細菌毒素関連感染症
  細菌毒素関連感染症

細菌の産生する毒素によって全身症状、皮膚症状がみられる皮膚疾患があり、細菌毒素関連感染症とよばれますが、下記の疾患が含まれます。

(1)ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
(Staphylococcal scalded skin syndrome:SSSS)
黄色ブドウ球菌が産生する表皮剥脱毒素(exforiative toxin:ET)が血流にのって全身皮膚に到達し、表皮の顆粒層に剥離、水疱を形成します。これらの疾患のなかでは比較的多く見られます。通常のとびひ(伝染性膿痂疹)や毛包炎、せつなどから始まることが多いですが、鼻腔内の定着している菌から始まることもあります。まず鼻、口囲、眼囲に紅斑、痂皮、水疱を生じ眼脂がみられます。患児は発熱があり、不機嫌、食欲不振になります。腋窩,鼠径部さらに全身に潮紅が拡大し、表皮がシート状に剥離し、浅在性熱傷様となります。諸所に水疱を形成してきます。表皮は摩擦により容易に剥離します(Nikolsky現象)。水疱のでき方は通常のとびひと同様ですが、とびひの場合水疱内にかならず菌があるのに対して、SSSSでは原則として無菌です。それは菌そのものではなく毒素が水疱をもたらすからです。症状は約1週間で極期に達しやがて落葉状に落屑(薄い膜状の皮むけ)が始まります。最近はMRSA(methicillin resistant Staphylococcus aureus)によるものが多くみられます。 (図1,2)
【治療】原則として入院加療を行います。補液など全身管理を行いつつ黄色ブ菌に有効な抗菌剤を多めに使用します。MRSAが分離された場合はバンコマイシン20mg/kgの点滴静注を行います。

(2)猩紅熱(しょうこうねつ)
化膿レンサ球菌(A群β溶血性レンサ球菌)の産生する発赤毒素≪streptococcal pyogenic exotoxins (erythrogenic toxins)A,B,C≫によって発疹が生じます。咽頭炎、時には皮膚の感染症が先行して、普通2日以内に発疹が生じます。
 高熱、咽頭痛、頭痛、嘔吐などが突然生じます。首、腋、体幹部に一面に紅斑が生じ全身に拡大していきます。また点状の紅色丘疹が密生します。手の甲は紙やすり状のざらざらした外観を示します。顔も赤くなりますが、口の周囲のみは白くなるのが特徴です(口囲蒼白)。痒み、ひりひり感があります。咽頭は発赤し、舌はいちご状にぶつぶつになります。白色いちご状舌で、白苔がとれると赤色いちご状舌となります。3−10日で薄皮がむけて治癒しますが、最後に手足の膜様の落屑が特徴です。
1897年制定の伝染病予防法では、法定伝染病でしたが、抗生物質の進歩などにより、軽症例が多く、2008年には削除されました。
【治療】ペニシリン系の抗生剤によく反応しますが、急性糸球体腎炎、リウマチ熱が併発することがありますので、10日以上十分に抗生剤を内服すること、当分は激しい運動を控え1カ月は検尿をすることが必要です。
細菌培養で化膿レンサ球菌を検出しますが、酵素免疫法を用いた迅速診断法は外来で10分以内に結果が出ますので有用です。但し、抗生剤がすでに使われていると陰性となります。 (図3,4)

(3)毒素性ショック症候群(Toxic shock syndrome:TSS)
突然の高熱、悪心、下痢、筋肉痛、関節痛などで発症します。全身に日焼け様、猩紅熱様のびまん性紅斑を生じ、消化器症状、肝臓・腎臓障害などの多臓器障害を合併します。黄色ブドウ球菌の増殖する部位があり、そこで産生するTSS toxin−1やエンテロトキシンB,Cによってショック、多臓器不全をきたします。外傷、熱傷、敗血症、MRSA腸炎、月経時のタンポン、鼻につめた綿などが病巣になります。1980年に高吸収性タンポンを使用中の月経期の女性に多発しました。その製品の製造中止により、月経時のケースは激減しましたが、近年はそれに代わってIUD(子宮内避妊具)装着による例が増えています。

(4)毒素性ショック様症候群(Toxic shock−like syndrome:TSLS)
化膿レンサ球菌(A群β溶血性レンサ球菌)による重症感染症です。外傷、咽頭炎などが先行することもありますが健常者を突然襲うこともあります。猩紅熱の皮膚症状を呈し、かなりの頻度で壊死性筋膜炎を伴います。ショック、多臓器不全、凝固異常(DIC)をきたします。これらの症状が揃い診断基準にあえば劇症型A群レンサ球菌感染症となります。全身症状はレンサ球菌性発熱性外毒素、菌体表層成分であるM蛋白によるとされています。

TSS,TSLSはごく稀にしか発生しない疾患ですが、一旦発症すると重篤な経過をたどることが多い疾患です。皮膚科のみでは対処できず、外科、救急部、感染症専門医などによる集中治療が必須となります。