爪みず虫
  爪白癬(爪みずむし) 爪にも水虫の菌(白癬菌)というカビの仲間が感染して爪白癬(爪水虫)が起きます。 白癬菌はケラチンというたんぱく質を栄養源として発育しますが、ケラチンは皮膚の角質や、爪、髪の毛に多く含まれていますので、皮膚だけではなく、爪、髪の毛にも感染します(爪や毛は硬いので、そこに含まれるケラチンはハードケラチンといいます)。そして爪は足白癬(水虫)に次いで多くの人が罹患しています。爪にまで白癬菌が拡がると、なかなか治りにくいために、一旦水虫を治しても又再発してくることが多く見られます。すなわち爪白癬は菌の供給源として水虫サイクルを支えているということができます。さらに家族や周囲の人にうつしてしまう可能性もあります。
 そういう面でも爪水虫はきちんと治しておく必要があります。
●症状
 爪に水虫が感染すると、爪が混濁(白く濁る)、肥厚(爪が厚くなる)、変形が生じてきます。その侵される部分、範囲によって以下のように分類されています。
1) 爪の先端・脇が侵される型・・・最も多い型です。遠位側縁爪甲下爪真菌症 (写真1)
2) 爪の表面が侵される型・・・2番目に多い型です。表在性白色爪真菌症 (写真2)
3) 爪の根元が侵される型・・・3番目に多い型です。近位爪甲下爪真菌症(写真3)
4) 爪全体が侵される型・・・           全異栄養性爪真菌症 (写真4)
但し、これらの型は混在したり、定型的でなかったりします。
●診断
 足白癬で説明しましたように、顕微鏡で菌要素を確認します。メスやヤスリなどで白濁した爪を削り粉にしてKOH液につけて鏡検します。ただ、菌は混濁した爪と皮膚の間や、正常爪との境目にみられ易いですが、その他の部分では見つかりにくく、またKOH液でも溶けにくいので水虫と比較すると菌が見つけにくいです(偽陰性)。
 そこで、真菌培養が必要になります。(鏡検で陰性でも培養で陽性になることもあります。)
●治療
 爪白癬(爪水虫)と似て非なる爪の疾患・変形も多くありますので、治療の前に鏡検、培養などで確実に菌を確認することが重要です。
 爪水虫であることが確認されたら、内服薬(のみ薬)を使用するのが原則です。その理由は、外用薬では薬剤がなかなか爪の中まで浸透できないこと、足の爪は全て生え換わるのに長期間かかることなどです。(手の爪で1カ月に約3mm、足の爪で約1.5mm)
 以前はグリセオフルビンという薬剤のみでしたが、これは静菌的作用で殺菌性ではないために治療に1〜2年かかり、さらに胃腸障害も多くみられました。しかし、この薬剤は現在はもう使われなくなりました。代わって現在は、テルビナフィンとイトリコナゾールの2剤が使用されています。
*テルビナフィン(ラミシール)
1錠(125mg/日)の連続内服を6カ月(更に数カ月)行います。テルビナフィンは白癬菌への抗菌活性は高く、他の薬剤との相互作用は少ないので、他の薬を内服中の人でも使用が可能です。但し、少数ながら時に肝機能障害もみられますので定期的な血液検査が必要ですし、服用前に採血をして内服が可能かどうかをチェックすることが必要です。肝臓以外にも胃腸障害などもありますので、飲んでいる間は何か普段と変わったことがあったら早めに医師に告げることが大切です。
 テルビナフィンは白癬への殺菌力は強いのですが、その他の真菌(例えばカンジダ菌)には効果がありませんので、治療を開始して2〜3カ月たっても変化がない時は治療を再検討する必要があります。
 薬価は1錠 228.6円(2011年4月現在)ですので、6か月間で薬代41148円、3割負担だと12344円となります。
 テルビナフィンの有効率は80%程度といわれています。欧米では1日量250mgと本邦の倍量を使いますが、日本では治験段階で肝障害を危惧され125mgでも有効なために欧米の半量となりました。
*イトラコナゾール(イトリゾール)
400mg(1錠50mg)/日を7日間内服し、3週間休薬する(内服しない)ことを1クールとして、これを3回繰り返します。すなわち3カ月間に、7日x3回内服することになります(イトラコナゾールのパルス療法)。
 薬価は1錠 463.1円ですので、7日間で25933.6円、3割負担では 7780円となります。かなり高価で、皆さんびっくりされますが、通院期間、内服期間が従来の薬剤と比較してかなり短いことを考慮するとかならずしも高価ともいえません。
 イトラコナゾールは併用禁忌薬(一緒に飲んではいけない薬)が多くあります。それで内服の際には、必ず医師に内服中の薬について申し出て下さい。 
 いずれの薬も治癒率は70~80%程度とされ、100%治癒するわけではありませんので、治療終了後3~6カ月後に正常化している爪の範囲が拡大しない時は、再投与など治療を見直す必要性もあります。治りにくいのは、楔形に爪が混濁している場合でdermatophytomaといって白癬菌が胞子となって休止期にはいり、集塊を作った状態です。また剥離した爪も薬剤が浸透しにくく治り難くなります。また白癬菌以外の真菌による場合もあります。
患者さんの薬剤の吸収障害、免疫状態、爪の伸び具合も治癒に影響します。
 内服薬は高価なために、安価なジェネリック薬(後発薬)を希望する患者さんも多くみられますが、製法の違いなどによって吸収効率に違いがあり、後発品は先発品に比べて幾分効果が劣ります。特にイトリコナゾールの場合にその傾向があるとされますので、主治医とよく相談してから薬剤を決めた方がよいでしょう。
 一般的な使用の目安としては、下記のようになるでしょう。
 イトリコナゾールの方が良い人・・・忙しく、短期間で治療したい人、白癬以外(カンジ ダ症など)の可能性がある場合、
 テルビナフィンの方が良い人・・・他の薬剤を飲んでいる人
*内服出来ない場合
 爪水虫は内服しないと治癒させるのは困難ですが、高齢で多剤を飲んでいたり、肝機能異常があったり、薬剤アレルギーがあったり、妊娠・授乳していたりで内服できない場合もかなり多いです。このような場合には各皮膚科医がそれぞれに工夫して治療しているようです。
・グラインダーで爪の混濁部の根元を削り、薬剤を染み込ませ易くする方法
  有効ですが、器具が必要なことと、削った粉が感染源になる可能性があります。
 ・水虫の外用剤と角化治療剤(サリチル酸、ビタミンD3軟膏)を重ねて塗る、更に夜間はODT(occlusive dressing technique)といってサランラップで爪を覆うことで薬剤の吸収をよくする
  ・抜爪術・・・一部施設で行われることがありますが、侵襲が大きく、後で爪変形を残すなど通常は行われません。れらの外用療法だけでの完治はなかなか難しいですが、それでも他への感染は防げます し、徐々にでも軽快しますので有用です。
●鑑別診断
  一見、爪水虫のようで、実は水虫でない病気・状態も多くあります。それで、間違った治療をしないためにも治療前に皮膚科専門医の正しい診断が重要になります。
  ・厚硬爪甲(写真5)・・・先天性、老人性、外傷など
  ・爪甲剥離(写真6)・・・局所の要因、外傷、マニキュア、洗剤など
  ・爪乾癬(写真7)
  ・点状陥凹(写真8)・・・乾癬、円形脱毛症など
  ・その他の爪変形・・・全身の病気、局所の刺激などで色々な変化がおきます。