スポロトリコーシス
  スポロトリコーシス

土壌や草木に寄生・生息するSporothorix schenckiiが外傷などによって皮内に感染し肉芽腫様の病変をおこす皮膚深在性皮膚感染症です。
浅在性皮膚真菌症とは、白癬(水虫、たむしなど)、皮膚カンジダ症、癜風などで、皮膚表面の角層に増殖したものですが、深在性真菌症は真菌が皮膚の中、(表皮より下の真皮、皮下脂肪織)に病変を起こしたものをいいます。
 浅在性真菌症に比べると、発生頻度は非常に少ないですが、その中でもスポロトリコーシスは最も多くみられます。
●発症の地域
 温暖な地域に見られるために、東北以北では稀です。関東、九州での報告例が多いですが、利根川、筑後川などの大きな河川があること、農業の盛んなことなどの要因で、土壌、植物から人に感染する機会が多いためと考えられます。
●症状
 皮膚の外傷より、菌が侵入しますので、手や上肢に多く見られます。ただ小児には顔、特に眼の周りに多く見られます。眼を擦ることも関係していると考えられています。  傷の場所に、2週間から数カ月して赤い丘疹、それが拡大して結節(大豆大よりも大きいしこり)が出来てきます。(写真1)
 進行するとさらに増大して膿胞、潰瘍(深いただれ)などを形成します。 (写真2)
大きく次の2つの型に分けられます。
(1)皮膚固定型・・・菌の侵入した部位のみに病変が見られる型。(写真1,2)
(2)皮膚リンパ管型・・・最初の病変部位からリンパ管の走行にそって飛び石状に結節などを生じる型。 (写真3)
 また両者の区別がつかない中間型といわれるものもあります。まれに免疫状態の悪い人などで全身や内臓などに拡がる型もあります。
●診断
(1)顕微鏡で調べても、菌を見つけることはできませんので塗抹標本や生検組織(皮膚を少し切り取って調べること)をPAS染色で染めて菌要素(胞子)を検出します。
 慢性肉芽腫性の炎症像(写真4)
 巨大細胞中の貪食された菌要素、中央の赤い類円形の胞子を示す。 (写真5)
(2)真菌培養・・・サブローデキストロース寒天培地などで培養します。25℃で約5日後に白色の菌の集落が生えてきます。培養が進むにつれて灰色から黒褐色の絨毛状の湿潤した菌の集落となります。
 Sporothrix schenckii 巨大培養  (写真6)
 Sporothrix schenckii スライドカルチャー  分生子柄の先端に鶏冠状、花弁状に生じるものと、菌糸側壁に生じる褐色球形の分生子が見られます。  (写真7)
(3)スポロトリキン反応  ツベルクリン反応と同様な風に判定します。鋭敏な反応とされます。
(4)近年、分子生物学的手法で迅速に菌の同定ができるようになりましたが、一部の専門機関しかできず、一般的ではありません。
●治療
(1)ヨウ化カリウム
0.3gから1gを次第に増量しながら1から3カ月間内服します。有効性は極めて高いとされますが、味覚障害や胃腸障害があり、またヨード過敏症には使用できません。なぜヨウ化カリウムが効くのかはまだ不明とのことです。
(2)イトラコナゾール
成人には1日100から200mgを最低8週間内服します。小児には1日量4-5mg/kgを使用します。効果はヨウ化カリウムと同程度とされています。イトラコナゾールの使用では肝障害などの副作用、併用薬の注意などが必要です。
(3)テルビナフィン
成人で1日125mgで最低12週間の治療が必要です。効果は前2者に比べるとやや劣るとされます。
(4)局所温熱療法
菌が39℃以上では発育しないことを利用した治療法です。使い捨てカイロを1日2−3時間局所に当てて加熱します。低温やけどに注意が必要ですが、薬剤が使えない時、また補助療法として有効です。

写真は元千葉大学皮膚科の岩津都希雄先生より提供して頂きました。

参考文献
皮膚科臨床アセット 皮膚真菌症を究める 中山書店 2011