植物による接触皮膚炎
 
ハゼ・漆
漆類(ウルシ、ツタウルシ、ハゼノキ、ヤマハゼ、ヤマウルシなど)は接触皮膚炎を起こす植物の代表的なものです。屋外で偶然に触れたり、庭木の剪定などで発症することが多くみられます。
また、制作後2年以内の漆製品ではかぶれが生じることがあります。
ウルシでかぶれを起こしたことのある人は同じウルシ科のマンゴーでもかぶれを起こすことが多く、漆類の抗原であるウルシオールとマンゴーの抗原は交叉反応を起こすと考えられています。岡らは、フィリピンマンゴーの果皮から抗原を精製してマンゴールと命名しました。これは果実よりも。果皮に多く含まれ、カシューナッツオイルやイチョウ葉や銀杏種皮に含まれるカルドールやピロボールと似ているために交叉過敏性を起こすこともあります。カシューナッツオイルは本邦では栽培されていませんが、人工ウルシとよばれ、塗料として机などに使用されています。食用のカシューナッツは殻が取り除かれローストされていて、このオイルは含まれていないそうです。接触した部分に線状の紅斑、小水疱、丘疹などを生じます。手や顔や腕などに多くみられますが、男子では外陰部にも見られることが多いです。

マンゴー
マンゴーの果実を食べて、口唇、口囲、頬などに痒みを伴う紅斑、小水疱ができることがあります。ウルシ、ハゼ、カシューナッツ、イチョウ葉、ギンナンなどと交叉反応を起こしかぶれることもあります。

ギンナン
ギンナン拾い、食用部分の胚乳の取り出し作業中にかぶれることがあります。皮膚炎を起こす部分は外種皮ですが、イチョウの葉にも抗原性が多少ありかぶれることもあります。症状はウルシ、ハゼノキのかぶれと類似します。

サクラソウ
サクラソウの中でも特に、プリムラ・オブコニカ(トキワザクラ、西洋サクラソウ)でのかぶれが多くみられます。輸入種であり、1980年代には多くみられましたが、そのかぶれ易さが認知されたのか近年はやや減少気味です。3−4cm程の白、ピンク、紫などの美しい花を多数つけるので愛好家も多い花です。顔や手、腕などに多彩な形の皮膚炎を生じますが、中に線状の紅斑がみられるのが特徴です (写真1,2,3)

キク科
キク科の植物との長期的な接触によって皮膚炎を生じるので、花屋さんや、葬儀屋さんなどに多くみられる職業性の接触皮膚炎として知られています。慢性湿疹の形をとったり、光線過敏症に類似した形をとったりします。それで、他の光線過敏症やアトピー性皮膚炎との鑑別が必要になってきます。日本では意外に重症症例が少ないのは、食用菊、春菊などキク科の植物を食べる文化があり、無意識のうちに徐々に減感作を行っているからではないか、との考えもあります。
他のキク科の植物のダリア、ひまわり、たんぽぽ、ヨモギ、ブタクサ、チコリ、レタスなどと交叉反応することもあります。

材木
材木、特に心材はquinone類やphenol性物質を含む事が多く、製材所や木工所ではこれが木屑となって飛び散り、職業性の接触皮膚炎を生じることがあります。チーク、クルミ、ベイスギ、ローズウッド、レンガスなどを始め、その他多くの材木で皮膚炎をおこします。

アロマオイル
近年のアロマブームにより、種々のエッセンシャルオイルが使用されるようになってきましたが、それに伴って、アロマテラピーによって起こる接触皮膚炎も報告されるようになってきました。1990年代の後半からラベンダーオイルのパッチテストの陽性率が急激に上昇してきたことが報告されています。ラベンダーオイルの他に、イランイランオイル、ティートリーなどが報告されています。

プロポリス
ミツ蜂が樹脂や花粉から集めたものにミツ蜂自身の分泌物が含まれたもので、植物由来の香料や樹脂などとの共通抗原が含まれています。1991年からは食品添加物として認可され、1996年からは化粧品、歯磨き、入浴剤にも使用がされるようになり、接触皮膚炎の症例が増えてきています。

その他の植物
レタス・・・長年にわたり接触する栽培者、調理師などによく発症します。
アルストロメリア・・・ペルーユリ、インカユリと呼ばれる外来種で、チューリップの球根の抗原と同一です。
山芋・・・すりおろしたとろろなどで出現します。アレルギー性のものと刺激性のものがあります。
ミズゴケ・・・ラン科の植物、湿地性植物の栽培に用いられます。
アロエ・・・「医者いらず」として内服、外用に用いられますが、シュウ酸カルシウムによる刺激性やまたアレルギー性の接触皮膚炎を生じます。
ニンニク・・・打撲、関節痛、水虫などに使用される事がありますが、やけど様の刺激性の接触皮膚炎を生じます。またアレルギー性の場合もあります。
ヒマシ油・・・そのままでリップクリームとして使用されることもありますが、口紅、リップクリーム、頬紅などの原料として用いられアレルギーを起こす事があります。
ハッカ油・・・貼り薬、健胃薬、歯磨き、ガム、ドロップなど多くのものに含まれて唇のかぶれを起こすこともあります。
シナモン油・・・桂皮の樹皮を蒸留して作られた精油です。健胃薬、調味料、歯磨き、ガム、酒、ビール、コーラなどに含まれています。ペルーバルサムと高度に交叉過敏性を有するとされています。
松脂(ロジン)・・・接着剤、塗料、石鹸、ガム、滑り止め(野球選手のロージン、楽器、ダンスシューズなど)、絆創膏など多くの製品に含まれていて海外では報告例が多いとのことです。

参考文献

指田 豊 編集  皮膚炎を起こす植物の図鑑  皮膚病診療 第20巻 1998 
久保田容二郎   植物による接触皮膚炎    皮膚病診療 第20巻 1998
岡 恵子     ハゼノキによる接触皮膚炎の4例 臨床皮膚科 第63巻 2009
         マンゴー抗原との交叉反応について
岡崎亜希     診断に苦慮したアロマテラピーによる接触皮膚炎
         臨床皮膚科 第64巻 2010
樋口雅子     キクによるphotosensitive dermatosisの1例
         臨床皮膚科 第62巻 2008