは融合して、網目状、レース状となります。その後大腿伸側にも同様の紅斑が拡がります。皮疹は5〜10日程で四肢から消失していきます。ただ、発疹の出現するのはB19ウイルス感染症のうち、20〜30%といわれていて、多くは不顕性感染(症状の現れない感染)とされます。
(写真1,2,3)
発疹は一旦消失した後も、1か月以内では日光や入浴、刺激、緊張などで再燃することがあるので注意が必要です。
小児の感染では上記のように典型的な皮疹を呈しますが、成人の場合は非定型的で、風疹と似たような発疹をとることがあります。また、手足の腫脹や関節痛、筋肉痛を伴い関節リウマチや膠原病と似た症状を伴ったり、血管炎や紫斑を伴うケースもあり、診断はより困難になることが多いとされます。

合併症
造血障害
遺伝性の溶血性貧血(鎌状赤血球貧血症、サラセミアなど)の患者や、白血病などの貧血傾向の患者がこのウイルスに感染すると、重度の貧血を呈するとされます。これは、B19ウイルスが感染すると赤血球の前駆細胞で増殖し、細胞が破壊されるためです。
胎児水腫
妊娠20週までの妊婦が感染すると、胎児への感染がおこり、胎児は貧血のためにうっ血性心不全となり、胎児水腫となるとされます。そのため低出生体重児となることもあります。ただ、妊婦への感染がわかっても胎児水腫の発生率は低く、風疹のような奇形児を生じることはほとんどないとされます。

診断
血中IgM抗体は感染後7〜10日で上昇します。またIgG抗体は感染後2〜3週で上昇します。これらの抗体の上昇をみれば確定診断できますが、保険で認められているのは妊婦だ けです。

治療
B19ウイルスに対する根本的な治療薬はなく、各症状を軽減する対症療法となりますが、一般的には軽症のために、経過観察のみで良いです。
ただ、重度の貧血に対しては赤血球輸血が必要になります。また、妊婦から胎児が感染して貧血を起こした場合には胎内輸血の試みがなされています。

登園・登校
先に書きましたように、本症を予防するには、発疹出現1週間前に隔離しなければなりませんが、これは不可能なことです。発疹が出る時期はすでにウイルス血症は下火になっています。従って、患児の出席停止は無意味です。合併症、全身症状をみて出席の可否を医師が判断することになります。