蜂さされ

被害を及ぼす蜂は、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチですが、被害の多い季節も蜂の種類によって異なり、ミツバチは1年中、アシナガバチは7〜8月、スズメバチでは7〜10月と異なります。なかでもスズメバチの殺傷力は強力です。

【蜂刺による症状】
蜂に刺された時の症状は刺された部位に生じる局所症状と全身症状の二つに別けられます。
蜂に初めて刺された人は刺された部位に痛みを伴って発赤を生じる程度ですが、回を重ねるごとに発赤・腫脹が強くなります。また一部の人(0.02〜4%)では下記のような「アナフィラキシー」とよばれる全身症状が生じることもあります。

強い症状   呼吸困難、血圧低下、意識が遠のく寸前、
         激しい動悸、息苦しい、
 (重篤症状) 口からアワ、手足のしびれ、唇の失血、脱力感、
         耳が聞こえない、目が見えなくなる

中等度の症状  のどが詰まった感じ、息が苦しい、のどが渇く・
          のどがしびれる感じ、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、
          頭痛、めまい、たん(分泌物)がからみ息を吸う
          時ぜいぜいする、全身のむくみ

軽い症状    吐き気、発汗、めまい、全身の蕁麻疹、
          全身のふるえ

【処置・治療】 
・ 刺された直後にポイズンリムーバー(陰圧にする器具)で皮内
  に注入された毒を吸い出す、遊具店などで購入可。
  口で吸ってはいけない。
・ミツバチでは毒針を抜く、但し1分以内でなければ無効。
・ 刺された部位を水で冷やす。
・ 刺された部位より中枢側を間欠的に駆血する。
・ ステロイド外用剤、抗ヒスタミン剤の内外用  
  (医療機関を受診のこと)
・ 重症の場合、エピペン(エピネフリン含有の自動注射器)を使用
  (自己注射)して早急に救急病院を受診する。

*注  エピペンについて
 エピペン注射液は、自己注射用エピネフリン注射液で、患者自身がハチ毒によるアナフィラキシー発現時に自己注射することのできる製剤です。

1986年から1987年にかけて林野庁の職員4名が作業中に蜂刺のために亡くなったことをきっかけに米国に倣い1995年から国有林職員を対象に治験が始まりました。2003年からはハチアレルギーの患者に一般にも使用できるようになりました。エピペン使用者での救命率は上がっており、有効性が認められています。但し、使用は以前蜂に刺されて重症になった人で、蜂に刺されやすい環境にいる人に限られ、また使用禁忌(使ってはいけない人)もあります。また本剤に習熟した医師の指導・講習が必要ですので詳しくは皮膚科・内科などの専門の医師のいる医療機関にお問い合わせ下さい。

【蜂刺され防止方法】
・ 家屋内に営巣させない、巣は小さいうちに取り除く。
・ ジュースなど戸外で甘味食を飲食しない。
  残りの缶などを放置しない。
・ 洗濯物を取り込むときに注意する。
・ 車や家に入ったら明るい方の窓を開けて出て行くのを待つ。
・ 蜂の巣のそばで激しく動いたり、大声を出したりしない。
・ 目を閉じて顔を下向き加減にし、静止する。蜂が巣に戻った
  後、静かに後退する。地表すれすれに飛び回る蜂の場合は
  蜂と反対方向に後退する。
・ 一旦、蜂の攻撃を受けると攻撃に参加する蜂は次第に増える
  ので、一刻も早く現場から離れる。
・ スプレー式殺虫剤を携帯している場合は、蜂に向けて噴霧
  すると効果がある。
・ 服装:肌は露出せず、身に着けるものは黒色のものは避け、
  明るい色にする。
  また、つばの広い帽子等をかぶり、頭を露出しないようにする。
・ 匂い:ヘアスプレー、ヘアトニック、香水等の化粧品は蜂を
  刺激するので注意する。
・ その他:蜂は死んでからも、また、腹部だけでも24時間以内に
  触れると毒針で刺される可能性があるので注意する。

【減感作療法】
 根本的治療法には減感作療法があります。但し、この療法には保険適応がない、長期間の維持療法が必要、国内には製品としてのハチ毒抗原はない、終了に基準がないなどの種々の難点があります。治療を希望される方はこの療法の実績のある九段坂病院皮膚科に問い合わせて下さい。(米国より輸入したハチ毒抗原を用い、2週間弱の入院で急速減感作療法を行っているとのことです)



                   文責  児島 孝行


 参考文献
大滝倫子:ハチとアナフィラキシー 日臨皮 Vol.23 No.4. 318-322,2006  
秋山一男:アナフィラキシー補助治療剤ガイドブック 2003