帯状疱疹
  帯状疱疹

●病因
神経節に潜伏感染している水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって生じます。
●病態
初感染で水痘(水ぼうそう)に罹患した後、ウイルスは知覚神経を伝わって三叉神経節や脊髄神経節、坐骨神経節などの神経細胞に、不活性化のまま潜伏感染を続けます。そして過労、ストレス、加齢、外傷、悪性腫瘍、重症感染症、自己免疫疾患、薬剤(免疫抑制薬、抗がん剤)、放射線治療など、さまざまな要因によって細胞性免疫能の低下を契機に潜伏したウイルスが再活性化し、再び知覚神経を伝わって表皮の細胞に感染し帯状疱疹を生じます。単純ヘルペスウイルスが主に神経細胞に感染しているのとは異なり、VZVはその周囲のサテライト細胞と呼ばれる非神経細胞にも潜伏感染しているために、広く神経分布に沿った領域に病変を生じます。
●症状
体の、各部位の神経分布に沿って体の片側に痛みや知覚異常が数日から1週間ほど続いた後に、その部分に紅色丘疹や浮腫性の紅斑が出現し、中央に臍窩状の痂皮をもった小水疱となります。さらに4-5日後には破れてびらんになり、2週間前後で痂皮化して、およそ3週間で痂皮がとれ、色素沈着なり、治癒します。時には深い潰瘍を作り、治った痕が、瘢痕となる場合もあります。稀に痛みは皮疹の後から出現することもありますので、当初全く痛くなくても注意が必要です。(写真1,2,3,4)
痛みは、軽い知覚刺激症状程度のものから激痛まで様々でまた運動神経麻痺、部位によっては、動眼神経麻痺、腹部の神経麻痺による下痢、便秘、排尿障害など種々ありますが、通常1,2カ月程で軽快してきます。ただ、3カ月を過ぎても数年間も強い痛みが残る場合があり、このようなケースを帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)といいます。PHNになり易いのは、当初より皮疹、痛みの重症の患者、高齢者、糖尿病患者、免疫不全患者、治療不十分な患者などです。
Ramsay-Hunt症候群
耳介周囲に帯状疱疹が発症し、顔面神経の運動・知覚両神経が膝神経節を中心に侵されると、顔面神経麻痺(閉眼困難、鼻唇溝消失、口角下垂)と内耳障害(耳鳴、難聴、めまい)味覚障害などを合併します。
●診断と検査
Tzanck test
水疱内の細胞をスライドガラスに塗抹して、ギムザ染色を行い、ウイルス性巨細胞を確認します。それを検出できれば、HSV(Human herpes virus)またはVZVであることが考えられます。
ウイルス抗体価の検出
水疱内の細胞をスライドガラスに塗抹してVZVに特異的なモノクローナル抗体により蛍光抗体染色を行い検出します。
また、血中VZV抗体の検出法にはCF法とEIA法があり、ペア血清で2週間後の抗体価の上昇を確認します。
一般的ではありませんが、ウイルスの分離やウイルスゲノムの検出が行われることもあります。
●治療
出来る限り、早期に治療を始めることが大切です。
全身療法
抗ウイルス薬として、アシクロビル(ゾビラックス)、そのプロドラッグ(体内でアシクロビルに代謝される)バラシクロビル(バルトレックス)、さらに2008年からはペンシクロビルのプロドラッグであるファムシクロビル(ファムビル)が使用できます。投与期間は原則7日間です。重症な例ではさらに延長を要する場合もあります。これらの薬剤は腎臓から排泄されるために腎機能によって、使用量を減量する必要があります。特に高齢者は腎機能が衰えている事が多く、また種々の疾患をもち、いろいろな薬剤を飲んでいることも多いので使用量、方法に注意が必要です。
疼痛に対しては、消炎鎮痛剤が用いられますが、抗ウイルス剤と相俟って腎機能を障害することがあるため、腎への負担が少ないアセトアミノフェン(カロナール)が推奨されます。PHNに対しては、近年プレガバリン(リリカ)が保険で使用できるようになりました。ただ、絶対的な治療法はなく、症例ごとに鎮痛薬、三環系抗うつ薬、オピオイド、神経ブロック、レーザー療法、イオントフォレーシスなどが行われています。ステロイド薬の全身投与は、急性期の皮疹や疼痛の軽減および顔面神経麻痺の治療に有効です。使用する時には抗ウイルス薬と共に早期からプレドニン換算で30-60mg程度使用します。
外用療法
アシクロビルやビダラビンなどの抗ウイルス薬の外用が用いられることもありますが、帯状疱疹では抗ウイルス薬の内服、注射などの治療が原則で、外用薬はあくまで補助的な効果に留まります。非ステロイド系の消炎外用剤が用いられます。水疱が破れて、潰瘍となり、二次的に化膿するようなら、抗菌剤軟膏や、抗潰瘍外用剤も用いられます。
●生活上の注意
*抗ウイルス剤の早期の治療が必要ですが、腎障害などの副作用も多いので主治医の注意 を聞きつつ、密に受診すること
*1週間は出来るだけ安静にし、患部は冷やさないようにすること
*入浴は除痛効果もあり、気分転換にもなり、患部の軟膏、滲出液を洗浄することで皮疹 の治りも早いので積極的に行う
*水疱内にウイルスが存在するので、水痘に罹患していない乳幼児などは伝染する恐れが あること
●ワクチン接種
水痘への暴露が帯状疱疹の発症を予防できることは、経験上知られています。米国の高齢者を対象にした帯状疱疹ワクチンの治験では有効でまたPHNの発症抑制効果も認められました。米国では2006年から帯状疱疹ワクチンが認可されています。わが国では高齢者の水痘ワクチンの接種は可能ですが、定期接種については議論中です。

参考資料

皮膚科臨床アセット3 ウイルス性皮膚疾患ハンドブック 総編集◎古江増隆 専門編集◎浅田秀夫 中山書店  帯状疱疹 漆畑 修

標準皮膚科学 第8版 監修 西川武二  編集 瀧川雅浩 富田 靖 橋本 隆 医学書院 帯状疱疹 小澤 明

皮膚疾患最新の治療2011-2012 帯状疱疹186-187 鳥居秀嗣